
研究計画書に「SDM的アプローチ」を組み込む書き方|専門研究で終わらせないための視点
院試専門オンライン予備校「志樹舎」が運営する「慶應義塾大学大学院の院試対策ガイド」をご覧いただき、ありがとうございます。
今回のテーマは「研究計画書に『SDM的アプローチ』を組み込む書き方|専門研究で終わらせないための視点」です。
慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科、通称慶應SDMを受験する際、重要な出願書類の一つとなるのが研究計画書です。
研究計画書では、自分が関心を持っているテーマを説明するだけではなく、何を明らかにしたいのか、どのような方法で研究するのか、その研究にどのような意義があるのかを論理的に示す必要があります。
特に慶應SDMを志望する場合は、一つの技術や理論だけを深く掘り下げる計画にとどまらず、複数の要素が関係する課題を全体から捉える視点が重要です。
この記事では、自分の専門性を活かしながら、研究計画書にシステムデザイン・マネジメントらしい視点を取り入れる方法を解説します。
専門性を深めるだけでは不十分なのか
特定の技術や理論を深く研究すること自体は、決して悪いことではありません。むしろ、自分の専門性は研究計画の土台になります。
ただし、技術の精度を高めることや、既存の手法の有効性を確認することだけが目的になっていると、なぜ慶應SDMで研究する必要があるのかが伝わりにくくなります。
例えば、介護現場で使用する新しい機器を研究する場合、機器の性能だけを評価しても、実際に現場で活用されるとは限りません。
介護職員の負担、利用者の心理、施設の運営方法、導入費用、安全性、家族の理解など、複数の要素が関係します。
慶應SDMを志望する研究計画書では、このような要素同士のつながりを捉え、技術や仕組みを社会の中で機能させる方法まで考えることが重要です。
SDM的アプローチとは何か
ここでいうSDM的アプローチとは、研究計画書に専門用語を多く入れることではありません。
目の前の問題を一部分だけで捉えず、関係する人、組織、制度、技術、費用、環境などを含めて全体を見渡し、課題の構造を整理することが基本です。
その上で、利用者や関係者が本当に必要としているものを考え、新しい仕組みや価値を提案し、実現可能性まで検討します。
つまり、何を作るかだけではなく、誰のために、どのような課題を解決し、どのように運用し、持続させるのかまで研究対象に含めることが大切です。
研究テーマは「課題・手段・実装」で考える
研究テーマを考える際は、社会や現場の課題、解決に用いる技術や手法、社会へ実装する仕組みという3つの視点で整理すると分かりやすくなります。
最初に考えるのは、誰がどのような問題を抱えているのかという課題です。ここでは、自分が興味を持つ技術から考え始めるのではなく、現場で実際に起きている問題から出発します。
次に、その課題を調査、分析、改善するために、どのような技術や研究方法を使うのかを考えます。
最後に、研究成果を現場で活用するために、組織や関係者の合意、運用体制、費用、制度などをどのように整えるのかを検討します。
この3つがつながっていれば、単なる技術研究や事例紹介ではなく、社会実装まで見据えた研究計画になります。
課題を取り巻く関係者を整理する
複雑な社会課題を研究する際は、その課題に関係する人や組織を整理する必要があります。
例えば、地域交通を研究する場合、利用者、交通事業者、自治体、地域企業、高齢者の家族など、さまざまな関係者が存在します。
それぞれが重視することは異なります。利用者は便利さを求め、事業者は採算性を考え、自治体は地域全体への効果を重視するかもしれません。
研究計画書では、誰が関係し、どのような利害や期待があるのかを整理しましょう。その上で、どの関係者を研究対象とし、どのような方法で意見や行動を調べるのかを示します。
関係者同士のつながりを明らかにすることで、表面的な問題ではなく、課題の根本にある構造へ近づけます。
利用者の立場から課題を捉え直す
研究者やサービス提供者が良いと考える解決策が、利用者にとっても良いとは限りません。
そのため、インタビュー、観察、アンケート、ワークショップなどを通じて、利用者や現場の関係者が何を感じ、どのような不便を抱えているのかを確認する視点が必要です。
例えば、業務効率化のために新しいシステムを導入しても、操作が複雑であれば、現場では使われなくなる可能性があります。
研究計画書では、解決策を先に決めるのではなく、現場の声を踏まえて仮説を立て、検証し、必要に応じて改善する流れを示すとよいでしょう。
定量データと定性データを組み合わせる
SDM的な研究計画では、一つの研究方法だけに限定せず、課題に応じて複数の方法を組み合わせることも有効です。
アンケート結果、利用回数、業務時間、費用などの数値データを使えば、問題の規模や傾向を把握できます。
一方で、インタビューや観察を行うことで、数値だけでは分からない利用者の感情、組織内の事情、意思決定の背景を理解できます。
研究方法を多く使えばよいわけではありません。研究目的に対して、それぞれの方法が何を明らかにするために必要なのかを説明することが重要です。
研究計画書の基本構成
研究計画書は、研究背景、問題意識、研究目的、研究方法、期待される成果という流れでまとめると、内容が伝わりやすくなります。
研究背景では、社会や現場でどのような問題が起きているのかを説明します。次に、既存の研究や現在の対応では何が十分に解決されていないのかを示します。
研究目的では、本研究によって何を明らかにしたいのかを具体的に書きます。「課題を解決する」だけでは広すぎるため、研究上の問いを明確にしましょう。
研究方法では、対象者、調査方法、分析方法、研究の進め方を説明します。最後に、研究成果が学術面や社会にどのような価値をもたらすのかをまとめます。
SDMという言葉を無理に多用しない
研究計画書の中で、「システム思考」「デザイン思考」「社会実装」といった言葉を繰り返せば、SDMらしい計画になるわけではありません。
重要なのは、それらの考え方を研究の中でどのように使うのかを具体的に示すことです。
例えば、「システム思考を用いる」と書くだけでなく、「関係者間の利害と情報の流れを整理し、サービス導入を妨げる要因を明らかにする」と説明します。
「デザイン思考を活用する」と書く場合も、「利用者への観察とインタビューを通じてニーズを把握し、試作と評価を繰り返す」と書く方が、研究内容が伝わります。
なぜ慶應SDMなのかを説明する
研究計画書では、研究テーマだけでなく、なぜその研究を慶應SDMで行いたいのかを示すことも重要です。
教員の専門分野、研究プロジェクト、授業、ラボなどを確認し、自分の研究に必要な環境との接点を整理しましょう。
ただし、施設や授業名を並べるだけでは十分ではありません。どの知識や研究方法を学び、自分の研究のどの部分へ活かしたいのかを具体的に説明します。
ほかの研究科ではなく、慶應SDMで学ぶ必然性が伝わるようにしましょう。
事前コンタクトと研究計画書を連動させる
慶應SDMでは、修士課程・後期博士課程ともに、出願にあたって教員との事前コンタクトが必要です。
事前コンタクトで伝える研究テーマと、出願時の研究計画書に大きな違いが生じないよう注意しましょう。
申込みフォームでは希望教員を1名選択しますが、送信内容は専任教員全員に共有されます。複数の教員に連絡する場合も、中心となる研究目的は一貫させる必要があります。
また、教員からの返信には時間がかかる場合があります。研究計画が完全に完成してからではなく、背景、目的、方法の骨子が固まった段階で、余裕を持って準備を進めましょう。
まとめ
慶應SDMの研究計画書では、自分の専門性を捨てる必要はありません。大切なのは、その専門性を複雑な社会課題の解決へどのようにつなげるかを示すことです。
研究対象を取り巻く人、組織、技術、制度などを整理し、利用者の視点や社会実装の条件まで含めて研究を組み立てましょう。
社会課題、解決に用いる技術や手法、実装や運用の仕組みを結びつけることで、単一分野の研究に閉じない計画になります。
SDMに関する言葉を並べるだけではなく、誰を対象に、何を調べ、どのように検証し、どのような価値を生み出すのかを具体的に説明することが重要です。
教員研究や事前コンタクトとも連動させながら、自分の専門性と慶應SDMの学際的な視点が自然につながる研究計画書を完成させましょう。
注意事項:本記事は、慶應SDMの研究計画書を作成する際の一般的な考え方を含めて作成しています。研究計画書の名称、指定様式、文字数、記載項目、事前コンタクトの方法、教員の研究内容、出願手続きなどは変更される場合があります。受験準備を進める際は、必ず慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科の公式サイト、最新の入学試験要項、各種提出書類および「オンライン出願書類提出についての補足説明」をご確認ください。
志樹舎
では、大学院入試の各種対策に特化した専門性の高いサポートを行っています。
院試受験でお困りの方は、
無料相談
にお気軽にお申し込みください。
※この記事は専門家による監修のもと執筆されています。
この記事を監修した人
小杉 樹彦(こすぎ・たつひこ)
志樹舎 創業者/博士(学術)
慶應義塾大学院修了後、2015年1月に院試専門オンライン予備校「志樹舎」を設立。
代表講師として10〜60代まで延べ5,000人以上の受験生を指導。
早慶・国公立をはじめとする難関大学院で合格率9割超の実績を持つ。
現在は大学院入試対策の専門家として、テレビ・新聞・雑誌など幅広いメディアで活動中。
ロングセラー『減点されない!勝論文』(エール出版社)ほか著書・論文多数。


