KMDの書類審査で見られる「基礎能力」とは?合否判定で意識したいポイント

院試専門オンライン予備校「志樹舎」が運営する「慶應義塾大学大学院の院試対策ガイド」をご覧いただき、ありがとうございます。今回のテーマは「KMDの書類審査で見られる『基礎能力』とは?合否判定で意識したいポイント」です。

慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科、通称KMDへの出願書類を作成していると、「教員はどこを見て評価しているのだろう」「アイデアが面白ければ合格できるのだろうか」と気になる方も多いでしょう。

KMDの入試では、研究科が目指す人材像への理解、入学後に高い学習成果を上げられる可能性、英語によるコミュニケーション力など、複数の観点から志願者を評価する考え方が示されています。そのうえで、理解力、分析力、論理力、構成力、表現力、柔軟性といった基礎的な力も重要になります。

つまり、華やかな経歴や目新しいアイデアだけで判断されるわけではありません。今回は、こうした基礎能力を、実際の出願書類づくりでどのように意識すればよいのかを整理していきます。


KMDの入試は「面白い人」を選ぶだけではない

KMDというと、テクノロジー、デザイン、ビジネス、社会などを横断し、新しい価値を生み出す研究科という印象が強いため、「とにかく変わったアイデアを出せばよい」と考えてしまう方もいます。

しかし、大学院での学びでは、単なる思いつきだけでは研究を進めることができません。問題を正しく理解し、情報を整理し、筋道立てて考え、それを他者に伝える力が必要になります。

KMDの入試でも、志願者が入学後に研究やプロジェクトへ取り組むための土台を持っているかという点が重要です。そのため、出願書類を書く際には、「自分は面白い経験をしてきた」というアピールだけで終わらず、その経験をどのように考え、何を学び、KMDでどう発展させたいのかまで示すことが求められます。


理解力:KMDについて自分の言葉で説明できるか

まず意識したいのが理解力です。

KMDの公式サイトには、「メディア・イノベータ」「リアルプロジェクト」「Design by action」など、研究科を理解するうえで重要な考え方が紹介されています。しかし、その言葉をそのまま志望理由書に並べても、KMDを深く理解していることにはなりません。

大切なのは、それらが自分の問題意識や研究テーマとどのようにつながるのかを、自分自身の言葉で説明できることです。

たとえば「多分野横断に魅力を感じました」と書く場合でも、なぜ自分のテーマには複数分野の知見が必要なのかまで説明すると、理解の深さが伝わりやすくなります。

KMDの理念を紹介することではなく、自分の研究との接点を説明することを意識しましょう。


分析力:経験を「事実」で終わらせない

次に重要なのが分析力です。

出願書類では、これまでの学業や仕事、プロジェクトなどの経験を書くことがあります。しかし、「○○という仕事を経験しました」「○○というプロジェクトを担当しました」という事実だけでは、その経験から何を考えた人なのかまでは伝わりません。

そこで、自分の経験をもう一段深く掘り下げてみます。

なぜその出来事が問題だと感じたのか、原因はどこにあると考えたのか、従来の方法ではなぜ解決できないのか、自分はそこから何を学んだのか。このように考えることで、単なる経験談が研究につながる問題意識へと変わっていきます。

特に社会人受験生の場合、実務経験の量そのものよりも、現場で起きていることをどのように分析しているかが重要です。


論理力:なぜそう考えたのかがつながっているか

出願書類では、結論だけではなく、そこへ至る理由が重要です。

たとえば、「AIを活用した教育サービスを研究したい」と書いた場合、「なぜAIなのか」「なぜ教育なのか」「なぜ今その研究が必要なのか」という問いに答えられる必要があります。

この説明が途中で飛んでいると、本人にとっては自然な流れでも、読み手には「なぜ急にこの研究テーマになったのだろう」と感じられてしまいます。

書類を読み返す際には、一文ごとに「なぜ?」と問いかけてみるのも有効です。理由を説明できない部分があれば、論理が省略されている可能性があります。


構成力:過去・現在・KMD・未来を一本につなぐ

論理力とあわせて意識したいのが構成力です。

Statement of Purposeでは、これまでの経験、現在の問題意識、KMDで取り組みたい内容、修了後の目標など、複数の要素を書くことになります。

それぞれが良い内容でも、ばらばらに並んでいると、志望理由全体の説得力は弱くなります。

おすすめしたいのは、「過去の経験から問題意識が生まれた」「その問題を現在さらに深く考えている」「解決するためにKMDの環境が必要である」「KMDでの学びを将来このように活かしたい」という流れを意識することです。

書類全体を読んだときに、「だからこの人はKMDを受験するのか」と自然に理解できる構成を目指しましょう。


表現力:難しい英語ではなく、正確に伝わる英語

KMDでは英語で出願書類を作成するため、表現力について不安を感じる方もいるでしょう。

ただし、表現力は難しい英単語をたくさん使うことではありません。自分の考えを相手が理解できる形で表現する力です。

一文が必要以上に長くなっていないか、主語と動詞が分かりやすいか、専門用語を使わなくても内容を説明できるかを確認してみましょう。

また、「I have a strong passion」といった抽象的な言葉を重ねるよりも、具体的な経験を書くほうが説得力は高まります。

たとえば「社会課題に強い関心があります」と書くより、「仕事で○○という問題に直面し、利用者へのヒアリングを行った結果、○○という課題に気づいた」と書くほうが、その人の考えや行動が伝わります。


柔軟性:自分の専門だけに閉じていないか

KMDを考えるうえで特に重要なのが柔軟性です。

多分野横断を重視する環境では、自分の専門性を持っていることは強みになります。一方で、「自分の専門分野の方法だけが正しい」と考えてしまうと、異なる専門性を持つ人との協働が難しくなります。

出願書類では、これまで異なる立場や専門性の人とどのように関わってきたのかを振り返ってみるとよいでしょう。

自分の考えを変えた経験、他者からの意見を取り入れてプロジェクトを改善した経験、知らない分野について学んだ経験などは、柔軟性を示す具体的な材料になります。

大切なのは、「私は柔軟な人間です」と書くことではなく、実際の経験からその姿勢が伝わるようにすることです。


6つの力は別々にアピールしなくてよい

理解力、分析力、論理力、構成力、表現力、柔軟性と聞くと、「それぞれについて一段落ずつ書かなければならないのか」と考えるかもしれません。

その必要はありません。

これらの力は、Statement of PurposeやCreative Challengeなどの出願書類全体から自然に伝わるものです。

たとえば、自分の経験を分析し、そこから研究テーマを導き、その研究をKMDで行う必要性を論理的に説明できれば、分析力、論理力、理解力、構成力を同時に示すことができます。

無理に能力名を書くのではなく、文章そのものから「この人は考える力がある」と感じてもらえる状態を目指しましょう。


提出前は読み手の立場からチェックする

書類が完成したら、一度自分が受験生であることを忘れて、初めて読む人のつもりで確認してみてください。

この人がなぜKMDを目指しているのか理解できるか、研究したい内容は具体的か、なぜその研究が必要なのか説明されているか、経験と研究テーマがつながっているか、KMDでなければならない理由が分かるかを確認します。

自分だけでは判断しにくい場合は、第三者に読んでもらう方法も有効です。志樹舎でも、単純な文章の添削だけではなく、研究テーマ、志望理由、Creative Challengeなどを通して、出願書類全体の論理や一貫性を確認することが重要だと考えています。


まとめ

KMDの書類審査を考える際には、華やかな経歴や奇抜なアイデアだけに意識を向けるのではなく、大学院で学ぶための基礎的な力が書類から伝わっているかを確認することが重要です。

理解力、分析力、論理力、構成力、表現力、柔軟性といった力は、特別な項目としてアピールするものではありません。自分の経験を丁寧に振り返り、問題意識を掘り下げ、KMDで取り組みたいことまで一貫した形で説明することで、自然と文章に表れてきます。

出願書類を書き終えたら、「内容が格好よく見えるか」ではなく、「自分が何を考えている人なのかが読み手に伝わるか」という視点で見直してみてください。書類全体から思考の深さやKMDで学ぶ準備が伝わる状態に仕上げることが、重要な院試対策のひとつです。


※本記事は執筆時点の情報をもとに作成しています。KMDの選考方針、出願書類、審査方法、評価の観点などは年度や入試期によって変更される場合があります。また、実際の合否は複数の要素から総合的に判断されます。受験を検討される際は、必ず慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科の公式サイトおよび最新の募集要項をご確認ください。

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※この記事は専門家による監修のもと執筆されています。

この記事を監修した人

小杉樹彦(志樹舎 創業者)

小杉 樹彦(こすぎ・たつひこ)
志樹舎 創業者/博士(学術)
慶應義塾大学院修了後、2015年1月に院試専門オンライン予備校「志樹舎」を設立。 代表講師として10〜60代まで延べ5,000人以上の受験生を指導。 早慶・国公立をはじめとする難関大学院で合格率9割超の実績を持つ。 現在は大学院入試対策の専門家として、テレビ・新聞・雑誌など幅広いメディアで活動中。 ロングセラー『減点されない!勝論文』(エール出版社)ほか著書・論文多数。