社会課題をシステム思考で解く|慶應SDM小論文のための思考トレーニング法

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今回のテーマは「社会課題をシステム思考で解く|慶應SDM小論文のための思考トレーニング法」です。


慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科、通称慶應SDMの入試対策において、多くの受験生が苦戦するのが小論文です。

小論文というと、時事問題の知識を増やし、序論・本論・結論の形で文章を書けばよいと考える方もいるかもしれません。しかし、慶應SDMを目指すのであれば、文章の型を覚えるだけでは十分ではありません。

複雑な社会課題について、原因を一つに決めつけず、関係する人や組織、制度、技術などを整理しながら考える力が必要です。また、課題を分析するだけでなく、当事者にとって価値のある解決策を考え、実現方法まで検討することも求められます。

この記事では、慶應SDMの小論文対策として、社会課題を構造的に捉えるための思考トレーニング法を解説します。


システム思考とは問題を全体から捉えること

システム思考とは、目の前で起きている現象だけを見るのではなく、その背景にある複数の要素と、それぞれの関係を捉える考え方です。

例えば、地方でバスの利用者が減っているという問題があったとします。表面的には、利用者が少ないことが原因に見えます。

しかし、人口減少、本数の削減、自家用車への依存、運転手不足、自治体の財政、病院や商業施設の立地など、さまざまな要因が関係しています。

さらに、利用者が減ることで本数が減り、利便性が下がることでさらに利用者が減るという悪循環が生まれている可能性もあります。

小論文では、単に「利用者を増やすべきだ」と書くのではなく、なぜ問題が繰り返されるのかという構造まで考えることが重要です。


デザイン思考では当事者の本当の目的を考える

社会課題を考える際には、制度や数字だけでなく、実際に困っている人の立場を想像することも大切です。

先ほどの地域交通を例にすると、高齢者が求めているのは、必ずしもバスに乗ることではありません。病院へ通えること、買い物へ行けること、地域の人とつながり続けられることが本当の目的かもしれません。

このように、表面的な要望の奥にある目的や困りごとを捉え直すことで、解決策の選択肢が広がります。

バス路線の維持だけではなく、予約型交通、乗り合いタクシー、移動販売、オンライン診療などを組み合わせる方法も考えられるでしょう。

小論文では、既存の仕組みを前提にするのではなく、利用者にとって本当に必要な価値は何かを考えてみてください。


最初に関係者をすべて書き出す

社会課題を構造的に考えるための第一歩は、その問題に関係する人や組織を書き出すことです。

地域交通であれば、高齢者、通勤や通学をする住民、交通事業者、運転手、自治体、病院、商業施設、家族などが考えられます。

それぞれが求めるものは同じではありません。利用者は便利さを求めますが、事業者は採算性を重視し、自治体は限られた予算の中で地域全体への効果を考えます。

このような立場の違いを整理すると、なぜ簡単に解決できないのかが見えてきます。

小論文の構成を考える際には、問題に関係する人、得をする人、負担を負う人、意思決定をする人を分けて書き出してみましょう。


原因を一つに決めつけない

小論文でありがちな失敗が、複雑な問題の原因を一つに絞ってしまうことです。

例えば、少子化の原因を若者の価値観だけに求めたり、企業のDXが進まない原因を社員の意識だけに求めたりすると、分析が浅くなります。

実際には、所得、雇用、住居、子育て支援、職場文化、技術への理解、経営判断など、複数の要因が影響しています。

一つの原因を断定するのではなく、直接的な原因、その背景にある原因、原因同士の関係を整理しましょう。

なぜという問いを繰り返し、問題が発生する仕組みまで掘り下げることが、システム思考の基本です。


悪循環と好循環を考える

問題の構造を整理する際には、要素同士がどのように影響し合っているかを考えます。

例えば、地方の人口が減ると税収が減り、公共サービスが縮小し、暮らしにくくなることで、さらに人口が流出するという悪循環が考えられます。

反対に、地域での仕事が増え、若者が定着し、地域の消費が増えることで、さらに事業が生まれるという好循環もあります。

小論文では、問題の原因を並べるだけではなく、どの要素がほかの要素を強めたり弱めたりしているのかを説明すると、分析に深みが出ます。


解決策は仕組みを変える視点で考える

課題の原因を分析した後は、どこへ働きかければ全体を変えられるかを考えます。

単に予算を増やす、注意を呼びかける、人員を増やすといった対策は、一時的な効果にとどまる可能性があります。

地域交通であれば、バス会社だけに負担を求めるのではなく、病院、商業施設、自治体、地域住民が費用や運営を分担する仕組みを考える方法があります。

また、定額制、予約制、ほかの地域サービスとの連携などによって、利用しやすさと採算性の両方を改善できるかもしれません。

問題の一部分を修正するのではなく、関係者の行動が変わる仕組みを提案できると、SDMらしい答案に近づきます。


日常のニュースを使ったトレーニング法

システム思考は、過去問を解くだけで身につくものではありません。日頃からニュースや身近な問題を材料に考える習慣をつけましょう。

一つのニュースを選び、最初に「何が問題なのか」を一文でまとめます。次に、関係者、原因、利害の対立、悪循環を書き出します。

その後、当事者の本当のニーズを考え、どこへ働きかければ問題の構造を変えられるかを検討します。

最後に、解決策を実施した場合に生じる新たな問題や副作用も考えてみましょう。

AI、少子高齢化、観光、公教育、医療、環境、働き方など、さまざまなテーマで繰り返すことで、初見の問題にも対応しやすくなります。


文章を書く前に図やメモで整理する

小論文では、問題文を読んですぐに本文を書き始めないことが大切です。

最初に余白やメモ用紙を使い、関係者、原因、影響、解決策を簡単に書き出しましょう。

矢印を使って要素同士の関係を示すと、悪循環や対立構造を見つけやすくなります。

その上で、自分の結論を決め、問題の構造、提案、実現上の課題という順番で構成を作ります。

考えを整理してから書き始めることで、途中で主張が変わったり、同じ内容を繰り返したりすることを防げます。


提案の実現可能性まで考える

新しい解決策を提案する場合は、良いアイデアを出すだけでは不十分です。

誰が実施するのか、費用を誰が負担するのか、反対する人はいないか、継続して運用できるかといった点まで考えましょう。

例えば、AIを使った教育サービスを導入する場合、学習効果だけでなく、教員の負担、個人情報、利用環境の差、費用なども検討する必要があります。

提案の弱点や限界にも触れ、その問題をどのように改善するかを示すことで、現実的な答案になります。


公式の過去問で実践する

慶應SDMの公式サイトでは、小論文試験の過去問題が案内されています。

まずは実際の問題を確認し、関係者、原因、構造、解決策という視点で分析してみましょう。

最初は時間を計らずに考え、慣れてきたら本番と同じ時間内で構成作成から執筆、見直しまで行います。

書き終えた後は、設問に答えているか、原因を一つに決めつけていないか、多様な立場を考慮しているか、提案が実現可能かを確認してください。


小論文と出願書類を並行して準備する

小論文対策に集中するあまり、研究計画書や事前コンタクトを後回しにしないよう注意が必要です。

慶應SDMでは、修士課程・後期博士課程ともに、出願前の教員との事前コンタクトが必要です。

申込みフォームでは希望教員を1名選択しますが、送信内容は専任教員全員に共有されます。研究テーマや志望理由に一貫性を持たせましょう。

また、教員からの返信には時間がかかる場合があります。各期の出願締切日から2次選考の合格発表まではフォームが閉鎖されるため、余裕を持った準備が必要です。

小論文、研究計画書、志望理由、事前コンタクトは別々の対策ではありません。自分が社会課題をどのように捉えるかという共通の思考を、それぞれの場面で表現するものです。


まとめ

慶應SDMの小論文対策では、文章の型を覚える前に、社会課題を構造的に捉える力を鍛えることが重要です。

問題に関係する人や組織を洗い出し、それぞれの利害や制約、原因同士の関係、悪循環を整理しましょう。

その上で、当事者の本当のニーズを捉え、問題の一部分ではなく、仕組み全体を変える解決策を考えます。

提案する際は、実施主体、費用、運用、反対意見、副作用まで検討することが大切です。

日頃のニュースを使ったトレーニングと公式過去問の演習を繰り返し、初めて見る課題でも落ち着いて構成を作れる力を身につけましょう。


注意事項:本記事は、慶應SDMの小論文に向けた一般的な思考トレーニング方法を含めて作成しています。小論文の出題形式、試験時間、過去問題の公開範囲、選考方法、事前コンタクト、提出書類、事前審査などは変更される場合があります。受験準備を進める際は、必ず慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科の公式サイト、最新の入学試験要項および公式に公開されている小論文試験過去問題をご確認ください。

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※この記事は専門家による監修のもと執筆されています。

この記事を監修した人

小杉樹彦(志樹舎 創業者)

小杉 樹彦(こすぎ・たつひこ)
志樹舎 創業者/博士(学術)
慶應義塾大学院修了後、2015年1月に院試専門オンライン予備校「志樹舎」を設立。 代表講師として10〜60代まで延べ5,000人以上の受験生を指導。 早慶・国公立をはじめとする難関大学院で合格率9割超の実績を持つ。 現在は大学院入試対策の専門家として、テレビ・新聞・雑誌など幅広いメディアで活動中。 ロングセラー『減点されない!勝論文』(エール出版社)ほか著書・論文多数。