【教員紹介】篠宮紗和子特任助教|自閉症・発達障害概念のグローバル化を社会学から読み解く

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今回のテーマは「【教員紹介】篠宮紗和子特任助教|自閉症・発達障害概念のグローバル化を社会学から読み解く」です。

KMD(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科)教員紹介シリーズの第15回では、医療社会学や科学技術社会論(STS)の視点から、自閉症や発達障害という概念が社会の中でどのように形成され、広がってきたのかを研究する篠宮紗和子特任助教を紹介します。

KMDではテクノロジーやデザインに関する研究が目立ちますが、新しい技術を社会に取り入れるためには、人々が物事をどのように理解し、どのような制度や価値観の中で生活しているのかを考えることも重要です。篠宮特任助教の研究は、医療や福祉に関わる概念を当たり前のものとして受け入れるのではなく、その背景にある歴史や社会を丁寧に読み解く点に特徴があります。


篠宮紗和子特任助教はどのような研究者なのか

篠宮紗和子特任助教の専門分野は、自閉症・発達障害の社会学、保健医療社会学、科学技術社会論、質的調査などです。

特徴的なのは、最初から研究者として歩んできたのではなく、会社員としてのキャリアを経験した後に研究の道へ進んだことです。その後、英国エクセター大学の博士課程で学び、社会学の博士号を取得しています。

大学院進学を検討している社会人にとっては、この経歴自体も参考になります。大学卒業後すぐに研究者になるのではなく、実務経験を積んだ後に、自分が抱いた疑問や問題意識を学術研究へつなげる道もあります。

特に社会学では、仕事や日常生活の中で感じた違和感が研究の出発点になることがあります。篠宮特任助教の研究も、医学や福祉の分野で一般的に使われている言葉や分類を、そのまま受け入れるのではなく、「なぜこの考え方が広がったのか」と問い直す姿勢が基盤になっています。


自閉症・発達障害という概念はどのように広がったのか

篠宮特任助教の研究の中心にあるのが、自閉症や発達障害という概念が、どのように国や文化を超えて広がってきたのかという問いです。

私たちは現在、自閉症や発達障害という言葉を医療や教育、福祉の現場で日常的に目にします。しかし、こうした分類が最初から世界共通の形で存在していたわけではありません。医学的な知識、行政制度、教育制度、専門家の議論などが関わりながら、現在使われている考え方が形成されてきました。

篠宮特任助教は、自閉症という精神医学上の概念が行政上のカテゴリーを通じてどのように世界的に広がったのかを、日本を事例として分析した研究を国際学術誌Social Science & Medicineに発表しています。

また、学習障害が「中枢神経系の機能障害」として理解されるようになった過程について、生物医学的な考え方と社会的な考え方の関係から分析する研究にも取り組んできました。さらに、学校教育の中で「特別な支援を必要とする児童生徒」として発達障害が位置づけられてきた背景についても研究しています。

こうした研究から分かるのは、診断名やカテゴリーにも歴史があるということです。現在当然と思われている分類が、いつ、誰によって、どのような目的で使われるようになったのかを考えることが、社会学的な研究につながります。


ニューロダイバーシティを国や文化の違いから考える

篠宮特任助教は、ニューロダイバーシティ運動についても研究しています。ニューロダイバーシティは、脳や神経の違いを単に治療すべき問題として捉えるのではなく、人間の多様性のひとつとして考えようとする視点です。

ただし、英語圏で生まれた考え方が、そのまま他の国で同じ意味を持つとは限りません。篠宮特任助教は、日本やロシアなど異なる社会的・文化的背景を持つ地域で、ニューロダイバーシティという考え方がどのように受け止められ、翻訳されているのかを国際共同研究の中で検討しています。

社会運動が生まれた歴史、医療制度、教育制度、家族の役割などが異なれば、同じ言葉でも受け止め方は変わります。世界的に広がっている概念だからといって、それを各国へそのまま当てはめるのではなく、地域ごとの文脈を確認する必要があります。

この視点は、国際的な技術や制度について研究したい受験生にも参考になります。海外で成功した考え方を日本へ導入する場合にも、「なぜそこで成立したのか」「日本では同じ条件があるのか」を考える必要があるからです。


Re:spireプロジェクトとELSIへの取り組み

篠宮特任助教は、標葉隆馬准教授が中心となって進めるリアルプロジェクト「Re:spire」にも参画しています。

Re:spireでは、先端的な科学技術を社会に導入する際に生じる倫理的・法的・社会的課題であるELSIや、責任ある研究・イノベーションであるRRIなどに関わる研究・実践が行われています。篠宮特任助教は、医療社会学やSTSの専門性を生かしながら、こうした領域と関わっています。

記事案では、子どものメンタルヘルスに関するELSIも研究テーマのひとつとして挙げられています。新しい医療技術やデジタル技術を導入する際には、便利になるかどうかだけでなく、誰が利益を受け、誰に負担が生じるのかを考えることが必要です。

特に医療や福祉では、ある技術や分類が人の生き方や自己認識にまで影響する可能性があります。そのため、社会実装を考える際には技術的な評価だけでなく、当事者の経験や社会的背景まで含めて検討する必要があります。


質的調査から人々の経験を丁寧に捉える

篠宮特任助教が専門とする研究方法のひとつに、質的調査があります。質的調査では、統計上の数値だけでは捉えにくい、人々の経験や語り、制度が作られてきた背景などを丁寧に分析します。

たとえば、新しい支援制度について利用者の満足度を数字で測ることはできます。しかし、その制度を利用する人がどのような気持ちを抱き、どのような場面で困難を感じているのかは、数字だけでは十分に分からない場合があります。

KMDでテクノロジーの社会実装を研究する場合にも、利用者の行動データだけを見るのではなく、その人がなぜその行動を取ったのかを理解する視点が役立ちます。インタビューや文献、歴史資料などから人々の経験を読み解く方法は、技術系の研究とは異なる角度から研究対象を深く理解する手段になります。

受験生も研究計画を考える際には、何を調べたいのかだけでなく、どのような方法ならその問いに答えられるのかまで考えておくことが重要です。


まとめ

篠宮紗和子特任助教は、自閉症や発達障害という医学的・社会的な概念がどのように形成され、国や文化を越えて広がってきたのかを、医療社会学や科学技術社会論の視点から研究する研究者です。

ニューロダイバーシティの国際的な広がりや、発達障害をめぐる行政・教育上のカテゴリー、子どものメンタルヘルスに関するELSIなど、その研究は医療や福祉だけでなく、制度、文化、テクノロジーともつながっています。

KMDへの進学を検討している方で、医療・福祉とテクノロジーの関係、障害をめぐる社会的な考え方、ELSI、質的調査などに関心がある場合は、自分が当たり前だと思っている概念を一度問い直してみるとよいでしょう。「その言葉はいつから使われているのか」「誰にとってどのような意味を持つのか」という問いから、研究テーマが具体化することもあります。こうした問題意識を整理することは、研究計画や志望理由、面接の準備にもつながります。


※本記事は記事作成時点の情報をもとに作成しています。入試制度、出願資格、提出書類、カリキュラム、教員の所属・役職・研究内容などは変更される場合があります。受験を検討している方は、必ず慶應義塾大学および慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科の公式サイト、最新の入学試験要項をご確認ください。

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※この記事は専門家による監修のもと執筆されています。

この記事を監修した人

小杉樹彦(志樹舎 創業者)

小杉 樹彦(こすぎ・たつひこ)
志樹舎 創業者/博士(学術)
慶應義塾大学院修了後、2015年1月に院試専門オンライン予備校「志樹舎」を設立。 代表講師として10〜60代まで延べ5,000人以上の受験生を指導。 早慶・国公立をはじめとする難関大学院で合格率9割超の実績を持つ。 現在は大学院入試対策の専門家として、テレビ・新聞・雑誌など幅広いメディアで活動中。 ロングセラー『減点されない!勝論文』(エール出版社)ほか著書・論文多数。