院試専門オンライン予備校「志樹舎」が運営する
「慶應義塾大学院の院試対策ガイド」をご覧いただき、ありがとうございます。
今回のテーマは
「社会人受験で研究と仕事をどう切り分けるか」です。
社会人受験生から、非常によく聞く悩みがあります。
- 「仕事経験を活かしたいが、どこまで書いていいかわからない」
- 「研究計画書が“業務の延長”になってしまう」
- 「面接で『それは仕事ですよね』と言われた」
これは能力の問題ではありません。
切り分けのルールを知らないだけです。
結論から言うと、
社会人受験で合否を分けるのは、
仕事と研究を混ぜないで活かせているかに尽きます。
1.多くの社会人がやってしまう「危険な混ぜ方」
まず、典型的な失敗パターンを見てみましょう。
- 研究テーマ=自分の業務内容
- 研究目的=現場の課題解決
- 研究方法=社内でやっている分析や改善プロセス
この状態は、大学院側から見ると、
「それは研究ではなく、実務の報告ですよね?」
となります。
本人は「活かしている」つもりでも、
実際には研究と仕事が完全に混ざっている状態です。
この混ぜ方をすると、
どんなに優秀な経歴でも評価は伸びません。
2.大学院が求めているのは「研究者としての視点」
大学院入試で見られているのは、
- 仕事ができるか
- 実務経験が豊富か
ではありません。
見られているのは、
「この人は研究者の視点で物事を考えられるか」
です。
研究者の視点とは、
- 自分の立場を相対化できる
- 経験を一般化・抽象化できる
- 個別事例を理論の枠組みで捉え直せる
という姿勢のこと。
仕事モードのまま書くと、
どうしても「当事者視点」から抜けられません。
3.正しい切り分け①:仕事は「背景」に置く
研究計画書において、
仕事はどこに置くべきか。
答えはシンプルで、
仕事は「背景説明」までです。
たとえば、
- なぜこのテーマに関心を持ったのか
- どのような問題意識を持つに至ったのか
この部分で、実務経験は非常に有効です。
ただし、ここでやるべきなのは、
- 自分が何をやったか
ではなく、
- どんな現象に違和感を持ったか
の説明です。
「私は○○を改善しました」ではなく、
「○○という現象に疑問を持った」が正解です。
4.正しい切り分け②:研究の主語は「自分」ではない
仕事の文章では、
- 私は〜した
- 私の部署では〜
という主語が自然です。
しかし研究では、
主語は「自分」から離れていくほど評価が上がります。
たとえば、
- NG「私は現場でこの課題を感じた」
- OK「先行研究では〇〇と指摘されているが、実務の現場では△△という状況が見られる」
ここで重要なのは、
「自分の経験」ではなく「現象」に焦点を当てること。
主語が変わるだけで、
文章は一気に研究らしくなります。
5.正しい切り分け③:仕事での結論を持ち込まない
社会人受験生が強いがゆえに陥りやすいのが、
「もう答えがわかっている」状態
です。
仕事では、
- 結論を出す
- 方針を決める
- 改善案を提示する
ことが求められます。
しかし研究計画書でそれをやると、
- 検証前に結論がある
- 研究の余地がない
と判断されてしまいます。
研究では、
- 結論を一度「保留」にする
- あえてわからない状態をつくる
この姿勢が重要です。
6.面接では「切り分け力」がそのまま試される
書類で混ざっている人は、
面接でも必ず混ざります。
よくある質問が、
- 「それは研究でやる必要がありますか?」
- 「仕事でやればいいのでは?」
このときに、
- 研究と仕事の違い
- なぜ研究として扱う必要があるのか
を説明できるかどうか。
逆に、
「実務では〇〇が目的ですが、研究では△△を明らかにする点が異なります」
と説明できる人は、高評価になります。
7.「活かす」とは、距離を取ること
最後に、いちばん大事な視点をお伝えします。
社会人受験において
仕事を「活かす」とは、
- たくさん書くこと
- 強くアピールすること
ではありません。
一歩引いた距離から眺め直すことです。
自分の仕事を、
- 個人的な経験ではなく
- 研究対象の一事例として
扱えるようになったとき、
初めて「研究者の入口」に立てます。
まとめ
社会人受験で研究と仕事を切り分けるポイントは、
- 1.仕事は背景にとどめる
- 2.主語を「自分」から離す
- 3.結論を急がない
- 4.研究と実務の目的の違いを説明できる
- 5.距離を取って経験を扱う
この5点です。
切り分けができると、
社会人経験は「足かせ」ではなく、
他の受験生にはない強みに変わります。
志樹舎
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※この記事は専門家による監修のもと執筆されています。
この記事を監修した人
小杉 樹彦(こすぎ・たつひこ)
志樹舎 創業者/博士(学術)
慶應義塾大学院修了後、2015年1月に院試専門オンライン予備校「志樹舎」を設立。
代表講師として10〜60代まで延べ5,000人以上の受験生を指導。
早慶・国公立をはじめとする難関大学院で合格率9割超の実績を持つ。
現在は大学院入試対策の専門家として、テレビ・新聞・雑誌など幅広いメディアで活動中。
ロングセラー『減点されない!勝論文』(エール出版社)ほか著書・論文多数。


