慶應大学院の修士課程は2年間で何をする?

院試専門オンライン予備校「志樹舎」が運営する『慶應義塾大学大学院の院試対策ガイド』をご覧いただき、ありがとうございます。今回のテーマは『慶應大学院の修士課程は2年間で何をする?』です。

慶應義塾大学大学院への合格を目指していると、研究計画書や英語、専門科目、面接など、どうしても「入試を突破すること」に意識が向きがちです。しかし、大学院選びでは、合格した後にどのような2年間を過ごすのかまで考えておくことが大切です。

修士課程では、授業を受けて単位を取得するだけではなく、自分自身の研究テーマを設定し、文献を読み、調査や実験、分析などを進めながら研究成果をまとめていきます。ただし、具体的なカリキュラムや修了要件は研究科や専攻、プログラムによって異なります。

ここでは一般的な研究型の修士課程を中心に、慶應大学院へ進学した場合の2年間をイメージするためのポイントを整理します。


入学直後は履修と研究を同時にスタートする

修士課程へ入学すると、最初に履修する授業を決めていきます。大学院では、自分の専門分野に直接関係する授業だけではなく、研究に必要な理論や研究方法、周辺分野について学ぶ機会もあります。

学部と異なる大学や分野から進学した場合には、研究を進めるために不足している基礎知識を補う必要が生じることもあります。

一方で、授業だけを受けていればよいわけではありません。入学後は早い段階から自分の研究も進めていくことになります。入試の際に研究計画書を提出している場合でも、その計画がそのまま修士論文になるとは限りません。

指導を受けながら先行研究をさらに調べ、研究対象や研究方法を検討し、入試時点の計画をより具体的な研究へ発展させていきます。


修士1年目は先行研究を徹底的に調べる

修士1年目の重要な作業の一つが、先行研究の調査です。自分の研究テーマについて、これまでどのような研究が行われ、何が明らかになっているのかを把握します。

研究計画書を作成する段階でも先行研究は調べますが、大学院入学後はさらに多くの文献を読み、自分の研究の位置づけを明確にしていくことになります。

文献を読むときには、単に内容を要約するだけではなく、「この研究は何を明らかにしたのか」「どのような方法を使ったのか」「どのような課題が残されているのか」といった視点から整理することが重要です。

研究分野によっては英語論文を読む必要もあります。院試の英語対策が終わったから英語学習も終了するのではなく、入学後は研究に必要な情報を得るための手段として英語を使う場面も考えられます。


研究テーマは入学後に修正されることもある

「研究計画書に書いたテーマは、入学後も絶対に変更してはいけないのではないか」と考える人もいるかもしれません。しかし、研究を進めて新しい文献を読んだり、教員から指摘を受けたりする中で、研究テーマや方法を見直すことは考えられます。

たとえば、当初は対象が広すぎたため範囲を絞る、必要なデータを収集することが難しいため研究方法を変更する、先行研究を調べた結果として研究上の問いを修正するといったことがあります。

大切なのは、最初に作った計画を守り続けることではなく、なぜ変更する必要があるのかを考えながら、実現可能な研究へ発展させていくことです。

その意味でも、院試の研究計画書は「入学後の研究を完成形まで決める書類」というより、現時点で何を研究したいのかを論理的に示すための重要な出発点と考えるとよいでしょう。


ゼミや研究指導で研究を磨いていく

大学院生活で重要になるのが、教員からの研究指導やゼミなどでの研究活動です。自分の研究について説明し、質問やコメントを受けながら内容を改善していきます。

自分では十分に説明できていると思っていても、「なぜその対象を選ぶのか」「その方法で研究目的を達成できるのか」「先行研究との違いは何か」と質問されることで、研究計画の弱い部分が見えてくることがあります。

また、他の大学院生の研究報告を聞くことも学びになります。自分とは異なるテーマであっても、研究上の問いの立て方、調査方法、分析方法、発表の組み立て方など、参考になる点があります。

院試の面接対策で練習した「自分の研究を他者に説明する力」は、入学後も継続して必要になる力です。


修士1年目から調査・実験を始める場合もある

「1年目は勉強、2年目になってから研究」と考えると、実際の修士課程の時間感覚とはずれる可能性があります。

研究テーマや分野によっては、1年目から調査、実験、資料収集、データ収集などを進める必要があります。特に長期間の観察や実験が必要な研究、インタビューやアンケートを行う研究などでは、準備にも時間がかかります。

研究対象者を扱う研究などでは、研究を実施する前に必要な手続きを確認しなければならない場合もあります。そのため、「修士論文を書くのは2年目だから、研究も2年目から始めればよい」と考えず、修了までのスケジュールを逆算して進めることが重要です。


修士2年目は研究と論文作成が本格化する

修士2年目になると、それまで進めてきた研究をまとめる作業が本格化します。収集したデータや資料を分析し、研究上の問いに対してどのようなことが明らかになったのかを整理していきます。

修士論文を作成する場合には、研究背景、先行研究、研究目的、研究方法、結果、考察などを一つの論文としてまとめます。実際には、提出直前になって一気に書くのではなく、研究の進行に合わせて少しずつ文章化していくことが重要です。

書いてみることで、「先行研究の整理が不足している」「研究方法の説明が足りない」「結果と考察がつながっていない」といった問題が見つかることもあります。

指導を受けながら修正を重ね、研究成果としてまとめていくことになります。


修士論文を書けば自動的に修了できるわけではない

修士課程では、一定期間在籍すれば自動的に学位を取得できるわけではありません。研究科ごとに定められた修了要件を満たす必要があります。

必要な単位を修得することに加えて、研究指導を受け、修士論文などの審査や最終試験など、研究科が定める要件を満たすことが求められます。

具体的に何単位必要なのか、どのような成果物を提出するのか、どのような審査が行われるのかは研究科や課程によって異なります。

受験前の段階でも、志望研究科のカリキュラムだけでなく、学位取得までの流れや修了要件を確認しておくと、「入学後に何をする大学院なのか」がより具体的に見えてきます。


KBS・SDM・KMDなどは同じ「2年間」でも内容が異なる

慶應大学院を検討するときに注意したいのが、すべての研究科で同じような2年間を過ごすわけではないという点です。

たとえば、経営管理研究科(KBS)、システムデザイン・マネジメント研究科(SDM)、メディアデザイン研究科(KMD)などでは、それぞれ独自の教育方針やカリキュラムが設けられています。

講義、演習、研究、プロジェクト型の学習などがどのように組み合わされているのかは研究科によって異なります。また、修了のために求められる成果や学位についても、一般的な研究型大学院と同じとは限りません。

そのため、「慶應だから」という理由だけで大学院を選ぶのではなく、自分が希望する研究科では2年間にどのような授業や研究活動を行うのかを確認することが重要です。


大学院では授業の予習・復習にも時間が必要

修士課程では、授業へ出席する時間だけを考えてスケジュールを組むと、想像以上に忙しく感じることがあります。

授業によっては事前に文献を読んだり、課題を作成したり、発表の準備をしたりする必要があります。授業外でも、自分の研究のために論文を読み、データを整理し、研究報告の資料を作る時間が必要です。

特に社会人として仕事を続けながら大学院へ通う場合には、授業時間だけでなく、授業外で必要になる学習・研究時間まで考えておくことが大切です。

受験前に時間割やカリキュラムなどを確認し、自分の生活と両立できるのかを検討しておきましょう。


就職活動やキャリア形成も2年間に重なる

修士課程修了後に就職を考えている学生の場合には、研究と並行して就職活動を進める時期もあります。2年間すべてを研究だけに使えるとは限りません。

特に修士1年目の後半から2年目にかけては、研究、授業、就職活動など複数の予定が重なる可能性があります。そのため、研究を早い段階から進めておくことが重要です。

一方、社会人大学院生であれば、現在の仕事を続けるのか、修了後に転職するのか、研究成果を現在の仕事へどう生かすのかといったキャリアについて考える機会にもなります。

大学院への進学を考えるときには、「合格すること」だけではなく、「修了後に何をしたいのか」まで考えておくと、志望理由も整理しやすくなります。


学会・研究会への参加も大学院での経験になる

研究分野や研究の進捗によっては、学会や研究会などに参加する機会も考えられます。研究成果を発表する場合もあれば、他の研究者の発表を聞くために参加することもあります。

自分の研究について専門分野の研究者から質問や意見を受けることは、研究を見直すきっかけになります。また、最新の研究動向を知る機会にもなります。

ただし、学会発表がすべての修士課程の学生に必須というわけではありません。どのような研究活動を行うかは研究分野や研究室などによっても異なるため、自分が志望する研究環境を事前に確認してみましょう。


研究が計画通りに進まないことも大学院生活の一部

修士課程では、入学時に考えていた通りに研究が進むとは限りません。必要なデータを集められない、実験結果が想定と異なる、先行研究を調べた結果として研究上の問いを変更する必要が出てくる、といったことも考えられます。

重要なのは、計画から外れたこと自体を失敗と考えるのではなく、研究上の問題を把握し、必要に応じて方法や計画を見直すことです。

問題が生じたときに一人で抱え込み、修士2年目の終盤になって初めて相談するのではなく、日頃から研究の進捗を整理し、必要な指導を受けながら進めることが大切です。


2年間を知ることは院試対策にもつながる

修士課程で何をするのかを知ることは、単なる入学後の情報収集ではありません。実は研究計画書や志望理由、面接の準備にもつながります。

「なぜ大学院へ進学したいのか」「なぜ慶應のこの研究科なのか」「2年間で何を研究したいのか」「修了後に研究経験をどう生かしたいのか」といった問いを考えるためには、入学後のカリキュラムや研究環境を理解している必要があります。

研究科の公式サイトを見る際には、入試ページだけで終わらせず、カリキュラム、教員紹介、授業科目、学位や修了要件などにも目を通してみましょう。

大学院受験のゴールは、合格通知を受け取ることではありません。その研究科で実際に学び、研究を進め、修了までの時間をどう使うのかまでイメージしたうえで志望先を選ぶことが、入学後のミスマッチを減らすことにもつながります。

修士課程の2年間は長いように見えますが、授業、研究、論文作成、就職活動などを並行して進めると、使える時間は限られています。受験段階から「入学したら何を研究するのか」を具体的に考えておくことが、充実した大学院生活への第一歩になります。


この記事の内容は執筆時点の情報です。標準修業年限、カリキュラム、研究指導、修了要件、必要単位、論文・研究成果の取り扱いなどは、研究科・専攻・課程・プログラム・年度によって異なります。受験・進学を検討する際は、必ず慶應義塾大学および各研究科の最新の公式サイト、履修案内等をご確認ください。

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※この記事は専門家による監修のもと執筆されています。

この記事を監修した人

小杉樹彦(志樹舎 創業者)

小杉 樹彦(こすぎ・たつひこ)
志樹舎 創業者/博士(学術)
慶應義塾大学院修了後、2015年1月に院試専門オンライン予備校「志樹舎」を設立。 代表講師として10〜60代まで延べ5,000人以上の受験生を指導。 早慶・国公立をはじめとする難関大学院で合格率9割超の実績を持つ。 現在は大学院入試対策の専門家として、テレビ・新聞・雑誌など幅広いメディアで活動中。 ロングセラー『減点されない!勝論文』(エール出版社)ほか著書・論文多数。