慶應大学院でVR・XRを研究する研究科の探し方

慶應大学院でVR・XRを研究するなら?

院試専門オンライン予備校「志樹舎」が運営する「慶應義塾大学大学院の院試対策ガイド」をご覧いただき、ありがとうございます。今回のテーマは「慶應大学院でVR・XRを研究するなら?」です。

仮想現実や拡張現実といったVR・XR技術に関心を持ち、大学院で本格的に研究したいと考える方もいるのではないでしょうか。VR・XRは、コンピュータ技術だけで完結する分野ではありません。映像、音響、触覚、インタラクション、デザイン、コンテンツ、教育など、さまざまな領域と関係しています。

そのため、「VRを研究したい」というだけでは、志望する研究科を決めることは難しいでしょう。VRを実現する技術そのものを開発したいのか、VRによって新しい体験や表現を生み出したいのか、教育や医療などの領域に応用したいのかによって、適した研究環境は異なります。

この記事では、慶應大学院でVR・XRに関連する研究を考える際に、どのような視点から研究科や教員を探せばよいのかを整理します。

VR・XR研究にもいくつかの切り口がある

慶應大学院でVR・XR研究のテーマを考えるイメージ

VR・XRという分野には、大きく分けても複数の研究アプローチがあります。VRを実現するディスプレイやセンサー、トラッキング、触覚提示などの技術を開発する研究もあれば、それらを利用して新しいコンテンツや体験を設計する研究もあります。

さらに、教育、医療、観光、都市、エンターテインメントなどの領域へVR・XRを応用し、従来とは異なるサービスや社会の仕組みを考えることもできます。

例えば、「VRを教育に利用したい」という場合でも、教育用VRコンテンツを制作する研究と、VRを利用した場合に学習成果がどのように変化するのかを検証する研究では、必要となる知識や研究方法が異なります。

まずは、自分がVR・XRの「技術」「体験」「応用」のどこに最も関心を持っているのかを整理することが、研究科選びの出発点になります。

感覚提示技術そのものを深めたい場合

VR・XRを支える技術そのものを研究したい場合には、理工学系の研究環境から教員や研究室を探す方法があります。

VRでは、利用者が仮想空間を自然に感じられるようにするため、映像を表示するだけでなく、人間の身体の動きを計測したり、音の方向を再現したり、物体に触れたような感覚を提示したりする技術が関係します。

例えば、「より正確に人間の動きを取得するにはどうすればよいか」「仮想空間にある物体へ触れた感覚をどのように提示するか」「現実空間とデジタル情報を自然に重ね合わせるにはどうすればよいか」といった問いが考えられます。

このような研究では、情報工学、電気電子工学、機械工学、画像処理、センシングなどの知識が関係する可能性があります。VRという言葉だけで研究室を探すのではなく、自分が研究したい技術を具体化して教員を探すことが重要です。

触覚を研究するという方向性

VRというと映像をイメージしやすいですが、人間の体験は視覚だけで構成されているわけではありません。物に触れた感覚や重さ、振動などを再現する触覚技術も、VR・XRと関係する研究分野の一つです。

例えば、仮想空間上の物体に触れたときに振動を与えるデバイスや、物体の硬さや抵抗感を提示する仕組みなどが考えられます。

こうした技術はゲームやエンターテインメントだけではなく、遠隔操作、訓練、教育など、さまざまな分野へ応用できる可能性があります。

感覚提示に関心がある場合には、「VR」というキーワードだけでなく、「触覚」「ハプティクス」「センシング」「ヒューマンインターフェース」など、自分の研究テーマに近い言葉から研究室を探してみることも一つの方法です。

新しい表現や体験を生み出したい場合

VR・XRによる新しい体験やメディア表現を研究するイメージ

VR・XRを用いた新しい表現や体験のデザインに関心がある場合には、メディアデザイン研究科(KMD)のように、技術、デザイン、コンテンツなどを横断して研究する環境との接点が考えられます。

例えば、VRを利用した新しいエンターテインメント、現実空間とデジタル情報を組み合わせた体験、身体の動きによって操作するコンテンツ、遠隔地にいる人同士が同じ空間にいるように感じられるコミュニケーションなどです。

このような研究では、既存のVR技術を分析するだけではなく、実際にプロトタイプを制作し、利用者に体験してもらい、その反応を検証する方法も考えられます。

「VR技術を高度化したい」というよりも、「VRを使うことで、これまで存在しなかった体験を作りたい」という問題意識を持っている場合には、技術とデザインの両方から研究環境を確認するとよいでしょう。

空間コンピューティングを研究するという方向性

VR・XRに関連するテーマを考える際には、仮想空間だけではなく、現実空間とデジタル情報をどのように結びつけるかという視点もあります。

例えば、現実の机や壁、建物などを認識し、その場所にデジタル情報を表示する仕組みや、利用者の視線や身体の動きによって情報を操作するインターフェースなどです。

こうした研究では、コンピュータの画面を見るという従来の操作方法から離れ、人間が存在する空間そのものをインターフェースとして捉えることができます。

研究テーマを考える際には、「どの機器を使いたいか」だけではなく、「人とデジタル情報の関係をどのように変えたいのか」という問いまで掘り下げてみると、研究目的を明確にしやすくなります。

VR・XRを教育へ応用したい場合

VR・XRは教育への応用も考えられる技術です。通常の教材では体験することが難しい環境を仮想空間上に再現することで、新しい学習方法を設計することができます。

例えば、歴史的な空間をVR上に再現して学習する、危険を伴う作業を仮想環境で訓練する、遠隔地にいる学習者同士が同じ仮想空間で学習するといった方法が考えられます。

ただし、「VRを使えば学習効果が高まる」と最初から決めるのではなく、従来の教材や授業と比較して何が変わるのかを検証することが重要です。

例えば、「VR教材を利用した学習者は、通常の映像教材を利用した学習者と比較して空間的な理解にどのような違いが生じるのか」といった研究上の問いへ具体化できます。

教育への応用を中心に考えるのであれば、VR技術だけでなく、教育、学習、心理などの領域からも先行研究を確認する必要があります。

医療・ヘルスケアへの応用を考える場合

VR・XRを医療やヘルスケアへ応用することに関心を持つ人もいるでしょう。例えば、医療従事者の訓練、リハビリテーション、身体運動の支援など、さまざまな応用テーマが考えられます。

このようなテーマでは、VRシステムを制作できるだけでは十分ではありません。対象となる分野の専門知識や、実際に利用する人の安全性、研究倫理などについても考える必要があります。

そのため、医療・ヘルスケアへの応用を考える場合には、VRを専門とする教員だけではなく、応用先の領域との共同研究や連携が可能かという点も確認するとよいでしょう。

「VRを使うこと」自体を研究目的にするのではなく、「現在の医療・ヘルスケアにはどのような課題があり、その課題に対してVRがどのような役割を果たせるのか」という順番で研究テーマを考えることが重要です。

ゲーム・エンターテインメントとの接点

VR・XRとゲームやエンターテインメントは非常に関係の深い領域です。仮想空間の中に入り込んで遊ぶゲームや、現実空間にデジタル情報を重ねる体験など、さまざまなコンテンツを考えることができます。

大学院で研究する場合には、「VRゲームを作りたい」というだけでなく、VRだからこそ生まれる体験について問いを立てることが重要です。

例えば、「身体を使った操作はプレイヤーの没入感にどのような影響を与えるのか」「複数人が同じ仮想空間へ参加することでコミュニケーションはどのように変化するのか」といったテーマが考えられます。

ゲーム制作、インタラクション、心理、コミュニケーションなど複数の領域との接点があるため、自分が特に何を明らかにしたいのかを整理して教員を探すとよいでしょう。

VR・XRとコミュニケーションを研究する

VR・XRは、離れた場所にいる人同士のコミュニケーションを変える可能性を持つ技術でもあります。

従来のビデオ会議では、基本的には画面越しに相手とコミュニケーションを取ります。一方、VRでは、アバターなどを利用しながら、同じ仮想空間に存在しているような体験を設計することもできます。

例えば、「アバターの外見はコミュニケーションにどのような影響を与えるのか」「仮想空間での距離や視線は対人関係にどのような影響を与えるのか」といった問いが考えられます。

この方向では、VR技術だけでなく、人間の心理、コミュニケーション、身体性なども研究対象になります。技術を作ることと、人間がそれをどのように受け取るのかを分析することの両方が関係するテーマです。

特定分野への応用を考えたい場合

VR・XRを教育や社会課題へ応用する研究のイメージ

VR・XRを教育、都市、観光、防災などの特定分野へ応用したい場合には、応用先の分野に近い研究環境や、政策・メディア研究科を含む学際的な研究環境を検討する方法があります。

例えば、都市空間にデジタル情報を重ねて街歩きを支援するシステム、災害を仮想空間で体験する防災教育、文化財や観光地を仮想空間で体験できるサービスなど、さまざまな研究テーマが考えられます。

このようなテーマでは、VR・XRの技術そのものよりも、「どの社会課題を解決したいのか」が研究の中心になる場合があります。

技術を先に決めて応用先を探すのではなく、対象となる課題を明確にしたうえで、「その課題にVR・XRを利用する意味は何か」を考えることが重要です。

生成AIとVR・XRを組み合わせる研究も考えられる

生成AIとVR・XRを組み合わせることで、従来とは異なる仮想体験を考えることもできます。

例えば、利用者との会話に応じて仮想キャラクターの発言が変化する仕組みや、利用者の行動に合わせて仮想空間の内容が変化するシステムなどが考えられます。

また、3Dコンテンツや仮想空間の制作工程をAIによって支援することで、コンテンツ制作の方法そのものが変化する可能性もあります。

研究テーマとして考える場合には、「AIとVRを組み合わせる」という技術の組み合わせだけで終わらせず、その組み合わせによって人間の体験や制作活動がどのように変化するのかまで問いを具体化する必要があります。

VR・XR研究では「没入感」を具体化する

VRに関心を持つ人がよく使う言葉の一つに「没入感」があります。しかし、研究計画書で「没入感の高いVRを作りたい」と書くだけでは、何を研究したいのかが十分に伝わらない可能性があります。

映像のリアリティなのか、音響なのか、身体を動かすことなのか、他者とのコミュニケーションなのかによって、体験に影響する要因は異なります。

また、「没入感が高い」とは何を意味するのか、どのように測定するのかについても検討する必要があります。

「よりリアルなVRを作る」という大きな目的から、「どの要素が、利用者のどのような体験に影響するのか」という研究上の問いへ落とし込むことが重要です。

社会人は実務上の課題から研究テーマを考えられる

ゲーム、映像、広告、教育、製造、建築などの仕事でVR・XRに関わってきた社会人の場合には、実務の中で感じた疑問を研究テーマの出発点にすることもできます。

例えば、「VR研修を導入したが利用が定着しなかった」「XRを使ったサービスを作ったが利用者が操作方法を理解しにくかった」「遠隔コミュニケーションでは現場にいる感覚を十分に伝えられなかった」といった経験です。

ただし、研究計画書では、自社のサービスを改善することだけを目的にするのではなく、その経験から生まれた疑問を一般化して研究上の問いへ変換する必要があります。

例えば、「自社のVR研修を改善したい」から、「VRを利用した技能訓練において、身体的なフィードバックは学習者の技能習得にどのような影響を与えるのか」といった問いへ発展させることができます。

研究科より先に教員・研究室を探すことも重要

VR・XRは、情報工学、デザイン、メディア、心理、教育など複数の分野にまたがります。そのため、「VRを研究できる研究科はどこか」という探し方だけでは、自分に合った研究環境を見つけにくい場合があります。

まず、「VR」「XR」だけでなく、「ハプティクス」「インタラクション」「センシング」「空間コンピューティング」「3DCG」「ヒューマンインターフェース」「テレプレゼンス」など、自分の関心に近いキーワードを整理してみましょう。

応用研究であれば、「教育」「ゲーム」「観光」「都市」「コミュニケーション」などのキーワードも組み合わせます。

そのうえで、各研究科の教員紹介や研究室、研究プロジェクトを確認し、自分の問題意識と接点を持つ教員を探します。研究科名よりも、実際にどのような研究が行われているのかを確認することが重要です。

研究計画書では「VRを使いたい」から一歩進める

VR・XR関連の研究計画書では、「VRを使って新しいサービスを作りたい」という段階から、研究上の問いへ具体化する必要があります。

まず、「誰が使うのか」を考えます。子どもなのか、大学生なのか、医療従事者なのか、企業で研修を受ける社会人なのかによって、必要となるシステムも異なります。

次に、「どのような課題があるのか」を整理します。従来の学習方法では理解しにくい、遠隔では身体的な情報を伝えにくい、現実では危険な訓練を実施しにくいなど、VRを利用する理由を明確にします。

さらに、「VRを導入することで何が変化するのか」「それをどのように測定するのか」まで考えます。アンケート、行動データ、実験、インタビューなど、研究目的に適した方法を検討することが重要です。

制作実績がある場合は研究とのつながりを説明する

これまでにVRコンテンツ、ゲーム、映像、アプリなどを制作した経験がある場合には、その経験を志望理由や研究計画につなげられる可能性があります。

ただし、「これだけ作れます」と技術力を示すだけではなく、制作を通じてどのような問題を発見したのかを説明することが重要です。

例えば、VRコンテンツを制作した際に「利用者によって操作への慣れに大きな差があった」という経験があれば、その疑問からインターフェースやユーザー体験に関する研究テーマを考えることができます。

制作経験を研究上の問題意識へ変換することで、これまでの経験と大学院で取り組みたい研究とのつながりを示しやすくなります。

研究環境や必要な設備も確認する

VR・XR研究では、研究テーマによって必要となる設備や機材が異なります。ヘッドマウントディスプレイだけでなく、センサー、カメラ、モーション計測機器、触覚デバイスなどが必要になる研究も考えられます。

そのため、研究科の名称やカリキュラムだけではなく、研究室の公開情報、過去の研究プロジェクト、利用されている研究設備なども確認してみましょう。

また、機材があるだけではなく、自分が研究したいテーマを指導できる教員がいるか、必要な技術を学べる環境があるかという点も重要です。

説明会や研究発表、公開イベントなどの機会がある場合には、実際にどのような研究が行われているのかを確認すると、入学後の研究環境をイメージしやすくなります。

入試準備では研究科ごとの違いを確認する

VR・XRに関連する研究ができる可能性がある研究科でも、入試制度や求められる準備は異なります。研究科や入試区分によって、出願資格、提出書類、英語、専門科目、面接などの扱いが異なるため、必ず受験年度の募集要項を確認してください。

特に工学的な研究を志望する場合には、数学、プログラミング、情報工学などの基礎知識が研究を進めるうえで必要になる可能性があります。一方、制作や応用を中心とする研究では、これまでの活動や制作経験と研究テーマとの接続が重要になることも考えられます。

また、教員への事前連絡の必要性や、制作物・ポートフォリオ等の扱いについても研究科や入試区分によって異なる可能性があります。出願準備を始める段階で最新の募集要項や研究科の案内を確認しましょう。

まとめ

慶應義塾大学の大学院でVR・XRに関連する研究を考える場合、センサーや触覚、インターフェースなどの技術そのものを研究する方向、VR・XRを利用して新しい表現や体験を作る方向、教育や社会課題など特定の領域へ応用する方向など、複数のアプローチがあります。

VR・XRは学際性の高い分野だからこそ、「VRを研究したい」という段階から、「誰の、どのような課題に対して、どの技術を使い、何を明らかにしたいのか」まで具体化することが重要です。

そのうえで、自分の研究テーマと接点を持つ教員や研究室を探し、研究内容、設備、カリキュラム、入試制度などを確認していきましょう。技術を作りたいのか、新しい体験を生み出したいのか、特定の社会課題へ応用したいのかを整理することで、自分に合った研究環境を見つけやすくなります。


※本記事は記事作成時点の情報をもとに作成しています。入試制度、出願資格、提出書類、試験内容、カリキュラム、教員情報などは変更される場合があります。受験を検討している方は、必ず慶應義塾大学および対象研究科の公式サイト、最新の入学試験要項をご確認ください。

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※この記事は専門家による監修のもと執筆されています。

この記事を監修した人

小杉樹彦(志樹舎 創業者)

小杉 樹彦(こすぎ・たつひこ)
志樹舎 創業者/博士(学術)
慶應義塾大学院修了後、2015年1月に院試専門オンライン予備校「志樹舎」を設立。 代表講師として10〜60代まで延べ5,000人以上の受験生を指導。 早慶・国公立をはじめとする難関大学院で合格率9割超の実績を持つ。 現在は大学院入試対策の専門家として、テレビ・新聞・雑誌など幅広いメディアで活動中。 ロングセラー『減点されない!勝論文』(エール出版社)ほか著書・論文多数。