
慶應KMDとKBSの違いは?研究・ビジネス・キャリアから考える
院試専門オンライン予備校「志樹舎」が運営する「慶應義塾大学大学院の院試対策ガイド」をご覧いただき、ありがとうございます。今回のテーマは「慶應KMDとKBSの違いは?研究・ビジネス・キャリアから考える」です。
メディアデザイン研究科(KMD)と経営管理研究科(KBS)は、どちらもビジネスに関わる学びを含んでいることから、進学先として同時に検討する受験生もいる組み合わせです。しかし、両研究科では「ビジネス」を扱う目的や、学びの中心となるテーマが大きく異なります。
KMDでは、テクノロジーやデザイン、コンテンツなどを組み合わせて新しい価値を生み出し、それを社会へ実装していく過程で経営的な視点を取り入れます。一方、KBSでは企業経営や組織、戦略、マーケティング、会計・ファイナンスなど、経営そのものを中心に学びます。この記事では、研究の性質、学び方、研究テーマ、修了後のキャリアという観点から、両研究科の違いを整理していきます。
KMDとKBSはどちらもビジネスと関わりを持つ

メディアデザイン研究科は、技術、デザイン、経営、コンテンツなどの領域を横断しながら、新しいメディアや体験、サービスを生み出していくことを目指す研究科です。そのため、経営はKMDを構成する重要な視点のひとつですが、経営学だけを専門的に学ぶことが目的ではありません。
例えば、新しいデジタルサービスを開発するとしても、技術的に実現できるだけでは社会に広がるとは限りません。誰にどのような価値を提供するのか、どのようなビジネスモデルを構築するのか、どのような形で社会へ実装するのかといった視点も必要です。KMDでは、このような新しい価値を社会につなげるための要素として、経営やビジネスを考えることができます。
一方、経営管理研究科(KBS)は、経営に関する理論と実践を体系的に学ぶビジネススクールです。企業や組織が直面するさまざまな課題について考え、経営者やマネジメント人材として必要になる判断力を養っていくことが学びの中心になります。
つまり、どちらにもビジネスという要素はありますが、KMDでは「新しい価値を生み出し、社会へ届けるためのビジネス」、KBSでは「企業や組織を経営するためのビジネス」というように、関心の置き方に違いがあると考えると整理しやすくなります。
KMDはものづくりの中に経営の視点を組み込む
メディアデザイン研究科における経営の視点は、新しいメディアやプロダクト、サービスなどを社会に実装していく過程で必要になる、事業化やマネジメントの知識と深く関係します。
研究では、アイデアを考えるだけではなく、プロトタイプを制作したり、ユーザーに実際に利用してもらったりしながら、新しい価値を検証していくことがあります。その過程では、技術だけでなく、ユーザー体験、デザイン、コンテンツ、事業性など、複数の視点から研究対象を考えることになります。
例えば、AIを利用した新しいサービスを研究したい場合、AI技術そのものの性能だけではなく、「誰が使うのか」「どのような体験を提供するのか」「どのように社会へ普及させるのか」といった問いも研究につながります。新しいプロダクトやサービスを自ら生み出したい人や、起業・新規事業などに関心を持つ人にとっても、研究テーマとの接点を探しやすいでしょう。
その意味では、KMDで扱うビジネスは、経営理論だけを切り離して学ぶというよりも、テクノロジーやデザインなどと組み合わせながら実践するものとして捉えることができます。
KBSはケースメソッドを通じて経営を考える

経営管理研究科では、実際の企業や組織が直面する経営課題を題材としたケースを用い、学生同士で議論しながら意思決定について考えていくケースメソッドが教育の大きな特徴となっています。
ケースでは、必ずしも一つの正解が用意されているわけではありません。企業が置かれている状況や市場環境、財務情報、組織の状態などを読み取り、自分が経営者や責任者だった場合にどのような判断をするのかを考えます。そして、自分とは異なる経験や考え方を持つ学生との議論を通じて、意思決定の視点を広げていきます。
扱われるテーマも、経営戦略、マーケティング、組織・人材、会計、ファイナンス、生産政策など、企業経営に関わる幅広い領域に及びます。特定のテクノロジーやプロダクトを開発することよりも、企業や組織をどのように運営し、経営課題に対してどのような意思決定を行うのかという点に関心がある人にとって、KBSの学びは検討しやすいでしょう。
また、KBSにはプログラムによって異なる対象や入試制度があります。自分がどの課程・プログラムを検討するのかによって条件が変わるため、受験時には最新の募集要項を確認することが重要です。
同じ「新規事業」でも研究の方向性は変わる
KMDとKBSの違いを考えるときには、同じテーマを両研究科で考えてみると分かりやすくなります。例えば、「AIを活用した新規事業」をテーマにするとします。
KMDでは、AIを使ってどのような新しい体験を作れるのか、どのようなインターフェースであればユーザーが自然に利用できるのか、実際にプロトタイプを制作してどのような反応が得られるのか、といった方向へ研究を発展させることが考えられます。技術・デザイン・コンテンツ・ビジネスを横断しながら、新しい価値そのものを作る発想です。
一方、KBSでは、AIを利用した新規事業をどの市場に投入するのか、既存事業との関係をどう整理するのか、競争優位をどのように構築するのか、必要な組織や人材をどう設計するのかなど、経営上の意思決定として捉えることができます。
もちろん、実際の研究テーマは教員や研究領域によって異なりますが、「何を作るのか」を起点に考えるのか、「どう経営するのか」を起点に考えるのかという違いを意識すると、自分の関心を整理しやすくなります。
研究テーマとキャリアの方向性から考える

大学院選びでは、研究内容だけではなく、修了後にどのような仕事をしたいのかという視点も重要です。
新しい技術やメディアを生み出すものづくりに関心があり、その延長線上で事業化や経営の視点も身につけたい場合には、KMDの研究プロジェクトや教員の専門分野を確認してみるとよいでしょう。プロダクト開発、サービスデザイン、クリエイティブ領域、テクノロジーを活用した新規事業などに関心がある場合には、研究テーマとの接点が見つかる可能性があります。
一方、特定の技術分野に限定せず、経営そのものを体系的に学びたい場合には、KBSのカリキュラムを確認することが重要です。経営者、事業責任者、マネージャー、コンサルタントなど、企業や組織の意思決定に関わるキャリアを考えている場合には、経営を中心に学ぶことの意味を検討しやすくなります。
ただし、「KMDを修了すればこの職種」「KBSを修了すればこの職種」と単純に決まるものではありません。これまでの職歴や専門性、大学院で取り組む研究、在学中に築く人的ネットワークなどもキャリアに影響します。そのため、キャリアだけから研究科を決めるのではなく、自分が大学院で何を身につけたいのかまで具体化することが大切です。
学び方の違いも研究科選びのポイント
KMDでは、異なる専門性を持つ学生が協働しながら、研究プロジェクトや制作に取り組む機会があります。技術者、デザイナー、ビジネス経験者などがそれぞれの専門性を持ち寄り、一人では生み出せないものを形にしていくような環境に魅力を感じる人もいるでしょう。
KBSでは、ケースを読み込み、自分なりの判断を準備したうえで授業に参加し、学生同士で議論する学習が重要になります。自分の意見を言語化すると同時に、他者の考え方を聞きながら経営判断について考えることになります。
そのため、研究内容だけでなく、「プロジェクトを通じて実践したいのか」「経営課題について議論を重ねたいのか」という学習スタイルの違いも比較してみるとよいでしょう。説明会や公開されているカリキュラム情報などを確認し、自分が大学院生活を送っている姿を具体的にイメージしてみることも研究科選びに役立ちます。
研究科選びで確認したいポイント
両研究科は、出願資格や選考方法、提出書類なども異なります。特にKBSは、検討する課程やプログラムによって対象者や出願条件が異なる可能性があるため、自分の経歴でどの入試に出願できるのかを最新の募集要項で確認する必要があります。
KMDを検討する場合には、研究科全体のイメージだけでなく、実際の研究プロジェクトや教員の研究内容を確認することが重要です。「テクノロジーとビジネスを研究したい」という広い状態から、自分は具体的に何を作り、何を明らかにしたいのかまで整理していくと、志望理由や研究計画も具体化しやすくなります。
KBSを検討する場合には、自分がこれまで仕事や活動の中で経験してきた課題を振り返ってみることも有効です。組織運営、新規事業、マーケティング、人材、財務などの中で、自分がどのような問題意識を持っているのかを整理すると、なぜビジネススクールで学びたいのかを説明しやすくなります。
また、社会人が進学を検討する場合には、仕事との両立についても確認が必要です。授業時間だけでなく、授業準備、グループワーク、研究活動などにどの程度の時間が必要になるのかも含めて検討しましょう。単に「社会人が在籍している」という情報だけではなく、自分の働き方で実際に学修を継続できるかを考えることが大切です。
出願書類では「なぜその研究科なのか」を明確にする
KMDとKBSの両方に興味がある場合、出願準備を始めることで両者の違いがより明確になることがあります。特に、「なぜKMDなのか」「なぜKBSなのか」を文章にしてみると、自分の目的がどちらに近いのかが見えやすくなります。
KMDを志望する場合には、自分が解決したい問題や生み出したい価値を明確にしたうえで、技術やデザインなどをどのように組み合わせ、どのような研究として発展させるのかを考える必要があります。さらに、自分のテーマと研究プロジェクトや教員との接点を具体的に確認することが重要です。
KBSを志望する場合には、これまでの経験からどのような経営課題を感じてきたのか、なぜ今あらためて経営を学ぶ必要があるのか、学んだことを将来どのように活用したいのかを整理していくことが大切です。
「慶應だから」「ビジネスに興味があるから」という理由だけでは、KMDとKBSのどちらにも当てはまってしまいます。自分の問題意識と、それぞれの研究科でなければならない理由を結びつけることが、研究科選びと出願準備の両方につながります。
まとめ
メディアデザイン研究科(KMD)と経営管理研究科(KBS)は、どちらもビジネスと関わりを持つ研究科でありながら、その位置づけは異なります。KMDでは、技術、デザイン、コンテンツなどを組み合わせて新しい価値を生み出し、それを社会へ実装するための要素として経営を考えます。一方、KBSでは、企業や組織の経営そのものを中心に、経営上の課題や意思決定について体系的に学んでいきます。
研究科を比較するときには、「ビジネスを学べるか」だけではなく、自分が新しいプロダクトやサービスを生み出したいのか、それとも企業や組織の経営について深く学びたいのかを整理してみるとよいでしょう。そのうえで、研究内容、学習方法、教員、カリキュラム、入試制度、そして修了後に目指したいキャリアまで確認することで、自分に合った進学先を検討しやすくなります。
※本記事は記事作成時点の情報をもとに作成しています。入試制度、出願資格、提出書類、試験内容、カリキュラム、教員情報などは変更される場合があります。受験を検討している方は、必ず慶應義塾大学および対象研究科の公式サイト、最新の入学試験要項をご確認ください。
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※この記事は専門家による監修のもと執筆されています。
この記事を監修した人
小杉 樹彦(こすぎ・たつひこ)
志樹舎 創業者/博士(学術)
慶應義塾大学院修了後、2015年1月に院試専門オンライン予備校「志樹舎」を設立。
代表講師として10〜60代まで延べ5,000人以上の受験生を指導。
早慶・国公立をはじめとする難関大学院で合格率9割超の実績を持つ。
現在は大学院入試対策の専門家として、テレビ・新聞・雑誌など幅広いメディアで活動中。
ロングセラー『減点されない!勝論文』(エール出版社)ほか著書・論文多数。


