
【KMD面接対策④】「2年間の実現可能性」をどう示す?壮大なビジョンを具体的な研究計画に落とし込む方法
院試専門オンライン予備校「志樹舎」が運営する「慶應義塾大学大学院の院試対策ガイド」をご覧いただき、ありがとうございます。今回のテーマは「【KMD面接対策④】『2年間の実現可能性』をどう示す?壮大なビジョンを具体的な研究計画に落とし込む方法」です。
KMD(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科)の面接では、研究テーマの社会的意義や新規性だけでなく、「その研究を本当に修士課程の期間内で進められるのか」という実現可能性も重要な視点になります。
受験生の中には、社会を大きく変えるような魅力的なビジョンを持っている一方で、研究対象が広すぎたり、必要な調査や開発が多すぎたりして、2年間では到底終わらない計画になっているケースがあります。
大きな夢を持つこと自体は悪いことではありません。むしろKMDを目指すうえでは、「将来的に何を実現したいのか」という長期的な視点も大切です。重要なのは、その大きなビジョンと、修士課程で実際に取り組む範囲を分けて考えることです。
なぜ「2年間でできるか」が重要なのか
修士課程では、限られた期間の中で、研究テーマを具体化し、先行研究を調べ、調査や制作、検証を行い、最終的な成果としてまとめていく必要があります。
KMDではリアルプロジェクトなどの活動もあり、研究だけにすべての時間を使えるわけではありません。授業やプロジェクト活動と並行しながら、自分自身の研究を進めていくことになります。
そのため、「世界中の教育格差を解消する」「日本の医療制度全体を変える」といったテーマでは、方向性としては魅力的でも、修士研究としてどこまで取り組むのかが分かりません。
面接では、理想を語れるかだけでなく、その理想を現実的な研究課題へ落とし込めているかという点も意識しておきましょう。
「将来のビジョン」と「修士研究の目標」を分ける
研究計画を整理するときにおすすめなのが、長期的なビジョンと、2年間で達成したい研究目標を分けて考えることです。
たとえば、最終的な目標が「高齢者が安心して暮らせる地域社会をつくること」だったとします。これは長期的なビジョンとしては分かりやすいですが、2年間ですべてを実現することは難しいでしょう。
そこで、修士研究では「一人暮らしの高齢者を対象に、日常的な体調変化を把握する仕組みのプロトタイプを開発し、少人数で利用可能性を検証する」といった形まで範囲を絞ります。
このように、「将来的にはここを目指している。その第一段階として、KMDの2年間ではここまで取り組みたい」と説明できれば、大きなビジョンと現実的な計画を両立しやすくなります。
研究対象を絞ることが実現可能性につながる
実現可能性を高めるために、まず見直したいのが研究対象の広さです。
たとえば「若者」を対象にするのではなく、「首都圏の大学1・2年生」、「教育現場」ではなく「私立高校の進路指導」といったように、対象を具体的にしてみましょう。
対象が狭くなると、調査人数や検証方法も考えやすくなります。また、「誰に何を明らかにしたいのか」が明確になるため、面接での説明もしやすくなります。
研究テーマを絞ることは、研究の価値を小さくすることではありません。むしろ、大きな社会課題の中から、自分が2年間で責任を持って検証できる部分を切り出す作業だと考えてください。
「何をつくるか」だけでなく「何を検証するか」を考える
KMDを志望する方の中には、アプリ、サービス、プロダクトなどを開発したいと考えている方も多いでしょう。
しかし、「アプリを完成させる」というだけでは研究計画として十分とは言えません。そのアプリを使って何を明らかにしたいのかまで考える必要があります。
たとえば、学習支援アプリを開発するのであれば、「利用すると学習時間が増えるのか」「利用者の継続意欲にどのような変化があるのか」といった検証の視点を入れます。
2年間で大規模なサービスを完成させることより、小さなプロトタイプをつくり、限られた対象者に試してもらい、仮説を検証するほうが、修士研究として現実的な場合もあります。
2年間を大まかな段階に分けて考える
実現可能性を説明するためには、研究をどのような順番で進めるのかも整理しておきましょう。
たとえば、最初の段階では先行研究や既存サービスを調査し、対象者へのヒアリングなどを通じて問題を明確にする。次に、仮説を立ててプロトタイプを制作する。その後、実際に利用してもらい、結果を分析して改善する。そして最終的に研究成果をまとめる、という流れです。
月単位ですべての予定を完璧に決める必要はありません。ただし、「入学してから考えます」という状態では、計画としての説得力が弱くなります。
少なくとも、調査、制作・実験、検証、分析、成果の整理という大きな流れを説明できるようにしておきましょう。
必要な人・データ・設備も考えておく
研究の実現可能性を考える際には、時間だけではなく、必要なリソースにも目を向ける必要があります。
たとえば、1000人規模の調査が必要なのか、特定の企業から機密データを提供してもらわなければ研究できないのか、高額な機材が必要なのかによって、現実性は大きく変わります。
面接では、「そのデータはどうやって集めるのですか」「対象者にアクセスできますか」と質問されることも想定しておきましょう。
社会人であれば現在の仕事を通じて対象者へアクセスできる場合もありますし、大学生であれば所属しているコミュニティを活用できる場合もあります。ただし、研究倫理や個人情報への配慮も必要です。
研究に必要な条件を一度書き出し、本当に自分が用意できるのかを確認してみてください。
すべてを一人でやろうとしない
KMDでは多様な専門性を持つ人との協働が特徴のひとつです。そのため、研究計画についても「自分一人ですべての技術を身につけて実現する」という発想だけで考える必要はありません。
たとえば、自分はビジネス領域の経験があるもののプログラミング経験が少ない場合、技術的な知見を持つ学生や教員との協働を想定することもできます。
一方で、「自分にはできないので全部誰かにやってもらいます」という計画では主体性がありません。自分が何を担当し、どの部分で他分野の知見を借りたいのかを明確にしておくことが重要です。
自分の強みと不足している部分を理解していることも、実現可能な計画を考えるうえで大切です。
面接で「無理では?」と言われたときの対応
面接では、「その規模では2年間で終わらないのではないですか」「対象が広すぎませんか」と指摘される可能性があります。
そのときに、すぐに「絶対にできます」と反論する必要はありません。
指摘が妥当だと感じた場合は、「ご指摘の通り、ビジョン全体を2年間で実現するのは難しいと考えています。修士研究では対象を○○に限定し、まず○○までを検証したいと考えています」と回答する方法があります。
研究計画は、最初から一切変更しないことが優れているわけではありません。新しい指摘を受けて計画を修正できることも、研究を進めるうえでは重要な姿勢です。
「できること」と「できないこと」を整理する
面接準備では、自分の計画について、2年間で確実に取り組みたいこと、状況によって挑戦したいこと、長期的な課題として残すことの三段階に分けてみるのもおすすめです。
すべてを修士研究に詰め込もうとすると、計画が大きくなりすぎます。
「この部分は2年間で検証する」「この部分は成果が得られた場合に次の段階として取り組む」「社会全体への普及は修了後の長期目標とする」と整理できれば、研究の範囲が明確になります。
何をやらないかを決めることも、研究計画の一部です。
実現可能性を1分で説明できるようにする
面接では、細かな研究計画を長時間説明できるとは限りません。
そのため、「2年間でどこまでやる予定ですか」と聞かれたときに、短く説明できるよう準備しておきましょう。
「最終的には○○を目指していますが、KMDの修士課程では対象を○○に限定し、1年目に調査とプロトタイプ制作、2年目に検証と分析を行い、○○を明らかにしたいと考えています」というように整理すると、長期ビジョンと2年間の計画を同時に伝えやすくなります。
英語面接を想定し、この内容についても簡単な英語で説明できるよう練習しておきましょう。
まとめ
KMDの面接で研究の実現可能性を説明する際には、壮大なビジョンそのものを小さくする必要はありません。重要なのは、長期的に目指す未来と、修士課程の2年間で実際に取り組む研究を分けて考えることです。
対象者を絞り、何を検証するのかを明確にし、調査、制作、検証、分析といった研究の流れを整理しましょう。さらに、必要なデータや対象者、技術、設備などについても現実的に考えておくことが重要です。
また、面接官から計画の大きさを指摘された場合には、無理に押し通すのではなく、どこまでなら現実的に取り組めるのかを冷静に説明できるようにしておきましょう。
「最終的には大きな社会課題を解決したい。しかし、KMDの2年間ではまずここまでを明らかにする」。この切り分けができると、研究への意欲と計画性の両方を伝えやすくなります。
※本記事は執筆時点の情報をもとに作成しています。KMDの標準修業年限、カリキュラム、リアルプロジェクト、研究指導、面接での質問内容や評価の観点などは年度や入試期によって変更される場合があります。また、本記事で紹介した研究スケジュールはあくまで考え方の一例です。受験を検討される際は、必ず慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科の公式サイトおよび最新の募集要項をご確認ください。
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※この記事は専門家による監修のもと執筆されています。
この記事を監修した人
小杉 樹彦(こすぎ・たつひこ)
志樹舎 創業者/博士(学術)
慶應義塾大学院修了後、2015年1月に院試専門オンライン予備校「志樹舎」を設立。
代表講師として10〜60代まで延べ5,000人以上の受験生を指導。
早慶・国公立をはじめとする難関大学院で合格率9割超の実績を持つ。
現在は大学院入試対策の専門家として、テレビ・新聞・雑誌など幅広いメディアで活動中。
ロングセラー『減点されない!勝論文』(エール出版社)ほか著書・論文多数。


