KMDの核「リアルプロジェクト」とは?理論と実践を両立する学びの魅力

院試専門オンライン予備校「志樹舎」が運営する「慶應義塾大学大学院の院試対策ガイド」をご覧いただき、ありがとうございます。今回のテーマは「KMDの核『リアルプロジェクト』とは?理論と実践を両立する学びの魅力」です。

これまでの記事でも何度か登場してきた「リアルプロジェクト」という言葉ですが、今回は改めて、その全体像とKMDにおける位置づけを整理していきます。

KMD(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科)は、単に知識を学ぶだけではなく、実社会との接点を持ちながら新しい価値を生み出していくことを重視する大学院です。その考え方を最も象徴しているのが、リアルプロジェクトです。

受験を考えている方にとって、リアルプロジェクトを理解することは、「KMDで何を学べるのか」を知るだけでなく、「なぜ自分はKMDに進学したいのか」を明確にするうえでも重要です。


リアルプロジェクトとは何か

リアルプロジェクトとは、実社会に存在する課題や新しい可能性に対して、学生と教員がプロジェクト形式で取り組んでいくKMDの特徴的な学びです。

机上で考えるだけではなく、実際の社会や利用者、企業、地域などと接点を持ちながら、課題を見つけ、アイデアを考え、試し、検証していきます。

そのため、最初から正解が用意されているわけではありません。プロジェクトを進める中で、当初の仮説が間違っていると分かることもあれば、利用者へのヒアリングを通じて、別の課題が見えてくることもあります。

こうした試行錯誤そのものを学びとして捉えるところに、リアルプロジェクトの大きな特徴があります。


「リアル」なのは実社会とつながっているから

リアルプロジェクトという名前の通り、学内だけで完結しない点も重要です。

プロジェクトによっては、企業や自治体、地域、さまざまな組織やコミュニティなどと関わりながら活動することがあります。実際の社会には、予算、時間、制度、人間関係など多くの制約があります。

理論上は良いアイデアでも、現場では使ってもらえないこともあります。技術的には実現できても、費用面で継続できないこともあるでしょう。

リアルプロジェクトでは、こうした現実の条件と向き合いながら、「ではどうすれば本当に社会で使われるのか」を考えていきます。

単に作品やアイデアを完成させるだけではなく、それを社会の中でどう機能させるのかまで考える点が、KMDらしい学びのひとつです。


実践だけではなく理論も重要

リアルプロジェクトという言葉から、「KMDは実践だけを重視する大学院なのでは」と感じる方もいるかもしれません。しかし、実際には理論的な学びも重要です。

新しいサービスやプロダクトをつくる場合でも、なぜその課題が生まれているのか、過去にはどのような研究や取り組みが行われてきたのかを理解する必要があります。

何も調べずにアイデアだけを出しても、すでに同じ試みが存在していたり、過去に失敗した方法を繰り返してしまったりする可能性があります。

そのため、授業や文献調査などで得た知識をリアルプロジェクトで実践し、実践から得られた疑問を再び研究へ戻して考えるという往復が大切になります。

「考える」と「つくる」を分けるのではなく、両方を行き来しながら研究を深めていくことがKMDの特徴です。


多分野横断を実際に経験する場

KMDでは、多分野横断という考え方が重視されています。その考え方を実際の活動として経験できるのもリアルプロジェクトです。

たとえば、ひとつのサービスを考えるだけでも、技術、デザイン、利用者の行動、ビジネス、社会制度など、さまざまな視点が必要になります。

エンジニアリングを得意とする人だけで集まるのではなく、デザインやビジネス、社会的な視点を持つ人と意見を交わすことで、一人では気づかなかった問題が見えてくることがあります。

その一方で、自分とは異なる考え方を持つ人と活動するため、意見が合わないこともあるでしょう。自分の考えを説明し、相手の意見を聞き、必要であれば方針を修正することも求められます。

こうした協働の経験そのものが、多様な人と新しい価値を生み出すための訓練になります。


アイデアをプロトタイプにする

リアルプロジェクトでは、頭の中で考えたアイデアを、実際に試せる形へ落とし込むことも重要です。

必ずしも最初から完成品をつくる必要はありません。簡単な模型、画面イメージ、動画、サービスの流れを示した図など、アイデアに応じた形でプロトタイプをつくり、他者に使ってもらうことができます。

実際に見せたり使ってもらったりすると、「自分では分かりやすいと思っていたが、利用者には伝わらなかった」といった発見が生まれます。

そこで終わるのではなく、フィードバックをもとに改善し、もう一度試す。この繰り返しによって、アイデアが徐々に現実的なものになっていきます。

KMDで重視される行動しながら考える姿勢は、こうしたプロセスにも表れています。


社会実装まで考えることがポイント

リアルプロジェクトを理解するうえで重要なのが、「社会実装」という視点です。

良い研究成果や魅力的なプロトタイプができても、研究室の中だけで終わってしまえば、社会に変化を生み出すことはできません。

誰に使ってもらうのか、継続して利用してもらうには何が必要なのか、企業や自治体などとどのように連携するのかといったところまで考える必要があります。

もちろん、修士課程の期間内にすべてを社会へ普及させることが求められるわけではありません。しかし、研究成果をどのように社会へつなげていくのかという視点を持つことは、リアルプロジェクトに取り組むうえで重要です。


社会人の経験もリアルプロジェクトで活かせる

社会人受験生にとって、リアルプロジェクトはこれまでの実務経験を活かしやすい環境でもあります。

仕事の中で顧客の課題を聞いてきた経験、チームをまとめてきた経験、企画を形にした経験、社内外の関係者との調整経験などは、プロジェクト活動でも役立つ可能性があります。

一方で、実務では当たり前だと思っていた方法を、異なる専門性を持つ学生や教員から問い直されることもあるでしょう。

これまでの経験をそのまま持ち込むだけではなく、新しい視点と組み合わせることで、社会人ならではの経験を研究へ発展させられる点も魅力です。


受験前にリアルプロジェクトを調べる理由

KMDを志望するのであれば、出願前に現在どのようなリアルプロジェクトが行われているのかを調べておくことをおすすめします。

自分の研究テーマと完全に同じプロジェクトを探す必要はありません。それよりも、「KMDではどのような課題を、どのような方法で研究しているのか」を理解することが重要です。

公式サイトに掲載されているプロジェクト情報や、KMD Forumなどで紹介される成果を見ることで、パンフレットだけでは分からない研究の具体像が見えてきます。

そのうえで、「自分ならこの環境で何をしたいか」「自分の経験をどのように活かせるか」を考えると、Statement of Purposeや面接での「なぜKMDなのか」という回答にも具体性が生まれます。


リアルプロジェクトは「入りたいプロジェクトを探す」だけではない

受験生の中には、自分のテーマに近いリアルプロジェクトを見つけ、「ここに参加したい」と考える方もいるでしょう。もちろん、具体的な関心を持つことは大切です。

ただし、リアルプロジェクトの内容や担当教員は年度によって変化する可能性があります。また、入学後の研究テーマについても、出願時点の計画から変化することがあります。

そのため、特定のプロジェクトだけに依存した志望理由にするよりも、「KMDのリアルプロジェクトという学び方を、自分の研究にどう活かしたいのか」という広い視点も持っておきましょう。

自分の問題意識に軸を持ちながら、入学後に新しいプロジェクトや人との出会いを通じて研究を発展させる柔軟性も重要です。


まとめ

KMDのリアルプロジェクトは、実社会の課題や新しい可能性に向き合いながら、学生と教員が研究と実践を進めていく、KMDを象徴する学びのひとつです。

理論を学ぶだけでも、実際にものをつくるだけでもありません。調査し、考え、試し、他者から意見をもらい、改善しながら、研究成果を社会へつなげていく。その一連のプロセスが学びになります。

また、多様な専門性を持つ人とチームで活動することで、自分一人では持てなかった視点を得られることもリアルプロジェクトの魅力です。

KMDを目指す方は、「どのリアルプロジェクトに入りたいか」だけではなく、「リアルプロジェクトという環境で、自分は何を学び、何を持ち込み、どのような価値を生み出したいのか」まで考えてみてください。

リアルプロジェクトへの理解が深まると、KMDが一般的な大学院とどのように異なるのか、そして自分がKMDを目指す理由も、より具体的に見えてくるはずです。


※本記事は執筆時点の情報をもとに作成しています。KMDのリアルプロジェクトの名称、テーマ、担当教員、活動内容、外部連携先、カリキュラム上の位置づけなどは年度によって変更される場合があります。受験を検討される際は、必ず慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科の公式サイトおよび最新のカリキュラム・募集要項をご確認ください。

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※この記事は専門家による監修のもと執筆されています。

この記事を監修した人

小杉樹彦(志樹舎 創業者)

小杉 樹彦(こすぎ・たつひこ)
志樹舎 創業者/博士(学術)
慶應義塾大学院修了後、2015年1月に院試専門オンライン予備校「志樹舎」を設立。 代表講師として10〜60代まで延べ5,000人以上の受験生を指導。 早慶・国公立をはじめとする難関大学院で合格率9割超の実績を持つ。 現在は大学院入試対策の専門家として、テレビ・新聞・雑誌など幅広いメディアで活動中。 ロングセラー『減点されない!勝論文』(エール出版社)ほか著書・論文多数。