
KMD名物「Embodied Media Project」ってどんな研究?
- 1. Embodied Media Projectとは?
- 2. 南澤孝太教授が中心となってきた研究活動
- 3. ハプティクスが身体性メディアの研究で重要な理由
- 4. シナスタジア・スーツに見る感覚体験の拡張
- 5. シナスタジア・スーツから考えられる研究テーマ
- 6. TECHTILEに見る触覚体験の共有
- 7. 触覚を共有する技術の研究課題
- 8. Telexistenceと遠隔体験の共有
- 9. 遠隔体験を研究する際に考えたいこと
- 10. 国内外での研究発表から分かること
- 11. 受賞歴を見る際の注意点
- 12. 関連する教員の専門分野をどう読む?
- 13. 脇坂崇平氏:VR・代替現実と身体情報学
- 14. 山岡潤一氏:デジタルファブリケーションと身体的な操作体験
- 15. 堀江新氏:身体情報学とハプティクス
- 16. 研究プロジェクトと教員の専門分野はどう違う?
- 17. Embodied Media Projectから考える研究テーマ
- 18. 身体性メディアの研究では評価方法が重要
- 19. プロジェクト型研究の魅力と注意点
- 20. 学部での経験をどう研究につなげる?
- 21. 研究計画書ではプロジェクトとの接点を具体化する
- 22. 志望理由書ではなぜKMDなのかを説明する
- 23. 過去の研究成果と現在の活動を区別する
- 24. KMDと他研究科をどう比較する?
- 25. 出願前に確認したいポイント
- 26. まとめ
院試専門オンライン予備校「志樹舎」が運営する「慶應義塾大学大学院の院試対策ガイド」をご覧いただき、ありがとうございます。今回のテーマは「KMDのEmbodied Media Projectを教員の専門分野から読み解く」です。
慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(KMD)への進学を考える際、研究科の特色を理解する手がかりとなるのが、教員や学生が取り組む研究プロジェクトです。
KMDでは、技術、デザイン、メディア、社会との関係を横断的に考える研究が行われています。その中でも、身体の感覚や動きを通じた新しいメディア体験に関心がある方にとって、注目したい研究活動の一つがEmbodied Media Projectです。
Embodied Media Projectでは、人間の身体や感覚を情報技術と結びつける研究が展開されてきました。触覚を伝える技術や、身体感覚を拡張する仕組み、遠隔地での体験共有など、研究対象は幅広い領域に及びます。
ただし、プロジェクト名や研究成果を知るだけでは、実際にどのような学問分野が関係しているのか、大学院でどのような研究に取り組める可能性があるのかまでは理解しにくいものです。
この記事では、Embodied Media Projectの研究内容を紹介するとともに、南澤孝太教授を中心とした関連分野の教員の専門性を整理し、KMDでの研究テーマの考え方や出願準備のポイントを解説します。
Embodied Media Projectとは?

Embodied Media Projectを理解するうえで重要なのが、身体性メディアという考え方です。
私たちは普段、文字や映像、音声などを通じて情報を受け取っています。しかし、実際の生活では、物体に触れた感覚や身体の動き、力の加減なども重要な情報となっています。
例えば、誰かと握手したときの感触や、楽器を演奏するときに指先へ伝わる振動、スポーツで身体を動かしたときの感覚などは、言葉や映像だけでは十分に伝えにくいものです。
身体性メディアの研究では、こうした身体的な情報を技術によって扱い、新しいコミュニケーションや体験の可能性を探ります。
Embodied Media Projectは、このような身体感覚とデジタル技術の関係を研究する活動として知られています。
研究の方向性を理解する際には、触覚情報をどのように伝えるのか、身体の感覚をどのように拡張するのか、離れた場所にいる人とどのように体験を共有するのかという視点が参考になります。
南澤孝太教授が中心となってきた研究活動
Embodied Media Projectを理解するうえで重要な教員が、Kouta Minamizawa(南澤孝太)教授です。
南澤教授は、ハプティクス、VR、人間拡張、身体情報学、システム情報学などを専門分野としています。
ハプティクスとは、触覚や力覚など、人間が身体を通じて感じる情報を扱う技術分野です。例えば、仮想空間にある物体に触れた感覚を再現したり、遠隔地の物体に加わる力を操作者へ伝えたりする技術が関係します。
また、人間拡張は、テクノロジーを利用して人間の身体的・感覚的な能力や行動の可能性を広げる研究領域です。
南澤教授の専門分野を整理すると、Embodied Media Projectが単なる装置開発や映像表現にとどまらず、人間の身体感覚そのものを研究対象としていることが理解しやすくなります。
なお、研究科における役職やプロジェクトの運営体制は変更される場合があります。現在の役職や指導体制については、最新の公式プロフィールで確認してください。
ハプティクスが身体性メディアの研究で重要な理由
身体性メディアの研究では、触覚が重要な役割を果たします。
例えば、スマートフォンの振動通知は、画面を見なくても情報を受け取れる仕組みです。また、ゲームコントローラーの振動は、映像や音声だけでは表現しにくい衝撃や動きを利用者へ伝える手段になります。
こうした仕組みをさらに発展させると、物体の質感や力の変化など、より複雑な身体感覚を扱う研究につながります。
ハプティクスの研究では、触覚情報をどのように生成するのか、どのような装置を使って提示するのか、人間がその刺激をどのように知覚するのかなどを考える必要があります。
研究テーマとしては、「触覚情報の提示方法によって、仮想物体の質感の認識はどのように変化するのか」「振動と映像を組み合わせることで、利用者の没入感はどのように変化するのか」といった問いが考えられます。
技術の開発と人間の感覚の理解を組み合わせる点が、この分野の特徴です。
シナスタジア・スーツに見る感覚体験の拡張
Embodied Media Projectに関連する研究成果として紹介されてきたものの一つが、シナスタジア・スーツです。
シナスタジアは、日本語では共感覚と呼ばれる概念です。一般に、ある感覚への刺激が別の感覚的な経験と結びつく現象を指します。
シナスタジア・スーツは、音楽や映像などの情報と身体への振動刺激を組み合わせ、従来とは異なる感覚体験を生み出す試みとして知られています。
例えば、音楽を耳で聴くだけでなく、身体に伝わる振動として感じることで、音楽体験がどのように変化するのかという問いが考えられます。
ここで重要なのは、振動する装置を制作することだけが研究の目的ではないという点です。
音や映像と触覚情報をどのように組み合わせると、新しい体験が生まれるのか。その体験を人間がどのように受け取るのかという問題も、研究上の重要なテーマになります。
シナスタジア・スーツから考えられる研究テーマ
シナスタジア・スーツのような研究成果は、感覚情報を組み合わせる研究の具体例として参考になります。
例えば、音楽のリズムに合わせて振動を提示する場合、振動の強さやタイミングによって体験が変わる可能性があります。
また、同じ振動であっても、身体のどの部位に提示するかによって感じ方が異なることも考えられます。
研究テーマとしては、「音楽と振動の同期は、利用者の没入感にどのような影響を与えるのか」「身体への振動提示位置の違いは、音楽体験の印象をどのように変化させるのか」といった問いが挙げられます。
さらに、ゲームや映像作品、ライブパフォーマンスなどへの応用を考えることもできます。
ただし、研究計画書では、既存の研究成果をそのまま再現するのではなく、自分が新しく検討したい課題を明確にすることが重要です。
TECHTILEに見る触覚体験の共有
Embodied Media Projectに関連する活動を理解するうえで、TECHTILEも注目したい取り組みです。
TECHTILEは、触覚に関する技術や体験を共有し、触覚を利用した新しい表現やコミュニケーションの可能性を探る取り組みとして知られています。
触覚は、映像や音声と比べると、他者へ伝えることが難しい情報の一つです。
例えば、物体に触れたときの感触を言葉で説明する場合、「柔らかい」「ざらざらしている」「弾力がある」といった表現を使うことがあります。
しかし、こうした言葉だけでは、実際の感触を正確に共有できるとは限りません。
触覚情報を取得し、別の場所で再現する技術を利用すれば、身体感覚を通じた新しい情報共有の方法を考えることができます。
TECHTILEのような取り組みは、触覚を専門家だけの研究対象とするのではなく、より多くの人が触覚表現を考えるための手がかりにもなります。
触覚を共有する技術の研究課題
触覚を共有する技術では、どのような情報を取得し、どのように再現するのかが重要になります。
例えば、物体の表面を指でなぞったときの振動を記録し、別の装置で再現することが考えられます。
ただし、触覚には、振動だけでなく、圧力や温度、摩擦など、複数の要素が関係します。
そのため、ある触覚情報を再現できたとしても、元の感覚と完全に同じ体験になるとは限りません。
研究テーマとしては、「触覚情報を再現する際、どのような要素が質感の認識に重要なのか」「触覚情報の提示方法によって、利用者の物体認識はどのように変化するのか」といった問いが考えられます。
このような研究では、センサー技術や信号処理だけでなく、人間の知覚特性を理解することも必要になります。
Telexistenceと遠隔体験の共有

Embodied Media Projectに関連する研究を理解する際には、Telexistenceという概念も重要です。
Telexistenceは、遠隔地にあるロボットやシステムなどを通じて、離れた場所に存在しているかのような体験や行動を実現することに関係する技術です。
例えば、遠隔地のロボットから映像を受け取り、そのロボットを操作することで、操作者が離れた場所の環境へ働きかけることが考えられます。
さらに、ロボットが物体に触れた際の力や感触を操作者へ伝えることができれば、映像だけでは得られない情報を受け取れる可能性があります。
こうした研究では、ロボティクス、通信技術、ハプティクス、VRなど、複数の分野が関係します。
身体性メディアという視点から見ると、遠隔地で得られた情報を、どのように人間の身体感覚として提示するのかが重要な研究課題になります。
遠隔体験を研究する際に考えたいこと
遠隔体験に関する研究では、単にロボットを操作できるだけでなく、操作者がどのような感覚を得られるのかも重要です。
例えば、遠隔操作では通信による遅延が発生することがあります。
映像と触覚情報が異なるタイミングで届いた場合、操作者の操作感や判断に影響が生じる可能性があります。
また、ロボットの動きと操作者の身体動作をどのように対応させるのかという問題もあります。
研究テーマとしては、「映像と触覚の遅延差は、遠隔操作の正確さにどのような影響を与えるのか」「身体動作を利用した操作方法は、遠隔操作の負担をどのように変化させるのか」といった問いが考えられます。
こうした研究では、技術的な性能と利用者の体験を組み合わせて評価することが重要です。
国内外での研究発表から分かること
ご提供いただいたKMD公式サイトの情報では、Embodied Media Projectに関連する研究成果が、東京ゲームショウ、Media Ambition Tokyo、国際会議CHIなど、さまざまな場で紹介されてきたことが示されています。
これらの発表の場は、それぞれ異なる特徴を持っています。
例えば、東京ゲームショウのような場では、ゲームやエンタテインメントに関心を持つ人々へ、新しい体験技術を紹介することが考えられます。
一方、CHIは、人間とコンピュータの関わり方を扱うHCI分野の国際会議として知られています。
研究成果を学術的な議論の場で発表する場合には、研究の背景や方法、評価結果などを整理することが重要になります。
また、メディアアートや体験型展示の場では、実際に作品を体験してもらうことで、技術の可能性を伝えることができます。
このように、研究成果がどのような場で発表されているのかを確認すると、その研究が技術開発、学術研究、社会への発信のどの側面を重視しているのかを考える手がかりになります。
受賞歴を見る際の注意点
研究プロジェクトを調べる際には、受賞歴も参考になります。
ご提供いただいた原稿では、Laval Virtual AwardやP&G Japan Partner of the Yearなどの受賞歴が関連情報として挙げられています。
ただし、受賞歴を志望理由書や研究計画書に記載する場合には、受賞した年度、対象となった研究成果、受賞者や受賞団体を正確に確認する必要があります。
研究プロジェクト全体の受賞なのか、関連する教員や共同研究先の受賞なのかによって、説明の仕方は異なります。
また、受賞歴があることだけを志望理由にするのではなく、評価された研究のどの部分に自分が関心を持ったのかを整理することが重要です。
例えば、触覚技術の新規性に関心を持ったのか、体験型コンテンツへの応用に関心を持ったのかによって、研究計画の方向性も変わります。
関連する教員の専門分野をどう読む?
Embodied Media Projectを理解する際には、南澤教授の専門分野だけでなく、KMDに在籍する関連分野の教員について調べることも参考になります。
例えば、VRや代替現実、身体情報学を専門とする脇坂崇平氏、デジタルファブリケーションやインタラクティブメディアを専門とする山岡潤一氏、身体情報学やハプティクスを専門とする堀江新氏などが挙げられます。
ただし、これらの教員が現在Embodied Media Projectに直接参加しているかどうかは、専門分野が近いという理由だけでは判断できません。
ここでは、プロジェクトの正式な参加教員として紹介するのではなく、身体性メディアに関係する研究領域を理解するための参考として、それぞれの専門分野を整理します。
脇坂崇平氏:VR・代替現実と身体情報学
脇坂崇平氏は、VR、代替現実(SR)、認知心理学、身体情報学などを専門分野とする教員として紹介されています。
身体性メディアの研究では、身体へ情報を提示する技術だけでなく、人間がその情報をどのように知覚するのかを考えることが重要です。
例えば、VR空間で仮想的な身体を提示した場合、利用者がその身体を自分のものとして感じるかどうかは、視覚情報や身体動作との関係によって変化する可能性があります。
また、現実の身体動作と仮想空間での動きが一致しているかどうかによって、体験の印象が異なることも考えられます。
こうした問題は、VR技術だけでなく、認知心理学や身体情報学とも関係します。
身体性メディアを人間の知覚や認知の側面から研究したい方にとって、参考になる専門分野です。
山岡潤一氏:デジタルファブリケーションと身体的な操作体験
Junichi Yamaoka(山岡潤一)氏は、ヒューマンコンピュータインタラクション、デジタルファブリケーション、メディアアート、インタラクティブメディアなどを専門分野としています。
デジタルファブリケーションは、コンピュータを利用した設計や加工技術によって、さまざまな形状や機能を持つ物体を制作することに関係します。
身体性メディアでは、身体に装着する装置や、手で触れて操作するインターフェースなど、物理的な試作品を制作することがあります。
例えば、装置の形状や素材によって、身体への負担や操作感が変化する可能性があります。
そのため、身体性メディアを研究する際には、情報処理の仕組みだけでなく、物理的な装置の設計も重要になります。
山岡氏の専門分野は、ものづくりと身体的な体験を組み合わせた研究を考えるうえで参考になります。
堀江新氏:身体情報学とハプティクス
Arata Horie(堀江新)氏は、身体情報学、ハプティクス、ヒューマンコンピュータインタラクションなどを専門分野とする教員として紹介されています。
身体情報学は、人間の身体や動作、感覚などを情報として扱い、その仕組みや応用を考える研究領域です。
例えば、身体の動きをセンサーで計測し、データとして分析することが考えられます。
また、身体の状態に応じて振動や触覚情報を提示する仕組みも、関連する研究対象になり得ます。
身体性メディアでは、身体から情報を取得する技術と、身体へ情報を伝える技術の両方が重要になります。
堀江氏の専門分野は、こうした情報の取得と提示の関係を考えるうえで参考になります。
研究プロジェクトと教員の専門分野はどう違う?
大学院を調べる際には、研究プロジェクトと教員の専門分野を区別して理解することが重要です。
教員の専門分野は、その教員が研究している学問領域や技術分野を示すものです。
一方、研究プロジェクトは、特定の研究目的や課題に向けて、教員や学生、共同研究者などが活動する単位です。
そのため、同じ専門分野を持つ教員であっても、必ず同じ研究プロジェクトに参加しているとは限りません。
また、過去に参加していた教員が現在も参加しているとは限らず、プロジェクトの活動内容も変化する場合があります。
出願を検討する際には、教員の公式プロフィールと研究プロジェクトの最新情報をそれぞれ確認することが重要です。
Embodied Media Projectから考える研究テーマ
Embodied Media Projectに関心を持った場合には、紹介されている研究成果を出発点として、自分の研究テーマを考えることができます。
例えば、シナスタジア・スーツに関心がある場合には、音楽と触覚の組み合わせによる体験の変化を研究する方向が考えられます。
TECHTILEに関心がある場合には、触覚情報の共有方法や、触覚を利用したコミュニケーションの可能性を考えることができます。
また、Telexistenceに関心がある場合には、遠隔地での身体感覚の共有や、触覚情報を利用した遠隔操作などが研究テーマの候補になります。
重要なのは、既存の研究成果をそのまま自分の研究テーマにするのではなく、その研究からどのような新しい問いを見いだすかという点です。
例えば、「触覚を使った新しい装置を作りたい」という目標を、「触覚情報の提示位置の違いは、利用者の空間認識にどのような影響を与えるのか」という研究上の問いへ発展させることが考えられます。
身体性メディアの研究では評価方法が重要
身体性メディアの研究では、装置やシステムを制作するだけでなく、その効果をどのように評価するのかが重要になります。
例えば、触覚情報を提示する装置を開発した場合には、利用者がどの程度正確に情報を理解できるのかを調べることが考えられます。
また、VR体験の没入感を研究する場合には、異なる条件で体験してもらい、主観的な評価や行動の違いを比較する方法があります。
研究目的によっては、操作時間や正答率などの数値を測定する方法と、アンケートやインタビューによって体験を把握する方法を組み合わせることも考えられます。
身体感覚や体験は個人差が大きい場合があるため、実験条件や参加者の特徴にも配慮する必要があります。
研究計画書では、何を制作するのかだけでなく、何を明らかにし、どのような方法で検証するのかまで説明できるようにしましょう。
プロジェクト型研究の魅力と注意点

Embodied Media Projectのような研究活動を調べると、大学院での研究が必ずしも一人で完結するものではないことが分かります。
身体性メディアの研究では、ハードウェアの設計、ソフトウェアの開発、身体感覚の評価、作品の制作など、複数の専門性が必要になる場合があります。
そのため、異なる知識や経験を持つ人々が協力することで、研究を進めやすくなる可能性があります。
一方で、プロジェクトの活動に参加することと、自分自身の修士研究を進めることは、必ずしも同じではありません。
共同研究に関わる場合でも、自分がどのような研究上の問いを担当し、どのような成果を目指すのかを明確にすることが重要です。
また、プロジェクトへの参加方法や活動内容、指導体制については、出願前に最新の情報を確認する必要があります。
学部での経験をどう研究につなげる?
Embodied Media Projectに関心がある方の学部時代の専門分野は、必ずしも情報工学だけとは限りません。
例えば、情報工学を学んできた方であれば、プログラミングやセンサー技術、信号処理などの知識を生かせる可能性があります。
また、デザインや芸術を学んできた方であれば、体験の設計や作品制作、利用者の反応を踏まえた改善などの経験が研究の出発点になるかもしれません。
心理学を学んできた方であれば、人間の知覚や認知、実験計画などの知識が関係する場合があります。
ただし、どのような経験が研究に生かせるかは、希望する研究テーマによって異なります。
自分の専門性を整理し、今後必要になる知識や技術を明確にしておくことが大切です。
研究計画書ではプロジェクトとの接点を具体化する
Embodied Media Projectに関心がある場合、研究計画書では「このプロジェクトに参加したい」という希望だけでは不十分です。
まず、自分がどのような身体感覚や体験に関心を持っているのかを整理する必要があります。
次に、その分野でどのような研究が行われてきたのかを調べ、まだ明らかになっていない課題や、さらに検討する必要がある問題を考えます。
例えば、触覚を利用した音楽体験に関心がある場合には、音楽と振動の組み合わせが利用者の体験に与える影響を研究テーマとして考えることができます。
その際には、対象となる利用者、提示する刺激、比較する条件、評価方法などを具体化することが重要です。
また、関連する教員の論文や研究成果を確認し、自分の研究テーマとの接点を説明できるようにしておきましょう。
研究プロジェクトの名称を挙げること自体が目的ではなく、その研究活動を通じて何を明らかにしたいのかを示すことが大切です。
志望理由書ではなぜKMDなのかを説明する
志望理由書では、Embodied Media Projectに魅力を感じた理由を、自分自身の経験や将来の目標と結びつけて説明することが重要です。
例えば、VRコンテンツの制作経験がある方であれば、視覚や聴覚だけでは実現できなかった体験を、触覚技術によってどのように発展させたいのかを説明できます。
また、遠隔コミュニケーションに関心がある方であれば、身体感覚を共有する技術が、どのような課題の解決につながるのかを考えることができます。
重要なのは、「有名なプロジェクトだから」「受賞歴が豊富だから」という理由だけで志望するのではなく、自分の問題意識と研究環境の接点を示すことです。
例えば、「身体感覚を利用した新しいコミュニケーションを研究したい。そのために、ハプティクスや身体情報学に関連する研究活動を調べ、技術開発と体験評価の両面から研究を進めたいと考えた」というように、具体的な研究目的へつなげるとよいでしょう。
過去の研究成果と現在の活動を区別する
研究プロジェクトについて調べる際には、過去の研究成果と現在進行中の活動を区別することが重要です。
大学院の公式サイトには、過去のニュース記事や研究成果が掲載されていることがあります。
こうした情報は研究の歴史や方向性を理解するうえで参考になりますが、紹介されている活動が現在も同じ体制で続いているとは限りません。
例えば、過去に発表された作品が現在の研究テーマの中心であるとは限らず、共同研究者や参加学生が変わっている可能性もあります。
そのため、研究プロジェクトの紹介ページだけでなく、最近の研究発表やニュース、教員の公式プロフィールなどを確認することが重要です。
特に、特定のプロジェクトへの参加を希望する場合には、現在の活動内容や参加方法、研究指導体制を確認しておきましょう。
KMDと他研究科をどう比較する?
身体性メディアに関心がある場合には、KMDだけでなく、情報工学系、ロボティクス系、認知科学系などの大学院も比較対象になります。
例えば、触覚提示装置の制御技術やロボットの動作制御を中心に研究したい場合には、工学系の研究環境が適している可能性があります。
一方、人間の身体感覚や知覚の仕組みを中心に研究したい場合には、心理学や認知科学の研究環境が近いこともあります。
また、身体感覚を利用した新しいメディアや体験を制作し、その効果を検討したい場合には、KMDの教員の専門分野と接点が見つかる可能性があります。
研究科の名称だけで判断するのではなく、自分が何を明らかにしたいのかを整理し、教員の専門分野や研究方法を比較することが重要です。
出願前に確認したいポイント
Embodied Media Projectに関心を持ってKMDを志望する場合には、まず公式サイトに掲載されている研究成果やプロジェクト紹介を確認しましょう。
そのうえで、南澤孝太教授をはじめとする関連分野の教員の専門性を調べ、自分の研究テーマとの接点を整理します。
また、過去の発表実績や受賞歴だけでなく、現在の活動内容や研究指導体制についても確認することが重要です。
出願資格、提出書類、英語に関する要件、研究計画の扱いなどについては、必ず受験年度の募集要項を確認してください。
教員への事前連絡やプロジェクトへの参加方法についても、最新の公式情報を確認しておく必要があります。
研究プロジェクトへの関心を出発点として、自分がどのような研究上の問いを持ち、どのような成果を目指したいのかを具体的に説明できるようにしておきましょう。
まとめ
慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(KMD)のEmbodied Media Projectは、身体感覚とデジタル技術の関係を考えるうえで注目したい研究活動です。
南澤孝太教授の専門分野であるハプティクスや人間拡張を中心に、触覚を利用した情報伝達や身体感覚の拡張、遠隔地での体験共有など、さまざまな研究の方向性を考えることができます。
また、シナスタジア・スーツ、TECHTILE、Telexistenceに関連する研究は、身体性メディアがエンタテインメント、コミュニケーション、ロボティクスなどの分野と接点を持つことを理解する手がかりになります。
さらに、脇坂崇平氏のVR・代替現実や認知心理学、山岡潤一氏のデジタルファブリケーションやインタラクティブメディア、堀江新氏の身体情報学やハプティクスなども、身体性メディアという分野を多角的に理解するうえで参考になります。
ただし、専門分野が近いことと、特定の研究プロジェクトに参加していることは同じではありません。教員の所属やプロジェクトへの関わり方については、最新の公式情報を確認する必要があります。
大学院受験で重要なのは、研究プロジェクトの実績に魅力を感じるだけでなく、その研究活動を通じて自分が何を明らかにしたいのかを具体化することです。
過去の研究成果や関連する教員の専門分野を丁寧に調べ、自分の問題意識と研究環境との接点を整理しながら、研究計画書や志望理由書の準備を進めていきましょう。
※本記事はご提供いただいたKMD公式サイトの教員情報および研究プロジェクトに関する情報をもとに作成しています。教員の所属・職位・専門分野・研究指導体制、プロジェクトの活動内容や参加体制、入試制度などは変更される場合があります。受験を検討している方は、必ず慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科の公式サイトおよび最新の入学試験要項をご確認ください。
志樹舎
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※この記事は専門家による監修のもと執筆されています。
この記事を監修した人
小杉 樹彦(こすぎ・たつひこ)
志樹舎 創業者/博士(学術)
慶應義塾大学院修了後、2015年1月に院試専門オンライン予備校「志樹舎」を設立。
代表講師として10〜60代まで延べ5,000人以上の受験生を指導。
早慶・国公立をはじめとする難関大学院で合格率9割超の実績を持つ。
現在は大学院入試対策の専門家として、テレビ・新聞・雑誌など幅広いメディアで活動中。
ロングセラー『減点されない!勝論文』(エール出版社)ほか著書・論文多数。


