【教員紹介】標葉隆馬准教授|科学技術と社会の関係を問い直すSTS研究者

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今回のテーマは「【教員紹介】標葉隆馬准教授|科学技術と社会の関係を問い直すSTS研究者」です。

KMD(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科)教員紹介シリーズの第4回では、科学技術社会論(STS)を専門とする標葉隆馬准教授を紹介します。

KMDというと、VRやデジタルファブリケーション、メディアアートなど、先端的なテクノロジーを扱う研究を思い浮かべる方も多いかもしれません。しかし、新しい技術を社会に広げるためには、その技術が社会にどのような影響を与えるのか、誰にどのような利益や負担が生じるのかという視点も欠かせません。標葉准教授は、まさに科学技術と社会の間に生まれる問題を研究している教員です。


標葉隆馬准教授はどのような研究者なのか

標葉隆馬准教授の専門分野は、科学社会学、科学技術社会論(STS)、科学技術政策論です。科学や技術を、それ自体の性能や発展だけから見るのではなく、社会との関係の中で捉える研究に取り組んでいます。

具体的には、先端生命科学と社会との関係、ELSIと呼ばれる倫理的・法的・社会的課題、責任ある研究・イノベーション(RRI)、科学技術をめぐるメディア言論の分析、パブリックエンゲージメントなどを研究対象としてきました。また、専門社会調査士の資格も有しており、社会調査の方法にも通じています。

これまで紹介してきた南澤孝太教授や山岡潤一准教授の研究が、新しい技術や表現を生み出す方向に重点を置いているとすれば、標葉准教授の研究は、その技術が社会の中に入ったときに何が起きるのかを考えるものだと捉えると分かりやすいでしょう。

KMDで研究を行う際には、新しいものを生み出すことだけでなく、それが社会にどのような影響を与えるのかまで考えることが求められます。その意味で、標葉准教授の専門分野は、KMDにおける社会実装を考える上でも重要な役割を持っています。


科学技術が社会にもたらす利益と課題を考える

標葉准教授の研究では、科学技術が社会にもたらす便益だけでなく、そこから生じる可能性のある問題にも目を向けます。たとえば、先端生命科学が発展すれば、新しい治療や研究が可能になる一方で、倫理的な問題や社会的な合意形成が必要になる場合があります。

こうした問題を考える際に重要になるのがELSIという考え方です。技術的に実現できるかどうかだけではなく、倫理的にどのような問題があるのか、法律や制度は対応できるのか、社会はその技術をどのように受け止めるのかまで検討します。

また、標葉准教授は、東日本大震災をめぐる構造的な課題の分析にも取り組んできました。科学技術に関する問題は、研究者や技術者だけで解決できるものとは限りません。行政、企業、研究機関、メディア、市民など、さまざまな立場の人が関わります。

そのため、科学技術を社会に導入するときには、誰が意思決定に参加するのか、情報がどのように共有されるのか、リスクを誰が負担するのかといった問いも重要になります。標葉准教授の研究は、こうした複雑な関係を社会科学の立場から整理し、より責任ある科学技術のあり方を考えるものです。


責任ある研究・イノベーションとRe:spireプロジェクト

標葉准教授は、慶應義塾大学内の「責任ある研究・イノベーション」センター(KEIO-RRI)のセンター長も務めています。責任ある研究・イノベーションとは、新しい技術や研究成果を生み出す過程で、その社会的な影響や倫理的な問題についてもあらかじめ考えながら研究を進めていく考え方です。

新しい技術は、社会を便利にする可能性を持つ一方で、導入してから初めて問題が明らかになることもあります。そのため、研究開発の段階から社会との関係を考え、必要に応じて市民や関係者との対話を行うことが重要になります。

KMDでは、リアルプロジェクト「Re:spire(見えない未来を可視化する)」にも携わっています。目に見えにくい社会課題や将来のリスクを可視化し、それらに社会がどのように向き合うのかを考える取り組みです。

KMDのリアルプロジェクトというと、プロダクトやサービスを作る活動を想像する方もいるかもしれません。しかし、Re:spireのように、社会の中にある問題を分析し、それを分かりやすい形で提示することもメディアデザインのひとつのあり方です。こうしたプロジェクトからも、KMDが技術開発だけに重点を置く研究科ではないことが分かります。


学会活動や政策の現場にも関わる研究

標葉准教授は、大学内での研究だけではなく、科学技術社会論学会の理事を務めるなど、学会活動にも関わってきました。また、環境省が実施する「子どもの健康と環境に関する全国調査」の倫理問題検討委員会委員を務めるなど、科学技術と政策が接する場にも関わっています。

さらに、韓国科学技術院(KAIST)の大学院で客員教授を務めるなど、国外の研究環境とも接点を持っています。科学技術と社会の関係は国によって制度や文化が異なるため、国際的な視点から比較することも重要な研究につながります。

こうした経歴を見ると、科学技術社会論は机上で議論するだけの研究ではなく、実際の政策や研究機関、社会との対話に結びつく分野であることが分かります。社会調査によって人々の意識を把握したり、制度やメディアの議論を分析したりしながら、科学技術と社会との関係を具体的に捉えていきます。


受験生は研究の社会的意義とリスクを考えてみる

標葉准教授の研究に関心を持つ受験生は、自分が扱いたい技術やテーマについて、その社会的な意味まで考えてみることが大切です。

たとえば、新しいAIサービスを研究したい場合、技術として何ができるのかだけでなく、それによって誰が利益を得るのか、どのような人が不利益を受ける可能性があるのか、個人情報や公平性の問題はないのかといった視点を持つことができます。VRや身体拡張技術の場合にも、安全性や利用者への影響、社会的な受容などを考える余地があります。

こうした視点は、出願書類や研究計画を考える際にも役立ちます。研究の魅力や可能性だけを説明するのではなく、その研究にどのようなリスクや限界があるのかまで考えることで、研究テーマをより多面的に捉えることができます。

面接でも、「その研究にはどのような社会的な意味がありますか」「実際に導入した場合、問題は起こりませんか」といった方向から質問される可能性を考えて準備しておくとよいでしょう。標葉准教授の研究を知ることは、自分の研究を社会との関係から見直すきっかけにもなります。


まとめ

標葉隆馬准教授は、科学社会学、科学技術社会論、科学技術政策論を専門とし、先端生命科学やELSI、責任ある研究・イノベーションなどを通して、科学技術と社会との関係を研究しています。

また、Re:spireプロジェクトやKEIO-RRIでの活動、学会や政策に関わる取り組みからも、科学技術について考える際に、技術そのものだけではなく社会的な影響まで視野に入れていることが分かります。

KMDで新しいテクノロジーやサービスに関する研究を考えている方にとっても、標葉准教授の研究視点は参考になります。自分の研究が社会にどのような価値を生み出すのかだけでなく、どのような課題やリスクが生じる可能性があるのかまで考えてみてください。研究テーマを社会との関係から捉え直すことは、研究計画や志望理由、面接の準備を深めることにもつながります。


※本記事は記事作成時点の情報をもとに作成しています。入試制度、出願資格、提出書類、カリキュラム、教員の所属・役職・研究内容などは変更される場合があります。受験を検討している方は、必ず慶應義塾大学および慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科の公式サイト、最新の入学試験要項をご確認ください。

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※この記事は専門家による監修のもと執筆されています。

この記事を監修した人

小杉樹彦(志樹舎 創業者)

小杉 樹彦(こすぎ・たつひこ)
志樹舎 創業者/博士(学術)
慶應義塾大学院修了後、2015年1月に院試専門オンライン予備校「志樹舎」を設立。 代表講師として10〜60代まで延べ5,000人以上の受験生を指導。 早慶・国公立をはじめとする難関大学院で合格率9割超の実績を持つ。 現在は大学院入試対策の専門家として、テレビ・新聞・雑誌など幅広いメディアで活動中。 ロングセラー『減点されない!勝論文』(エール出版社)ほか著書・論文多数。