
【KMD面接対策②】研究の「社会的意義」をどう語る?あなたの研究は世の中をどう変えるか
院試専門オンライン予備校「志樹舎」が運営する「慶應義塾大学大学院の院試対策ガイド」をご覧いただき、ありがとうございます。今回のテーマは「【KMD面接対策②】研究の『社会的意義』をどう語る?あなたの研究は世の中をどう変えるか」です。
KMD(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科)の面接では、研究テーマそのものだけでなく、「その研究にはどのような意味があるのか」「誰にどのような価値をもたらすのか」という視点も重要です。
受験生の中には、研究内容については詳しく説明できても、社会的意義について聞かれると、「社会に貢献したいです」「人々の生活を豊かにしたいです」と抽象的な回答になってしまう方もいます。
しかし、KMDでは研究を研究室の中だけで完結させるのではなく、実社会との接点を持ちながら新しい価値を生み出していく姿勢が重視されています。今回は、面接で説得力のある社会的意義を語るために、どのように考えを整理すればよいのかを解説します。
そもそも「社会的意義」とは何か
社会的意義という言葉を難しく考える必要はありません。簡単に言えば、「その研究を行うことで、誰にどのような良い変化が生まれるのか」ということです。
たとえば、高齢者向けの新しいサービスを研究するのであれば、「高齢化社会に貢献します」だけでは十分とは言えません。どのような高齢者が、現在どのようなことで困っていて、その研究によって何が変わるのかを具体的に考える必要があります。
また、社会的意義は必ずしも大勢の人に影響を与えるものである必要はありません。特定の地域、特定の職業、ある病気を抱える人、教育現場の一部など、対象が限定されていても、その課題を解決する意味が明確であれば十分に社会的意義を考えることができます。
「世界を変えたい」だけでは伝わらない
面接でありがちなのが、「世界をより良くしたい」「社会に貢献したい」「人々を幸せにしたい」といった大きな言葉です。
もちろん、そのような思い自体が悪いわけではありません。しかし、それだけでは、具体的に何をしたいのかが読み手や面接官には伝わりません。
社会的意義を説明するときは、まず対象を絞ることが重要です。
「誰が困っているのか」「どのような状況で困っているのか」「現在の解決方法には何が足りないのか」という順番で考えてみましょう。
たとえば「働く人のストレスを減らしたい」ではなく、「在宅勤務が増えたことで孤立感を抱えやすくなった若手社員に対して、日常的なコミュニケーションを支援する仕組みを考えたい」とすれば、問題の姿が具体的に見えてきます。
「誰の課題か」を明確にする
社会的意義を考える第一歩は、研究の対象となる人を具体的にすることです。
対象を「高齢者」「学生」「企業」「地域住民」と大きく括るのではなく、もう一段階掘り下げてみましょう。
たとえば学生であれば、大学生なのか高校生なのか、勉強が苦手な学生なのか、進路選択に悩んでいる学生なのかによって、抱えている課題は大きく異なります。
対象となる人が具体的になれば、その人がどのような場面で困っているのかも考えやすくなります。そして、その課題を自分の研究でどのように変えたいのかというストーリーも明確になります。
「なぜその課題を解決する必要があるのか」を考える
次に考えたいのが、その課題を放置すると何が起こるのかという点です。
たとえば、あるサービスが使いにくいという課題があったとしても、それだけでは研究する必要性は十分に伝わらないかもしれません。その使いにくさによって、必要な情報へアクセスできない人がいる、サービス自体を利用できなくなる人がいる、といった影響まで考えることで、課題の重要性が見えてきます。
「不便だから改善したい」という説明から、「この不便によって誰がどのような機会を失っているのか」というところまで掘り下げると、社会的意義がより明確になります。
「なぜ今なのか」まで説明できると強い
社会的意義を考える際には、「なぜ今この研究に取り組む必要があるのか」という視点も重要です。
社会は変化しています。生成AIの普及、働き方の変化、少子高齢化、人口減少、外国人居住者の増加、教育環境の変化など、新しい技術や社会構造の変化によって、以前にはなかった課題が生まれることもあります。
自分の研究テーマが、現在のどのような社会変化と関係しているのかを説明できれば、その研究に今取り組む理由が明確になります。
ただし、流行しているキーワードを無理に入れる必要はありません。自分の研究テーマと実際に関係している社会変化を選ぶことが重要です。
研究によって「何が変わるのか」を具体化する
社会的意義を説明するときには、研究後の状態をイメージしてみましょう。
研究を行う前と後で、対象となる人の生活や行動、選択肢がどう変化するのでしょうか。
たとえば、新しい学習支援サービスを研究する場合、「学習効果を向上させる」という説明だけでなく、「これまで一人で勉強を続けられなかった学生が、自分に合った方法で継続できるようになる」と説明すれば、変化が具体的になります。
必ずしも数値まで示す必要はありませんが、「誰が、どう変わるのか」というイメージを持っておくことは、面接での説明にも役立ちます。
自分の研究で本当に解決できる範囲を見極める
社会的意義を大きく見せようとしすぎるのも注意が必要です。
たとえば、2年間の修士研究で「日本の教育格差をすべて解決します」と言っても、現実的ではありません。研究期間や利用できる資源を考え、自分の研究でどこまで取り組めるのかを整理しておきましょう。
大きな社会課題の中から、自分が扱える具体的な部分を切り出すことが重要です。
「教育格差を解消する」という大きな目標を持ちながら、修士研究では「特定の地域の高校生が進路情報へアクセスする際の課題を調査し、新しい情報提供方法を検証する」といった形まで絞れば、実現可能性も伝わりやすくなります。
メリットだけでなくリスクも考えておく
KMDの面接対策では、自分の研究の良い面だけを考えておくのではなく、想定される問題点についても整理しておくことをおすすめします。
新しい技術やサービスには、意図しない影響が生まれる可能性があります。
たとえばAIを利用したサービスであれば、個人情報、偏った判断、利用者の依存などの問題が考えられます。高齢者向けのテクノロジーであれば、使える人と使えない人の差が新たに生まれる可能性もあります。
面接で「その研究にデメリットはありませんか」と聞かれた際に、「ありません」と答えるより、「このようなリスクが考えられるため、研究ではこの点にも注意したい」と答えられるほうが、研究を多面的に考えていることが伝わります。
社会的意義は30秒でも説明できるようにする
社会的意義について長く説明できるようにするだけではなく、短く答える練習もしておきましょう。
たとえば「あなたの研究は社会にどのような価値がありますか」と聞かれた場合、最初に一文で答え、その後に理由や具体例を補足する方法があります。
「私の研究は、○○という人が現在抱えている○○という課題を、○○によって改善することを目指しています」という形で骨格をつくっておくと、英語での回答にも応用しやすくなります。
一度にすべて説明しようとせず、まず結論を伝え、その後の質問に応じて詳しく説明することを意識しましょう。
専門外の人にも説明してみる
社会的意義が伝わるか確認する簡単な方法が、自分の研究分野を知らない人に説明してみることです。
友人や家族に研究テーマを説明し、「それによって誰が助かるの?」「何が変わるの?」と質問してもらいましょう。
専門用語を使わずに答えられなかった場合は、自分の中でも研究の意義が十分に整理できていない可能性があります。
KMDには異なる専門分野を持つ教員や学生が集まります。専門外の人にも研究の意味が伝わるように説明できる力は、面接だけでなく、入学後のリアルプロジェクトでも重要になります。
まとめ
KMDの面接で研究の社会的意義を語る際は、「社会に貢献したい」という抽象的な言葉だけで終わらせず、「誰の、どのような課題を、どのように変えたいのか」を具体的に説明することが重要です。
さらに、なぜ今その研究が必要なのか、研究によってどのような変化が期待できるのか、自分の修士研究でどこまで取り組めるのかまで整理しておくと、回答の説得力が高まります。
また、研究がもたらすメリットだけではなく、考えられるリスクや限界にも目を向けておきましょう。批判的な質問を受けても、自分なりの考えを持っていれば落ち着いて対応しやすくなります。
社会的意義を考えることは、面接で良い回答をつくるためだけの作業ではありません。自分がなぜその研究をしたいのかを改めて確認し、研究テーマそのものを深める作業でもあります。「この研究によって、誰の何を変えたいのか」を自分の言葉で説明できるところまで、準備を進めていきましょう。
※本記事は執筆時点の情報をもとに作成しています。KMDの面接で実際に問われる内容、質問形式、評価の観点などは年度や入試期によって異なる場合があります。本記事で紹介した質問例が必ず出題されることを示すものではありません。受験の際は、必ず慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科の公式サイトおよび最新の募集要項をご確認ください。
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※この記事は専門家による監修のもと執筆されています。
この記事を監修した人
小杉 樹彦(こすぎ・たつひこ)
志樹舎 創業者/博士(学術)
慶應義塾大学院修了後、2015年1月に院試専門オンライン予備校「志樹舎」を設立。
代表講師として10〜60代まで延べ5,000人以上の受験生を指導。
早慶・国公立をはじめとする難関大学院で合格率9割超の実績を持つ。
現在は大学院入試対策の専門家として、テレビ・新聞・雑誌など幅広いメディアで活動中。
ロングセラー『減点されない!勝論文』(エール出版社)ほか著書・論文多数。


