
KMD受験は専門性1つだけでNG?多分野横断が必須な理由
院試専門オンライン予備校「志樹舎」が運営する「慶應義塾大学大学院の院試対策ガイド」をご覧いただき、ありがとうございます。今回のテーマは「KMD受験は専門性1つだけでNG?多分野横断が必須な理由」です。
慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科、通称KMDの受験を検討し始めた方の中には、「自分は工学しか勉強してこなかった」「デザインが専門なので、技術やビジネスには詳しくない」と不安を感じている方もいるのではないでしょうか。
KMDは、テクノロジーやデザイン、ビジネスなど、さまざまな分野を横断しながら新しい価値を生み出すことを重視しています。そのため、「複数分野の専門知識がなければ受験できないのでは?」と思ってしまうかもしれません。
しかし、大切なのは最初から何でもできることではありません。自分がこれまで培ってきた専門性を出発点として、異なる分野の知識や人とどのようにつながっていくのかという姿勢が重要です。今回は、KMDを目指すうえで知っておきたい「多分野横断」の考え方を整理していきます。
ひとつの専門性を持っていることは弱みではない
まず押さえておきたいのは、ひとつの分野を専門的に学んできたこと自体がKMD受験で不利になるわけではないということです。むしろ、これまで積み重ねてきた知識や経験は、KMDで新しいことに挑戦する際の大切な土台になります。
たとえば、エンジニアであればプログラミングやシステム開発の経験、デザイナーであれば人の体験や表現を考える力、ビジネスパーソンであれば事業や顧客について考えてきた経験があります。研究を続けてきた方であれば、文献を読み、問いを立て、分析してきた経験も大きな強みです。
問題になるのは専門性を持っていることではなく、「自分の専門分野だけで物事を考えれば十分」と考えてしまうことです。自分の専門性を大切にしながらも、必要に応じて異なる考え方や方法を取り入れる柔軟性が求められます。
なぜKMDでは多分野横断が重要なのか
現在の社会が抱える課題の多くは、ひとつの専門分野だけでは解決することが難しくなっています。
たとえば、高齢化社会の課題を考えてみましょう。高齢者を支援する新しいサービスをつくる場合、テクノロジーだけを考えればよいわけではありません。高齢者が無理なく利用できるデザイン、医療や介護に関する知識、サービスを継続するためのビジネスの視点、さらに個人情報や制度についての理解なども必要になります。
教育分野でも同じです。新しい学習サービスを開発するのであれば、AIなどの技術だけでなく、教育学や心理学、利用者の体験、学校現場の実情など、複数の視点を組み合わせる必要があります。
このように、現実の社会課題は複数の要素が複雑に関係しています。だからこそ、自分の専門性だけで解決しようとするのではなく、必要な知識や専門家とつながりながら、新しい解決方法を考えていく姿勢が重要になります。
多分野横断は「何でもできる」という意味ではない
KMDを目指す方が誤解しやすいのが、「多分野横断=一人ですべての専門分野を身につけること」と考えてしまうことです。
たとえば、プログラミング、デザイン、経営、マーケティング、心理学、社会学をすべて専門家レベルまで勉強してから受験しなければならないわけではありません。むしろ現実には、一人ですべてを専門的に扱うことは難しいでしょう。
重要なのは、自分が何を得意としていて、何が不足しているのかを理解することです。そして、自分に足りない視点については、その分野に詳しい人から学び、一緒に取り組む姿勢を持つことが大切です。
「私は技術を担当できるので、利用者の体験についてはデザインを専門とする人と一緒に考えたい」という発想も、多分野横断のひとつの形です。異なる専門性を持つ人との協働によって、自分一人では生み出せないものをつくるという考え方を持っておきましょう。
出願書類では専門性と他分野の接点を考える
KMDの出願準備では、「さまざまな分野に興味があります」と書くだけでは、自分の特徴が伝わりにくくなってしまいます。大切なのは、自分のこれまでの経験と、これから取り入れたい分野を具体的につなげることです。
たとえば、ソフトウェアエンジニアとして働いてきた方が教育分野に関心を持っているのであれば、「これまで培った技術を教育に活かしたい」だけで終わらせず、もう一歩掘り下げて考えてみます。
なぜ教育に関心を持ったのか、現在の教育にどのような課題を感じているのか、その課題を考えるためになぜ教育学や心理学などの視点が必要なのか。そして、自分の技術的な専門性とそれらを組み合わせることで何を実現したいのか。この流れが整理されていれば、多分野横断への考え方も伝わりやすくなります。
異なる専門性を持つ人との協働経験も振り返ろう
これまでに、専門や立場の異なる人と一緒に何かに取り組んだ経験がある方は、その経験も振り返ってみましょう。
社会人であれば、エンジニアと営業、企画とデザイン、経営層と現場など、異なる役割の人と協力してプロジェクトを進めた経験があるかもしれません。学生であれば、ゼミ、研究活動、サークル、学園祭、インターンシップなどにも、異なる考えを持つ人と協働した経験が隠れている可能性があります。
その際、「チームで活動しました」だけで終わらせず、自分とは違う意見に直面したときにどう対応したのか、相手の専門性から何を学んだのか、自分はチームの中でどのような役割を果たしたのかまで整理しておくことが大切です。
専門性がまだ明確ではない人はどうすればよい?
一方で、「自分には専門と呼べるものがない」と感じている方もいるでしょう。特に大学生の場合、まだひとつの分野を長期間研究した経験がないことも珍しくありません。
その場合は、無理に専門性をつくるのではなく、これまで継続して関心を持ってきたテーマや活動を振り返ってみてください。授業、卒業研究、アルバイト、インターンシップ、趣味などを並べてみると、一見ばらばらに見える経験の中に共通する関心が見つかることがあります。
大切なのは「何でも興味があります」と広げすぎることではありません。自分が特に問題意識を持っていることを見つけ、それを解決するために複数の分野を学ぶ必要がある、という流れをつくることがポイントです。
KMD受験に向けて整理しておきたいこと
KMDの志望理由や研究内容を考える前に、まず「自分の現在地」を整理してみましょう。
自分がこれまで最も時間をかけてきた分野は何か。その経験から身につけた力は何か。そして、その専門性だけでは解決できないと感じている課題は何か。その課題を考えるためには、どのような分野の知識や人との協働が必要なのか。ここまで整理すると、なぜKMDという多様な専門性が集まる環境で学びたいのかが見えやすくなります。
「KMDは多分野横断だから、いろいろ勉強したい」という順番ではなく、「自分が実現したいことがあり、そのためには複数分野を横断する必要がある」という順番で考えることが重要です。
まとめ
KMDでは、ひとつの専門性を持つことが否定されているわけではありません。むしろ、自分がこれまで培ってきた専門性は、新しい価値を生み出すための重要な出発点になります。
そのうえで求められるのが、自分の専門性だけに閉じず、異なる分野の知識や考え方を取り入れ、必要であれば異なる専門性を持つ人と協働していく姿勢です。
KMDの受験を考えている方は、「自分は何の専門家なのか」だけではなく、「その専門性を誰と、どの分野と組み合わせれば、自分が実現したいことにつながるのか」というところまで考えてみてください。自分の専門性、多分野との接点、KMDで学ぶ理由が一本につながれば、志望理由書や面接でも自分らしい志望動機を伝えやすくなるでしょう。
※本記事は執筆時点の情報をもとに作成しています。KMDの教育内容、入試制度、出願資格、募集要項、選考方法などは年度によって変更される場合があります。受験を検討される際は、必ず慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科の公式サイトおよび最新の募集要項をご確認ください。
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※この記事は専門家による監修のもと執筆されています。
この記事を監修した人
小杉 樹彦(こすぎ・たつひこ)
志樹舎 創業者/博士(学術)
慶應義塾大学院修了後、2015年1月に院試専門オンライン予備校「志樹舎」を設立。
代表講師として10〜60代まで延べ5,000人以上の受験生を指導。
早慶・国公立をはじめとする難関大学院で合格率9割超の実績を持つ。
現在は大学院入試対策の専門家として、テレビ・新聞・雑誌など幅広いメディアで活動中。
ロングセラー『減点されない!勝論文』(エール出版社)ほか著書・論文多数。


