
身体で感じるメディアとは?KMDの身体性メディア研究を解説
- 1. 身体性メディアとは何か
- 2. 南澤孝太教授:ハプティクスと人間拡張
- 3. ハプティクスではどのような研究ができる?
- 4. 人間拡張という研究の方向性
- 5. 山岡潤一氏:デジタルファブリケーションとインタラクティブメディア
- 6. 身体で操作するインターフェースの研究
- 7. デジタルファブリケーションと身体性メディア
- 8. 脇坂崇平氏:VR・代替現実と身体情報学
- 9. 身体スキルを共有するという研究
- 10. 身体所有感とVRの関係
- 11. 堀江新氏:身体情報学とハプティクス
- 12. 身体情報を計測・分析する研究
- 13. 吉田多俊氏:空間体験デザインと身体情報学
- 14. 空間体験と身体の関係
- 15. 身体性メディアとHCIの関係
- 16. 身体性メディアと認知心理学
- 17. 身体性メディアとロボティクス
- 18. 身体性メディアとアクセシビリティ
- 19. 身体性メディアとエンタテインメント
- 20. 身体性メディア研究で必要になる技術
- 21. 研究テーマは「身体感覚+技術+体験」で考える
- 22. 研究計画書では評価方法まで考える
- 23. 試作品を制作する研究の進め方
- 24. 身体性メディア研究で重要な研究倫理
- 25. KMDのプロジェクト型研究を確認する
- 26. 志望理由書ではなぜKMDなのかを説明する
- 27. KMDと他研究科をどう比較する?
- 28. 出願前に確認したいポイント
- 29. まとめ
院試専門オンライン予備校「志樹舎」が運営する「慶應義塾大学大学院の院試対策ガイド」をご覧いただき、ありがとうございます。今回のテーマは「KMDで身体性メディアを研究するには?」です。
私たちは日常生活の中で、視覚や聴覚だけでなく、触覚や身体の動きなど、さまざまな感覚を使って情報を受け取っています。例えば、スマートフォンの振動による通知や、ゲームコントローラーから伝わる反力なども、身体感覚を利用した情報伝達の一例です。
近年では、VRやXR、ウェアラブルデバイス、ロボティクスなどの発展によって、人間の身体や感覚を利用した新しいメディア表現が研究されています。
こうした研究と深く関係するのが、身体性メディアという分野です。
身体性メディアとは、人間の身体や感覚、動作などを情報の入出力やコミュニケーションに取り入れる技術やメディアを指します。身体を単なる操作手段として捉えるのではなく、身体そのものを情報や体験を生み出す重要な要素として考える点に特徴があります。
慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(KMD)には、ハプティクス、人間拡張、身体情報学、ヒューマンコンピュータインタラクションなど、身体性メディアに関連する専門分野を持つ教員が紹介されています。
この記事では、KMDで身体性メディアを研究したい方に向けて、関連する教員の専門分野や研究テーマの考え方、研究計画書を作成する際のポイントを解説します。
身体性メディアとは何か

身体性メディアを理解するうえで重要なのは、身体を通じた情報のやり取りに注目することです。
従来のデジタルメディアでは、画面に表示された文字や映像、スピーカーから流れる音声などが主な情報伝達手段でした。
しかし、私たちは現実世界で物体に触れたり、身体を動かしたり、周囲の空間を感じたりしながら情報を理解しています。
例えば、物体を持ち上げたときには重さを感じ、表面に触れたときには質感を感じます。また、他者の動作を見ることで、言葉だけでは伝わりにくい技術や感覚を理解することもあります。
身体性メディアでは、こうした身体的な経験をデジタル技術によって扱うことを考えます。
研究対象は、触覚を伝える装置、身体の動きを認識するシステム、仮想空間での身体体験、身体技能の共有など、多岐にわたります。
そのため、身体性メディアという言葉だけで研究内容を判断するのではなく、どのような身体感覚や動作を対象にしているのかを整理することが重要です。
南澤孝太教授:ハプティクスと人間拡張
Kouta Minamizawa(南澤孝太)教授は、ハプティクス、VR、人間拡張、身体情報学、システム情報学などを専門分野とする教員です。
ご提供いただいたKMD公式プロフィールの情報では、研究科委員長を務める教員として紹介されています。
ハプティクスとは、触覚や力覚など、人間が身体を通じて感じる情報を扱う技術分野です。
例えば、VR空間で仮想的な物体に触れたときに、その感覚を振動や力によって再現する仕組みが考えられます。
また、離れた場所にある物体の感触を遠隔地へ伝える技術も、ハプティクスと関係します。
南澤教授の専門分野には、人間拡張も含まれています。
人間拡張とは、テクノロジーを利用して、人間の身体的・感覚的な能力や行動の可能性を広げることを目指す研究領域です。
触覚技術を通じて新しい身体体験を実現したい方や、人間の感覚とデジタル技術の関係を研究したい方にとって、参考になる専門分野といえるでしょう。
ハプティクスではどのような研究ができる?
ハプティクスに関連する研究では、触覚をどのように取得し、表現し、伝えるのかという問題が重要になります。
例えば、遠隔地にあるロボットを操作する場合、カメラの映像だけでは物体に触れた際の感覚を十分に理解できないことがあります。
そこで、ロボットが受けた力を操作者へ伝える仕組みを設計することが考えられます。
また、VR空間での体験をより豊かにするために、視覚情報と触覚情報を組み合わせる研究も考えられます。
研究テーマとしては、「触覚情報の提示方法は、仮想物体の質感の認識にどのような影響を与えるのか」「視覚と触覚の組み合わせは、VR空間における存在感にどのように関係するのか」といった問いが挙げられます。
こうした研究では、装置を開発する技術だけでなく、人間が触覚情報をどのように知覚するのかを理解することも重要です。
人間拡張という研究の方向性
人間拡張の研究では、テクノロジーによって身体の能力や感覚をどのように広げられるのかを考えます。
例えば、人間が通常は感じ取れない情報を振動として提示することで、新しい感覚的な手掛かりを与えることが考えられます。
また、身体の動きを計測し、その情報を別の場所へ伝えることで、遠隔地にいる人との新しいコミュニケーションを実現することも研究の方向性になり得ます。
ただし、人間拡張は単に身体能力を高めることだけを意味するものではありません。
身体と技術の関係を変えることで、人間がどのように世界を認識し、他者と関わるのかを考える研究も含まれます。
研究計画を考える際には、どのような能力や感覚を拡張したいのか、その結果としてどのような体験を実現したいのかを具体化することが重要です。
山岡潤一氏:デジタルファブリケーションとインタラクティブメディア
Junichi Yamaoka(山岡潤一)氏は、ヒューマンコンピュータインタラクション、デジタルファブリケーション、メディアアート、インタラクティブメディアなどを専門分野とする教員です。
デジタルファブリケーションとは、コンピュータを利用した設計や加工技術によって、さまざまな形状や機能を持つ物体を制作することに関係する分野です。
例えば、3Dプリンターやデジタル工作機器などを利用して、新しい形状のインターフェースを制作することが考えられます。
また、インタラクティブメディアは、利用者の操作や行動に応じて反応するメディアに関係します。
身体で触れたり、動かしたりすることで変化する装置や作品なども、研究対象になり得ます。
山岡氏の専門分野は、身体的な操作を伴うメディアを実際に制作し、その体験を検討したい方にとって参考になります。
身体で操作するインターフェースの研究
私たちは、スマートフォンやパソコンを操作する際、タッチパネルやキーボードなどを利用しています。
しかし、デジタル機器との関わり方は、こうした操作方法だけに限定されません。
例えば、手の動きや身体の姿勢を利用して機器を操作する方法や、物体に触れることで情報を入力する方法などが考えられます。
また、利用者の動きに応じて形状や反応が変化する装置も、身体性メディアと関係する研究対象です。
研究テーマとしては、「物理的な操作感を持つインターフェースは、利用者の操作理解にどのような影響を与えるのか」「身体の動きを利用した操作方法は、従来の入力方法と比べてどのような特徴を持つのか」といった問いが考えられます。
こうした研究では、装置の制作と利用者による評価を組み合わせることが重要になる場合があります。
デジタルファブリケーションと身体性メディア
デジタルファブリケーションは、身体性メディアの研究を具体的な形にするための方法の一つです。
例えば、身体に装着する装置を開発する場合には、装着感や重量、身体の動きへの影響などを考慮する必要があります。
また、手で操作する装置を制作する場合には、形状や素材によって操作感が変わる可能性があります。
そのため、身体性メディアの研究では、ソフトウェアだけでなく、物理的な装置の設計や試作が重要になることがあります。
研究テーマとしては、「装着型デバイスの形状は、利用者の身体動作にどのような影響を与えるのか」「触覚を伴うインターフェースの素材や構造は、操作体験をどのように変化させるのか」といった問いが考えられます。
ものづくりの経験がある方や、実際に試作品を制作しながら研究を進めたい方にとって、参考になる方向性です。
脇坂崇平氏:VR・代替現実と身体情報学

脇坂崇平氏は、VR、代替現実(SR)、認知心理学、身体情報学などを専門分野とする教員として紹介されています。
VRは、コンピュータによって構築された仮想的な環境を体験するための技術です。
一方、代替現実(Substitutional Reality:SR)は、現実の知覚体験と人工的に提示された情報との関係を扱う研究領域です。
こうした技術は、人間が自分の身体や周囲の環境をどのように認識しているのかを考えるうえで重要です。
また、脇坂氏の専門分野には、認知心理学も含まれています。
認知心理学は、人間が情報をどのように知覚し、理解し、記憶し、判断するのかなどを研究する分野です。
身体性メディアを研究する際には、技術によって新しい感覚を提示するだけでなく、その体験が人間の認知にどのような影響を与えるのかを検討することも重要になります。
身体スキルを共有するという研究
身体性メディアに関連する研究テーマの一つに、身体スキルの共有があります。
例えば、スポーツやダンス、楽器演奏などでは、身体の動かし方や力の入れ方が重要になります。
こうした技能は、言葉や映像だけでは十分に伝わらない場合があります。
そこで、身体の動きを計測したり、触覚や振動などを利用して動作を伝えたりする方法が考えられます。
研究テーマとしては、「身体動作を振動によって提示することは、技能の習得にどのような影響を与えるのか」「熟練者の動作情報を初心者へ伝える際には、どのような情報提示が有効なのか」といった問いが挙げられます。
ただし、身体スキルは個人の身体的な特徴や経験によって異なるため、単純に動作を再現すれば技能が習得できるとは限りません。
身体の動きと認知、学習の関係を理解しながら研究を進めることが重要です。
身体所有感とVRの関係
身体性メディアを考えるうえでは、身体所有感という概念も重要です。
身体所有感とは、自分の身体や身体の一部を、自分自身のものとして感じる感覚に関係します。
VRなどの技術を利用すると、現実の身体とは異なる外見や位置を持つ仮想的な身体を提示することができます。
その際、視覚情報と身体の動きがどのように対応しているかによって、仮想的な身体に対する感覚が変化する可能性があります。
研究テーマとしては、「仮想身体の動きと実際の身体動作の一致は、身体所有感にどのような影響を与えるのか」「視覚と触覚の情報を組み合わせることで、仮想身体の知覚はどのように変化するのか」といった問いが考えられます。
こうした研究では、VRの技術だけでなく、知覚心理学や認知科学などの知識も関係します。
堀江新氏:身体情報学とハプティクス
Arata Horie(堀江新)氏は、身体情報学、ハプティクス、ヒューマンコンピュータインタラクションなどを専門分野とする兼任教員として紹介されています。
ご提供いただいた公式プロフィールの情報では、commissure Inc.の代表取締役兼CTOとして企業経営にも携わっていることが紹介されています。
身体情報学は、人間の身体や動作、感覚などを情報として扱い、その仕組みや応用を考える研究領域です。
例えば、身体の動きをセンサーで計測し、データとして分析することが考えられます。
また、身体の状態に応じて情報を提示するシステムや、触覚を利用したインターフェースなども関連する研究対象になり得ます。
堀江氏の専門分野は、身体の情報を取得する技術と、身体へ情報を伝える技術の両方に関心がある方にとって参考になります。
身体情報を計測・分析する研究
身体性メディアでは、身体へ情報を提示するだけでなく、身体の状態を計測することも重要です。
例えば、加速度センサーやモーションキャプチャーなどを利用することで、身体の動きをデータとして記録できます。
また、身体の姿勢や動作の変化を分析することで、利用者がどのような行動をしているのかを理解する手掛かりが得られる場合があります。
研究テーマとしては、「身体動作の特徴をどのように抽出すれば、技能の違いを分析できるのか」「身体の動きに応じた情報提示は、利用者の行動にどのような影響を与えるのか」といった問いが考えられます。
こうした研究では、センサー技術やデータ分析に加えて、身体の動きに関する知識も重要になる場合があります。
吉田多俊氏:空間体験デザインと身体情報学
Takatoshi Yoshida(吉田多俊)氏は、空間体験デザイン、身体情報学、ヒューマンコンピュータインタラクションなどを専門分野とする教員として紹介されています。
空間体験デザインは、人間が空間の中でどのような体験をするのかを考え、その体験を設計することに関係します。
例えば、展示空間や体験型施設では、映像や音声だけでなく、利用者の移動や身体の動きによって体験が変化することがあります。
また、身体の位置や動作をセンサーで取得し、その情報に応じて空間の演出を変える仕組みも考えられます。
こうした研究では、空間そのものをメディアとして捉え、身体を通じた体験をどのように設計するのかが重要になります。
身体性メディアを空間デザインや体験型コンテンツと結びつけて研究したい方にとって、参考になる専門分野です。
空間体験と身体の関係
私たちは、空間を視覚だけで認識しているわけではありません。
歩く、立つ、触れる、身体の向きを変えるといった動作を通じて、空間の広さや距離、物体との関係を理解しています。
例えば、同じ映像作品であっても、座って鑑賞する場合と、空間内を歩きながら体験する場合では、受け取る印象が異なる可能性があります。
また、利用者の身体動作に応じて映像や音が変化する仕組みでは、身体そのものが体験の一部になります。
研究テーマとしては、「身体の移動を伴う体験は、空間への没入感にどのような影響を与えるのか」「利用者の動作に応じた情報提示は、空間の理解をどのように変化させるのか」といった問いが考えられます。
こうした研究では、身体の動きと空間の設計、利用者の知覚を組み合わせて考えることが重要です。
身体性メディアとHCIの関係
身体性メディアに関連する教員の専門分野には、ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI)が多く見られます。
HCIとは、人間とコンピュータの関わり方を研究する分野です。
例えば、利用者がコンピュータをどのように操作するのか、どのような情報提示が理解しやすいのか、どのようなインターフェースが適しているのかなどが研究対象になります。
身体性メディアでは、こうした人間とコンピュータの関係を、身体の動きや感覚を通じて考えることができます。
例えば、触覚を利用した操作方法や、身体動作による入力方法、装着型デバイスを利用した情報提示などが考えられます。
技術の性能だけでなく、利用者がどのように感じ、どのように行動するのかを評価することも重要です。
身体性メディアと認知心理学
身体性メディアの研究では、人間の知覚や認知を理解することも重要です。
例えば、同じ触覚刺激であっても、視覚情報や周囲の状況によって、感じ方が変化する場合があります。
また、身体の動きと感覚情報の関係によって、仮想空間での体験が変わる可能性もあります。
そのため、身体性メディアの研究では、装置を開発するだけでなく、人間がその情報をどのように受け取るのかを検討する必要があります。
研究テーマとしては、「視覚と触覚の情報が一致しない場合、利用者はどのような感覚を持つのか」「身体動作に対するフィードバックの違いは、操作感にどのような影響を与えるのか」といった問いが考えられます。
心理学的な実験を取り入れる場合には、実験条件や評価方法を適切に設計することが重要です。
身体性メディアとロボティクス
ロボティクスも、身体性メディアと関係する研究分野の一つです。
例えば、遠隔操作ロボットを利用する場合、操作者はロボットの動きを制御しながら、周囲の状況を理解する必要があります。
その際、映像や音声だけでなく、力覚や触覚などの情報を利用することで、操作体験が変化する可能性があります。
また、人間の身体動作をロボットへ伝える仕組みや、ロボットの状態を人間へ分かりやすく伝える仕組みも研究対象になり得ます。
研究テーマとしては、「触覚フィードバックは遠隔操作の精度にどのような影響を与えるのか」「身体動作を利用した操作方法は、ロボットの操作負担をどのように変化させるのか」といった問いが考えられます。
身体性メディアとロボティクスを組み合わせる場合には、制御技術と人間の知覚・操作の両方を考えることが重要です。
身体性メディアとアクセシビリティ
身体性メディアは、アクセシビリティの研究とも接点を持つ場合があります。
例えば、視覚情報を触覚へ変換することで、視覚に頼らず情報を取得する方法を検討できます。
また、身体の動きを利用したインターフェースを設計することで、従来の入力方法を利用しにくい人にとって、新しい操作方法を提供できる可能性があります。
ただし、身体の動きや感覚には個人差があるため、特定の操作方法がすべての利用者に適しているとは限りません。
そのため、利用者の身体的な特徴や生活環境を理解し、必要に応じて操作方法を調整できる仕組みを考えることが重要です。
研究テーマとしては、「触覚による情報提示は、視覚情報を利用しにくい人の操作体験をどのように変化させるのか」「身体動作を利用した入力方法は、利用者の操作負担にどのような影響を与えるのか」といった問いが考えられます。
身体性メディアとエンタテインメント
身体性メディアは、ゲームやエンタテインメントの分野とも深く関係しています。
例えば、VRゲームでは、映像や音声に加えて、触覚や身体動作を利用することで、新しい体験を実現することが考えられます。
また、体験型の展示やメディアアートでは、利用者の動きに応じて作品が変化する仕組みもあります。
こうした研究では、技術的な実現可能性だけでなく、利用者がどのような感情や感覚を持つのかも重要になります。
研究テーマとしては、「触覚フィードバックはゲーム体験への没入感にどのような影響を与えるのか」「身体動作を利用したインタラクションは、作品への参加感をどのように変化させるのか」といった問いが考えられます。
エンタテインメント分野に関心がある場合には、身体性メディアを表現技術として捉える視点も参考になります。
身体性メディア研究で必要になる技術

身体性メディアの研究では、研究テーマによって必要となる技術が異なります。
例えば、身体の動きを計測する研究では、センサーやモーションキャプチャーなどの知識が必要になる場合があります。
また、触覚を提示する装置を開発する場合には、電子回路やアクチュエーター、制御技術などが関係します。
VRを利用する場合には、3Dコンピュータグラフィックスやリアルタイム処理、空間認識などの知識が必要になることもあります。
さらに、利用者の体験を評価する場合には、実験計画や統計分析、インタビューなどの研究方法も重要です。
すべての技術を最初から習得している必要があるとは限りませんが、自分の研究テーマにどのような知識が必要なのかを理解しておくことが大切です。
研究テーマは「身体感覚+技術+体験」で考える
身体性メディアの研究テーマを具体化する際には、「身体感覚+技術+実現したい体験」という形で整理する方法があります。
例えば、「触覚+VR+仮想物体に触れる体験」「身体動作+センサー+技能の共有」「身体の位置情報+空間演出+参加型コンテンツ」といった形です。
そこから、「触覚情報の提示方法は、VR空間での物体認識にどのような影響を与えるのか」「身体動作を振動で提示することは、技能習得にどのような影響を与えるのか」といった研究上の問いへ発展させることができます。
また、ものづくりに関心がある場合には、「身体動作+装置の形状+操作性」という形で考えることもできます。
このように、対象となる身体感覚と利用する技術、実現したい体験を整理することで、研究計画を明確にしやすくなります。
研究計画書では評価方法まで考える
身体性メディアに関する研究計画書では、「新しい身体体験を実現したい」「人間の感覚を拡張したい」という目標だけでは、研究内容が十分に伝わらない場合があります。
例えば、「触覚を利用したVR体験を研究したい」というテーマであれば、どのような触覚情報を提示するのか、どのような装置を利用するのか、何を明らかにしたいのかを具体化する必要があります。
また、研究成果をどのように評価するのかも重要です。
例えば、利用者に複数の条件で体験してもらい、操作の正確さや所要時間、主観的な評価などを比較する方法が考えられます。
身体感覚や没入感のように、数値だけでは捉えにくい要素を扱う場合には、アンケートやインタビューなどを組み合わせることもあります。
研究目的に応じて、適切な評価方法を検討しましょう。
試作品を制作する研究の進め方
身体性メディアの研究では、実際に装置やシステムを制作しながら研究を進める場合があります。
例えば、新しい触覚提示装置を考える場合、最初から完成度の高い装置を制作するのではなく、基本的な機能を確認できる試作品を作る方法が考えられます。
そのうえで、利用者に体験してもらい、操作感や使いやすさなどを評価します。
評価結果をもとに装置を改良し、再び検証することで、研究を進めることができます。
こうした研究では、制作そのものが目的になるのではなく、試作品を通じて何を明らかにしたいのかを意識することが重要です。
例えば、「新しい装置を作った」という成果だけでなく、「どのような情報提示方法が利用者の操作に有効なのかを明らかにした」という研究上の成果につなげることが大切です。
身体性メディア研究で重要な研究倫理
身体性メディアの研究では、人間の身体や感覚を対象とする実験が行われる場合があります。
そのため、研究参加者の安全や負担に配慮することが重要です。
例えば、身体に装着する装置を利用する場合には、装着による負担や動作への影響などを考慮する必要があります。
また、VRを利用する場合には、利用者によって不快感や疲労が生じる可能性があります。
研究計画を考える際には、実験の目的や方法だけでなく、参加者の安全確保や個人情報の取り扱いについても検討する必要があります。
実際の研究では、大学の研究倫理に関する規則や必要な審査手続きに従うことが重要です。
KMDのプロジェクト型研究を確認する
KMDでは、教員の専門分野に加えて、研究プロジェクトの内容を確認することも重要です。
身体性メディアは、情報工学、デザイン、心理学、ものづくりなど、複数の専門分野が関係する領域です。
そのため、研究テーマによっては、異なる専門性を持つ研究者や学生が協力することが考えられます。
例えば、触覚装置の開発では、ハードウェアの設計、ソフトウェアの開発、利用者による評価など、複数の作業が必要になる場合があります。
出願前には、公式サイトに掲載されている研究プロジェクトや研究成果を確認し、どのような技術や研究方法が利用されているのかを調べておくとよいでしょう。
また、研究プロジェクトに参加できる条件や、希望する教員からどのような指導を受けられるのかについても、最新の情報を確認することが大切です。
志望理由書ではなぜKMDなのかを説明する
身体性メディアに関心がある場合、志望理由書では「VRを研究したい」「新しい身体体験を作りたい」という目標を中心に書いてしまうことがあります。
しかし、技術や表現への関心だけでは、なぜKMDへ進学する必要があるのかを十分に説明できない場合があります。
例えば、自分が実現したい身体体験を整理し、そのために必要な技術や研究方法を考えます。
そのうえで、KMDの教員の専門分野や研究プロジェクトと、自分の問題意識との接点を具体的に説明することが重要です。
「身体性メディアに関心があるからKMDへ進学する」という説明から、「この身体感覚に関する課題を研究し、技術開発と利用者の体験評価を組み合わせて検討したい。そのためにKMDの研究環境が必要である」という説明へ発展させましょう。
KMDと他研究科をどう比較する?
身体性メディアを研究したい場合には、KMDだけでなく、情報工学系、ロボティクス系、認知科学系などの大学院も比較対象になります。
例えば、触覚提示装置の制御技術やロボットの動作制御を中心に研究したい場合には、工学系の研究環境が適している可能性があります。
一方、人間の身体感覚や知覚の仕組みを中心に研究したい場合には、心理学や認知科学の研究環境が近いこともあります。
また、身体感覚を利用した新しいメディアや体験を制作し、その効果を検討したい場合には、KMDの教員の専門分野と接点が見つかる可能性があります。
研究科の名称だけで判断するのではなく、自分が何を明らかにしたいのかを整理し、教員の専門分野や研究方法を比較することが重要です。
出願前に確認したいポイント
KMDで身体性メディアに関連する研究を希望する場合には、まず自分がどのような身体感覚や体験に関心を持っているのかを整理しましょう。
そのうえで、ハプティクス、人間拡張、身体情報学、デジタルファブリケーション、VR、認知心理学など、どの方向から研究したいのかを具体化します。
次に、教員の専門分野や研究プロジェクトを確認し、自分の研究テーマとの接点を探します。
また、出願資格、提出書類、英語に関する要件、研究計画の扱いなどについては、必ず受験年度の募集要項を確認してください。
教員への事前連絡や研究指導体制についても、最新の公式情報を確認しておく必要があります。
身体性メディアという分野への関心だけでなく、大学院でどのような技術や体験を研究し、その成果を将来的にどのような分野へ生かしたいのかを説明できるようにしておきましょう。
まとめ
慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(KMD)で身体性メディアに関連する研究を考える場合には、ハプティクス、人間拡張、身体情報学、デジタルファブリケーション、VR、認知心理学など、複数の方向性から研究テーマを探すことが重要です。
南澤孝太教授の専門分野であるハプティクスや人間拡張は、身体感覚を利用した新しい技術や体験を考えるうえで参考になります。
また、山岡潤一氏のデジタルファブリケーションやインタラクティブメディアは、身体で操作する装置や新しいメディアを制作する研究と関係します。
脇坂崇平氏のVR・代替現実や認知心理学は、身体感覚と人間の認知の関係を考えるうえで重要です。
さらに、堀江新氏の身体情報学やハプティクス、吉田多俊氏の空間体験デザインやHCIも、それぞれ異なる視点から身体性メディアに関係する専門分野です。
重要なのは、「身体性メディアを研究したい」という大きな目標だけで研究科を選ぶのではなく、「どのような身体感覚を対象に、どのような技術を利用し、何を明らかにしたいのか」という問いを具体化することです。
そのうえで、各教員の最新の研究活動や研究プロジェクト、研究指導体制を確認し、自分の問題意識と接点のある研究環境を探していきましょう。
※本記事はご提供いただいたKMD公式サイトの教員情報をもとに作成しています。教員の所属・職位・専門分野・研究指導体制、研究プロジェクト、入試制度などは変更される場合があります。受験を検討している方は、必ず慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科の公式サイトおよび最新の入学試験要項をご確認ください。
志樹舎
では、大学院入試の各種対策に特化した専門性の高いサポートを行っています。
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※この記事は専門家による監修のもと執筆されています。
この記事を監修した人
小杉 樹彦(こすぎ・たつひこ)
志樹舎 創業者/博士(学術)
慶應義塾大学院修了後、2015年1月に院試専門オンライン予備校「志樹舎」を設立。
代表講師として10〜60代まで延べ5,000人以上の受験生を指導。
早慶・国公立をはじめとする難関大学院で合格率9割超の実績を持つ。
現在は大学院入試対策の専門家として、テレビ・新聞・雑誌など幅広いメディアで活動中。
ロングセラー『減点されない!勝論文』(エール出版社)ほか著書・論文多数。


