
慶應大学院でゲームを研究するなら?
院試専門オンライン予備校「志樹舎」が運営する「慶應義塾大学大学院の院試対策ガイド」をご覧いただき、ありがとうございます。今回のテーマは「慶應大学院でゲームを研究するなら?」です。
ゲームという表現や産業に関心を持ち、大学院でゲームそのものを研究したいと考える方もいるのではないでしょうか。ゲーム研究と一口に言っても、その対象はゲーム制作、コンピュータ技術、映像やインタラクション、心理、教育、社会、ビジネスなど幅広い領域にまたがります。
そのため、「ゲームが好きだからゲームを研究したい」という段階から、自分がゲームの何に興味を持っているのかを具体化することが重要です。新しいゲームを制作したいのか、プレイヤーの行動を分析したいのか、ゲームを教育や社会課題の解決に活用したいのか、ゲーム産業を経営の観点から研究したいのかによって、適した研究環境は変わります。
この記事では、慶應大学院でゲームに関連する研究を考える際に、どのような視点から研究科や教員を探せばよいのかを整理します。
ゲーム研究にもいくつかの切り口がある

ゲーム研究には、大きく分けても複数のアプローチがあります。ゲームそのものを企画・制作する研究、ゲームを支える技術やインターフェースを開発する研究、プレイヤーの心理や行動を分析する研究、教育などにゲームの仕組みを応用する研究、ゲーム産業をビジネスとして分析する研究などです。
例えば、「スマートフォンゲームを研究したい」という場合でも、新しいゲームシステムを制作したいのか、ユーザーが継続してプレイする理由を分析したいのか、課金行動を研究したいのかによって研究領域は異なります。
また、「ゲームを教育に活用したい」という場合にも、教育用ゲームそのものを開発する研究と、ゲームを利用した授業によって学習効果が変化するのかを検証する研究では、必要となる知識や研究方法が変わります。
研究科を選ぶ前に、「ゲームの何を対象として、何を明らかにしたいのか」を整理しておくことが重要です。
ゲームの企画・制作そのものに取り組みたい場合
実際にゲームや新しいインタラクティブコンテンツを企画・制作しながら研究したい場合には、メディアデザイン研究科(KMD)のように、技術、デザイン、コンテンツなどを横断して研究する環境との接点が考えられます。
例えば、新しい操作方法を取り入れたゲーム、VR・ARを利用したゲーム体験、身体の動きを利用したインタラクティブコンテンツなど、既存のゲーム機やスマートフォンだけに限定されない研究テーマも考えられます。
制作を中心とする研究では、単に「面白いゲームを作る」ことだけが目的になるわけではありません。「従来のゲーム体験にはどのような課題があるのか」「新しい技術を利用することでプレイヤーの体験はどのように変わるのか」といった研究上の問いが必要になります。
実際にプロトタイプを制作し、ユーザーにプレイしてもらい、その行動や反応を分析するといった形で、制作と検証を組み合わせる研究も考えられます。
ゲームを支える技術を研究したい場合
ゲームに関心がある人の中には、ゲームの内容そのものよりも、それを実現する技術に興味を持っている人もいるでしょう。
例えば、CG、画像処理、VR・AR、ヒューマンコンピュータインタラクション、ネットワーク、AIなど、ゲームと関係する技術は数多くあります。
「より自然なキャラクターの動きを実現したい」「新しい入力装置を開発したい」「VR空間でのコミュニケーションを研究したい」といった関心がある場合には、ゲームというキーワードだけではなく、自分が研究したい技術分野から研究室を探す方法があります。
この方向では、ゲームは研究成果を検証するための応用先の一つになることもあります。ゲーム制作そのものが目的なのか、ゲームにも利用できる技術を研究したいのかを整理すると、研究科や教員を探しやすくなります。
ゲームが人の心理や行動に与える影響を研究したい場合

ゲームを作ることよりも、「人はなぜゲームに熱中するのか」「ゲームをプレイすることで人の心理や行動はどのように変化するのか」に関心がある場合には、心理学や行動研究との接点を考えることができます。
例えば、ゲームを継続する動機、達成感、他のプレイヤーとのコミュニケーション、競争と協力、ゲーム内での意思決定など、さまざまなテーマがあります。
同じゲームをプレイしても、人によって楽しみ方や継続期間が異なるのはなぜかという問いを立てることもできます。アンケートやインタビュー、実験、プレイデータなどを利用して、プレイヤーの心理や行動を分析する方法が考えられます。
この場合には、ゲームについて詳しいだけでなく、心理学や統計、調査方法などの知識が必要になる可能性があります。研究したい現象に応じて、ゲーム以外の専門分野についても確認することが重要です。
ゲームと教育を組み合わせて研究する
ゲームの仕組みを教育に活用する研究も考えられます。学習内容をゲームとして設計することで、学習者の意欲や継続行動にどのような変化が生まれるのかを検証するといったテーマです。
例えば、英語学習ゲーム、歴史を体験するシミュレーションゲーム、プログラミングを学ぶゲームなど、学習内容とゲームを組み合わせた研究が考えられます。
この場合、ゲームとして面白いかどうかだけではなく、教育的な目的を達成できるかという視点が重要になります。「ゲームを使った方が楽しい」という感想だけではなく、学習成果、学習時間、継続率などをどのように測定するのかまで考える必要があります。
教育を中心に研究するのか、ゲームデザインを中心に研究するのかによっても、適した研究環境は変わります。教育学、心理学、メディア、デザインなど、複数の領域から教員を探してみるとよいでしょう。
ゲーミフィケーションを研究するという方向性
ゲームそのものではなく、ゲームに使われている仕組みを別の領域へ応用する「ゲーミフィケーション」も研究テーマの一つになり得ます。
例えば、ポイント、レベル、ランキング、ミッション、報酬など、ゲームで利用される要素を教育、健康、仕事、地域活動などへ取り入れることで、人の行動を促す仕組みを考えることができます。
学習アプリに連続学習日数を表示することで学習継続に影響があるのか、健康管理サービスにゲーム的な要素を導入することで運動習慣が変化するのか、といった問いが考えられます。
ただし、「ゲーム要素を入れれば人が行動する」と最初から決めつけるのではなく、どのような条件で効果があるのか、逆に効果がない場合はなぜなのかを検証することが研究では重要です。
ゲームと社会の関係を研究したい場合
ゲームは個人が楽しむ娯楽であると同時に、オンライン上で人々が交流する場にもなっています。そのため、ゲームとコミュニティ、コミュニケーション、文化などの関係も研究対象になります。
例えば、オンラインゲームの中でどのように人間関係が形成されるのか、ゲーム内のコミュニティがプレイヤーの継続行動にどのような影響を与えるのか、ゲームを通じたコミュニケーションにはどのような特徴があるのかといった問いです。
また、ゲームにおける表現や物語、キャラクターなどを文化・メディアの観点から分析する方向も考えられます。
ゲームが社会や人々に与える影響を研究したい場合には、政策・メディア研究科を含め、社会、文化、コミュニケーションなどを横断して研究できる環境から教員を探す方法もあります。
ゲーム産業をビジネスとして研究したい場合

ゲーム産業における事業戦略や市場、企業経営に関心がある場合には、経営管理研究科(KBS)や商学研究科など、経営・商学系の研究環境との接点も考えられます。
ゲームビジネスでは、家庭用ゲーム、PCゲーム、スマートフォンゲームなどによってビジネスモデルが異なります。また、買い切り型、基本プレイ無料型、サブスクリプションなど、収益化の方法も多様です。
例えば、「ゲーム企業は新しいタイトルへどのように投資するのか」「長期間運営されるゲームではどのようにユーザーとの関係を維持するのか」「ゲーム企業のIP展開は事業成長にどのような役割を果たすのか」といった問いを考えることができます。
ゲームを作りたいのではなく、ゲームを一つのコンテンツ産業として分析したい場合には、経営戦略、マーケティング、組織、イノベーションなどの観点から研究テーマを考えてみるとよいでしょう。
ゲームのIP展開を研究することもできる
ゲームから生まれたキャラクターや世界観が、アニメ、映画、漫画、商品、イベントなどへ展開されるケースもあります。そのため、ゲームを単独の商品としてではなく、IPやコンテンツビジネスという観点から研究することも考えられます。
例えば、「ゲーム発のIPはどのようにファンを拡大していくのか」「複数のメディアへ展開することでブランドへの評価はどのように変化するのか」「ゲームとリアルイベントを組み合わせることでファンとの関係はどのように変わるのか」といったテーマです。
このような研究では、ゲーム産業だけでなく、マーケティング、ブランド、メディア、コンテンツ産業などの研究との接点も生まれます。
ゲームが好きだからゲーム業界だけを見るのではなく、自分が関心を持っている現象を他のコンテンツ産業と比較することで、研究テーマを広げられる可能性もあります。
eスポーツを研究テーマにする場合
eスポーツも、ゲームに関連する研究テーマとして考えることができます。eスポーツは競技としての側面だけでなく、ビジネス、メディア、コミュニティ、教育など複数の領域と関係しています。
例えば、eスポーツ大会の観戦者は何に価値を感じているのか、競技チームはどのようにファンとの関係を構築するのか、スポンサー企業はeスポーツをどのようにマーケティングへ活用するのかといった問いが考えられます。
また、eスポーツを通じたコミュニティ形成や、学校・教育現場におけるeスポーツ活動などを研究対象とすることもできます。
「eスポーツを研究したい」という言葉だけではなく、競技、ビジネス、ファン、教育など、どの側面に注目するのかを具体化することが重要です。
生成AIによってゲーム研究のテーマも広がる
生成AIの発展によって、ゲーム制作やゲーム体験についても新しい研究テーマを考えられるようになっています。
例えば、AIによってキャラクターの会話を生成することでプレイヤー体験がどのように変化するのか、生成AIをゲーム制作に利用することでクリエイターの制作プロセスがどのように変わるのかといった問いが考えられます。
また、プレイヤーの行動に応じて物語や難易度が変化する仕組みなど、AIとゲームデザインを組み合わせた研究も考えられます。
この場合も、「AIを使ったゲームを作りたい」というだけではなく、AIを利用することで従来のゲームと何が変わるのか、その変化をどのように検証するのかという研究上の問いを設定することが重要です。
「ゲームが好き」を研究テーマへ変換する
ゲームを研究したい人にとって、「ゲームが好き」という気持ちは重要な出発点です。しかし、大学院の研究計画書では、好きという気持ちだけでは研究の必要性を十分に説明できません。
まず、自分がこれまでプレイしてきたゲームについて、「なぜこのゲームは長く遊び続けられたのか」「なぜこのゲームでは他のプレイヤーとの交流が生まれたのか」「なぜこの作品の世界観に強く引き込まれたのか」など、自分が疑問に感じた点を書き出してみるとよいでしょう。
その疑問を、自分だけの感想ではなく、他のプレイヤーにも関係する問いへ変換します。例えば、「このゲームは面白かった」という感想から、「協力型ゲームにおける他者とのコミュニケーションはプレイ継続にどのような影響を与えるのか」といった問いへ発展させることができます。
ゲームへの関心を、研究対象、問い、研究方法へ変換することが、大学院でゲームを研究するための重要なステップです。
制作系と分析系では必要な準備も異なる
ゲーム研究では、自分が制作を中心にしたいのか、分析を中心にしたいのかによって、入学前に準備しておきたい内容も変わります。
制作を伴う研究であれば、プログラミング、映像、CG、デザイン、サウンドなど、自分の研究テーマに必要な制作スキルが求められる可能性があります。これまでに制作した作品がある場合には、自分が何を担当し、どのような問題意識から制作したのかを説明できるようにしておくことも大切です。
一方、ゲームを社会や心理、ビジネスの観点から分析するのであれば、先行研究の調査、アンケート、インタビュー、統計分析などの研究方法が重要になることがあります。
出願時に求められる書類や選考方法は研究科や年度によって異なるため、ポートフォリオ等の提出の有無も含め、必ず最新の募集要項を確認してください。
研究科より先に教員や研究プロジェクトを探す
ゲーム研究は複数の学問領域にまたがるため、「ゲームを研究できる研究科はどこか」という探し方だけでは、自分に合った研究環境を見つけにくいことがあります。
まずは、「ゲームデザイン」「VR」「インタラクション」「ゲーミフィケーション」「ゲームと教育」「プレイヤー行動」「コンテンツビジネス」「eスポーツ」など、自分の関心を具体的なキーワードに分けてみましょう。
そのうえで、各研究科の教員紹介や研究プロジェクトを確認し、自分のテーマと接点を持つ教員を探します。候補となる教員が見つかったら、その教員の研究内容、論文、過去のプロジェクトなどを確認すると、入学後の研究をイメージしやすくなります。
研究科の名称だけで決めるのではなく、「自分の研究を指導してもらえる教員がいるか」という視点から志望先を考えることが重要です。
研究計画書ではゲームタイトルだけで終わらせない
研究計画書で特定のゲームタイトルを研究対象にすることも考えられます。しかし、「○○というゲームについて研究したい」というだけでは、研究としての問いが明確ではありません。
例えば、オンラインゲームを対象とするのであれば、「プレイヤー同士の協力行動」「コミュニティ形成」「継続プレイ」「課金行動」など、どの現象に注目するのかを明確にします。
さらに、「誰を対象にするのか」「どのようなデータを集めるのか」「何と何を比較するのか」「どのような方法で分析するのか」まで考えることで、研究計画を具体化できます。
制作系の研究の場合にも、「このゲームを作りたい」だけではなく、「従来のゲームにはどのような課題があり、新しいゲームシステムによって何を検証するのか」という研究目的を示すことが重要です。
研究科選びで確認したいポイント
ゲームに関連する研究科を探す際は、各研究科の教員の研究テーマや研究プロジェクト、学生の研究事例などを確認し、自分がイメージしている研究との接点を探しましょう。
制作を中心にしたい場合には、どのような制作環境があるのか、どのような技術分野を研究している教員がいるのかを確認します。分析を中心にしたい場合には、自分が利用したい研究方法を指導できる教員がいるかを確認することが重要です。
また、説明会や研究発表などの機会があれば、実際に学生がどのような研究を行っているのかを確認してみるとよいでしょう。「ゲーム」という言葉だけでは分からない、各研究科の研究スタイルの違いが見えてくることがあります。
入試制度、出願資格、提出書類、必要となる専門知識なども研究科によって異なります。研究テーマだけで志望先を決めず、自分が受験に向けてどのような準備をする必要があるのかも早めに確認してください。
まとめ
慶應義塾大学の大学院でゲームに関連する研究を考える場合、ゲームの企画・制作、ゲームを支える技術、心理や行動への影響、教育やゲーミフィケーションへの応用、ゲーム産業やIPビジネス、eスポーツなど、さまざまなアプローチがあります。
まずは「ゲームが好き」「ゲームを研究したい」という大きな関心から、「ゲームの何について、誰・何を対象として、何を明らかにしたいのか」まで具体化してみましょう。
そのうえで、自分のテーマと接点を持つ教員や研究プロジェクトを探し、所属する研究科のカリキュラムや研究環境、入試制度を確認していくことが重要です。ゲームを作る側に立ちたいのか、プレイヤーや社会への影響を分析したいのか、産業として研究したいのかを整理することで、自分に合った研究科を見つけやすくなります。
※本記事は記事作成時点の情報をもとに作成しています。入試制度、出願資格、提出書類、試験内容、カリキュラム、教員情報などは変更される場合があります。受験を検討している方は、必ず慶應義塾大学および対象研究科の公式サイト、最新の入学試験要項をご確認ください。
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※この記事は専門家による監修のもと執筆されています。
この記事を監修した人
小杉 樹彦(こすぎ・たつひこ)
志樹舎 創業者/博士(学術)
慶應義塾大学院修了後、2015年1月に院試専門オンライン予備校「志樹舎」を設立。
代表講師として10〜60代まで延べ5,000人以上の受験生を指導。
早慶・国公立をはじめとする難関大学院で合格率9割超の実績を持つ。
現在は大学院入試対策の専門家として、テレビ・新聞・雑誌など幅広いメディアで活動中。
ロングセラー『減点されない!勝論文』(エール出版社)ほか著書・論文多数。


