KMDの「EBAプログラム」「Joint Project Based Global Learning」とは?多国籍な仲間と学ぶ異分野共創

院試専門オンライン予備校「志樹舎」が運営する「慶應義塾大学大学院の院試対策ガイド」をご覧いただき、ありがとうございます。今回のテーマは「KMDの『EBAプログラム』『Joint Project Based Global Learning』とは?多国籍な仲間と学ぶ異分野共創」です。

KMD(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科)には、リアルプロジェクトや通常の授業だけでなく、海外の大学や学生と関わりながら学べる国際的なプログラムも用意されています。

その中でも注目したいのが、「EBA(Evidence Based Approach)プログラム」と「Joint Project Based Global Learning」です。どちらも、単に海外の大学について学ぶだけではなく、異なる国や文化、専門性を持つ人たちと一緒に実際の課題へ取り組む点に特徴があります。KMD公式サイトでも、両プログラムは現在カリキュラムの一部として紹介されています。

今回は、それぞれの特徴と、KMDを目指す受験生がどのような視点でこれらのプログラムを見ればよいのかを解説します。


EBAプログラムとは?

EBAは「Evidence Based Approach」の略称です。KMD公式サイトによると、慶應義塾大学がアジア太平洋地域の大学・高等教育機関とともに取り組んでいるプロジェクトで、データを活用し、エビデンスに基づいて問題を解決できる人材の育成を目指しています。

特徴的なのは、単に「データ分析の方法を学ぶ」だけではない点です。

実際の社会課題について現場からデータを集め、状況を分析し、その結果をどのように社会へ伝えるのか、さらに現実の問題解決へどうつなげるのかまでを考えます。

つまり、調査してレポートを書いて終わるのではなく、「調査結果を使って、現実をどう動かすか」というところまで視野に入れたプログラムと考えることができます。


10日間のフィールドワークも特徴

EBAプログラムの特徴としてKMD公式サイトで紹介されているのが、フィールドワークです。

参加者は実際に現地へ足を運び、各国から集まった学生たちと10日間にわたって寝食をともにしながら、現場の問題に向き合い、協力して問題解決に取り組むとされています。

教室の中で海外の社会問題について議論することと、実際に現地へ行って生活しながら課題を見ることでは、得られる情報が大きく異なります。

現場に行って初めて、「事前に考えていた原因とは違った」「統計だけでは見えなかった事情があった」と気づくこともあるでしょう。

こうした経験を通して、数字だけを見るのではなく、その背景にいる人や社会まで含めて課題を考える力を養える点が、EBAプログラムの魅力のひとつです。


「エビデンス」と「ストーリーテリング」を両方学ぶ

EBAという名称から、数字や統計を重視するプログラムだと思う方もいるかもしれません。

しかしKMD公式サイトでは、現場のデータ収集や分析に加えて、「社会に訴えるストーリーテリング」や、実際に社会へアプローチする手法についても学ぶことが紹介されています。

どれだけ正確なデータを持っていても、その意味を相手に理解してもらえなければ、社会を動かすことは難しいものです。

「根拠を集める力」と「その意味を人へ伝える力」の両方を扱う点は、KMDが重視する社会実装とも相性のよい考え方だと言えるでしょう。


Joint Project Based Global Learningとは?

もうひとつの国際プログラムが「Joint Project Based Global Learning」です。

KMD公式サイトでは、KMDの修士課程学生と、スタンフォード大学Graduate School of EducationのLearning, Design and Technology Programに所属する修士課程学生が、短期の共同プロジェクトに取り組むプログラムとして紹介されています。

現在の公式案内では、スタンフォード大学で2週間、KMDで2週間を過ごしながら共同プロジェクトに取り組む構成が示されています。

単純な短期留学ではなく、異なる大学院で学ぶ学生同士がひとつのプロジェクトを進める点が大きな特徴です。


東京とシリコンバレー、二つの環境で学ぶ

Joint Project Based Global Learningでは、スタンフォードとKMDという異なる教育環境を経験します。

KMD公式サイトでは、それぞれの大学院が持つ教育方法に触れるだけでなく、シリコンバレーと東京の文化、生活、ビジネススタイルを体験することも、国際的な感覚やイノベーションへの志向を養う第一歩として位置づけられています。

同じプロジェクトでも、国や文化が変われば問題の捉え方や議論の進め方が変わることがあります。

自分にとって当然だった価値観が、海外の学生にとってはまったく当然ではないこともあるでしょう。こうした違いを実際の共同作業の中で経験できることは、単なる語学留学とは異なる魅力です。


短期間だからこそ求められる協働力

共同プロジェクトでは、限られた期間の中で、初めて会った相手と関係を築き、意見をまとめ、成果につなげる必要があります。

自分の考えを英語で説明する力はもちろん重要ですが、それだけではありません。相手の意見を理解すること、役割を分担すること、意見が食い違ったときに調整することなど、チームとして動く力が必要になります。

KMDでは教育方針の中でも、多様な文化や専門性を持つ人々と協力して価値を生み出す「Radical Collaboration」が掲げられています。こうした国際プログラムは、その考え方を国境を越えた環境で実践する機会としても捉えることができます。


EBAとJoint Project Based Global Learningの違い

二つのプログラムには共通点がありますが、学び方には違いがあります。

EBAでは、アジア太平洋地域の社会課題を題材に、現場のデータやエビデンスをもとに問題を分析し、社会へのアプローチを考えることが中心です。一方、Joint Project Based Global Learningでは、KMDとスタンフォードの学生が共同でプロジェクトを進め、異なる教育環境や文化の中でデザインやイノベーションを経験します。

どちらが優れているというものではありません。

社会調査や政策、地域課題などに関心がある方であればEBAとの接点を見つけやすいでしょう。学習デザイン、教育テクノロジー、デザイン思考、国際的な共同制作などに関心がある方であれば、Joint Project Based Global Learningに魅力を感じるかもしれません。


英語力だけでは足りない

国際プログラムというと、「英語が話せれば参加できる」と考えがちですが、実際にはそれだけではありません。

異なる文化や専門性を持つ人と一緒に活動するためには、自分の考えを主張するだけでなく、相手の考えを聞き、自分の前提を疑う柔軟性が必要です。

また、現地で想定外の問題が起きたときに、「計画と違うから進められない」と止まるのではなく、その場で考えて行動する力も求められます。

KMDを目指す段階から、英語試験の点数だけではなく、「英語を使って他者と何かをつくる」練習を意識しておくとよいでしょう。


社会人受験生はスケジュールも確認する

社会人としてKMDへの進学を考えている場合、こうした国際プログラムへ参加したいのであれば、時間の確保も重要になります。

EBAではフィールドワークがあり、Joint Project Based Global Learningでは公式サイト上でスタンフォード2週間、KMD2週間という構成が示されています。

仕事を続けながら参加する場合には、勤務先の休暇制度や繁忙期との兼ね合いなども考えておく必要があります。

入学してから「参加したかったが仕事を休めない」と気づくのではなく、興味があるプログラムについては早い段階から実施時期や参加条件を確認しておきましょう。


志望理由では「参加したい」だけで終わらせない

出願書類や面接で国際プログラムについて触れる場合、「スタンフォードに行ってみたい」「海外の学生と交流したい」という理由だけでは、KMDを志望する理由としては弱くなります。

重要なのは、自分の研究テーマとプログラムの学びをどう結びつけるかです。

たとえば、アジア地域の教育格差を研究したいのであれば、EBAのフィールドワークを通じて現場からデータを得る経験に関心がある、と説明できます。

教育テクノロジーについて研究したいのであれば、KMDとスタンフォードの学生が協働する環境の中で、異なる文化圏における学習体験について考えたいというつなげ方もあります。

プログラム名を知っていることではなく、自分がその機会をどう活用したいのかを説明できることが大切です。


国際プログラムはKMDの「多様性」を体験する機会

KMDには、もともと異なる国籍や専門性を持つ学生が集まっています。さらにEBAやJoint Project Based Global Learningのようなプログラムを活用することで、その多様性を日本国内だけでなく、アジア太平洋地域や米国へと広げて経験できます。KMDの修了生も、こうしたグローバルプログラムを通じた多様性と協働の経験が、その後の国際的な仕事に役立ったと振り返っています。

自分と同じ価値観の人とだけ活動するのではなく、背景の異なる人と一緒に答えのない課題に取り組む。こうした経験は、KMDが目指すメディア・イノベータとしての力を育てるうえでも意味のある機会と言えるでしょう。


まとめ

EBAプログラムとJoint Project Based Global Learningは、どちらもKMDで学べる国際的かつ実践的なプログラムです。

EBAでは、アジア太平洋地域の現場へ入り、データやエビデンスをもとに社会課題を分析し、問題解決へつなげる経験ができます。Joint Project Based Global Learningでは、KMDとスタンフォード大学の学生が、東京とスタンフォードの二つの環境で共同プロジェクトに取り組みます。

どちらにも共通しているのは、海外へ行くこと自体が目的ではないという点です。異なる文化、専門性、価値観を持つ人と一緒に現実の課題へ向き合い、その中で自分自身の考え方を広げていくことが重要です。

KMDを目指す方は、「国際的なプログラムがあるから魅力的」と考えるだけでなく、自分の研究テーマにどのプログラムがつながるのか、そこでどのような経験を得たいのかまで考えてみてください。KMDでの2年間を具体的に想像するうえでも、国際プログラムを知ることは大きなヒントになります。


※本記事は執筆時点の情報をもとに作成しています。EBAプログラム、Joint Project Based Global Learningの実施内容、期間、連携大学・機関、参加対象、選考方法、単位認定、費用などは年度によって変更される場合があります。また、毎年度すべてのプログラムへの参加機会が保証されるものではありません。受験・参加を検討される際は、必ず慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科の公式サイトおよび最新の案内をご確認ください。

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※この記事は専門家による監修のもと執筆されています。

この記事を監修した人

小杉樹彦(志樹舎 創業者)

小杉 樹彦(こすぎ・たつひこ)
志樹舎 創業者/博士(学術)
慶應義塾大学院修了後、2015年1月に院試専門オンライン予備校「志樹舎」を設立。 代表講師として10〜60代まで延べ5,000人以上の受験生を指導。 早慶・国公立をはじめとする難関大学院で合格率9割超の実績を持つ。 現在は大学院入試対策の専門家として、テレビ・新聞・雑誌など幅広いメディアで活動中。 ロングセラー『減点されない!勝論文』(エール出版社)ほか著書・論文多数。