慶應大学院で教育を研究する研究科の探し方

慶應大学院で教育を研究するなら?

院試専門オンライン予備校「志樹舎」が運営する「慶應義塾大学大学院の院試対策ガイド」をご覧いただき、ありがとうございます。今回のテーマは「慶應大学院で教育を研究するなら?」です。

学校教育や学びのあり方そのものに関心があり、教育を大学院で研究したいと考える方もいるのではないでしょうか。教育という分野は幅広く、慶應義塾大学の大学院でも、教育学や心理学だけでなく、テクノロジー、政策、社会課題など、さまざまな視点から教育に関連する研究を考えることができます。

例えば、「子どもがどのように学ぶのか」を研究する場合と、「AIを使った新しい学習環境を作りたい」という場合、「教育格差を政策の観点から研究したい」という場合では、適した研究環境が異なります。

この記事では、慶應大学院で教育に関連する研究を考える際に、どのような視点から研究科や教員を探せばよいのかを整理します。

教育研究にもいくつかの切り口がある

慶應大学院で教育研究のテーマを考えるイメージ

教育というテーマには、さまざまな研究アプローチがあります。学習者の心理や学習プロセスを研究する方法もあれば、学校や教育制度について研究する方法、デジタル技術を利用して新しい学習環境を作る方法、教育政策や教育格差などの社会課題を分析する方法もあります。

例えば、「オンライン教育」をテーマにするとしても、対面授業とオンライン授業では学習成果にどのような違いがあるのかを研究することもできますし、オンライン上で学習者が継続的に学ぶためのサービスや仕組みを設計することもできます。

また、オンライン教育によって地域や所得による教育機会の格差を縮小できるのかという政策・社会的な問いを立てることもできます。

そのため、「教育を研究したい」という大きなテーマから、自分が教育のどの部分に疑問を持っているのかを具体化することが研究科選びの出発点になります。

教育学・心理学の視点から探究したい場合

学習のプロセスや人間の認知・発達、教育に関わる心理などを理論的に研究したい場合には、文学研究科を含め、人文・社会科学系の研究環境から教員を探す方法があります。

例えば、「学習者の動機づけは学習行動にどのような影響を与えるのか」「フィードバックの与え方によって学習成果は変化するのか」「学習者はどのような過程で知識を身につけていくのか」などの問いが考えられます。

このような研究では、自分自身の教育経験だけから結論を考えるのではなく、教育学や心理学などの先行研究を確認し、これまで何が明らかになっているのかを整理したうえで、研究上の問いを設定していく必要があります。

また、研究テーマによっては、アンケート、インタビュー、観察、実験、統計分析などの研究方法を利用することもあります。研究したいテーマだけではなく、どのような方法でその問いを検証するのかまで考えることが重要です。

テクノロジーを活用した新しい学びに関心がある場合

テクノロジーを活用した教育や学習体験を研究するイメージ

デジタル技術やメディアを活用した新しい教育手法、オンライン学習などに関心がある場合には、メディアデザイン研究科(KMD)のように、技術、デザイン、コンテンツなどを横断して研究する環境との接点も考えられます。

例えば、オンライン学習サービス、VR・ARを利用した学習環境、ゲームを利用した教育、学習者同士のコミュニケーションを促すデジタルサービスなど、従来の教室だけに限定されない学習体験を研究することができます。

このようなテーマでは、「新しい教育サービスを作る」というだけではなく、そのサービスによって学習者にどのような変化が生まれるのかを検証することが重要です。

実際にプロトタイプを制作し、利用者に使ってもらい、その反応や学習行動を分析するといった研究方法も考えられます。教育学だけでなく、テクノロジーやデザインにも関心がある人は、研究科名だけでなく、個々の教員や研究プロジェクトまで確認するとよいでしょう。

生成AIと教育を研究するという選択肢

生成AIの普及によって、教育とテクノロジーの関係にも新しい研究テーマが生まれています。大学や学校で生成AIをどのように利用するのか、学習者が生成AIを利用することで学習行動がどのように変化するのかなど、さまざまな問いを考えることができます。

例えば、「生成AIによるフィードバックは学生の文章作成にどのような影響を与えるのか」「生成AIを利用した学習では、学習者の主体性はどのように変化するのか」といったテーマです。

また、AIを利用した教材や学習支援システムを実際に開発し、その効果や利用体験を検証する方向も考えられます。

一方で、「教育にAIを導入したい」というだけでは研究テーマとしては広すぎます。どの学習者を対象とするのか、どの学習場面で利用するのか、何を改善したいのか、どのような指標で効果を検証するのかまで具体化することが重要です。

政策・制度の視点から教育を考えたい場合

教育政策や教育制度を大学院で研究するイメージ

教育制度や教育政策そのものに関心があり、社会全体の仕組みとして教育を捉えたい場合には、政策・メディア研究科を含め、政策や社会課題を横断して研究できる環境を検討する方法があります。

例えば、教育格差、不登校、地域による教育機会の違い、学校と地域社会の関係、ICT教育、大学教育など、教育にはさまざまな政策課題があります。

教育格差をテーマとする場合にも、「家庭の経済状況によって進学行動にどのような違いが生じるのか」をデータから分析する方法もあれば、「自治体による教育支援にはどのような違いがあるのか」を政策面から比較する方法も考えられます。

特定の授業方法や学習心理よりも、教育を取り巻く社会制度や政策に関心がある場合には、教育というキーワードだけでなく、「政策」「格差」「地域」「制度」などのキーワードを組み合わせて教員を探してみるとよいでしょう。

学校教育だけが教育研究ではない

教育研究というと、小学校、中学校、高校などの学校教育をイメージする人も多いかもしれません。しかし、学びが行われる場所は学校だけではありません。

大学教育、社会人教育、企業内研修、リスキリング、生涯学習、オンライン学習なども研究対象として考えることができます。

例えば、企業で研修に関わってきた社会人であれば、「研修を受けても実際の業務行動が変わらないのはなぜか」という疑問から研究テーマを考えることができます。社会人のリスキリングに関心があれば、「働きながら学習を継続できる人にはどのような特徴があるのか」といった問いも考えられます。

自分自身が学校教員ではないから教育研究ができないと考える必要はありません。自分がこれまで関わってきた「人が学ぶ場面」を振り返ることで、研究テーマのヒントが見つかることがあります。

教育サービスやEdTechを研究したい場合

教育とビジネスの両方に関心がある場合には、EdTechや民間教育サービスも研究対象になり得ます。

例えば、オンライン予備校、学習アプリ、動画教材、AI教材などが学習者の行動にどのような影響を与えるのか、学習サービスを継続して利用する人と利用をやめる人にはどのような違いがあるのかといった問いを考えることができます。

教育サービスを研究する場合には、教育効果だけでなく、学習者の体験、サービス設計、テクノロジーなど複数の視点が関係する可能性があります。

また、自分自身で教育サービスを運営している場合でも、「自分のサービスを改善したい」という事業上の目的と、「教育について何を明らかにしたいのか」という研究目的は分けて考える必要があります。

実務上の課題を出発点としながら、それを他の教育サービスや学習者にも関係する研究上の問いへ変換することが重要です。

教育研究では「誰の学びを研究するのか」を決める

教育をテーマに研究計画を考える際には、まず研究対象を具体的にすることが重要です。

例えば、小学生、中学生、高校生、大学生、社会人では、学習環境も学習目的も異なります。また、同じ高校生でも、大学受験を目指す生徒、不登校経験のある生徒、オンライン学習を利用する生徒など、対象をさらに絞ることができます。

対象者を決めたら、「その人たちのどのような学習上の問題に関心があるのか」を考えます。学習意欲なのか、成績なのか、学習継続なのか、進路選択なのかによって、研究上の問いも変わります。

「教育を良くしたい」という大きな目的から、「誰の、どのような学習上の問題を、何を通じて明らかにしたいのか」という形へ具体化していくことが研究テーマづくりのポイントです。

研究方法から実現可能性を考えることも重要

教育研究では、研究テーマだけでなく、実際に対象者からデータを集められるのかという点も重要になります。

例えば、高校生を対象にアンケートを実施したいと考えていても、研究者が自由に学校へ入り、生徒からデータを収集できるとは限りません。学校や関係機関との調整が必要になる場合もあります。

一方、大学生や社会人へのアンケート、公開されている統計データ、既存の教育政策資料などを利用できる研究も考えられます。

また、人を対象とする調査や実験については、所属する大学・研究科等の研究倫理上の手続きが必要になる場合があります。研究計画を考える段階から、対象者、データの入手方法、研究期間などを踏まえて実現可能性を検討しておくことが大切です。

社会人は自分の教育経験を研究上の問いに変える

学校、塾、企業研修、人材育成、教育サービスなどに携わってきた社会人の場合には、実務経験の中で感じてきた疑問が研究テーマを考える材料になります。

例えば、「同じ授業を受けても学習成果に大きな差が生まれる」「学習サービスに登録しても途中で利用しなくなる人が多い」「研修を実施しても実際の行動変容につながらない」といった経験です。

ただし、研究計画書では、自分の仕事上の問題を解決することだけを目的にするのではなく、その経験から生まれた疑問を、他の教育現場にも関係する問いへ変換することが重要です。

例えば、「自社のオンライン講座の継続率を上げたい」から、「オンライン学習における学習者の継続行動にはどのような要因が影響するのか」という研究上の問いへ広げることができます。

自分の経験を研究の出発点としながら、先行研究と結びつけていくことで、実務経験と大学院での研究をつなげやすくなります。

研究科・教員を探す際の進め方

教育に関連する研究科を探す際には、「教育」という一つのキーワードだけで探すのではなく、自分の問題意識を複数の言葉に分解してみましょう。

例えば、「教育心理」「学習」「動機づけ」「教育政策」「教育格差」「オンライン学習」「EdTech」「AI」「社会人教育」「高等教育」など、自分の関心に近いキーワードを書き出します。

そのうえで、各研究科の教員紹介や研究テーマを確認し、自分の問題意識に近い研究を行っている教員を探します。気になる教員が見つかったら、論文や研究プロジェクト、担当科目なども確認してみましょう。

教育研究は複数の研究科にまたがる可能性があるため、「教育を研究できる研究科はどこか」という探し方だけでなく、「自分が研究したい教育テーマを指導できる教員は誰か」という視点から探すことも重要です。

研究計画書では「教育を良くしたい」から一歩進める

教育を研究したい人は、「教育を良くしたい」「子どもの学びを支援したい」といった強い問題意識を持っていることがあります。こうした思いは研究の出発点になりますが、そのままでは研究計画にはなりません。

研究計画書では、「誰を対象とするのか」「どのような教育上の問題があるのか」「何を明らかにしたいのか」「どのような方法で検証するのか」を具体化する必要があります。

例えば、「高校生の学習意欲を高めたい」という関心がある場合、「大学受験を控えた高校生の学習継続に、教師からのフィードバックがどのように関係するのか」といった問いへ絞り込むことができます。

さらに、先行研究を調べ、すでに何が明らかになっていて、何が十分に明らかになっていないのかを確認します。自分の経験や問題意識だけでなく、先行研究との接点を示すことで、大学院で研究する意義を説明しやすくなります。

入試準備では研究科ごとの違いを確認する

教育に関連する研究ができる可能性がある研究科でも、入試制度や求められる専門知識は異なります。研究科や入試区分によって、出願資格、提出書類、専門科目、英語、面接などの扱いが異なるため、必ず受験年度の募集要項を確認してください。

また、研究テーマによっては教育学や心理学だけでなく、統計学、社会科学、情報技術などの知識が必要になることもあります。自分が研究したいテーマと現在の知識との間にどのような差があるのかを確認し、必要な基礎学習を早めに始めることが大切です。

複数の研究科で迷っている場合には、説明会や個別相談などを利用し、カリキュラムだけでなく、教員の研究テーマや学生が取り組んでいる研究について確認すると、入学後のイメージを持ちやすくなります。

まとめ

慶應義塾大学の大学院で教育に関連する研究を考える場合、教育学・心理学の視点から学習の仕組みを研究する方向、テクノロジーを利用して新しい学習体験を作る方向、教育政策や制度を研究する方向など、複数のアプローチがあります。

また、学校教育だけでなく、大学教育、社会人教育、企業研修、EdTech、オンライン学習、生成AIと教育なども研究テーマとして考えることができます。

まずは「教育を研究したい」という大きな関心を、「誰の、どのような学びについて、何を明らかにしたいのか」という問いへ具体化してみましょう。そのうえで、自分の問題意識と接点を持つ教員を探し、所属研究科のカリキュラムや入試制度を確認していくことが、自分に合った研究環境を見つけるための重要なステップになります。


※本記事は記事作成時点の情報をもとに作成しています。入試制度、出願資格、提出書類、試験内容、カリキュラム、教員情報などは変更される場合があります。受験を検討している方は、必ず慶應義塾大学および対象研究科の公式サイト、最新の入学試験要項をご確認ください。

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※この記事は専門家による監修のもと執筆されています。

この記事を監修した人

小杉樹彦(志樹舎 創業者)

小杉 樹彦(こすぎ・たつひこ)
志樹舎 創業者/博士(学術)
慶應義塾大学院修了後、2015年1月に院試専門オンライン予備校「志樹舎」を設立。 代表講師として10〜60代まで延べ5,000人以上の受験生を指導。 早慶・国公立をはじめとする難関大学院で合格率9割超の実績を持つ。 現在は大学院入試対策の専門家として、テレビ・新聞・雑誌など幅広いメディアで活動中。 ロングセラー『減点されない!勝論文』(エール出版社)ほか著書・論文多数。