【教員紹介】脇坂崇平特任助教|「代替現実システム」で現実と仮想の境界を溶かす

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今回のテーマは「【教員紹介】脇坂崇平特任助教|「代替現実システム」で現実と仮想の境界を溶かす」です。

KMD(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科)教員紹介シリーズ、最終回となる今回は、VRや人間の知覚・認知を研究し、理化学研究所で「代替現実システム」の開発にも携わってきた脇坂崇平特任助教を紹介します。

脇坂特任助教の研究では、現実と仮想の境界をどのように人間が認識するのかという根本的な問いから、VRを利用した身体スキルの習得支援まで、心理学とテクノロジーを横断したテーマが扱われています。これまで29回にわたって紹介してきたKMDの教員の中でも、人間の知覚そのものを研究対象としながら、新しいメディア体験へ結びつけている点が特徴です。


脇坂崇平特任助教はどのような研究者なのか

脇坂崇平特任助教の専門分野は、VR、SR(サブスティテューショナル・リアリティ)、認知心理学、身体情報学などです。東京大学教養学部では科学史・科学哲学を学び、その後、神戸大学大学院自然科学研究科で博士課程を修了しました。

経歴を見ると、最初から情報工学だけを専門としてきたわけではありません。科学とは何か、人間は世界をどのように理解するのかといった視点を持ちながら、知覚や認知を実験的に研究し、そこへVRなどの技術を組み合わせてきた研究者といえます。

理化学研究所の脳科学総合研究センターでは、現実と記録映像を混在させる「代替現実システム」の開発に携わりました。2022年からはKMDの特任助教として活動し、JSTムーンショット型研究開発事業のCybernetic Being ProjectではPM補佐を務めています。


「代替現実システム」で人間の知覚を探る

脇坂特任助教の研究を理解する上で重要なのが、代替現実システムです。これは、過去に記録した映像を利用しながら、それをあたかも今その場で起きている出来事のように体験させる技術です。

一般的なVRでは、利用者が現実とは異なる仮想空間へ入ることが分かりやすく示されることがあります。一方、代替現実では、現在の出来事と過去に記録された出来事を自然につなぐことで、体験者がどこまでを現実として受け入れるのかを調べることができます。

つまり、目的は単にリアルな映像を見せることではありません。私たちは何を手がかりに「これは今起きている」と判断しているのか、どの程度まで現実と記録映像が混ざっても違和感なく受け入れられるのかといった、人間の知覚や認知の仕組みそのものを研究するために活用されています。

記事案では、この研究成果がTEPIA先端技術館の展示や、Ars Electronicaで「Mirage」という作品として発表されたことも紹介されています。科学的な研究とメディア表現の両方につながっている点も、KMDの研究との親和性を感じられる部分です。


VRを使って身体スキルの習得を支援する

脇坂特任助教は、人間の視覚や知覚に関する基礎的な研究だけでなく、身体スキルの習得をテクノロジーで支援する研究にも取り組んでいます。

記事案では、片方の瞼を閉じたときの視覚や、単眼遮蔽によって生じる疑似的な内視現象など、人間がどのように世界を見ているのかを調べる研究が挙げられています。こうした基礎研究で得られた知見は、VR体験の作り方を考える際にも重要になります。

一方、応用的な研究としては、VRを使ってけん玉の技の習得を支援する取り組みや、ジャグリングの「投げる」「キャッチする」という動作を学習するために、時間の流れを操作できる力触覚提示VRを利用する研究などがあります。

現実世界では一瞬で終わってしまう動作でも、VR上で速度を変えたり、身体への感覚的な手がかりを加えたりすれば、動きのポイントを理解しやすくなる可能性があります。このような研究は、スポーツだけでなく、技能訓練や身体を使うさまざまな学習への応用も考えられます。


Embodied Media Projectで身体性を多角的に研究

KMDでは、脇坂特任助教は南澤孝太教授のEmbodied Media Projectに関わり、身体とメディアの関係について研究しています。これまで紹介してきた堀江新特任講師、Giulia Barbareschi特任准教授、吉田貴寿特任助教など、異なる専門性を持つ研究者とも研究活動を共にしています。

研究テーマには、複数の並行世界を探索するための身体変容体験や、視覚に依存せずに空間を認識する「Phantom Walls」などがあり、SIGGRAPH Asiaなどの国際的な場でも成果が発表されてきました。

同じ身体性メディアという領域でも、南澤教授は触覚や人間拡張、堀江特任講師はハプティクスや間身体性、Barbareschi特任准教授は障害とテクノロジー、吉田特任助教は空間体験など、それぞれ異なる視点を持っています。脇坂特任助教は、その中で知覚や認知、VRを中心とした視点を加えています。

KMDの分野横断性を理解する際には、教員を一人ずつ見るだけではなく、一つのプロジェクトの中にどのような専門家が集まっているのかを見ることも重要です。


受験生は「人はなぜそう感じるのか」から考える

脇坂特任助教の研究に関心がある受験生は、VRを使うこと自体を研究目的にするのではなく、「人間はなぜその体験を現実だと感じるのか」「身体はどのように技を覚えるのか」といった、人間側の問いから研究テーマを考えるとよいでしょう。

たとえば、VRを用いたトレーニングを研究する場合でも、単に仮想空間で練習できる仕組みを作るだけでは不十分です。どの情報を提示すると動作を理解しやすくなるのか、映像と触覚のどちらが学習に影響するのか、現実での技能向上につながるのかといった具体的な問いが必要になります。

心理学、認知科学、スポーツ、教育などを学んできた方でも、VRや身体性メディアへ研究テーマを広げられる可能性があります。研究計画や志望理由では、自分が理解したい人間の現象と、その検証にVRを使う理由を明確にしておくことが大切です。


まとめ

脇坂崇平特任助教は、理化学研究所での代替現実システムの開発をはじめ、人間の知覚・認知とVRを組み合わせた研究に取り組んできた研究者です。基礎的な視覚研究から、けん玉やジャグリングなどの身体スキル習得支援まで、研究対象も幅広く広がっています。

KMDではEmbodied Media Projectに関わり、さまざまな専門性を持つ研究者とともに、身体とメディアの新しい関係を探っています。現実と仮想の境界、人間の知覚、身体スキル、VRなどに関心がある方は、自分が技術を使って何を作りたいのかだけでなく、人間のどのような仕組みを理解したいのかまで掘り下げてみるとよいでしょう。

今回で、KMD教員紹介シリーズ全29回が完結しました。KMDには、工学、HCI、デザイン、ビジネス、教育、社会科学、アートなど、異なる専門性を持つ教員が在籍しています。出願を考えている方は、29名の中から単に興味のある教員を選ぶだけではなく、自分の問題意識と各教員の研究がどこで重なるのかを確認し、研究計画や志望理由、面接準備につなげてみてください。


※本記事は記事作成時点の情報をもとに作成しています。入試制度、出願資格、提出書類、カリキュラム、教員の所属・役職・研究内容などは変更される場合があります。受験を検討している方は、必ず慶應義塾大学および慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科の公式サイト、最新の入学試験要項をご確認ください。

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※この記事は専門家による監修のもと執筆されています。

この記事を監修した人

小杉樹彦(志樹舎 創業者)

小杉 樹彦(こすぎ・たつひこ)
志樹舎 創業者/博士(学術)
慶應義塾大学院修了後、2015年1月に院試専門オンライン予備校「志樹舎」を設立。 代表講師として10〜60代まで延べ5,000人以上の受験生を指導。 早慶・国公立をはじめとする難関大学院で合格率9割超の実績を持つ。 現在は大学院入試対策の専門家として、テレビ・新聞・雑誌など幅広いメディアで活動中。 ロングセラー『減点されない!勝論文』(エール出版社)ほか著書・論文多数。