慶應義塾大学大学院KMDの教員29名から研究分野の広さを解説するガイド

KMDの教員29名から見る研究分野の広さ

目次

院試専門オンライン予備校「志樹舎」が運営する「慶應義塾大学大学院の院試対策ガイド」をご覧いただき、ありがとうございます。今回のテーマは「KMDの教員29名から見る研究分野の広さ」です。

慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(KMD)は、テクノロジー、デザイン、メディア、社会など、複数の領域を横断して研究に取り組む大学院です。

大学院を選ぶ際には、研究科の名称やカリキュラムだけでなく、どのような専門分野を持つ教員が在籍しているのかを確認することが重要です。

特にKMDの場合、教員の専門分野が幅広いため、同じ研究科であっても、研究テーマによって必要な知識や研究方法が大きく異なることがあります。

ご提供いただいたKMD公式サイトの教員情報では、専任教員20名、特任・兼任教員9名、合わせて29名の教員が紹介されています。

その専門分野を見ると、ハプティクスやVR、ウェアラブルコンピューティングなどの技術系から、メディアアート、エンタテインメントデザイン、経営戦略、起業家活動、教育工学、アクセシビリティまで、多様な領域が含まれています。

この記事では、KMDの教員の専門分野を大きく5つの領域に整理し、それぞれの特徴や研究テーマの考え方を解説します。

なお、ここで紹介する分類は、教員の専門分野を理解しやすくするためのものであり、KMDの公式な教員分類を示すものではありません。

KMDの教員構成から見える研究科の特徴

KMDで多様な専門分野を持つ教員と研究テーマを探すイメージ

KMDの教員構成を理解する際に注目したいのは、専門分野の多様性です。

一般的に、大学院では研究科や専攻によって中心となる学問分野が異なります。

例えば、情報工学系の研究科では、コンピュータサイエンスや通信技術などを中心に研究する場合があります。また、経営学系の研究科では、企業経営や組織、マーケティングなどが主な研究対象になります。

一方、KMDでは、情報技術やデザイン、経営、社会課題など、異なる分野に関心を持つ教員の専門性が紹介されています。

そのため、大学院で研究したいテーマが複数の分野にまたがる場合には、関連する教員の専門性を比較しながら研究環境を検討することができます。

ただし、幅広い専門分野の教員が在籍していることと、希望するすべての研究テーマについて指導を受けられることは同じではありません。

実際に研究できる内容や指導体制については、各教員の最新の研究活動を確認する必要があります。

技術・HCI系の専門分野

KMDの教員の専門分野の中で、重要な領域の一つが、情報技術と人間の関わり方を研究する分野です。

特に、ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI)は、人間がコンピュータやデジタル技術とどのように関わるのかを考える研究領域です。

例えば、スマートフォンの操作方法や、VR空間での身体動作、ウェアラブルデバイスによる情報提示などが研究対象になります。

また、単に技術を開発するだけでなく、その技術を利用する人がどのように感じ、どのように行動するのかを検討することも重要です。

KMDには、ハプティクス、VR、人間拡張、空間コンピューティング、デジタルファブリケーション、ウェアラブルコンピューティングなどを専門とする教員が紹介されています。

こうした分野に関心がある方は、技術そのものを研究したいのか、技術によって生まれる体験を研究したいのかを整理すると、研究テーマを考えやすくなります。

南澤孝太教授:ハプティクスと人間拡張

Kouta Minamizawa(南澤孝太)教授は、ハプティクス、VR、人間拡張、身体情報学、システム情報学などを専門分野としています。

ハプティクスとは、触覚や力覚など、人間が身体を通じて感じる情報を扱う技術分野です。

例えば、VR空間で仮想的な物体に触れた感覚を再現する技術や、遠隔地にある物体の感触を利用者へ伝える技術などが関係します。

また、人間拡張は、テクノロジーによって人間の身体的・感覚的な能力や行動の可能性を広げることを目指す研究領域です。

研究テーマとしては、「触覚情報の提示方法は、VR空間での物体認識にどのような影響を与えるのか」「身体感覚を利用した情報提示は、人間の行動をどのように変化させるのか」といった問いが考えられます。

身体性メディアやVR、触覚技術などに関心がある方にとって、参考になる専門分野です。

Mauricio Sousa氏:HCIと空間コンピューティング

Mauricio Sousa氏は、ヒューマンコンピュータインタラクションや空間コンピューティングなどに関連する専門性を持つ教員として紹介されています。

空間コンピューティングは、現実空間や仮想空間の中で、コンピュータが情報を扱い、人間と関わる仕組みを考える技術領域です。

例えば、現実の空間にデジタル情報を重ねて表示する仕組みや、空間内で人がどのように情報を操作するのかといった問題が関係します。

また、遠隔地にいる人と仮想的な空間を共有する技術も、関連する研究テーマとして考えられます。

研究テーマとしては、「空間内に表示する情報の配置は、利用者の理解にどのような影響を与えるのか」「遠隔地の人と空間情報を共有することで、共同作業の体験はどのように変化するのか」といった問いが挙げられます。

VRやXR、空間的なインターフェースなどに関心がある方にとって、参考になる専門分野です。

山岡潤一氏:デジタルファブリケーションとインタラクティブメディア

Junichi Yamaoka(山岡潤一)氏は、ヒューマンコンピュータインタラクション、デジタルファブリケーション、メディアアート、インタラクティブメディアなどを専門分野としています。

デジタルファブリケーションは、コンピュータを利用した設計や加工技術によって、さまざまな形状や機能を持つ物体を制作することに関係します。

例えば、3Dプリンターやデジタル工作機器などを利用して、新しい形状のインターフェースを制作することが考えられます。

また、インタラクティブメディアは、利用者の操作や行動に応じて反応するメディアに関係します。

研究テーマとしては、「物理的な操作感を持つインターフェースは、利用者の操作理解にどのような影響を与えるのか」「身体動作を利用した操作方法は、従来の入力方法と比べてどのような特徴を持つのか」といった問いが考えられます。

ものづくりと情報技術を組み合わせた研究を考えるうえで、参考になる専門分野です。

カイ・クンツェ氏:ウェアラブルコンピューティング

Kai Kunze(カイ・クンツェ)氏は、ウェアラブルコンピューティングなどを専門分野とする教員として紹介されています。

ウェアラブルコンピューティングは、身体に装着して利用するコンピュータやセンサーなどを扱う技術分野です。

例えば、スマートウォッチやスマートグラスなどの機器を利用して、身体の動きや周囲の環境に関する情報を取得することが考えられます。

また、取得した情報を分析し、利用者の行動や状況に応じて情報を提示する仕組みも研究対象になり得ます。

研究テーマとしては、「身体に装着したセンサーから、どのような行動情報を取得できるのか」「ウェアラブルデバイスによる情報提示は、利用者の行動にどのような影響を与えるのか」といった問いが考えられます。

身体情報とAI、HCIなどを組み合わせた研究に関心がある方にとっても、参考になる分野です。

デザイン・メディア表現系の専門分野

KMDのメディアアートやエンタテインメントデザインの研究イメージ

KMDには、情報技術だけでなく、デザインやメディア表現そのものを専門とする教員も紹介されています。

例えば、エンタテインメントデザイン、メディアアート、デジタルシネマ、CG、物語づくりなどが挙げられます。

こうした分野では、技術をどのように利用して新しい表現や体験を生み出すのかが重要になります。

また、作品を制作するだけでなく、その表現が人間の感覚や行動、社会との関係にどのような影響を与えるのかを考えることも研究の方向性になり得ます。

ゲームや映像、音楽、メディアアートなどに関心がある方は、制作そのものを中心に考えたいのか、表現の仕組みや体験の効果を研究したいのかを整理するとよいでしょう。

稲蔭正彦氏:エンタテインメントデザインとメディアアート

稲蔭正彦氏は、エンタテインメントデザイン、メディアアート、デジタルシネマ、CG、物語づくり、未来学などを専門分野とする教員として紹介されています。

エンタテインメントデザインは、ゲームや映像、体験型コンテンツなど、人々が楽しみながら関わるメディアや体験を設計することに関係します。

また、メディアアートは、デジタル技術や新しいメディアを利用した芸術表現などを扱う分野です。

例えば、利用者の動きに応じて変化する映像作品や、空間全体を利用した体験型の表現などが考えられます。

研究テーマとしては、「インタラクティブな演出は、利用者の作品への参加感をどのように変化させるのか」「物語の提示方法によって、利用者の体験はどのように異なるのか」といった問いが考えられます。

コンテンツ制作と学術的な研究を結びつけたい方にとって、参考になる専門分野です。

水口哲也氏:シナスタジア体験とエンタテインメント表現

水口哲也氏は、シナスタジア体験の拡張などに関する創作活動を手がけてきた人物として紹介されています。

シナスタジアは、日本語では共感覚と呼ばれる概念です。

水口氏の活動では、映像や音楽、触覚など、複数の感覚を組み合わせた体験表現が重要な要素となっています。

例えば、音楽と映像の変化を連動させたり、振動によって音楽の体験を身体へ伝えたりする仕組みが考えられます。

こうした研究や創作活動は、ゲームやVR、音楽、体験型コンテンツなどの分野と関係します。

研究テーマとしては、「映像と音楽の同期は、利用者の没入感にどのような影響を与えるのか」「触覚情報を加えることで、音楽体験の印象はどのように変化するのか」といった問いが考えられます。

技術と表現を組み合わせて、新しいエンタテインメント体験を研究したい方にとって参考になります。

経営・起業系の専門分野

KMDの教員の専門分野には、経営戦略や起業家活動、スタートアップ戦略なども含まれています。

大学院でビジネスに関する研究を考える場合、経営学の理論を学ぶだけでなく、技術やデザインをどのように事業へ結びつけるのかという視点も重要になります。

例えば、新しい技術を開発したとしても、それが社会で利用されるためには、顧客の課題や市場環境、事業としての継続可能性などを考える必要があります。

また、スタートアップでは、限られた資源の中で事業を成長させる方法や、組織をどのように運営するのかといった課題も生じます。

KMDで起業や経営に関する研究を考える際には、技術やデザインとの接点を整理することが重要です。

Jungeun Elly Kim氏:経営戦略とスタートアップ戦略

Jungeun Elly Kim氏は、国際ビジネス、経営戦略論、起業家活動、スタートアップ戦略などを専門分野とする教員として紹介されています。

経営戦略は、企業や組織がどのような方向へ進み、どのように競争力を確保するのかを考える分野です。

また、スタートアップ戦略では、新しい事業を立ち上げ、成長させるための方法や課題などが研究対象になります。

例えば、技術系スタートアップが新しい市場へ参入する際には、顧客の課題をどのように把握するのか、どのような事業モデルを構築するのかが重要になります。

研究テーマとしては、「技術系スタートアップの事業成長には、どのような要因が関係するのか」「国際市場へ進出するスタートアップは、どのような課題に直面するのか」といった問いが考えられます。

起業を目指す方だけでなく、企業経営や事業開発の経験を研究へ発展させたい社会人にとっても、参考になる専門分野です。

Shutaro Takeda氏:アントレプレナーシップとサステナビリティ

Shutaro Takeda氏は、環境・エネルギー、サステナビリティ、アントレプレナーシップ、核融合などを専門分野とする教員として紹介されています。

アントレプレナーシップは、新しい価値や事業を生み出すための行動や考え方に関係する分野です。

また、サステナビリティは、環境や社会、経済の持続可能性を考える領域です。

これらの専門分野を組み合わせると、技術を社会へ実装する際の課題や、社会的な価値と事業としての継続可能性をどのように両立させるのかという研究テーマが考えられます。

例えば、環境技術を事業化する際には、技術開発だけでなく、資金調達や市場形成、規制など、複数の課題が関係します。

研究テーマとしては、「環境技術の事業化には、どのような課題があるのか」「社会課題の解決を目指すスタートアップは、どのように事業の継続可能性を確保するのか」といった問いが考えられます。

技術とビジネス、社会課題を結びつけた研究に関心がある方にとって、参考になる専門分野です。

社会・政策・ネットワーク系の専門分野

KMDの教員の専門分野には、インターネット基盤技術やモバイル通信、アクセシビリティ、障害学など、社会基盤や社会課題に関係する領域も含まれています。

これらの分野は、一見すると異なる研究領域に見えるかもしれません。

しかし、社会の中で技術がどのように利用され、どのような課題を生み出すのかという点では、共通する問題意識を持つ場合があります。

例えば、インターネットは現代社会を支える重要な基盤ですが、その技術を誰もが同じように利用できるとは限りません。

また、新しい技術が普及することで、情報へのアクセスや社会参加のあり方が変化することも考えられます。

技術の仕組みと社会への影響を組み合わせて考えたい方にとって、参考になる領域です。

Akira Kato氏:インターネット基盤技術

Akira Kato氏は、コンピュータネットワーク、インターネット基盤技術などを専門分野とする教員として紹介されています。

インターネット基盤技術は、世界中のコンピュータやネットワークが相互に通信するための仕組みを支える技術です。

例えば、通信プロトコルや経路制御、ネットワーク機器の動作などが関係します。

また、通信の安定性や効率を高める方法なども、研究対象として考えられます。

研究テーマとしては、「ネットワークの障害発生時に、通信をどのように継続できるのか」「大規模なネットワークでは、通信状況をどのように把握すればよいのか」といった問いが挙げられます。

インターネットそのものの仕組みや、社会を支える通信基盤に関心がある方にとって、参考になる専門分野です。

砂原秀樹氏:モバイル通信とセンサネットワーク

砂原秀樹氏は、モバイル通信技術、センサネットワーク、知識情報構成技術などを専門分野とする教員として紹介されています。

モバイル通信技術は、スマートフォンや移動する通信機器などが、場所を移動しながら通信するための技術に関係します。

また、センサネットワークは、複数のセンサーをネットワークで接続し、さまざまな情報を収集・共有する仕組みです。

例えば、建物内の温度や湿度を測定するセンサーを設置し、ネットワークを通じて情報を収集することが考えられます。

こうした技術では、通信の安定性や消費電力、データの管理方法など、さまざまな課題が生じます。

研究テーマとしては、「多数のセンサーが接続された環境では、通信負荷をどのように分散できるのか」「通信環境が不安定な場所で、センサーデータをどのように安定して収集できるのか」といった問いが考えられます。

ジュリア・バルバレスキ氏:アクセシビリティと障害学

Giulia Barbareschi(ジュリア・バルバレスキ)氏は、アクセシビリティ、障害学、質的研究、社会開発、インクルーシブデザインなどを専門分野とする教員として紹介されています。

アクセシビリティは、年齢や障害の有無などにかかわらず、必要な情報やサービス、環境を利用できるようにすることに関係する概念です。

また、インクルーシブデザインは、多様な人々の視点を取り入れながら、製品やサービス、環境などを設計する考え方です。

例えば、デジタルサービスを利用する際に、どのような操作上の障壁が生じるのかを調べることが考えられます。

また、障害のある当事者へのインタビューなどを通じて、技術の利用環境や社会との関係を明らかにする研究も考えられます。

研究テーマとしては、「デジタルサービスの利用において、どのような障壁が生じているのか」「当事者の経験を製品やサービスの設計へどのように反映できるのか」といった問いが挙げられます。

技術開発だけでなく、社会との関係や当事者の視点から研究を進めたい方にとって、参考になる専門分野です。

教育・学習系の専門分野

KMDで教育工学や学習科学とデジタル技術を組み合わせて研究するイメージ

KMDには、教育や学習に関係する専門分野を持つ教員も紹介されています。

教育とテクノロジーを組み合わせた研究では、学習者がどのように知識や技能を身につけるのかという問題や、テクノロジーによって学習環境をどのように改善できるのかという問題が重要になります。

また、学校教育だけでなく、学校外の学習環境や国際的な教育基盤の整備なども研究対象になり得ます。

例えば、オンライン学習システムの利用方法や、デジタル教材の設計、子供とメディアの関係など、研究テーマは幅広く考えられます。

教育に関心がある方は、学習の仕組みを研究したいのか、教育環境を設計したいのか、子供とメディアの関係を研究したいのかを整理するとよいでしょう。

Sandra Yu Okita氏:学習科学と教育工学

Sandra Yu Okita氏は、学習科学、教育工学、認知科学、ヒューマンロボットインタラクションなどを専門分野とする教員として紹介されています。

学習科学は、人間がどのように学び、知識や技能を身につけるのかを研究する分野です。

また、教育工学は、教育や学習の課題に対して、技術や理論を利用した方法を検討する研究領域です。

例えば、学習者がデジタル教材を利用する際に、どのような情報提示が理解を助けるのかを研究することが考えられます。

また、ロボットとの関わりが学習者の行動や理解にどのような影響を与えるのかという問題も、関連する研究テーマになり得ます。

研究テーマとしては、「学習者とロボットの対話は、学習への取り組み方にどのような影響を与えるのか」「デジタル教材の提示方法によって、学習内容の理解はどのように変化するのか」といった問いが考えられます。

大川恵子氏:デジタルコミュニケーションと教育環境

Keiko Okawa(大川恵子)氏は、デジタルコミュニケーション、教育環境のデザイン、国際協力などを専門分野とする教員として紹介されています。

教育環境のデザインは、学習者が学びやすい環境をどのように整えるのかという問題に関係します。

例えば、オンラインで学習できる仕組みや、離れた地域にいる学習者同士が交流できる環境などが考えられます。

また、国際協力の視点からは、地域によって異なる教育環境や通信環境などを考慮することも重要になります。

研究テーマとしては、「通信環境に制約がある地域では、どのようなオンライン学習の仕組みが適しているのか」「国際的な学習コミュニティでは、どのようなコミュニケーション支援が必要なのか」といった問いが考えられます。

教育を受ける環境そのものの改善や、国際的な教育課題に関心がある方にとって、参考になる専門分野です。

Nanako Ishido氏:子供とメディアの関係

Nanako Ishido氏は、子供とメディアの関わりなどに関連する専門性を持つ教員として紹介されています。

子供とメディアの関係を考える際には、デジタル技術が子供の学びや表現、コミュニケーションにどのような影響を与えるのかという問題が重要になります。

例えば、子供がデジタル教材やゲームを利用する際に、どのような学習体験が生まれるのかを考えることができます。

また、子供が自分で作品を制作したり、他者と協力して活動したりする際に、メディアがどのような役割を果たすのかという研究テーマも考えられます。

研究テーマとしては、「デジタルメディアを利用した創作活動は、子供の表現活動にどのような影響を与えるのか」「子供が主体的に参加できるメディア環境には、どのような特徴があるのか」といった問いが挙げられます。

学校教育だけでなく、子供の創造性やメディア体験に関心がある方にとっても、参考になる分野です。

複数の領域にまたがる専門分野を持つ教員

ここまでKMDの教員の専門分野を5つの領域に整理してきましたが、実際には一人の教員が複数の領域にまたがる専門性を持っている場合があります。

例えば、ハプティクスを専門とする教員が、人間拡張やVRにも関係する研究を行うことがあります。

また、デジタルファブリケーションを専門とする教員が、メディアアートやHCIにも関係する研究を行う場合があります。

さらに、起業家活動を専門とする教員が、サステナビリティや環境技術などの分野にも関心を持っていることがあります。

このように、KMDの教員の専門分野は、一つの学問領域だけで説明できるとは限りません。

研究テーマを考える際には、教員を一つの分類に当てはめるのではなく、複数の専門分野の関係を理解することが重要です。

堀江新氏に見る研究と実務の接点

Arata Horie(堀江新)氏は、身体情報学、ハプティクス、ヒューマンコンピュータインタラクションなどを専門分野とする教員として紹介されています。

また、ご提供いただいたプロフィール情報では、commissure Inc.の代表取締役兼CTOとして企業経営にも携わっていることが紹介されています。

このような経歴は、技術的な研究と事業活動が接点を持つ一例として参考になります。

例えば、身体情報を利用した新しい技術を研究する場合には、技術的な実現可能性だけでなく、実際の利用環境や利用者の課題などを考えることが重要になる場合があります。

また、研究成果を社会で利用できる形へ発展させる際には、技術開発と事業化の両方の視点が必要になることもあります。

ただし、実務経験を持つ教員が在籍していることと、学生がその教員から事業化に関する直接的な指導を受けられることは同じではありません。

研究指導体制や教育活動への関わり方については、最新の公式情報を確認する必要があります。

水口哲也氏に見る表現とビジネスの接点

水口哲也氏も、メディア表現と事業活動の両方に関わってきた人物として紹介されています。

ゲームやエンタテインメントの分野では、新しい表現技術を開発するだけでなく、それを実際の作品やサービスとして届けることも重要になります。

例えば、VRや触覚技術を利用した体験型コンテンツでは、技術的な仕組みと作品としての完成度の両方が求められます。

また、利用者にどのような体験を提供するのか、どのような環境で体験してもらうのかといった問題も関係します。

このように、メディア表現とビジネスの接点を考えることは、研究成果を社会へ届ける方法を検討するうえで参考になります。

研究計画を考える際には、制作したい作品の内容だけでなく、その作品を通じて何を明らかにしたいのかを整理することが重要です。

研究テーマから教員を探す方法

KMDへの進学を考える際には、教員の専門分野を一覧で確認するだけでなく、自分の研究テーマから関連する教員を探すことが重要です。

例えば、「VRを研究したい」という場合でも、研究の方向性は一つではありません。

VR空間での触覚体験を研究したい場合には、ハプティクスや身体情報学が関係します。

一方、VRを利用した空間的なインターフェースを研究したい場合には、空間コンピューティングやHCIが関係します。

また、VRを利用したゲームや体験型コンテンツを研究したい場合には、エンタテインメントデザインやメディア表現の専門分野が参考になります。

このように、同じ技術に関心があっても、何を明らかにしたいのかによって、参考にすべき教員の専門分野は変わります。

研究テーマは「対象+課題+方法」で整理する

研究テーマを具体化する際には、「対象+課題+方法」という形で整理する方法があります。

例えば、「VR+身体感覚+触覚提示技術」「教育+学習理解+デジタル教材」「スタートアップ+事業成長+経営戦略」といった形です。

そこから、「触覚情報の提示方法は、VR空間での物体認識にどのような影響を与えるのか」「デジタル教材の提示方法によって、学習者の理解はどのように変化するのか」といった研究上の問いへ発展させることができます。

また、社会課題に関心がある場合には、「アクセシビリティ+デジタルサービス+利用者調査」という形で整理することも考えられます。

重要なのは、関心のある分野を並べるだけでなく、それらを組み合わせることで何を明らかにしたいのかを考えることです。

複数の教員の専門分野を比較する

研究テーマが複数の領域にまたがる場合には、一人の教員だけでなく、関連する複数の教員の専門分野を比較することが重要です。

例えば、身体性メディアに関心がある場合には、ハプティクス、HCI、デジタルファブリケーション、認知心理学など、複数の専門分野が関係します。

また、教育とテクノロジーを組み合わせた研究では、学習科学、教育工学、HCI、デジタルコミュニケーションなどが関係する場合があります。

起業やスタートアップに関心がある場合にも、経営戦略だけでなく、技術開発やデザイン、サステナビリティなどの視点が必要になることがあります。

ただし、専門分野が近い教員が複数いることと、共同指導を受けられることは同じではありません。

研究指導の担当や共同研究の体制については、最新の公式情報を確認する必要があります。

研究計画書では分野を横断する理由を説明する

KMDの研究環境に魅力を感じる方の中には、複数の専門分野を組み合わせた研究を希望する方もいるでしょう。

しかし、研究計画書では、さまざまな分野に関心があることを並べるだけでは、研究内容が十分に伝わらない場合があります。

例えば、「AIと教育とデザインを研究したい」という説明だけでは、何を明らかにしたいのかが分かりにくくなります。

そこで、まず解決したい課題を明確にし、その課題に取り組むために必要な専門分野を整理することが重要です。

例えば、「学習者の理解を支援するデジタル教材を研究したい」という目的があれば、教育工学やHCI、情報技術などを組み合わせる理由を説明できます。

分野を横断すること自体を目的にするのではなく、研究上の課題を解決するために、なぜ複数の専門性が必要なのかを示しましょう。

志望理由書ではなぜKMDなのかを明確にする

志望理由書では、「KMDには幅広い専門分野の教員がいるから」という説明だけでは、志望理由として十分ではない場合があります。

重要なのは、その幅広い研究環境が、自分の研究目的とどのようにつながるのかを説明することです。

例えば、技術開発と利用者の体験評価を組み合わせたい場合には、HCIやデザインに関する専門性との接点を説明できます。

また、社会課題を解決するためのサービスを研究したい場合には、技術と経営、社会的な視点を組み合わせる必要性を示すことができます。

自分のこれまでの経験や問題意識を整理し、KMDのどのような研究環境が必要なのかを具体的に説明することが重要です。

教員の人数だけで研究環境を判断しない

教員数は研究科の規模を理解するうえで参考になりますが、人数だけで研究環境の良し悪しを判断することはできません。

例えば、教員が多くても、自分の研究テーマに近い専門分野の教員がいなければ、希望する研究を進めにくい可能性があります。

一方、教員数が比較的少ない研究科であっても、自分の研究テーマと専門分野が一致する教員がいれば、適した研究環境になる場合があります。

また、専任教員と特任・兼任教員では、研究科での教育活動への関わり方や研究指導体制が異なる場合があります。

そのため、教員一覧を確認する際には、人数だけでなく、現在の所属や専門分野、研究プロジェクト、研究指導の担当などを確認することが重要です。

出願前に確認したいポイント

KMDへの進学を検討する際には、まず自分の研究テーマがどのような専門分野に関係するのかを整理しましょう。

そのうえで、KMD公式サイトの教員一覧を確認し、関連する教員の専門分野や研究活動を調べます。

また、教員の公式プロフィールだけでなく、研究プロジェクトや論文、研究成果などを確認することで、実際にどのような研究が行われているのかを理解しやすくなります。

出願資格、提出書類、英語に関する要件、研究計画の扱いなどについては、必ず受験年度の募集要項を確認してください。

教員への事前連絡や研究指導体制についても、最新の公式情報を確認しておく必要があります。

教員の専門分野の幅広さに魅力を感じるだけでなく、その研究環境で自分が何を研究したいのかを具体的に説明できるようにしておきましょう。

まとめ

慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(KMD)には、技術・HCI、デザイン・メディア表現、経営・起業、社会・ネットワーク、教育・学習など、多様な専門分野を持つ教員が紹介されています。

南澤孝太教授のハプティクスや人間拡張、Mauricio Sousa氏のHCIや空間コンピューティング、山岡潤一氏のデジタルファブリケーション、Kai Kunze氏のウェアラブルコンピューティングなどは、技術と人間の関わり方を考えるうえで参考になります。

また、稲蔭正彦氏や水口哲也氏の専門分野は、エンタテインメントやメディア表現に関係します。

Jungeun Elly Kim氏やShutaro Takeda氏の専門分野は、経営戦略や起業家活動、サステナビリティなどと関係します。

さらに、Akira Kato氏や砂原秀樹氏のネットワーク技術、ジュリア・バルバレスキ氏のアクセシビリティや障害学、Sandra Yu Okita氏や大川恵子氏の教育・学習に関する専門分野なども、KMDの研究領域の広さを理解する手がかりになります。

重要なのは、教員の人数や専門分野の多さだけで研究科を選ぶのではなく、自分の研究テーマと教員の専門性がどのようにつながるのかを具体的に考えることです。

また、複数の領域にまたがる研究を希望する場合には、なぜその組み合わせが必要なのかを説明できるようにすることが大切です。

公式サイトの教員情報や研究プロジェクトを丁寧に確認し、自分の問題意識と研究環境との接点を整理しながら、研究計画書や志望理由書の準備を進めていきましょう。


※本記事はご提供いただいたKMD公式サイトの教員情報をもとに作成しています。教員数、教員の所属・職位・専門分野・研究指導体制、研究プロジェクト、入試制度などは変更される場合があります。受験を検討している方は、必ず慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科の公式サイトおよび最新の入学試験要項をご確認ください。

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※この記事は専門家による監修のもと執筆されています。

この記事を監修した人

小杉樹彦(志樹舎 創業者)

小杉 樹彦(こすぎ・たつひこ)
志樹舎 創業者/博士(学術)
慶應義塾大学院修了後、2015年1月に院試専門オンライン予備校「志樹舎」を設立。 代表講師として10〜60代まで延べ5,000人以上の受験生を指導。 早慶・国公立をはじめとする難関大学院で合格率9割超の実績を持つ。 現在は大学院入試対策の専門家として、テレビ・新聞・雑誌など幅広いメディアで活動中。 ロングセラー『減点されない!勝論文』(エール出版社)ほか著書・論文多数。