KMDリアルプロジェクトの選び方|Embodied Media・SAMCARAなど研究テーマの見極め方

院試専門オンライン予備校「志樹舎」が運営する「慶應義塾大学大学院の院試対策ガイド」をご覧いただき、ありがとうございます。今回のテーマは「KMDリアルプロジェクトの選び方|Embodied Media・SAMCARAなど研究テーマの見極め方」です。

前回の記事では、KMD(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科)の学びの中核となる「リアルプロジェクト」について、その基本的な考え方を解説しました。

今回はもう一歩踏み込み、実際にどのようなリアルプロジェクトがあるのか、その一例を紹介しながら、自分の研究テーマや問題意識とどのように結びつけて考えればよいのかを整理していきます。

KMDの受験を考えている方にとって、リアルプロジェクトを調べることは、単に「面白そうな研究室を探す」という意味ではありません。自分がKMDで何を学び、どのような人たちと研究したいのかを具体化する重要な作業です。


リアルプロジェクトは年度によって変化する

まず押さえておきたいのは、リアルプロジェクトのラインナップが毎年まったく同じとは限らないことです。

教員の研究テーマや社会状況、新たな技術の登場などによって、新しいプロジェクトが立ち上がることもあれば、活動内容が変化することもあります。

そのため、数年前のKMD紹介記事や受験体験記で見つけたプロジェクトを、そのまま現在も存在するものとして志望理由に書くのは注意が必要です。

出願前には必ずKMD公式サイトで、現在どのようなリアルプロジェクトが公開されているのか、担当教員や研究テーマがどうなっているのかを確認しましょう。


Embodied Media:身体をメディアとして捉える

KMDのリアルプロジェクトを調べる中で目にすることが多いのが、「Embodied Media」です。

Embodied Mediaでは、人間の身体そのものをメディアとして捉え、身体を通した経験をどのように記録し、共有し、拡張できるのかといったテーマを扱っています。

たとえば、触覚をデジタル技術によって伝えるハプティクス、離れた場所に存在する人やロボットを通じて別の場所を体験するテレイグジスタンスなど、身体感覚とテクノロジーを結びつける研究領域と接点があります。

こうした分野は、単に新しい機械をつくることが目的ではありません。「人間にとって体験とは何か」「身体を通じて情報を共有すると何が変わるのか」といった、人間そのものへの問いにもつながっています。

VR、XR、ロボティクス、触覚技術、身体拡張、人間と機械の関係などに関心がある方は、自分のテーマとの接点を考えてみるとよいでしょう。


SAMCARA:デザインそのものを問い直す

もうひとつ特徴的なプロジェクトとして挙げられるのが「SAMCARA」です。

SAMCARAでは、デザインを単なる見た目や製品の形として考えるのではなく、社会や文化、テクノロジーなどとの関係の中から捉え直していきます。

私たちは普段、服装、製品、言葉、空間など、さまざまなものを通じて無意識のうちに情報を受け取っています。SAMCARAのような研究領域では、「デザインは人に何を伝えているのか」「文化や社会によって意味はどう変化するのか」といった問いも重要になります。

そのため、プロダクトデザインだけではなく、ファッション、コミュニケーション、文化、言語、材料など、複数の分野を横断して考えたい方にとって興味深い領域です。

KMDらしい多分野横断を考えるうえでも、ひとつの専門分野では説明できない研究テーマの例として参考になります。


KMDには幅広いテーマのプロジェクトがある

リアルプロジェクトは、身体性メディアやデザインだけに限定されているわけではありません。

KMDでは、テクノロジー、エンターテインメント、教育、コミュニケーション、地域、社会課題、ビジネスなど、さまざまな方向から研究や実践が行われています。

そのため、「自分はエンジニアではないからKMDには合わない」「デザイン経験がないからリアルプロジェクトに参加できない」と考える必要はありません。

むしろ、自分がこれまで何を経験し、どのような社会課題に関心を持っているのかを起点に、「KMDではどの分野と組み合わせることで新しい研究にできるか」を考えることが重要です。


プロジェクト名ではなく「問い」に注目する

リアルプロジェクトを選ぶ際におすすめしたいのが、プロジェクト名だけで判断しないことです。

たとえば「AI」という言葉が入っているプロジェクトだから自分に合う、「教育」という言葉がないから自分とは関係ない、という見方では、重要な接点を見落とす可能性があります。

各プロジェクトが「何を問題だと考えているのか」「どのような未来をつくろうとしているのか」「どのような方法で研究しているのか」を確認しましょう。

表面的なテーマは違っていても、その根底にある問いが自分の問題意識と近いことがあります。

たとえば、高齢者支援を研究したい方が、直接「高齢者」という名前の入ったプロジェクトだけを見る必要はありません。身体性、コミュニケーション、地域、インタラクションなどの研究から、自分のテーマに活用できる視点が見つかる可能性があります。


自分の「強み」をどう持ち込めるか考える

プロジェクト選びでは、「自分が何を学べるか」だけでなく、「自分は何を持ち込めるか」という視点も持っておきましょう。

たとえばエンジニアであれば、プロトタイプ制作やシステム開発の経験を活かせるかもしれません。営業経験のある社会人なら、利用者へのヒアリングや外部関係者との調整が強みになる可能性があります。

デザイン経験があれば、体験の可視化やプロトタイプ制作に貢献できますし、教育や医療など特定業界の現場経験がある方であれば、その分野ならではの課題をプロジェクトへ持ち込むことができます。

「このプロジェクトに入りたい」だけではなく、「自分が参加したらどのような視点を加えられるだろう」と考えてみると、志望理由も具体的になります。


ひとつに絞り込みすぎないことも大切

出願段階で、参加したいリアルプロジェクトをひとつだけに完全に固定する必要はありません。

前の記事でも触れた通り、KMDでの研究は、入学後の学びや教員・学生との対話を通じて変化する可能性があります。また、リアルプロジェクト自体も年度によって内容が変わることがあります。

そのため、「このプロジェクト以外には興味がありません」という状態よりも、「自分の問題意識はこのプロジェクトと特に親和性があるが、関連する別の領域にも関心がある」と考えておくほうが柔軟です。

ただし、「何でも構いません」では志望理由が弱くなります。第一に関心を持つ領域を持ちながら、その周辺にも複数の可能性を見つけておくことがポイントです。


教員だけでなく現在の活動内容も確認する

リアルプロジェクトを調べる際には、「この先生が有名だから」という理由だけで選ばないようにしましょう。

担当教員の専門分野を確認することは重要ですが、それと同時に、現在そのプロジェクトでどのような研究や活動が行われているのかも見る必要があります。

過去の研究成果、KMD Forumでの展示、プロジェクトの公式ページなどを確認すると、「実際にはどのようなことをしているのか」が見えやすくなります。

自分の研究テーマと似たキーワードがあるかだけではなく、研究方法や価値観にも注目してみましょう。


KMD Forumなどのイベントを活用する

Webサイトだけでは、リアルプロジェクトの雰囲気を完全に理解することは難しいものです。

そこで活用したいのが、KMD Forumをはじめとする公開イベントです。実際の研究成果やプロトタイプを見ることで、文章だけでは分からなかった活動のイメージを持ちやすくなります。

学生や教員と話せる機会がある場合には、「どのような背景を持つ学生が参加しているのか」「プロジェクトではどのように研究テーマを深めているのか」といった点を確認してみるのもよいでしょう。

イベントに参加したこと自体を志望理由にするのではなく、そこで何を知り、自分の研究についてどのような気づきを得たのかを整理しておくことが重要です。


志望理由書ではプロジェクト名を並べすぎない

リアルプロジェクトについて調べると、知っていることをすべて出願書類に書きたくなるかもしれません。

しかし、「Embodied Mediaに興味があります。SAMCARAにも興味があります。ほかのプロジェクトにも興味があります」と名前を並べるだけでは、なぜ興味があるのかが伝わりません。

重要なのは、プロジェクト名ではなく、自分との接点です。

「自分は○○という問題に関心があり、Embodied Mediaで扱われている身体体験の考え方を○○に応用できる可能性を感じている」といった形で、自分の問題意識と結びつけて説明しましょう。

そのほうが、「KMDについて調べた人」ではなく、「KMDの環境を自分の研究にどう活用するか考えている人」という印象につながります。


まとめ

KMDには、Embodied MediaやSAMCARAをはじめ、テクノロジー、デザイン、教育、社会など、幅広いテーマを扱うリアルプロジェクトがあります。

ただし、プロジェクトのラインナップや活動内容は年度によって変化する可能性があります。そのため、過去の記事だけで判断せず、自分が出願する年度の最新情報を確認することが重要です。

プロジェクトを選ぶ際には、名称やキーワードだけを見るのではなく、「どのような問いに取り組んでいるのか」「どのような方法を使っているのか」「自分の経験や問題意識をどのように持ち込めるのか」という視点で比較してみましょう。

また、ひとつのプロジェクトだけに固執せず、自分の研究テーマと接点を持つ複数の領域を見つけておくことも大切です。

リアルプロジェクトを調べることは、単なる研究室選びではありません。自分がKMDで何をしたいのかを具体化する作業です。複数のプロジェクトを比較しながら、自分自身の問題意識や強みを改めて整理してみてください。


※本記事は執筆時点の情報をもとに作成しています。KMDのリアルプロジェクトの名称、研究テーマ、担当教員、活動内容、募集状況などは年度によって変更される場合があります。Embodied MediaやSAMCARAについても、最新の活動内容は必ずご自身でご確認ください。受験を検討される際は、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科の公式サイトおよび最新のカリキュラム・募集要項をご確認ください。

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※この記事は専門家による監修のもと執筆されています。

この記事を監修した人

小杉樹彦(志樹舎 創業者)

小杉 樹彦(こすぎ・たつひこ)
志樹舎 創業者/博士(学術)
慶應義塾大学院修了後、2015年1月に院試専門オンライン予備校「志樹舎」を設立。 代表講師として10〜60代まで延べ5,000人以上の受験生を指導。 早慶・国公立をはじめとする難関大学院で合格率9割超の実績を持つ。 現在は大学院入試対策の専門家として、テレビ・新聞・雑誌など幅広いメディアで活動中。 ロングセラー『減点されない!勝論文』(エール出版社)ほか著書・論文多数。