慶應大学院でメディアを研究する研究科の探し方

慶應大学院でメディアを研究するなら?

院試専門オンライン予備校「志樹舎」が運営する「慶應義塾大学大学院の院試対策ガイド」をご覧いただき、ありがとうございます。今回のテーマは「慶應大学院でメディアを研究するなら?」です。

テレビや新聞といった従来のメディアから、インターネット、SNS、動画配信サービス、生成AIまで、私たちを取り巻くメディア環境は大きく変化しています。こうしたメディアと社会の関わりに関心を持ち、大学院で本格的に研究したいと考える方もいるのではないでしょうか。

一方で、「メディアを研究したい」という言葉だけでは、志望研究科を決めることは難しいでしょう。メディアが社会や人々の行動に与える影響を分析したいのか、新しいメディア技術やコンテンツを生み出したいのか、コンテンツが社会に流通する仕組みを研究したいのかによって、適した研究環境は異なります。

この記事では、慶應大学院でメディアに関連する研究を考える際に、どのような視点から研究科や教員を探せばよいのかを整理します。

メディア研究にもいくつかの切り口がある

慶應大学院でメディア研究のテーマを考えるイメージ

メディア研究には、複数のアプローチがあります。新聞、テレビ、SNSなどが人々の意識や社会にどのような影響を与えるのかを分析する社会科学的な研究もあれば、新しいメディア技術やコンテンツそのものを制作・開発する研究もあります。

例えば、「SNSを研究したい」という場合でも、SNS上の情報が人々の意見形成にどのような影響を与えるのかを研究することもできますし、企業やクリエイターがSNSをどのように利用しているのかを研究することもできます。

さらに、新しいSNSやコミュニケーションサービスそのものを設計し、利用者の行動や体験を検証する研究も考えられます。

つまり、「メディア」という対象が同じであっても、社会を分析するのか、人間の行動を分析するのか、新しい技術や体験を作るのかによって、研究方法や研究科の選び方は大きく変わります。

社会・政策の視点からメディアを分析したい場合

メディアが世論形成や社会、人々の行動に与える影響、メディアをめぐる制度や政策などに関心がある場合には、政策・メディア研究科を含め、社会とテクノロジーを横断して研究できる環境を検討する方法があります。

例えば、選挙や社会問題に関する情報がSNS上でどのように広がるのか、災害時に人々がどのような情報源を利用するのか、インターネット上の情報環境が人々の意見形成にどのように関係するのかなど、メディアと社会をめぐるさまざまな問いが考えられます。

また、プラットフォーム上の情報流通、インターネット上の表現、個人情報、デジタル社会における制度なども、メディアと社会の関係を考えるうえで重要なテーマになり得ます。

メディアそのものを制作することよりも、「メディアによって社会がどのように変化するのか」「社会はメディアをどのように扱うべきなのか」に関心がある場合には、社会・政策の視点から教員や研究プロジェクトを探してみるとよいでしょう。

SNSを研究テーマにする場合

SNSやデジタルメディアを研究するイメージ

現在のメディア研究を考えるうえで、SNSは身近な研究対象の一つです。しかし、「SNSについて研究したい」というだけでは研究テーマとしては広すぎます。

例えば、SNS上の口コミが商品の購買行動に与える影響を研究するのであれば、マーケティングとの接点が強くなります。SNS上の情報が人々の意見形成に与える影響を研究するのであれば、社会科学やコミュニケーション研究との接点が考えられます。

また、SNSを利用することで人間関係やコミュニケーションがどのように変化するのかを研究することもできますし、投稿データを分析して社会現象を捉えるという研究方法も考えられます。

そのため、SNSという「媒体」だけを決めるのではなく、「SNS上の何を観察し、何を明らかにしたいのか」まで具体化することが重要です。

新しいメディア技術やコンテンツを生み出したい場合

映像、音響、インタラクティブな体験など、新しいメディア表現やコンテンツそのものを生み出すことに関心がある場合には、メディアデザイン研究科(KMD)のように、技術、デザイン、コンテンツなどを横断して研究する環境との接点が考えられます。

例えば、VR・ARを利用した体験、映像とインタラクションを組み合わせたコンテンツ、新しいコミュニケーションツール、AIを利用した表現など、従来のテレビや新聞とは異なるメディアを研究対象とすることができます。

このような研究では、既存のメディアを分析するだけでなく、実際にプロトタイプや作品を制作し、それを利用した人がどのような体験をするのかを検証するという方法も考えられます。

「既存メディアについて研究したい」というより、「まだ存在していないメディア体験を作りたい」という問題意識を持っている場合には、制作や実践と研究をどのように結びつけられるかを確認するとよいでしょう。

生成AIとメディアを研究するという方向性

生成AIとメディアやコンテンツについて研究するイメージ

生成AIの普及によって、メディアやコンテンツを取り巻く環境にも大きな変化が生まれています。文章、画像、映像、音楽などをAIによって生成できるようになったことで、制作する側と受け取る側の関係も変化しつつあります。

例えば、「AIによって生成されたコンテンツを人はどのように評価するのか」「AIを利用することでクリエイターの制作プロセスはどのように変化するのか」「人間とAIが共同でコンテンツを制作するためにはどのようなインターフェースが必要なのか」といった研究テーマが考えられます。

一方、生成AIによる情報の信頼性や、AI生成コンテンツが社会に与える影響などを研究するのであれば、社会・政策的なアプローチとの接点も考えられます。

同じ「生成AIとメディア」というテーマでも、新しいコンテンツを作ることに関心があるのか、社会への影響を分析することに関心があるのかによって、研究科や研究方法は変わってきます。

コンテンツ産業を研究するという選択肢もある

メディア研究では、作品や情報の内容だけではなく、それらがどのように制作され、流通し、消費されるのかという産業構造に注目することもできます。

例えば、映画、アニメ、ゲーム、音楽、出版、動画配信などのコンテンツ産業では、デジタル化やプラットフォームの普及によって、作品が消費者へ届くまでの仕組みが変化しています。

「動画配信サービスの普及によって映像コンテンツの消費行動はどのように変化したのか」「クリエイターはプラットフォーム上でどのようにファンとの関係を構築しているのか」「デジタル化によってコンテンツビジネスの収益構造はどのように変化したのか」といった問いを考えることができます。

こうしたテーマでは、メディア研究だけでなく、経営、マーケティング、文化、社会などの領域との接点も生まれます。自分が作品そのものに関心があるのか、それを生み出し社会へ届ける仕組みに関心があるのかを整理すると、研究テーマを絞り込みやすくなります。

「分析する研究」と「作る研究」の違いを考える

メディアをテーマに研究科を選ぶ際には、自分が「既存のメディアを分析したいのか」「新しいメディアを作りたいのか」を考えてみると、方向性を整理しやすくなります。

例えば、TikTokなどの短尺動画が若年層の情報収集に与える影響を調査したいのであれば、既存のメディア現象を分析する研究になります。一方、短時間でも利用者が複雑な情報を理解できる新しい動画体験を設計したいのであれば、制作・開発を含む研究へ近づきます。

もちろん、両者を完全に分けられるわけではありません。新しいメディアを制作したうえで、その利用者への影響を調査することもできます。

重要なのは、最終的に自分がどのような研究成果を出したいのかを考えることです。論文として社会現象を明らかにしたいのか、プロトタイプや作品を制作して新しい可能性を示したいのかによって、大学院で必要となる研究環境も変わります。

メディア研究では研究方法も大きく異なる

研究テーマによって、必要となる研究方法も異なります。メディアが人々へ与える影響を研究する場合には、アンケート、インタビュー、実験、社会調査などを利用することが考えられます。

SNS上の情報を対象とする場合には、投稿データなどを分析する方法もあります。大量のデータを扱う研究では、統計分析やプログラミングなどの知識が必要になる可能性もあります。

一方、新しいメディア体験を研究する場合には、実際にシステムや作品を制作し、ユーザーに利用してもらい、その反応を検証するといった方法も考えられます。

「何を研究したいのか」だけでなく、「どのような方法ならその問いに答えられるのか」を考えることで、自分に必要な研究環境や身につけるべき知識も見えやすくなります。

社会人は実務経験から研究テーマを見つけることもできる

広告、出版、テレビ、Web、SNS運用、コンテンツ制作、広報、マーケティングなど、メディアに関連する仕事を経験している社会人の場合には、日々の実務で感じてきた疑問が研究テーマの出発点になることがあります。

例えば、「SNSでは反応が大きいコンテンツと売上につながるコンテンツが異なる」「動画コンテンツが増える中で長文の記事はどのような役割を持つのか」「企業が発信する情報は消費者からどのように受け取られているのか」といった疑問です。

ただし、大学院で研究する場合には、自社のメディア施策を改善することだけを目的にするのではなく、その経験から生まれた疑問を、より一般的な研究上の問いへ変換する必要があります。

例えば、「自社SNSの反応を増やしたい」という目的から、「企業によるSNS上の情報発信に対する消費者の信頼は、どのような要因によって形成されるのか」という問いへ発展させることができます。

実務経験を研究テーマへつなげる際には、「自分が経験したこと」「そこから感じた疑問」「大学院で明らかにしたいこと」を順番に整理してみるとよいでしょう。

研究科・教員を探す際は「メディア」を細分化する

メディアに関連する研究科を探す際には、「メディア」という一つのキーワードだけで検索するのではなく、自分の関心をより細かな言葉へ分解してみましょう。

例えば、「SNS」「映像」「ジャーナリズム」「コミュニケーション」「コンテンツ」「VR」「AR」「生成AI」「プラットフォーム」「広告」「動画配信」「デジタル社会」などが考えられます。

さらに、「政策」「世論」「マーケティング」「デザイン」「インタラクション」「クリエイター」など、自分がメディアの何に関心を持っているのかを示す言葉を組み合わせることで、教員を探しやすくなります。

気になる教員が見つかったら、その教員の研究テーマ、論文、研究プロジェクト、担当科目などを確認します。研究科の名称だけで志望先を決めるのではなく、「自分の研究テーマを指導できる教員は誰か」という視点から研究科を探すことも重要です。

研究計画書では対象となるメディアと問いを具体化する

研究計画書を書く際には、「メディアについて研究したい」「SNSについて研究したい」という段階から、研究対象と問いを具体化していく必要があります。

例えば、「SNSが若者に与える影響」というテーマでは範囲が広いため、「どのSNSなのか」「どの年代を対象とするのか」「どのような影響を研究するのか」をさらに絞り込みます。

「大学生がSNS上の情報をニュースとして信頼する際、情報発信者の違いは信頼度にどのような影響を与えるのか」といった形まで具体化すると、調査対象や研究方法も考えやすくなります。

制作を中心とする研究であれば、「何を作りたいか」だけではなく、「なぜそのメディアが必要なのか」「従来のメディアにはどのような課題があるのか」「制作したものをどのように評価するのか」まで考えることが重要です。

変化の速い分野だからこそ先行研究を確認する

SNS、生成AI、動画配信など、メディアを取り巻く環境は短期間で大きく変化します。そのため、新しい現象をテーマにすれば、それだけで研究として新しいというわけではありません。

研究計画を考える際には、自分が注目している現象について、すでにどのような研究が行われているのかを確認する必要があります。新しいサービスや技術であっても、その背景にはコミュニケーション、情報行動、メディア利用などに関する既存研究が蓄積されている場合があります。

「最近話題だから研究する」のではなく、先行研究では何が明らかになっていて、現在のメディア環境では何が新たな問題になっているのかを整理することで、研究する意義を説明しやすくなります。

入試準備では研究科ごとの違いを確認する

メディアに関連する研究ができる可能性がある研究科でも、入試制度や求められる準備は異なります。研究科や入試区分によって、出願資格、提出書類、英語、専門的な知識、面接などの扱いが異なるため、必ず受験年度の募集要項を確認してください。

また、研究テーマによっては、社会調査、統計分析、プログラミング、デザイン、映像制作などの知識や技能が研究を進めるうえで必要になる場合があります。

自分が研究したいテーマと現在持っているスキルを比較し、不足している知識があれば出願準備と並行して学習を進めるとよいでしょう。

複数の研究科で迷っている場合には、説明会や研究科のイベントなどを活用し、教員の研究テーマや学生が取り組んでいる研究について確認することで、入学後の研究環境をより具体的にイメージできます。

まとめ

慶應義塾大学の大学院でメディアに関連する研究を考える場合、社会や政策の視点からメディアの影響を分析する方向、新しいメディア技術やコンテンツを制作する方向、コンテンツ産業や情報流通の仕組みを研究する方向など、複数のアプローチがあります。

SNS、生成AI、動画配信、VR・ARなど、研究対象となり得るメディアも多様化しています。大切なのは、「メディアを研究したい」という大きな関心から、「どのメディアについて、誰・何を対象として、何を明らかにしたいのか」まで具体化することです。

そのうえで、自分のテーマと接点を持つ教員の研究内容を確認し、研究科のカリキュラムや入試制度、必要となる研究方法まで比較していきましょう。分析する側に立ちたいのか、新しいメディアを作る側に立ちたいのかを考えることも、自分に合った研究環境を見つけるための一つの手がかりになります。


※本記事は記事作成時点の情報をもとに作成しています。入試制度、出願資格、提出書類、試験内容、カリキュラム、教員情報などは変更される場合があります。受験を検討している方は、必ず慶應義塾大学および対象研究科の公式サイト、最新の入学試験要項をご確認ください。

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※この記事は専門家による監修のもと執筆されています。

この記事を監修した人

小杉樹彦(志樹舎 創業者)

小杉 樹彦(こすぎ・たつひこ)
志樹舎 創業者/博士(学術)
慶應義塾大学院修了後、2015年1月に院試専門オンライン予備校「志樹舎」を設立。 代表講師として10〜60代まで延べ5,000人以上の受験生を指導。 早慶・国公立をはじめとする難関大学院で合格率9割超の実績を持つ。 現在は大学院入試対策の専門家として、テレビ・新聞・雑誌など幅広いメディアで活動中。 ロングセラー『減点されない!勝論文』(エール出版社)ほか著書・論文多数。