AI翻訳や英文校正は使っていい?KMD出願で考えたいAI技術との付き合い方

院試専門オンライン予備校「志樹舎」が運営する「慶應義塾大学大学院の院試対策ガイド」をご覧いただき、ありがとうございます。今回のテーマは「AI翻訳や英文校正は使っていい?KMD出願で考えたいAI技術との付き合い方」です。

慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科、通称KMDの出願書類を英語で作成する際、多くの受験生が一度は考えるのがAI翻訳や英文校正ツールの利用です。

英語に不安がある方にとって、翻訳や文法チェックをしてくれるAIは非常に便利です。一方で、「AIを使ったら不正になるのではないか」「どこまで使ってよいのか分からない」と不安を感じる方もいるでしょう。

ここで大切なのは、AIを使うか使わないかという二択で考えるのではなく、「何のために、どの範囲で使うのか」を自分自身で管理することです。今回は、KMDのStatement of PurposeやCreative Challengeなどを準備する際に意識したい、AI技術との付き合い方について考えていきます。


まず最新の募集要項を確認する

AI翻訳や生成AIの利用について考える前に、最初に行いたいのが、自分が受験する年度の募集要項や出願時の注意事項を確認することです。

生成AIをめぐるルールは、大学や研究科によって異なります。また、技術の普及に合わせて、新たなルールが設けられたり、従来の運用が変更されたりする可能性もあります。

そのため、「去年は特に書いていなかったから今年も大丈夫だろう」「他大学では認められているからKMDでも問題ないだろう」と自己判断するのは避けましょう。

募集要項などにAI利用に関する具体的な指示がある場合には、その内容を最優先にしてください。禁止されている利用方法があるのであれば、当然それに従う必要があります。


AIに文章を考えてもらうことと、文章を整えることは違う

AI利用を考える際に分けて考えたいのが、「内容をつくること」と「表現を整えること」です。

たとえば、自分で研究テーマや志望理由を考えたうえで、その日本語を英語へ翻訳するためにツールを利用することと、「KMDに合格できそうな志望理由を全部考えて」とAIに依頼し、出てきた文章をそのまま提出することでは意味が大きく異なります。

出願書類は、受験生本人がどのような問題意識を持ち、これまで何を経験し、KMDで何を実現したいのかを伝えるためのものです。

文章そのものがきれいでも、その中身が本人の考えではなければ、面接で少し深く質問されたときに説明できなくなる可能性があります。

AIは、自分の思考を代わりにつくってもらうためではなく、自分の考えをより分かりやすく伝えるための補助として捉えるほうがよいでしょう。


AI翻訳を使うなら、まず日本語を完成させる

英語に苦手意識がある方の場合、最初から英語でStatement of Purposeを書くのは難しいことがあります。そのようなときは、まず日本語で内容を整理する方法があります。

なぜKMDを志望するのか、これまでどのような経験をしてきたのか、どのような課題に関心があるのか、KMDで何をしたいのか。この内容を日本語で明確にしてから、英語への翻訳を検討します。

AI翻訳を利用する場合でも、翻訳された英文をそのまま提出するのではなく、必ず内容を読み返してください。

特に研究テーマや専門分野に関する文章では、日本語では自然でも、英語になると意味が変わってしまうことがあります。また、日本語特有の曖昧な表現が、英語では必要以上に強い断定になってしまう場合もあります。

翻訳後に「この英文は本当に自分が言いたかったことになっているか」を一文ずつ確認する作業が必要です。


英文校正AIは「正解」ではなく提案として見る

英文校正ツールも、KMDの出願書類を準備する際には便利な道具です。文法ミスやスペルミス、不自然な語順などを見つける助けになります。

ただし、AIが提案した修正が必ず正しいとは限りません。文章として自然になっても、自分が伝えたい意味とは少し違う内容へ変更されることがあります。

特に研究目的や社会的意義などの重要な部分では、単語がひとつ変わるだけでもニュアンスが変化します。

AIから修正案が出たら、「なぜこの表現に直されたのか」「自分の意図と一致しているか」を確認し、採用するかどうかを自分で判断しましょう。

AIに直してもらうのではなく、AIから候補を出してもらい、最後は自分で選ぶという使い方が重要です。


難しい英語に変換しすぎない

生成AIを使って英文を整えていると、必要以上に難しい単語や複雑な表現へ書き換えられることがあります。

見た目は格好良くなりますが、その英文を本人が理解できていなければ意味がありません。

KMDでは出願書類だけでなく、面接でも自分の考えについて説明する必要があります。SoPの中では非常に高度な表現を使っているのに、面接ではその内容を簡単な英語でも説明できないとなると、文章と本人のコミュニケーションに大きな差が生まれてしまいます。

提出する英文については、「この内容について聞かれたら、自分の言葉で説明できるか」という視点で確認してみましょう。

ネイティブのような文章にすることより、自分自身が理解し、責任を持って説明できる英文にすることが大切です。


Creative ChallengeではAIに発想を任せすぎない

特に注意したいのがCreative Challengeです。

Creative Challengeでは、自分なりの問題意識や着眼点、そこから生まれたアイデアを表現していくことが重要になります。その最初の発想そのものをAIに任せてしまうと、提出物としては整っていても、自分らしさが弱くなってしまう可能性があります。

まずは、自分が普段どのようなことに違和感を持っているのか、仕事や生活の中で何を変えたいと思っているのかを、自分自身で考えてみましょう。

そのうえで、「このアイデアには別の視点がないか」「読み手に伝わりにくい部分はどこか」といった壁打ち相手としてAIを利用する方法であれば、自分の思考を深めるための補助として使いやすくなります。


AIがつくった内容には事実誤認が含まれることもある

AIを利用する際には、内容の正確性にも注意が必要です。

たとえば、「この先生はこの研究をしています」「KMDにはこのようなプロジェクトがあります」とAIが回答したとしても、その情報が現在も正しいとは限りません。

教員の所属、研究テーマ、リアルプロジェクト、カリキュラム、入試制度など、KMDに関する具体的な情報を出願書類に書く場合は、必ず公式サイトなどの一次情報を確認してください。

存在しないプロジェクトや、すでに終了した取り組みを志望理由に書いてしまえば、「KMDについて十分に調べていない」と受け取られる可能性もあります。

AIは情報収集のきっかけとして使い、重要な事実は自分自身で確認する習慣をつけておきましょう。


AIを使った後に必ず自分の言葉へ戻す

AIを上手に活用するうえで、おすすめしたいのが、最後に一度「自分の言葉へ戻す」作業です。

英文が完成したら、日本語でも英語でも構わないので、「この段落で自分は何を言っているのか」を説明してみてください。

うまく説明できない段落があれば、その部分はAIに任せすぎている可能性があります。文章としてはきれいでも、自分の考えとして消化できていないということです。

反対に、すべての段落について自分の言葉で説明でき、「なぜこの表現にしたのか」まで理解できていれば、面接準備にもつながります。

出願書類の作成と面接対策は別々ではありません。自分で考えて文章にした内容だからこそ、本番で質問されても自信を持って答えられるようになります。


人による確認も組み合わせる

AIは文法や表現を確認するうえでは便利ですが、「この志望理由は本当にKMDである必要性が伝わっているか」「研究テーマに説得力があるか」といった内容面については、人の視点も役立ちます。

特に大学院入試では、文章が上手かどうかだけではなく、研究計画や志望理由の論理性、一貫性、大学院との適合性まで含めて考える必要があります。

志樹舎でも、単純な英文校正だけではなく、研究テーマ、Statement of Purpose、Creative Challenge、面接までをつなげながら、出願書類全体の内容を確認していくことが重要だと考えています。

AIと人のどちらか一方に任せるのではなく、それぞれの得意な部分を使い分けることもひとつの方法です。


まとめ

AI翻訳や英文校正、生成AIは、KMDの出願書類を作成する際にも便利なツールになり得ます。ただし、AIに文章やアイデアを丸ごと任せてしまうのではなく、自分自身の考えを整理し、伝えるための補助として利用することが大切です。

まず自分で問題意識や志望理由を考え、その内容を英語で伝える際に翻訳や校正を活用する。そして、AIが提案した文章を必ず自分で確認し、自分の言葉として説明できる状態まで仕上げる。この流れを意識してみましょう。

また、KMDに関する事実や入試制度についてAIの回答だけを信用するのではなく、必ず公式情報を確認してください。

便利な技術を避ける必要はありませんが、最終的に提出する文章について責任を持つのは受験生本人です。AIに考えてもらうのではなく、AIを使いながら自分の思考をより深く、分かりやすく伝えるという姿勢を大切にしましょう。


※本記事は執筆時点の情報をもとに作成しています。KMDにおける生成AI、AI翻訳、英文校正ツールなどの利用に関する規定や、出願書類作成上の注意事項は今後新設・変更される可能性があります。出願の際は自己判断せず、必ず慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科の公式サイトおよび最新の募集要項をご確認ください。

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※この記事は専門家による監修のもと執筆されています。

この記事を監修した人

小杉樹彦(志樹舎 創業者)

小杉 樹彦(こすぎ・たつひこ)
志樹舎 創業者/博士(学術)
慶應義塾大学院修了後、2015年1月に院試専門オンライン予備校「志樹舎」を設立。 代表講師として10〜60代まで延べ5,000人以上の受験生を指導。 早慶・国公立をはじめとする難関大学院で合格率9割超の実績を持つ。 現在は大学院入試対策の専門家として、テレビ・新聞・雑誌など幅広いメディアで活動中。 ロングセラー『減点されない!勝論文』(エール出版社)ほか著書・論文多数。