【教員紹介】Giulia Barbareschi特任准教授|理学療法士からアクセシビリティ研究者への転身

院試専門オンライン予備校「志樹舎」が運営する「慶應義塾大学大学院の院試対策ガイド」をご覧いただき、ありがとうございます。

今回のテーマは「【教員紹介】Giulia Barbareschi特任准教授|理学療法士からアクセシビリティ研究者への転身」です。

KMD(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科)教員紹介シリーズの特任教員編第1回では、理学療法士としての臨床経験を土台に、障害とテクノロジー、アクセシビリティ、支援技術などを研究するGiulia Barbareschi特任准教授を紹介します。

Barbareschi特任准教授の特徴は、医療現場で人と直接向き合った経験を持ちながら、その後研究者へ転身し、テクノロジーを通じて障害当事者の社会参加や生活の質を高める方法を探究してきた点です。医療・福祉とテクノロジーを組み合わせた研究や、インクルーシブデザイン、国際開発に関心のある受験生にとって、研究テーマを考える上で参考になる教員のひとりです。


Giulia Barbareschi特任准教授はどのような研究者なのか

Barbareschi特任准教授は、イタリアのジェノバ大学で理学療法を学び、学士号を取得しました。その後、イタリアとアイルランドの両国で理学療法士として臨床現場に携わり、実際に患者と向き合う経験を積んできました。

2014年にはアイルランドのゴールウェイ国立大学で医療機器科学に関する専門資格を取得し、その後ロンドン大学(UCL)へ移りました。2018年には、障害とアシスティブテクノロジー、つまり支援技術に関する研究で博士号を取得しています。

最初から研究者を目指して一直線に進んだのではなく、臨床現場で働いた経験を持った上で、現場で感じた課題を研究へと発展させている点が特徴です。医療や福祉の分野で働いてきた社会人受験生にとっても、自分の実務経験を大学院での研究につなげる一例として参考になります。


障害とテクノロジーの関係を当事者の視点から考える

Barbareschi特任准教授の研究は、テクノロジー、障害、デザインが交わる領域にあります。障害学や国際開発の考え方を取り入れながら、障害当事者や社会的に周縁化された人々が、テクノロジーによってより主体的に生活できる方法を探っています。

ここで重要なのは、単に新しい機器を開発するだけではないことです。どれほど高性能な技術であっても、実際に使う人の生活環境や文化、経済状況に合わなければ役立たない場合があります。

Barbareschi特任准教授は、低・中所得国に暮らす障害者を対象に、携帯電話から義肢のソケットまで、さまざまなテクノロジーが生活にどのような影響を与えるのかを研究してきました。他大学、民間機関、NGOなどとも連携しながら、技術の利用可能性や実際の効果を評価しています。

また、ケニアを拠点としてAT2030プロジェクトの研究部門を主導した経験もあります。研究室の中だけで完結するのではなく、実際の社会や地域でテクノロジーがどのように使われるのかを見る姿勢が、研究の大きな特徴です。


Cybernetic Being Projectで社会参加の可能性を広げる

Barbareschi特任准教授は、2021年にJSPS(日本学術振興会)のフェローシップを得てKMDに着任し、南澤孝太教授が率いるJSTムーンショット型研究開発事業「Cybernetic Being Project」に参画しています。

このプロジェクトでは、身体や場所などの制約を越えて、人がより自由に活動できる社会の実現を目指しています。その中で、障害を持つ人がアバターロボットなどを遠隔操作し、離れた場所から仕事や社会活動に参加するといった取り組みとも関わっています。

たとえば、東京都心で展開されている分身ロボットカフェのように、自宅や病院などからロボットを操作し、接客などの仕事に参加する仕組みがあります。このような技術は、外出が難しい人にとって新しい働き方や社会参加の選択肢になる可能性があります。

ただし、技術を導入するだけで社会参加が実現するわけではありません。使いやすさ、利用者の心理的な負担、職場側の受け入れ方、周囲とのコミュニケーションなど、多くの条件を考える必要があります。Barbareschi特任准教授の研究では、障害当事者の視点を重視しながら、テクノロジーが実際に人の生活へどのような変化をもたらすのかを考えています。


臨床・国際開発・HCIを横断する研究

Barbareschi特任准教授の研究の特徴は、理学療法、障害学、国際開発、ヒューマンコンピュータインタラクションなど、複数の領域を横断していることです。

理学療法士としての経験からは、身体機能や日常生活に関する具体的な理解を得ています。一方、国際開発の現場では、地域によって利用できる資源や医療環境、経済状況が大きく異なることを踏まえる必要があります。さらにHCIの視点を加えることで、人とテクノロジーの関係を研究として検証することができます。

また、ヒューマンコンピュータインタラクション、障害学、支援技術、リハビリテーションなどの分野で研究成果を発表し、インクルーシブなデザインに関する書籍の執筆にも携わっています。

一つの専門分野だけで社会課題を捉えるのではなく、実際の利用者、技術、社会環境を合わせて考える姿勢は、KMDが重視する多分野横断の研究ともつながっています。


受験生は「誰のための技術か」を具体化する

Barbareschi特任准教授の研究に関心がある受験生は、最初に「誰のどのような困りごとを解決したいのか」を具体的に考えることが重要です。

たとえば、障害者向けの新しいデバイスを研究したい場合でも、高性能な機器を作ること自体を目的にするのではなく、利用する人がどのような生活上の課題を抱えているのか、その技術によって何が変わるのかまで考える必要があります。

また、日本国内で利用できる技術が、そのまま低・中所得国でも利用できるとは限りません。価格、電力や通信環境、修理のしやすさ、文化的な背景などによって必要な条件は変わります。国際開発とテクノロジーを組み合わせて研究する場合は、こうした現地の状況を見る視点も欠かせません。

研究計画や志望理由では、「障害者支援に興味がある」と述べるだけでなく、対象となる人、具体的な課題、利用する技術、評価方法まで整理すると研究の方向性が伝わりやすくなります。医療・福祉分野での実務経験がある方は、自分が現場で感じてきた違和感や改善したい点を研究上の問いに変えていくこともできるでしょう。


まとめ

Giulia Barbareschi特任准教授は、理学療法士としての臨床経験を経て、障害とアシスティブテクノロジーの研究へ進んだ研究者です。低・中所得国における支援技術の評価や国際開発に携わり、現在はKMDでCybernetic Being Projectにも参画しています。

障害当事者がテクノロジーを利用して何ができるようになるのかだけでなく、その技術が実際の生活や社会参加にどのような意味を持つのかまで考えている点が特徴です。

KMDへの進学を検討している方で、障害とテクノロジー、インクルーシブデザイン、支援技術、医療・福祉、国際開発などに関心がある場合は、自分が向き合いたい具体的な人や課題から研究テーマを考えてみてください。現場で得た経験を研究につなげたい社会人にとっても、Barbareschi特任准教授のキャリアは参考になるでしょう。


※本記事は記事作成時点の情報をもとに作成しています。入試制度、出願資格、提出書類、カリキュラム、教員の所属・役職・研究内容などは変更される場合があります。受験を検討している方は、必ず慶應義塾大学および慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科の公式サイト、最新の入学試験要項をご確認ください。

志樹舎 では、大学院入試の各種対策に特化した専門性の高いサポートを行っています。
院試受験でお困りの方は、 無料相談 にお気軽にお申し込みください。


※この記事は専門家による監修のもと執筆されています。

この記事を監修した人

小杉樹彦(志樹舎 創業者)

小杉 樹彦(こすぎ・たつひこ)
志樹舎 創業者/博士(学術)
慶應義塾大学院修了後、2015年1月に院試専門オンライン予備校「志樹舎」を設立。 代表講師として10〜60代まで延べ5,000人以上の受験生を指導。 早慶・国公立をはじめとする難関大学院で合格率9割超の実績を持つ。 現在は大学院入試対策の専門家として、テレビ・新聞・雑誌など幅広いメディアで活動中。 ロングセラー『減点されない!勝論文』(エール出版社)ほか著書・論文多数。