慶應KMDとSDMの違いを比較

慶應KMDとSDMの違いは?どんな研究テーマに向いている?

院試専門オンライン予備校「志樹舎」が運営する「慶應義塾大学大学院の院試対策ガイド」をご覧いただき、ありがとうございます。今回のテーマは「慶應KMDとSDMの違いは?どんな研究テーマに向いている?」です。

慶應義塾大学の独立研究科の中でも、メディアデザイン研究科(KMD)とシステムデザイン・マネジメント研究科(SDM)は、どちらも「デザイン」という言葉を含んでいることから、違いが分かりにくいと感じる受験生が多い組み合わせです。しかし、実際に研究科の特色を見ていくと、研究対象の捉え方や研究成果の形、学びのアプローチには違いがあります。

大学院選びでは、研究科の名称だけで判断するのではなく、「自分は何を研究したいのか」「どのような方法で研究したいのか」「研究成果をどのような形で社会につなげたいのか」という視点から比較することが重要です。この記事では、KMDとSDMの特徴を整理しながら、どのような研究テーマがそれぞれの研究科に結びつきやすいのかを考えていきます。

KMDとSDMは、どちらも日吉キャンパスの独立研究科

慶應義塾大学日吉キャンパスと大学院のイメージ

メディアデザイン研究科とシステムデザイン・マネジメント研究科は、いずれも特定の学部に属さない独立研究科として、日吉キャンパスを拠点としています。既存の学問分野の枠組みにとらわれず、複数の専門性を組み合わせて新しい価値を生み出すことを目指している点は共通しています。

そのため、大学時代の専攻と大学院で取り組みたいテーマが完全に一致していない人や、社会人としての実務経験を研究につなげたい人にとっても、検討対象になりやすい研究科といえます。工学や情報分野だけではなく、デザイン、ビジネス、社会科学など、異なるバックグラウンドを持つ人が一つの研究テーマに関わることが想定されています。

ただし、「学際的」という言葉だけを見ると両研究科は似ていますが、何を組み合わせ、どのような課題にアプローチするのかには違いがあります。KMDはメディアや体験、新しい価値の創造に結びつくテーマとの親和性が高く、SDMは複数の要素が絡み合う複雑なシステムを捉え、課題解決につなげるアプローチを重視しています。

KMDは技術・デザイン・経営・コンテンツの融合

メディアデザイン研究科は、技術、デザイン、経営、コンテンツという複数の視点を組み合わせながら、新しいメディアや体験を生み出すことを重視する研究科です。研究プロジェクトを軸として活動が行われ、テクノロジーと人間の感覚を組み合わせる研究や、物理空間とデジタル空間を融合させる取り組み、新しいコミュニケーション体験の設計など、多様なテーマを研究対象として考えることができます。

特徴的なのは、研究を論文の中だけで完結させるのではなく、アイデアを実際に形にしながら検証していくという発想です。プロトタイプやサービス、コンテンツなどを制作し、実際に人が利用したときにどのような体験が生まれるのかを検証するような研究とも相性があります。

例えば、VR・ARを活用した新しい体験、AIを利用したコミュニケーション、身体感覚とデジタル技術の融合、新しい映像・音楽表現、教育とテクノロジーを組み合わせたサービスなどを研究したい場合には、KMDの研究プロジェクトや教員の研究内容を確認してみる価値があります。

一方で、「面白いサービスを作りたい」というアイデアだけでは研究計画として十分とは限りません。なぜその体験や技術が必要なのか、どのような社会的・学術的課題と結びついているのか、制作したものをどのように検証するのかまで考えることが、大学院での研究につなげるうえでは重要になります。

SDMはシステム思考によるマネジメントの実践

慶應SDMでシステム思考を学ぶイメージ

システムデザイン・マネジメント研究科は、複雑な社会システムや技術システムを、個々の要素だけではなく全体のつながりとして捉える「システム思考」を重視している研究科です。

現代社会の課題には、一つの技術や一つの組織だけでは解決できないものが数多くあります。例えば、地域交通を考える場合でも、交通技術だけではなく、自治体、利用者、事業者、人口構造、採算性、地域政策など、さまざまな要素が関係します。SDMでは、このように複数の要素が相互に影響する問題をシステムとして捉え、より良い仕組みを設計する視点が重要になります。

そのため、製品や技術の開発だけでなく、組織マネジメント、社会制度、地域課題、事業開発、イノベーション、防災、モビリティなど、幅広いテーマを研究対象として検討できます。工学的な背景を持つ学生だけではなく、社会科学系の学生や社会人など、多様な経験を持つ人が学ぶことを想定した環境であることも特徴です。

自分自身の実務経験の中で感じてきた課題を、「個人や一企業の問題」としてではなく、関係者や制度を含むシステム全体の問題として捉え直したい社会人にとっても、SDMの考え方は研究テーマを整理する一つの手がかりになるでしょう。

研究テーマから考えるKMDとSDMの違い

研究科選びで迷った場合には、「何を研究するか」だけではなく、「そのテーマをどのような方法で研究したいか」を考えることが重要です。同じ社会課題を扱う場合でも、KMDとSDMでは研究へのアプローチが変わる可能性があります。

例えば「高齢者の生活をテクノロジーで支援したい」というテーマを考えてみます。KMDであれば、高齢者が直感的に利用できるインターフェースを開発したり、身体感覚を支援する新しいデバイスを制作したりするなど、具体的な体験やプロトタイプの設計へと発展させることが考えられます。

一方、SDMで同じ問題を扱うのであれば、高齢者本人だけではなく、家族、医療・介護事業者、自治体、地域社会、テクノロジー企業などの関係性を整理し、持続可能な支援システムそのものを設計する方向へ発展させることも考えられます。

このように、KMDかSDMかを単純に研究テーマの「分野」だけで決めることは難しい場合があります。具体的なものづくりや新しい体験の創出を通じて研究したいのか、それとも複雑な問題を構成する要素や関係性を整理し、システム全体を設計したいのかという視点を持つと、自分の研究テーマとの接点を考えやすくなります。

研究成果をどのような形にしたいかも考える

慶應KMDとSDMの研究テーマを考えるイメージ

研究科を比較するときには、最終的にどのような成果を生み出したいのかという視点も役立ちます。KMDを検討する場合には、新しいプロダクト、サービス、メディア、コンテンツ、体験など、自分のアイデアを具体的な形にすることへの関心があるかを考えてみるとよいでしょう。

SDMを検討する場合には、複雑な課題を分析して関係性を可視化したり、新しい仕組みや事業モデルを設計したり、組織や社会システムの改善方法を提示したりすることへの関心があるかを整理してみると、研究科との接点が見えやすくなります。

ただし、KMDなら必ず作品を作り、SDMなら必ず制度設計をするという単純な区分ではありません。実際の研究テーマや研究方法は、所属するプロジェクトや指導教員によって異なります。そのため、自分のテーマを研究科の名称だけに当てはめるのではなく、教員の専門分野や実際の研究事例まで確認することが大切です。

研究科選びで確認したいポイント

両研究科を比較する際は、過去にどのような研究プロジェクトが行われてきたかを、各研究科の公式サイトで確認してみることをおすすめします。自分がイメージしている研究テーマが、作品やプロダクトとして形にするものなのか、それとも仕組みや制度をどう組み立てるかを考えるものなのかを整理しておくと、どちらの研究科がより近いかを判断しやすくなります。

さらに重要なのが、教員との研究テーマの接点です。「KMDに行きたい」「SDMに行きたい」という研究科単位の志望だけではなく、自分が取り組みたいテーマについて専門的な指導を受けられる教員や研究プロジェクトが存在するかを確認する必要があります。

社会人として働きながら進学を考えている場合には、授業の開講時間や研究活動に必要な時間、仕事との両立方法なども確認しておきたいポイントです。大学院は授業を受けるだけではなく、自分自身で研究を進める時間も必要になるため、説明会などの機会を利用して実際の学修スタイルを確認しておくとよいでしょう。

また、入試を考える段階では、最新の募集要項を確認し、出願資格、提出書類、選考方法、英語資格・スコアの扱いなどを整理しておく必要があります。同じ慶應義塾大学の独立研究科であっても、入試制度まで同じとは限りません。

研究計画を考えると違いが見えやすくなる

KMDとSDMのどちらに出願するか迷っている場合は、一度、自分の研究テーマを簡単な研究計画の形にしてみる方法もあります。「どのような課題を解決したいのか」「なぜその課題に関心を持ったのか」「誰がその課題の当事者なのか」「どのような方法で研究するのか」「最終的に何を明らかにしたいのか」を書き出してみましょう。

そのうえで、実際にプロトタイプを作り、新しい体験や価値を生み出しながら検証したいという方向性が強ければ、KMDとの接点を探しやすくなります。反対に、多数の関係者や技術、制度、組織などが絡む問題を整理し、システム全体のあり方を考えたいという方向性が強ければ、SDMの研究アプローチとの接点を検討できます。

重要なのは、最初から自分の研究テーマを無理に研究科へ合わせることではありません。まず自分の問題意識を明確にし、その問題を研究するために適した環境としてKMDとSDMを比較するという順序で考えると、志望理由にも一貫性を持たせやすくなります。

まとめ

メディアデザイン研究科(KMD)とシステムデザイン・マネジメント研究科(SDM)は、いずれも学際的な研究を行う慶應義塾大学の独立研究科ですが、研究へのアプローチには違いがあります。KMDでは技術、デザイン、経営、コンテンツなどを横断しながら、新しいメディアや体験、プロダクトなどを生み出す研究との接点を見つけやすいでしょう。一方、SDMではシステム思考を用いて、技術、組織、社会などが複雑に関係する課題を捉え、全体としてより良い仕組みを考えていく研究との接点を探すことができます。

研究科名の印象だけで選ぶのではなく、「何を研究したいか」「どのような方法で研究したいか」「どの教員から指導を受けたいか」という三つの視点から比較することが重要です。自分の研究テーマを一度文章にしてから、両研究科の教員や研究プロジェクトと照らし合わせてみると、志望先をより具体的に検討しやすくなるでしょう。


※本記事は記事作成時点の情報をもとに作成しています。入試制度、出願資格、提出書類、試験内容、カリキュラム、教員情報などは変更される場合があります。受験を検討している方は、必ず慶應義塾大学および対象研究科の公式サイト、最新の入学試験要項をご確認ください。

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※この記事は専門家による監修のもと執筆されています。

この記事を監修した人

小杉樹彦(志樹舎 創業者)

小杉 樹彦(こすぎ・たつひこ)
志樹舎 創業者/博士(学術)
慶應義塾大学院修了後、2015年1月に院試専門オンライン予備校「志樹舎」を設立。 代表講師として10〜60代まで延べ5,000人以上の受験生を指導。 早慶・国公立をはじめとする難関大学院で合格率9割超の実績を持つ。 現在は大学院入試対策の専門家として、テレビ・新聞・雑誌など幅広いメディアで活動中。 ロングセラー『減点されない!勝論文』(エール出版社)ほか著書・論文多数。