
慶應SDMの新妻雅弘准教授とは ― 抽象数学からAI、身体知まで。異色の研究テーマで社会システムの本質を探る
院試専門オンライン予備校「志樹舎」が運営する「慶應義塾大学大学院の院試対策ガイド」をご覧いただき、ありがとうございます。
今回のテーマは「慶應SDMの新妻雅弘准教授とは ― 抽象数学からAI、身体知まで。異色の研究テーマで社会システムの本質を探る」です。
慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科、いわゆる慶應SDMには、特定の専門分野だけに収まらない研究を行う教員が所属しています。その中でも新妻雅弘准教授は、抽象数学、人工知能、音楽、身体知など、一見すると異なる分野を横断して研究している点が特徴です。今回は、新妻准教授の経歴や研究の考え方を整理しながら、学際的なテーマを研究したい受験生が、研究計画や事前コンタクトで何を意識するとよいのかを考えていきます。
数学から音楽、AI、身体知まで広がる研究分野

新妻雅弘准教授は、立命館大学助教、ドイツのバッハ資料財団研究員、青森大学講師などを経て現職に就いています。経歴だけを見ても、一つの学問領域を一直線に進んできた研究者とは異なる歩みをしてきたことが分かります。
研究分野には、抽象数学、人工知能一般、バッハの筆跡と作品の変遷、身体知などが挙げられます。数学とAIであれば関係を想像しやすいかもしれませんが、そこに音楽史料や身体知まで加わると、なぜ同じ研究者がこれらを扱うのか疑問に感じる方もいるでしょう。
しかし、新妻准教授の研究を理解するうえでは、それぞれの分野を別々に見るのではなく、異なる現象の奥にある共通した原理を探ろうとしている点に注目する必要があります。専門分野の境界を越えながら、一つの考え方から複数の現象を捉え直していく姿勢が特徴です。
独自の視点で生命や社会の本質を考える

新妻准教授は、多様な研究テーマを「凝集の方向性」という独自の視点から捉えています。従来の自然科学では十分に捉えにくかった部分を考えるための手がかりとして、この視点を用いながら生命の本質を探究しています。
さらに、脳を中心とする作用と身体的な作用との間に生じる不調和にも着目し、それがさまざまな社会問題とどのように関係するのかを考えています。その先には、持続可能な社会システムとはどのようなものかという、より大きな問いがあります。
数学のように厳密な論理を扱う領域と、音楽史料や身体知のように人間の感覚や文化と深く関わる領域を、同じ視点から見ようとしていることも特徴です。何か一つの社会問題に対してすぐに解決策を提示するというより、そもそも人間や生命、社会がどのような原理で成り立っているのかを問い直す研究と捉えると理解しやすいでしょう。
複数の興味を一つの研究テーマにつなげる
新妻准教授の研究に関心を持つ受験生の中には、自分の興味が複数の分野にまたがっていて、一つの研究テーマにまとめにくいと感じている方もいるかもしれません。例えば、AIにも興味がある一方で、人間の身体感覚や芸術、哲学的な問いにも関心があるといった場合です。
こうしたとき、興味のある分野を無理に一つだけ選ぶのではなく、なぜ自分はそれぞれに関心を持っているのかを考えてみることが重要です。表面的には異なるテーマでも、その奥に共通する問題意識が見つかることがあります。
例えば、AIと身体知の両方に関心があるのであれば、人間が身体を通じて得ている知識をAIはどこまで扱えるのかという問いにつながるかもしれません。数学と音楽の双方に関心がある場合も、構造や秩序、変化の捉え方といった共通点を探すことができます。こうした整理は、研究計画でテーマを具体化するときにも役立ちます。
抽象的な問いほど具体的な経験から出発する
新妻准教授の研究は、生命や社会の本質といった抽象度の高い問いを含みます。そのため、事前コンタクトで自分の関心を伝える際には、抽象的な言葉だけで説明しないことが重要です。
例えば、社会システムの本質を研究したいと伝えるだけでは、何を問題だと感じているのかが分かりません。仕事、学習、創作活動、スポーツなど、自分が実際に経験した出来事の中で、どのような疑問を持つようになったのかを整理すると、問題意識が伝わりやすくなります。
身体知に関心を持ったのであれば、言葉では説明できない技能を身につけた経験や、人から教わる中で感じた違和感などが出発点になる可能性があります。AIへの関心も、単に新しい技術だからという理由ではなく、人間の判断や知識との違いについて疑問を持った具体的な場面まで掘り下げると、研究テーマにつながりやすくなります。
研究計画では自分なりの問いを明確にする

新妻准教授の研究に関心がある場合、研究計画では既存の学問分野に自分のテーマを無理に当てはめるよりも、自分が何を明らかにしたいのかを丁寧に整理することが大切です。ただし、独自性を出そうとして、根拠のない考えだけを並べるのは避けたいところです。
まずは自分の問題意識を具体化し、それに関係する先行研究や考え方を調べます。そのうえで、既存の説明ではどこが十分ではないと感じるのか、自分はどのような視点から考えたいのかを整理すると、研究の方向性が見えやすくなります。
事前コンタクトの前には、新妻准教授の公開されている研究内容にも目を通し、自分の関心とどこで接点があるのかを確認しておきましょう。単に研究分野が珍しいから志望するのではなく、自分自身の問いと新妻准教授の研究姿勢がどのようにつながるのかを説明できることが重要です。この整理は、志望理由や面接で研究テーマを説明する際にも役立ちます。
まとめ
新妻雅弘准教授は、抽象数学、人工知能、バッハの筆跡や作品の変遷、身体知など、多様な領域を横断しながら研究を行っています。その根底には、異なる現象の中にある共通した原理を探り、生命や社会システムの本質を捉え直そうとする姿勢があります。
既存の学問分野だけでは自分の問題意識を表しきれない方や、複数の関心を一つの研究テーマへつなげたい方にとって、新妻准教授の研究は考え方の参考になるでしょう。一方で、テーマの抽象度が高いからこそ、研究計画や事前コンタクトでは、自分がなぜその問いを持ったのかを具体的な経験から説明することが大切です。興味の幅広さそのものを強みにするのではなく、その奥にある共通した問いを見つけることから研究テーマを考えてみましょう。
※本記事は記事作成時点の情報をもとに作成しています。入試制度、出願資格、提出書類、カリキュラム、教員情報などは変更される場合があります。受験を検討している方は、必ず慶應義塾大学および対象研究科の公式サイト、最新の入学試験要項をご確認ください。
志樹舎
では、大学院入試の各種対策に特化した専門性の高いサポートを行っています。
院試受験でお困りの方は、
無料相談
にお気軽にお申し込みください。
※この記事は専門家による監修のもと執筆されています。
この記事を監修した人
小杉 樹彦(こすぎ・たつひこ)
志樹舎 創業者/博士(学術)
慶應義塾大学院修了後、2015年1月に院試専門オンライン予備校「志樹舎」を設立。
代表講師として10〜60代まで延べ5,000人以上の受験生を指導。
早慶・国公立をはじめとする難関大学院で合格率9割超の実績を持つ。
現在は大学院入試対策の専門家として、テレビ・新聞・雑誌など幅広いメディアで活動中。
ロングセラー『減点されない!勝論文』(エール出版社)ほか著書・論文多数。


