【教員紹介】胡藝澤(Yize Hu)特任助教|科学技術史とデジタル人文学で東アジアを読み解く

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今回のテーマは「【教員紹介】胡藝澤(Yize Hu)特任助教|科学技術史とデジタル人文学で東アジアを読み解く」です。

KMD(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科)教員紹介シリーズの第8回では、科学技術史、科学技術政策、東アジア研究、デジタル人文学を専門とする胡藝澤特任助教を紹介します。

KMDでは、先端技術やデザインに関する研究が多く行われていますが、新しい技術を理解するためには、現在の技術だけを見るのではなく、それがどのような歴史や社会の中で生まれてきたのかを考える視点も重要です。胡特任助教の研究は、まさに科学技術を歴史、社会、文化との関係から捉えるものです。今回は、その経歴や研究テーマ、デジタル人文学という研究手法を通して、受験生がどのような研究との接点を考えられるのか見ていきます。


胡藝澤特任助教はどのような研究者なのか

胡藝澤特任助教の専門分野は、科学技術史、科学技術政策、東アジア研究、デジタル人文学です。米国コロンビア大学で東アジア言語文化の修士号を取得した後、ジョンズ・ホプキンス大学の科学技術史学部で博士課程を修了し、博士(科学史)の学位を取得しています。

また、京都大学で客員研究を行った経験もあり、東アジアと欧米の双方に関わりながら研究を進めてきました。ひとつの国や地域だけに限定せず、異なる学術的な背景を行き来してきた点も特徴です。

これまでの教員紹介では、ハプティクスやロボティクス、デジタルファブリケーションなど、技術開発を中心とした研究者を取り上げてきました。それに対して胡特任助教は、歴史学や人文学の方法から科学技術を捉えています。

この違いは、KMDで研究テーマを考える受験生にとって重要です。メディアデザインという言葉から、技術開発や制作経験がなければ研究できないと考える必要はありません。歴史、文化、社会、政策などを背景としながら、科学技術について研究する方向も考えられます。


東アジアの科学技術を歴史と社会から読み解く

胡特任助教の研究の特徴は、科学技術がどのような歴史的・社会的な背景の中で発展してきたのかを、東アジアという地域的な視点から考えていることです。

現在利用されている技術や科学技術政策も、突然生まれたものではありません。その国の政治、経済、産業、文化、国際関係など、さまざまな要因の影響を受けながら形成されてきました。過去の出来事や制度を調べることで、なぜ現在の科学技術がこのような形になっているのかを理解する手がかりが得られます。

また、科学技術史を学ぶことは、単に昔の出来事を整理することではありません。過去にどのような政策が採用され、社会が新しい科学技術をどのように受け止めてきたのかを分析することで、現在や将来の科学技術政策について考える材料にもなります。

特に東アジアを研究対象とする場合、日本だけでなく、周辺地域との関係や社会制度の違いにも目を向けることができます。科学技術を国際的な文脈から考えたい受験生にとっても、こうした地域研究の視点は参考になるでしょう。


デジタル人文学で人文学研究の方法を広げる

胡特任助教の専門分野でもうひとつ注目したいのが、デジタル人文学です。デジタル人文学とは、歴史学や文学、文化研究などの人文学にデジタル技術を取り入れ、資料を分析したり可視化したりする研究領域です。

歴史研究では、文書、新聞、書籍、記録など、多くの資料を読み解く必要があります。従来は研究者が一つひとつ資料を確認する方法が中心でしたが、デジタル技術を使うことで、大量の資料に含まれる言葉や人物、地域、年代などの関係を分析する方法も考えられるようになりました。

たとえば、長期間にわたる科学技術に関する言説の変化を追ったり、特定の人物や組織の関係を可視化したりすることで、人の目だけでは気づきにくかった傾向を発見できる可能性があります。

ここでは、デジタル技術を開発することそのものが目的とは限りません。技術を研究の手段として使い、人文学的な問いを深めていく点が重要です。人文学とテクノロジーを組み合わせたいと考えている受験生にとって、KMDでの研究テーマを考える際のひとつの方向性になります。


先端技術の社会実装を歴史的な視点から考える

KMDでは、先端科学技術を社会に導入する際に生じる倫理的・法的・社会的課題、いわゆるELSIについて考える研究も行われています。教員紹介シリーズで取り上げた標葉隆馬准教授も、科学技術社会論や責任ある研究・イノベーションを専門としています。

胡特任助教の科学技術史や科学技術政策という専門性も、こうしたテーマを考える際に異なる角度から役立つものです。新しい技術について考えるとき、現在起きている問題だけを見るのではなく、過去に似た技術や制度が導入されたときに社会がどのように反応したのかを調べることで、現在の問題をより広い文脈から捉えることができます。

記事案では、KMDが関わるJSTムーンショット型研究開発事業のサイバネティック・アバター技術や、洪水予測技術の社会実装に伴うELSIなども例として挙げられています。こうした先端技術についても、技術的な性能だけでなく、社会がどのように受け入れるのか、制度や政策がどのように対応するのかという問いがあります。

胡特任助教の専門分野を知ることで、社会実装とは単に技術を社会へ送り出すことではなく、その背景にある歴史や文化、政策まで含めて考える必要があることが見えてきます。


受験生は「なぜ今研究するのか」を歴史から考える

胡特任助教の研究に関心がある受験生は、自分が研究したいテーマについて、その歴史を調べるところから始めてみるとよいでしょう。

たとえばAI、ロボット、デジタルメディアなど現在注目されているテーマであっても、それ以前にどのような技術があり、人々がどのような期待や不安を抱いてきたのかを調べることができます。また、同じ技術でも日本と他の国では受け止め方や政策が異なる可能性があります。

こうした背景を把握すると、「最近話題だから研究したい」という説明から一歩進み、「これまでこのような変化があり、現在この課題が残っているため、今この研究に取り組みたい」という形で問題意識を整理しやすくなります。

研究計画や志望理由を考える際にも、研究テーマの新しさだけではなく、なぜその問題が生まれたのか、なぜ現在取り組む必要があるのかを説明することが大切です。面接でも、研究テーマの背景や社会的な位置づけを問われたときに、歴史的な流れまで理解していれば、より具体的に自分の考えを伝えられます。

歴史学、文化研究、地域研究などを学んできた方であれば、それまでの専門性をデジタル技術や科学技術政策とどのようにつなげられるのかを考えてみることも、KMDでの研究テーマを探す一つの方法です。


まとめ

胡藝澤特任助教は、コロンビア大学やジョンズ・ホプキンス大学での学びを背景に、科学技術史、科学技術政策、東アジア研究、デジタル人文学を専門としている研究者です。科学技術を最新の技術としてだけ捉えるのではなく、その背景にある歴史、社会、文化、政策との関係から読み解いている点が特徴です。

また、デジタル人文学という方法を通して、人文学的な研究とデジタル技術を結びつける視点も持っています。KMDへの出願を考えている方は、自分の研究対象がどのような歴史を経て現在に至ったのかを一度整理してみてください。「なぜ今、このテーマを研究するのか」を歴史的・社会的な背景から説明できるようになることは、研究計画や志望理由、面接を考える上でも重要な準備になります。


※本記事は記事作成時点の情報をもとに作成しています。入試制度、出願資格、提出書類、カリキュラム、教員の所属・役職・研究内容などは変更される場合があります。受験を検討している方は、必ず慶應義塾大学および慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科の公式サイト、最新の入学試験要項をご確認ください。

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※この記事は専門家による監修のもと執筆されています。

この記事を監修した人

小杉樹彦(志樹舎 創業者)

小杉 樹彦(こすぎ・たつひこ)
志樹舎 創業者/博士(学術)
慶應義塾大学院修了後、2015年1月に院試専門オンライン予備校「志樹舎」を設立。 代表講師として10〜60代まで延べ5,000人以上の受験生を指導。 早慶・国公立をはじめとする難関大学院で合格率9割超の実績を持つ。 現在は大学院入試対策の専門家として、テレビ・新聞・雑誌など幅広いメディアで活動中。 ロングセラー『減点されない!勝論文』(エール出版社)ほか著書・論文多数。