
【KMD面接対策③】研究の「新規性」をどう証明する?調べ学習で終わらせない修士研究の考え方
院試専門オンライン予備校「志樹舎」が運営する「慶應義塾大学大学院の院試対策ガイド」をご覧いただき、ありがとうございます。今回のテーマは「【KMD面接対策③】研究の『新規性』をどう証明する?調べ学習で終わらせない修士研究の考え方」です。
KMD(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科)の面接では、研究テーマの社会的意義とあわせて、「その研究のどこが新しいのか」を説明できることが重要です。
受験生の中には、関連する論文や事例をたくさん調べ、研究計画を丁寧にまとめているにもかかわらず、「結局、既にあるものを整理しているだけでは?」と指摘されてしまうケースがあります。修士研究では、情報を集めるだけではなく、その先に自分自身の問いや視点を加える必要があります。
今回は、KMDの面接対策として、「調べ学習」と「研究」の違いを整理しながら、自分の研究テーマの新規性をどのように考え、面接で説明すればよいのかを解説します。
「調べたことをまとめる」と「研究する」は違う
研究テーマを考えるとき、まず関連する情報を集めることは重要です。学術論文、書籍、企業のサービス、行政の取り組みなどを調べることで、自分のテーマについて現在どこまで分かっているのかを把握できます。
ただし、そこで終わってしまうと、単なる情報整理になってしまいます。
たとえば、「高齢者向けの見守りサービスにはこのようなものがあります」「生成AIは教育現場でこのように利用されています」と既存の事例をまとめるだけでは、自分自身の研究上の問いが見えてきません。
研究では、既に分かっていることを踏まえたうえで、「まだ分かっていないことは何か」「現在の方法にはどのような課題があるのか」「別の視点から考えると何が見えるのか」という問いを立てる必要があります。
その問いが、自分の研究の新規性につながります。
新規性は「世界初」でなければならないのか
新規性という言葉を聞くと、「誰も考えたことがない世界初のアイデアを出さなければならない」と身構えてしまう方もいるでしょう。
しかし、修士研究を考える際には、新規性をもっと細かく分解して考えることができます。
たとえば、既存の技術をこれまで使われてこなかった対象に応用する、別々に研究されてきた二つの領域を組み合わせる、既存サービスでは十分に扱われていない利用者に注目する、これまでとは異なる方法でデータを集めるといった形でも、新しい研究の可能性は生まれます。
重要なのは、「絶対に世界初です」と大きく言い切ることではありません。自分が調べた既存研究や事例と比較しながら、「これまでとはこの点が異なる」と説明できることです。
まず「すでにあるもの」を徹底的に調べる
自分の研究が新しいかどうかを判断するためには、既存の取り組みを知る必要があります。
学術研究であれば、Google ScholarやCiNii Researchなどを使って関連論文を探す方法があります。研究テーマを日本語だけでなく英語でも検索すると、海外で既に行われている研究が見つかることもあります。
KMDのように社会実装や実践との接点が大きい研究では、論文だけでなく、企業の商品やサービス、スタートアップの事例、行政やNPOの取り組みなども確認しておくとよいでしょう。
「論文にはなかったから新しい」と判断したものが、既に企業によってサービス化されている可能性もあります。反対に、市場には似たサービスがあっても、学術的には十分に検証されていない場合もあります。
研究と実社会の両方を調べることで、自分のテーマがどこに位置するのかが見えやすくなります。
既存研究と自分の研究を比較する
新規性を説明する際には、「私の研究は新しいです」と言うだけでは十分ではありません。既存研究や既存サービスとの比較が必要です。
たとえば、既存の研究Aでは大学生を対象としているが、自分は高校生を対象にする。既存サービスBでは利用者へ情報を一方的に提供しているが、自分の研究では利用者同士のコミュニケーションを組み込む、といった形です。
比較する軸としては、対象者、利用する技術、研究方法、利用場面、目的、得られる体験などがあります。
「似たものがあるか、ないか」という二択ではなく、「どの部分は同じで、どの部分が違うのか」を整理しましょう。
既存研究との共通点を認めたうえで、自分の研究で新しく加える部分を説明できれば、無理に新しさを大きく見せる必要はありません。
「対象を変える」だけでも新規性になる?
対象者を変えることは研究の新規性につながる可能性がありますが、単純に対象を変えればよいわけではありません。
たとえば、大学生向けに研究されてきたサービスを高齢者向けにする場合、「対象が違うから新しい」だけでは弱い場合があります。
なぜ高齢者に適用する必要があるのか、高齢者特有のどのような課題があるのか、対象が変わることで既存の方法では対応できない部分は何かまで説明できると、新しい研究としての意味が見えてきます。
新規性を考える際には、違いそのものではなく、「その違いによって何が新しく明らかになるのか」を考えることが重要です。
技術の組み合わせだけで終わらせない
KMDではテクノロジーを活用した研究を考える方も多いため、「AIと○○を組み合わせます」「VRを○○に使います」といったテーマも考えられます。
しかし、新しい技術を使うだけで研究の新規性が自動的に生まれるわけではありません。
なぜAIを使う必要があるのか、従来の方法では何ができなかったのか、その技術を使うことで利用者や社会にどのような新しい価値が生まれるのかまで説明する必要があります。
技術は研究の目的ではなく、問いに答えるための手段です。「最新だから使いたい」ではなく、「この課題を解決するために、この技術が必要である」という順番で考えましょう。
面接で「それ、もうありますよ」と言われたら
新規性について説明していると、面接官から「似た研究がありますよ」「そのサービスは既に存在しています」と指摘される可能性もあります。
そのときに、知らなかったものを無理に否定する必要はありません。
「その事例については把握していませんでした。確認したうえで、自分の研究との違いを改めて整理したいです」と答えることもできます。
もし既存事例を知っていて、自分の研究との差を説明できるのであれば、「確かに○○という点では似ています。ただ、既存の取り組みは○○を対象としており、私の研究では○○に注目する点が異なります」と冷静に説明しましょう。
面接は自分のアイデアを守り抜く場ではありません。指摘を受けて考えを深められる柔軟性も大切です。
「自分しか思いつかない」ではなく根拠を示す
新規性を語るとき、「このアイデアは自分しか思いついていません」という説明は避けたほうがよいでしょう。
本当に他に存在しないことを確認するのは非常に難しいからです。
代わりに、「関連する先行研究を調べたところ、○○については研究されていますが、○○という条件を組み合わせた研究は十分に見つけられませんでした。そのため、この部分を検証したいと考えています」というように、自分が調べた根拠を示します。
新規性は自信の強さで証明するものではなく、既存研究との比較によって説明するものだと考えてください。
新規性を一文で説明する練習をする
面接では、「あなたの研究の新規性は何ですか?」と短く聞かれる可能性があります。
その場で長い説明から始めるのではなく、まず一文で答えられるようにしておくとよいでしょう。
「既存研究では○○が中心でしたが、私は○○に注目し、○○という方法で検証する点に新規性があります」という形で整理すると、比較が分かりやすくなります。
その後、「具体的には?」と聞かれたら、先行研究や既存サービスを挙げながら詳しく説明します。
30秒版、1分版、3分版と、説明の長さを変える練習も有効です。
新規性と社会的意義をつなげる
新規性だけを追い求めると、「新しいけれど、なぜ必要なのか分からない」という研究になることがあります。
前回の記事で紹介した社会的意義と、新規性をセットで考えることが重要です。
「既存の方法では○○という人の課題が十分に解決されていない。そのため、これまでとは異なる○○というアプローチを試す」という流れになれば、なぜ新しい研究が必要なのかが分かります。
新規性は目立つためのものではなく、既存の方法では解決できない課題に向き合うために必要なものです。この考え方を持つと、研究テーマ全体にも一貫性が生まれます。
まとめ
KMDの面接で研究の新規性を説明する際には、「世界初です」と主張することよりも、既存研究やサービスを調べたうえで、自分の研究がどこで異なるのかを具体的に示すことが重要です。
修士研究の新しさは、新しい技術を発明することだけではありません。対象、方法、組み合わせ、利用場面、問いの立て方などを変えることで、新しい研究の可能性が生まれることもあります。
まずは関連する先行研究や社会の取り組みを幅広く調べ、「すでに分かっていること」と「まだ十分に分かっていないこと」を整理しましょう。そのうえで、自分の研究がその間のどこに位置するのかを説明できるようにします。
また、面接官から類似研究を指摘された場合には、無理に否定せず、違いを説明するか、新しい情報として受け止める柔軟性も大切です。
新規性を考える作業は、面接対策のためだけではありません。「自分は何を新しく明らかにしたいのか」という研究そのものの中心を確認する作業です。調べるだけで終わらず、その先に自分自身の問いを置くことを意識して研究計画を深めていきましょう。
※本記事は執筆時点の情報をもとに作成しています。KMDの面接で実際に問われる内容、評価の観点、研究計画に求められる内容などは年度や入試期によって変更される可能性があります。また、本記事で紹介した質問例が実際の面接で必ず出題されることを示すものではありません。受験の際は、必ず慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科の公式サイトおよび最新の募集要項をご確認ください。
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※この記事は専門家による監修のもと執筆されています。
この記事を監修した人
小杉 樹彦(こすぎ・たつひこ)
志樹舎 創業者/博士(学術)
慶應義塾大学院修了後、2015年1月に院試専門オンライン予備校「志樹舎」を設立。
代表講師として10〜60代まで延べ5,000人以上の受験生を指導。
早慶・国公立をはじめとする難関大学院で合格率9割超の実績を持つ。
現在は大学院入試対策の専門家として、テレビ・新聞・雑誌など幅広いメディアで活動中。
ロングセラー『減点されない!勝論文』(エール出版社)ほか著書・論文多数。


