慶應義塾大学大学院KMDでアクセシビリティとインクルーシブデザインを研究するためのガイド

誰もが使いやすい社会をつくる、KMDのアクセシビリティ研究

院試専門オンライン予備校「志樹舎」が運営する「慶應義塾大学大学院の院試対策ガイド」をご覧いただき、ありがとうございます。今回のテーマは「KMDでアクセシビリティを研究するには?」です。

デジタル技術の発展によって、私たちはさまざまな情報やサービスを利用できるようになりました。一方で、障害の有無や年齢、利用環境などによって、同じサービスでも利用しやすさに違いが生じることがあります。

例えば、視覚情報を中心に設計されたウェブサイトは、画面読み上げソフトを利用する人にとって操作しにくい場合があります。また、音声だけで情報を伝えるサービスでは、聴覚に障害のある人が必要な情報を得られない可能性があります。

こうした問題を考えるうえで重要になるのが、アクセシビリティという概念です。

アクセシビリティとは、障害の有無や年齢、利用環境などにかかわらず、できるだけ多くの人が情報、サービス、製品、環境などを利用できるようにする考え方です。

慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(KMD)は、テクノロジー、デザイン、メディア、社会との関係を横断的に考える研究科です。アクセシビリティやインクルーシブデザインに関心がある方にとっても、検討対象の一つになります。

ただし、アクセシビリティの研究には、支援技術の開発、利用者の体験の調査、社会制度の分析など、さまざまな方向性があります。

この記事では、KMDでアクセシビリティに関連する研究を考える際に注目したい教員の専門分野と、研究テーマを具体化するためのポイントを解説します。

KMDでアクセシビリティを研究するとは?

KMDでアクセシビリティと誰もが利用しやすいデザインを研究するイメージ

アクセシビリティの研究というと、障害のある人を支援する機器やソフトウェアの開発を思い浮かべる方もいるかもしれません。

しかし、アクセシビリティの研究は、技術開発だけに限定されるものではありません。

例えば、あるサービスを利用しにくい人がいる場合、その原因は利用者の身体的な特性だけにあるとは限りません。サービスの設計や利用環境、社会的な制度などが、利用を難しくしている可能性もあります。

そのため、アクセシビリティを研究する際には、利用者の特性と、製品やサービス、社会環境との関係を考えることが重要です。

新しい技術を開発する研究もあれば、利用者へのインタビューを通じて課題を明らかにする研究、社会の仕組みを分析する研究もあります。

自分がどのような問題を解決したいのかによって、必要となる研究方法や専門分野は異なります。

Giulia Barbareschi氏:アクセシビリティと障害学

ジュリア・バルバレスキ(Giulia Barbareschi)氏は、アクセシビリティ、障害学、質的研究、社会開発、インクルーシブデザインなどを専門分野とする教員として紹介されています。

ご提供いただいたKMD公式プロフィールの情報によると、障害のある人々の視点に立ち、社会との関わり方やテクノロジーの利用について、質的な研究手法を用いて明らかにする研究に取り組んできたことが紹介されています。

障害学は、障害を個人の身体的・精神的な特性だけで捉えるのではなく、社会の制度や環境、人々の考え方との関係からも考える学問分野です。

例えば、車いすを利用する人が建物へ入れない場合、問題を利用者の身体的な特性だけに求めるのではなく、階段しか設けられていない建物の設計にも注目します。

このような視点は、デジタルサービスや公共空間、教育環境など、さまざまな分野のアクセシビリティ研究に応用できます。

障害のある当事者の経験を出発点に研究したい方や、技術と社会の関係を考えたい方にとって、参考になる専門分野です。

インクルーシブデザインとは何か

インクルーシブデザインとは、多様な人々の視点や経験を取り入れながら、製品やサービス、環境などを設計する考え方です。

特に、従来の設計では十分に考慮されてこなかった人々の経験に注目することが重要になります。

例えば、新しいスマートフォンアプリを開発する場合、開発者だけで使いやすさを判断するのではなく、さまざまな利用者の意見を取り入れることが考えられます。

視覚に障害のある人、手指の操作が難しい人、高齢者など、利用者によって操作上の課題は異なる可能性があります。

また、同じ障害がある人でも、利用経験や生活環境によって必要とする機能が異なる場合があります。

そのため、利用者を一つの集団として捉えるのではなく、個々の経験や状況を理解することが重要です。

インクルーシブデザインの研究では、誰の視点を設計に取り入れるのか、どのような方法で意見を集めるのか、設計の過程にどのように参加してもらうのかといった問いが考えられます。

アクセシビリティとユニバーサルデザインの違い

アクセシビリティと関連する言葉に、ユニバーサルデザインがあります。

ユニバーサルデザインは、年齢や能力などにかかわらず、できるだけ多くの人が利用できる製品や環境を設計しようとする考え方です。

一方、アクセシビリティは、利用に障壁が生じている人々も含め、必要な情報やサービスへアクセスできる状態を実現することに重点を置きます。

両者は重なる部分が多く、明確に切り離せるものではありません。

例えば、公共施設の案内表示を分かりやすくすることは、多くの利用者にとって役立ちます。同時に、視覚や聴覚に障害のある人が必要な情報を得られるようにするためには、音声案内や文字表示など、複数の情報提供方法を検討する必要があります。

研究テーマを考える際には、どのような利用者が、どのような場面で、何に困っているのかを具体化することが重要です。

質的研究で当事者の経験を明らかにする

アクセシビリティ研究では、利用者の経験を詳しく理解するために、質的研究が用いられることがあります。

質的研究とは、インタビューや観察などを通じて、人々の経験や行動、考え方などを詳しく理解しようとする研究方法です。

例えば、視覚に障害のある人がオンラインサービスを利用する際に、どのような場面で困難を感じるのかを調べる場合、実際の利用経験を聞くことが考えられます。

また、利用者がサービスを操作する様子を観察することで、本人が言葉にしにくい課題が見つかる可能性もあります。

こうした調査では、単に不便な点を集めるだけでなく、その問題がどのような状況で生じるのか、利用者がどのように対応しているのかを理解することが重要です。

研究計画書では、誰を対象に、どのような方法で調査し、何を明らかにしたいのかを具体的に示す必要があります。

当事者参加型の研究という考え方

アクセシビリティの研究では、障害のある人を単に調査対象として扱うのではなく、研究や設計の過程に参加してもらう方法も考えられます。

例えば、新しい支援アプリを開発する場合、開発者が必要だと考えた機能を一方的に実装するのではなく、利用者と一緒に課題を整理することができます。

また、試作品を評価してもらうだけでなく、企画段階から意見を取り入れる方法もあります。

このような研究では、研究者と参加者の関係や、意思決定の方法も重要になります。

当事者の意見を聞いたという事実だけでなく、その意見が実際の設計や研究にどのように反映されたのかを検討することが大切です。

参加者の負担や研究成果の共有方法にも配慮しながら、研究を進める必要があります。

Sawako Shinomiya氏:発達障害と社会の関係

発達障害と社会環境の関係を研究するイメージ

Sawako Shinomiya氏は、自閉症・発達障害の社会学、保健医療社会学、科学技術社会論(STS)などを専門分野とする教員として紹介されています。

発達障害に関する研究には、医学や心理学の視点から特性を理解する研究だけでなく、社会制度や周囲の人々との関係を考える研究もあります。

例えば、学校や職場において、どのような環境が利用者にとって参加しやすいのか、どのような制度や慣行が障壁になっているのかといった問いが考えられます。

また、発達障害に関する社会的な理解や、支援制度のあり方なども研究対象になり得ます。

こうした研究では、障害を個人の特性だけで説明するのではなく、周囲の環境や社会との関係を含めて考えることが重要です。

テクノロジーを利用した支援だけでなく、社会の仕組みや人々の認識に関心がある方にとって、参考になる専門分野です。

科学技術社会論(STS)から考えるアクセシビリティ

科学技術社会論(STS)は、科学技術と社会がどのように関係し、互いに影響を与えているのかを研究する領域です。

例えば、新しい支援技術が開発されたとしても、それが社会でどのように受け入れられ、利用されるのかは、技術の性能だけで決まるわけではありません。

利用者の生活環境、制度、費用、周囲の理解など、さまざまな要素が関係します。

また、技術の開発者が想定していた利用方法と、実際の利用者が必要としている使い方が異なる場合もあります。

研究テーマとしては、「支援技術の普及にはどのような社会的要因が関係するのか」「デジタル技術の導入によって、障害のある人々の生活や社会参加はどのように変化するのか」といった問いが考えられます。

技術を開発するだけでなく、その技術が社会の中でどのような意味を持つのかを考えることが重要です。

発達障害とデジタル環境のアクセシビリティ

デジタルサービスのアクセシビリティを考える際には、視覚や聴覚、身体的な操作だけでなく、情報の理解しやすさにも注目する必要があります。

例えば、複雑な画面構成や分かりにくい操作手順は、利用者によって大きな負担になる場合があります。

また、情報が一度に大量に提示されることや、操作の結果が予測しにくいことなども、利用上の課題になる可能性があります。

ただし、発達障害のある人々の特性や必要な配慮は一様ではありません。

そのため、特定の診断名だけをもとに利用者のニーズを決めつけるのではなく、実際の利用場面や本人の経験を確認することが重要です。

研究テーマとしては、「情報提示の方法は、利用者の操作理解にどのような影響を与えるのか」「利用者が自分に合った表示方法を選択できる仕組みは、サービスの利用体験をどのように変化させるのか」といった問いが考えられます。

デジタルアクセシビリティを研究する

デジタルアクセシビリティは、ウェブサイトやアプリケーション、デジタル教材などを、できるだけ多くの人が利用できるようにするための重要な考え方です。

例えば、画像に適切な代替テキストを設定することや、キーボードだけでも操作できるようにすること、動画に字幕を用意することなどが挙げられます。

また、文字の読みやすさや、画面構成の分かりやすさなども、利用者の体験に関係します。

研究テーマとしては、「音声読み上げを利用する人にとって、どのような画面構成が情報探索を容易にするのか」「入力方法の違いは、デジタルサービスの操作負担にどのような影響を与えるのか」といった問いが考えられます。

こうした研究では、情報技術やデザインに加えて、実際の利用者の行動や経験を理解することが重要です。

アクセシビリティとユーザビリティの違い

アクセシビリティと関連する概念に、ユーザビリティがあります。

ユーザビリティは、特定の利用者が、特定の目的を達成する際に、製品やサービスをどの程度効果的・効率的に利用でき、満足できるかという観点に関係します。

一方、アクセシビリティでは、多様な利用者が製品やサービスへアクセスし、利用できるかという点が重要になります。

例えば、一般的な操作方法では使いやすいアプリであっても、画面読み上げソフトに対応していなければ、利用できない人がいる可能性があります。

また、アクセシビリティに配慮した機能が備わっていても、操作が複雑であれば、実際の利用に負担が生じる場合があります。

そのため、両者を対立する概念として考えるのではなく、多様な利用者にとって利用可能であり、かつ使いやすいサービスを目指すことが重要です。

支援技術の開発という研究方向

アクセシビリティに関心がある方の中には、支援技術そのものを開発したいと考える方もいるでしょう。

例えば、視覚情報を音声や触覚へ変換する技術、身体的な操作を補助するインターフェース、コミュニケーションを支援するシステムなどが考えられます。

こうした研究では、技術的な実現可能性に加えて、利用者にとって本当に必要な機能なのかを検討することが重要です。

例えば、触覚によって情報を伝える装置を開発する場合、どのような情報を、どのような場面で伝える必要があるのかを整理します。

また、装置の性能だけでなく、長時間利用した場合の負担や、日常生活での使いやすさなども考える必要があります。

KMDで支援技術に関連する研究を考える場合には、アクセシビリティを専門とする教員だけでなく、HCIやハプティクスなどの関連分野を持つ教員の研究も確認するとよいでしょう。

VR・XRとアクセシビリティの接点

VRやXRなどの技術も、アクセシビリティ研究と接点を持つ場合があります。

例えば、仮想空間を利用して新しいコミュニケーションの方法を検討したり、現実の環境では体験しにくい活動への参加方法を考えたりすることができます。

一方で、VR機器そのものが、利用者によっては使いにくい場合もあります。

例えば、操作方法や情報提示の形式、身体的な負担などが、利用上の課題になる可能性があります。

研究テーマとしては、「VR空間における情報提示の方法は、利用者の操作理解にどのような影響を与えるのか」「身体的な操作に制約がある利用者にとって、どのような入力方法が適しているのか」といった問いが考えられます。

新しい技術を支援に活用するだけでなく、その技術自体のアクセシビリティを考えることも重要です。

教育分野でアクセシビリティを研究する

多様な学習者が利用できる教育環境とアクセシビリティ研究のイメージ

アクセシビリティは、教育分野とも深く関係しています。

例えば、オンライン授業やデジタル教材が普及する中で、さまざまな学習者が同じ情報へアクセスできる環境を整えることが重要になっています。

視覚や聴覚、身体的な操作などに関する配慮に加えて、学習者が理解しやすい情報提示や、柔軟な学習方法を考えることも必要です。

研究テーマとしては、「デジタル教材の情報提示方法は、学習者の理解にどのような影響を与えるのか」「オンライン授業における情報保障の方法は、学習参加にどのように関係するのか」といった問いが考えられます。

教育とアクセシビリティを組み合わせる場合には、対象となる学習者や学習場面を具体化することが重要です。

公共空間やサービスのアクセシビリティ

アクセシビリティの研究対象は、デジタルサービスだけではありません。

公共交通機関、商業施設、行政サービス、観光施設など、さまざまな場所やサービスが研究対象になり得ます。

例えば、公共施設の案内表示が分かりにくい場合、利用者が目的地へ移動する際に困難を感じる可能性があります。

また、行政手続きがオンライン化された場合、デジタル機器の操作に不慣れな人が利用しにくくなることも考えられます。

こうした問題を研究する際には、利用者の行動や経験を調査し、どのような障壁が存在するのかを明らかにすることが重要です。

サービスデザインや公共空間の設計とアクセシビリティを組み合わせることで、研究テーマの幅を広げることができます。

国際的な視点からアクセシビリティを考える

アクセシビリティに関する課題は、日本国内だけに存在するものではありません。

国や地域によって、障害に関する制度や社会的な理解、利用できる技術、公共サービスの整備状況などは異なります。

例えば、ある地域では利用できる支援技術が、別の地域では費用や設備の問題によって普及していない場合があります。

また、同じ技術であっても、文化や生活環境によって利用方法が異なる可能性があります。

国際的な視点から研究する場合には、海外の制度や事例を紹介するだけでなく、なぜ違いが生じているのかを考えることが重要です。

研究テーマとしては、「支援技術の利用には、地域の社会的・経済的条件がどのように関係するのか」「異なる文化的背景を持つ利用者にとって、どのようなサービス設計が必要なのか」といった問いが考えられます。

アクセシビリティ研究で重要な研究倫理

アクセシビリティの研究では、利用者へのインタビューや行動観察などを行う場合があります。

その際には、研究参加者の尊厳やプライバシーを尊重することが重要です。

例えば、障害に関する情報や生活上の困難について聞き取る場合には、研究目的を十分に説明し、参加者が安心して協力できる方法を検討する必要があります。

また、研究への参加を断ったり、途中で参加を取りやめたりできることについても、適切に説明する必要があります。

研究参加者の負担を減らすために、インタビューの方法や時間、使用する資料などを調整することも考えられます。

研究計画書では、研究方法だけでなく、対象者への配慮や個人情報の取り扱いについても検討しておくことが大切です。

当事者としての経験を研究に生かす

アクセシビリティに関心を持つ方の中には、自分自身の経験や、身近な人の経験をきっかけに研究を志す方もいるでしょう。

例えば、日常生活で利用しにくいサービスに直面した経験や、教育・職場などで環境上の障壁を感じた経験が、研究テーマにつながることがあります。

こうした経験は、問題意識を具体化するうえで重要な出発点になります。

ただし、個人の経験だけで研究上の結論を導くのではなく、先行研究や他の利用者の経験なども踏まえて、問いを整理する必要があります。

また、自分自身の経験を研究に取り入れる場合には、研究者としての立場や、経験の解釈についても慎重に考えることが重要です。

個人的な問題意識を、より広い社会的な課題として検討できる研究テーマへ発展させることを意識しましょう。

研究テーマは「対象者+利用場面+障壁」で考える

アクセシビリティの研究テーマを具体化する際には、「対象者+利用場面+障壁」という形で整理する方法があります。

例えば、「視覚に障害のある人+オンラインショッピング+商品情報の取得」「高齢者+行政サービス+オンライン手続き」「発達障害のある人+デジタル教材+情報の理解」といった形です。

そこから、「画面読み上げを利用する人にとって、商品情報の提示方法は情報探索にどのような影響を与えるのか」「オンライン行政手続きでは、どのような画面設計が利用者の操作負担を軽減するのか」といった研究上の問いへ発展させることができます。

また、技術開発に関心がある場合には、「対象者+支援技術+解決したい課題」という形で考えることもできます。

このように、対象となる人々と利用場面、具体的な障壁を整理することで、研究計画を明確にしやすくなります。

研究計画書では解決したい課題を具体化する

アクセシビリティに関する研究計画書では、「誰もが使いやすい社会を実現したい」「障害のある人を支援したい」という大きな目標だけでは、研究内容が十分に伝わらない場合があります。

例えば、「視覚に障害のある人が利用しやすいアプリを開発したい」というテーマであれば、どのような利用場面を対象にするのか、既存のアプリにはどのような課題があるのか、どのような方法で改善を検討するのかを具体化する必要があります。

また、「発達障害のある人が働きやすい環境を研究したい」という場合には、職場の制度、コミュニケーション、デジタルツールなど、どの要素に注目するのかを整理することが重要です。

そのうえで、関連する先行研究を確認し、これまでに何が明らかになっているのか、自分の研究ではどのような点を新しく検討したいのかを考えます。

研究目的に応じて、インタビュー、観察、アンケート、試作品の開発、ユーザーテストなど、適切な研究方法を検討しましょう。

志望理由書ではなぜKMDなのかを説明する

アクセシビリティに関心がある場合、志望理由書では「誰もが暮らしやすい社会を作りたい」「障害のある人を支援したい」という思いを中心に書いてしまうことがあります。

しかし、社会課題への関心だけでは、なぜKMDへ進学する必要があるのかを十分に説明できない場合があります。

例えば、自分が解決したいアクセシビリティ上の課題を整理し、その課題に取り組むために必要な技術や研究方法を考えます。

そのうえで、KMDの教員の専門分野や研究プロジェクトと、自分の問題意識との接点を具体的に説明することが重要です。

「アクセシビリティに関心があるからKMDへ進学する」という説明から、「この課題を研究し、利用者の経験とテクノロジーの両面から解決方法を検討したい。そのためにKMDの研究環境が必要である」という説明へ発展させましょう。

KMDと他研究科をどう比較する?

アクセシビリティを研究したい場合には、KMDだけでなく、工学系、社会学系、福祉系などの大学院も比較対象になります。

例えば、支援機器の性能や制御技術を中心に研究したい場合には、工学系の研究環境が適している可能性があります。

一方、障害に関する社会制度や人々の認識を中心に研究したい場合には、社会学系や福祉系の研究環境が近いこともあります。

また、利用者の経験を調査し、テクノロジーやサービスの設計へ反映させたい場合には、KMDの教員の専門分野と接点が見つかる可能性があります。

研究科名だけで判断するのではなく、自分が何を明らかにしたいのかを整理し、教員の専門分野や研究方法を比較することが重要です。

出願前に確認したいポイント

KMDでアクセシビリティに関連する研究を希望する場合には、まず自分がどのような利用者や社会課題に関心を持っているのかを整理しましょう。

そのうえで、インクルーシブデザイン、障害学、質的研究、科学技術社会論、支援技術の開発など、どの方向から研究したいのかを具体化します。

次に、教員の専門分野や研究プロジェクトを確認し、自分の研究テーマとの接点を探します。

また、出願資格、提出書類、英語に関する要件、研究計画の扱いなどについては、必ず受験年度の募集要項を確認してください。

教員への事前連絡や研究指導体制についても、最新の公式情報を確認しておく必要があります。

自身の学修や研究活動に必要な合理的配慮がある場合には、大学の公式案内に従って、相談窓口や申請方法、必要な手続きについて早めに確認しておくことも大切です。

まとめ

慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(KMD)でアクセシビリティに関連する研究を考える場合には、インクルーシブデザイン、障害学、質的研究、科学技術社会論、支援技術など、複数の方向性から研究テーマを探すことが重要です。

ジュリア・バルバレスキ(Giulia Barbareschi)氏の専門分野であるアクセシビリティや障害学、インクルーシブデザインは、障害のある当事者の経験や視点を研究へ取り入れるうえで参考になります。

また、Sawako Shinomiya氏の専門分野である自閉症・発達障害の社会学や科学技術社会論は、障害と社会環境、テクノロジーの関係を考えるうえで重要です。

重要なのは、「誰もが使いやすい社会を実現したい」という目標だけで研究科を選ぶのではなく、「誰が、どのような場面で、どのような障壁に直面しているのか」という問いを具体化することです。

そのうえで、各教員の最新の研究活動や研究プロジェクト、研究指導体制を確認し、自分の問題意識と接点のある研究環境を探していきましょう。


※本記事はご提供いただいたKMD公式サイトの教員情報をもとに作成しています。教員の所属・職位・専門分野・研究指導体制、研究プロジェクト、入試制度などは変更される場合があります。受験を検討している方は、必ず慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科の公式サイトおよび最新の入学試験要項をご確認ください。

志樹舎 では、大学院入試の各種対策に特化した専門性の高いサポートを行っています。
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※この記事は専門家による監修のもと執筆されています。

この記事を監修した人

小杉樹彦(志樹舎 創業者)

小杉 樹彦(こすぎ・たつひこ)
志樹舎 創業者/博士(学術)
慶應義塾大学院修了後、2015年1月に院試専門オンライン予備校「志樹舎」を設立。 代表講師として10〜60代まで延べ5,000人以上の受験生を指導。 早慶・国公立をはじめとする難関大学院で合格率9割超の実績を持つ。 現在は大学院入試対策の専門家として、テレビ・新聞・雑誌など幅広いメディアで活動中。 ロングセラー『減点されない!勝論文』(エール出版社)ほか著書・論文多数。