
慶應大学院でデータサイエンスを研究するなら?
院試専門オンライン予備校「志樹舎」が運営する「慶應義塾大学大学院の院試対策ガイド」をご覧いただき、ありがとうございます。今回のテーマは「慶應大学院でデータサイエンスを研究するなら?」です。
データを活用した意思決定や課題解決への関心が高まる中、データサイエンスを学べる大学院を探している方も多いのではないでしょうか。慶應義塾大学の大学院には、統計学や機械学習などの分析手法そのものを研究する分野だけでなく、経営、社会、政策、システムなどの領域でデータを活用する研究もあります。
そのため、「データサイエンスを研究したい」というだけでは、志望研究科を一つに絞ることはできません。自分が分析技術そのものを研究したいのか、データを使ってビジネス上の意思決定を考えたいのか、それとも社会課題の解決にデータを活用したいのかによって、適した研究環境は変わります。
この記事では、慶應大学院でデータサイエンスに関連する研究を検討する際に、どのような視点で研究科や教員を探せばよいのかを整理していきます。
データサイエンスの中にもいくつかの方向性がある

データサイエンスという言葉には、統計学や機械学習などの分析手法そのものを研究する方向性もあれば、特定の業界や経営課題に対してデータ分析を応用する方向性、社会課題の解決にデータを活用する方向性など、複数の切り口が含まれています。
例えば、「購買データを分析したい」という関心があったとしても、消費者行動を予測する新しい分析モデルを研究したいのか、分析結果をマーケティング戦略へ活用したいのかによって、研究の方向性は異なります。
また、「地域のデータを分析したい」という場合にも、人口や交通などのデータから社会現象を明らかにしたいのか、データを利用して地域政策を考えたいのか、地域を一つのシステムとして捉えて改善策を設計したいのかによって、適した研究環境が変わる可能性があります。
研究科を探す前に、まず「データ分析そのものを研究したいのか」「データ分析を使って何かを研究したいのか」を整理してみるとよいでしょう。
統計・分析手法そのものを深めたい場合
統計学や機械学習の理論的な基盤、数理モデル、アルゴリズムなどを体系的に学び、分析手法そのものを研究したい場合には、理工学系や情報科学に関係する研究領域を確認することが出発点になります。
この方向では、既存の分析手法を使えるようになるだけではなく、手法の性能や特性を検証したり、新しいモデルやアルゴリズムを検討したりする研究へ発展する可能性があります。そのため、数学、統計学、確率、線形代数、プログラミングなどの基礎知識が重要になることもあります。
大学院で研究したい場合には、「Pythonを使えるようになりたい」「機械学習を勉強したい」という学習目標だけではなく、既存の研究に対して何を新しく明らかにしたいのかまで考える必要があります。
特に技術的なデータサイエンス研究を希望する場合は、研究室によって求められる数学やプログラミングのレベルが異なるため、教員の研究内容だけでなく、研究室の過去の研究テーマや関連する授業も確認しておくことが重要です。
ビジネス課題への応用を重視したい場合

経営やマーケティングにおける意思決定にデータ分析を活用したい場合には、経営管理研究科(KBS)をはじめ、商学・経済学系の研究科も検討対象になります。
例えば、顧客データから購買行動を分析する、企業の財務データを経営判断に活用する、マーケティング施策の効果を検証するなど、データを使って経営上の問いに答える研究が考えられます。
この場合、分析技術そのものを新しく開発することよりも、「どのようなデータを使えば経営上の問題を検証できるのか」「分析結果をどのような意思決定につなげるのか」といった点が重要になることがあります。
特に社会人の場合には、実務で扱ってきたデータや、自分が経験してきた経営課題が研究テーマを考えるきっかけになることもあります。ただし、「会社の売上を上げたい」といった実務上の目的をそのまま研究テーマにするのではなく、他の企業や状況にも応用できる研究上の問いへと整理することが重要です。
社会システムの分析にデータを活用したい場合
複雑な社会システムや組織の課題を、データに基づいて分析し改善していきたい場合には、システムデザイン・マネジメント研究科(SDM)のように、複数の要素が関係する問題をシステムとして捉える研究環境も検討対象になります。
例えば、交通問題を研究する場合、利用者数だけを分析するのではなく、人口、交通網、料金、利用者行動、自治体、事業者など、複数の要素を考える必要があります。こうした問題についてデータを利用しながら構造を把握し、システム全体の改善方法を検討する研究も考えられます。
企業や組織についても同様です。業務データや従業員に関するデータなどを利用しながら、組織全体の仕組みや意思決定のあり方を分析するという方向性も考えられます。
この場合、データ分析は研究の目的そのものではなく、複雑なシステムを理解し、課題を明らかにするための手段として位置づけられることがあります。
社会課題や政策をデータから研究したい場合

人口、教育、地域、環境、国際関係などの社会課題について、データを利用して分析したい場合には、政策・メディア研究科を含め、社会・政策とデータを横断して研究できる環境を探す方法があります。
例えば、人口統計から地域の変化を分析する、SNS上の情報から社会現象を研究する、教育データから学習行動を分析する、行政が公開しているオープンデータを利用して政策課題を検討するといったテーマが考えられます。
このような研究では、統計分析やプログラミングが必要になる場合もありますが、それと同時に、分析対象となる社会問題についての専門知識も重要です。数字だけを分析するのではなく、「その数字が社会の中で何を意味しているのか」を解釈する必要があるからです。
データサイエンスと社会科学を組み合わせたい場合には、分析技術だけではなく、自分が研究したい社会課題について専門的に指導できる教員がいるかどうかも確認しておきましょう。
データサイエンスとAIの違いも整理しておく
データサイエンスとAIは密接に関係していますが、必ずしも同じものではありません。大学院の研究テーマを考える際には、自分がどちらに強い関心を持っているのかを整理しておくと、教員や研究室を探しやすくなります。
例えば、大量のデータから傾向や関係性を明らかにし、意思決定につなげることに関心があるのであれば、データ分析や統計的なアプローチが中心になる可能性があります。一方、データを学習させて予測や生成などを行うモデルそのものに関心がある場合には、機械学習やAIにより近い研究テーマになることがあります。
もちろん両者が重なる研究も多く存在します。そのため、言葉の違いだけで研究科を決めるのではなく、自分が実際に「何を入力として、何を分析し、何を明らかにしたいのか」を考えることが大切です。
文系や社会人でもデータサイエンスを研究できる?
データサイエンスという言葉から、理系出身者でなければ大学院で研究することは難しいと考える方もいるかもしれません。しかし、データサイエンスをどのような形で研究に利用するのかによって、必要になるバックグラウンドは異なります。
新しい統計モデルや機械学習アルゴリズムそのものを研究するのであれば、数学や統計、プログラミングなどの基礎力が重要になります。一方、経営、政策、社会課題などを研究するための方法としてデータ分析を利用するのであれば、これまで学んできた専門分野や実務経験を活かせる可能性があります。
例えば、マーケティング業務を経験してきた社会人であれば顧客データ、教育に携わってきた人であれば学習データ、人事経験者であれば組織や人材に関するデータなど、自分の実務経験から研究上の問いを見つけることもできます。
ただし、分析を行うために必要な統計やプログラミングの知識は、研究テーマに応じて準備する必要があります。文系・理系という区分だけで判断するのではなく、自分が希望する研究に必要な知識を具体的に確認することが重要です。
研究テーマは「データ+対象+問い」で考える
研究計画書を作成するときに、「ビッグデータを分析したい」「データサイエンスを使って社会課題を解決したい」という状態では、研究テーマとしてはまだ広すぎる可能性があります。
そこで、「どのようなデータを使うのか」「誰や何を対象とするのか」「何を明らかにしたいのか」という三つに分けて考えてみると、テーマを具体化しやすくなります。
例えば、「購買履歴データ+EC利用者+購買行動にはどのような特徴があるのか」「学習データ+大学生+学習行動と成績にはどのような関係があるのか」「人口・交通データ+地方都市+公共交通の利用に影響する要因は何か」といった形です。
さらに、どの期間のデータを扱うのか、データを入手できるのか、どのような分析方法を使うのかまで考えると、大学院で実施可能な研究テーマに近づいていきます。
データを入手できるかは重要なポイント
データサイエンス関連の研究では、研究テーマの面白さだけでなく、実際に分析できるデータを確保できるかという点も重要です。
例えば、企業の顧客データや人事データを研究したいと考えていても、個人情報や企業秘密などの理由から研究目的で自由に利用できるとは限りません。勤務先のデータを利用する場合にも、社内の許可や情報管理上のルールを確認する必要があります。
一方、政府統計や自治体のオープンデータ、公開されている研究用データなどを利用できるテーマもあります。研究計画を考える段階から、「必要なデータは存在するのか」「自分がアクセスできるのか」「研究期間内に収集できるのか」という実現可能性を確認しておくことが重要です。
データを集めること自体に時間がかかる研究もあるため、研究テーマとデータ入手方法はセットで考えるようにしましょう。
研究科・教員を探す際の進め方
データサイエンス関連の研究テーマを考える際は、研究科名だけで志望先を探すのではなく、各研究科の教員の研究内容や過去の研究テーマまで確認することをおすすめします。
最初に、自分が扱いたいデータや分析したい課題に関するキーワードを書き出します。「機械学習」「統計」「マーケティング」「金融」「教育」「交通」「地域」「政策」など、分析手法と応用分野の両方からキーワードを考えると探しやすくなります。
次に、各研究科の教員紹介や研究室の情報を確認し、自分のテーマに近い研究を行っている教員を探します。同じ研究科でも、教員によって扱うデータや研究手法は異なります。
候補となる教員が見つかったら、研究内容、論文、過去の研究テーマ、担当科目などを確認し、その研究科の募集要項へ進みます。研究科から教員を探すだけでなく、「研究したいテーマから教員を探し、その教員が所属する研究科を確認する」という順番も有効です。
入試に向けて必要な基礎力を確認する
データサイエンスに関連する研究科を受験する場合、研究科や入試区分によって必要な準備は異なります。数学、統計、専門科目などが選考に関係する場合もあれば、研究計画やこれまでの専門性が重要になる場合もあります。
そのため、「データサイエンスだからPythonを勉強すればよい」と考えるのではなく、志望する研究科の募集要項や過去の入試情報を確認し、何が求められているのかを把握する必要があります。
入学後の研究という観点でも、統計学の基礎、データ処理、プログラミングなどが必要になる可能性があります。現在の自分の知識と、希望する研究に必要な知識の差を確認し、出願準備と並行して基礎学習を進めるとよいでしょう。
研究計画書では分析手法より「問い」を先に考える
データサイエンスに関心がある人ほど、「機械学習を使いたい」「Pythonで分析したい」「この統計手法を使いたい」と、分析方法から研究テーマを考えてしまうことがあります。
しかし、研究計画を考える際には、最初に「何を明らかにしたいのか」という問いを設定し、その問いに答えるために必要なデータと分析手法を選ぶという順番が重要です。
例えば、「機械学習を使って顧客データを分析する」だけでは、何を研究するのかが明確ではありません。「どのような顧客行動が継続購入と関係しているのかを明らかにする」という問いがあれば、その問いに対して必要なデータや分析方法を考えることができます。
研究計画書では、分析技術の新しさだけを強調するのではなく、研究上の問い、先行研究、使用するデータ、分析方法、期待される成果が一つの流れとしてつながっていることが重要です。
まとめ
慶應義塾大学の大学院でデータサイエンスに関連する研究を考える場合、統計や機械学習などの分析手法そのものを研究する方向だけでなく、ビジネス、社会システム、政策などの課題を分析するためにデータを活用する方向もあります。
まずは、自分が「データサイエンスそのものを研究したいのか」「データサイエンスを使って何を研究したいのか」を整理してみましょう。そのうえで、扱いたいデータ、研究対象、明らかにしたい問いを具体化し、関連する教員や研究室を探していくことが重要です。
研究科の名称だけで判断するのではなく、教員の専門分野、過去の研究テーマ、必要な分析スキル、データの入手可能性、入試制度まで確認することで、自分の問題意識に合った研究環境を見つけやすくなります。
※本記事は記事作成時点の情報をもとに作成しています。入試制度、出願資格、提出書類、試験内容、カリキュラム、教員情報などは変更される場合があります。受験を検討している方は、必ず慶應義塾大学および対象研究科の公式サイト、最新の入学試験要項をご確認ください。
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※この記事は専門家による監修のもと執筆されています。
この記事を監修した人
小杉 樹彦(こすぎ・たつひこ)
志樹舎 創業者/博士(学術)
慶應義塾大学院修了後、2015年1月に院試専門オンライン予備校「志樹舎」を設立。
代表講師として10〜60代まで延べ5,000人以上の受験生を指導。
早慶・国公立をはじめとする難関大学院で合格率9割超の実績を持つ。
現在は大学院入試対策の専門家として、テレビ・新聞・雑誌など幅広いメディアで活動中。
ロングセラー『減点されない!勝論文』(エール出版社)ほか著書・論文多数。


