慶應大学院の研究計画書で見られるポイントとは?

院試専門オンライン予備校「志樹舎」が運営する「慶應義塾大学大学院の院試対策ガイド」をご覧いただき、ありがとうございます。今回のテーマは「慶應大学院の研究計画書で見られるポイントとは?」です。

慶應義塾大学大学院への出願を考える中で、研究計画書をどのようにまとめればよいのか悩む受験生は少なくありません。研究計画書では、単に興味のあるテーマを紹介するのではなく、何を問題として捉え、何を明らかにしたいのか、そのためにどのような方法で研究を進めるのかを整理する必要があります。また、自分の研究と志望研究科との関係も考えなければなりません。今回は、研究テーマの絞り込みから先行研究の読み方、研究方法、志望研究科との接点、完成後の見直しまで、研究計画書を準備する際に確認したいポイントを具体的に整理します。

「興味のある分野」から「研究上の問い」へ進める

研究計画書を考えるとき、最初につまずきやすいのが研究テーマの具体化です。「教育について研究したい」「企業経営に興味がある」「AIと社会について考えたい」という段階では、まだ関心のある分野を示しているにすぎません。研究計画としてまとめるには、そこから「具体的に何を明らかにしたいのか」という問いまで掘り下げる必要があります。

例えば教育に関心がある場合でも、学校教育なのか社会人教育なのか、対象は誰なのか、どのような学習方法や環境に注目するのかによって研究内容は大きく変わります。「なぜ特定の学習方法が特定の学習者に効果を持つのか」というように対象と現象を絞っていくことで、初めて何を調べればよいのかが見えてきます。

問いを絞る際には、「対象」「現象」「背景」の三つを分けて考えてみる方法があります。誰や何を対象にするのか、そこでどのような現象に注目するのか、なぜその現象を研究する必要があるのかを順番に整理します。自分が興味を持ったきっかけだけを長く説明するのではなく、その問題意識を研究可能な問いへ変えていくことが重要です。

また、テーマの大きさにも注意が必要です。「日本の教育制度」「企業の成長」「現代社会におけるAI」のような大きなテーマでは、限られた期間で何を明らかにするのかが曖昧になります。研究対象や期間、扱う現象などを絞り、実際に調査や分析ができる範囲まで具体化していきましょう。

先行研究は「自分の研究が必要な理由」を考える材料になる

研究上の問いを考える際に欠かせないのが先行研究の確認です。自分では新しい問題を発見したつもりでも、同じテーマについてすでに多くの研究が行われている場合があります。そのため、研究計画書を書く前から関連する論文や文献を調べ、自分の関心が研究分野の中でどのように扱われてきたのかを確認する必要があります。

ただし、先行研究を何本読んだかだけを気にする必要はありません。重要なのは、それぞれの研究について「何を明らかにしようとしたのか」「どのような対象を扱ったのか」「どのような方法で調べたのか」「どこまで分かったのか」を整理することです。複数の研究を比較していくと、研究者によって問題の捉え方や方法が異なることにも気づけます。

さらに確認したいのが、既存研究を踏まえても残っている問題です。対象となった年代や地域が限られている、特定の条件について十分に検討されていない、別の方法から確認する余地があるなど、自分の研究につながる論点を探していきます。

先行研究を読んだ結果、最初に考えていた問いを変更することもあります。それは問題ではありません。むしろ文献を読みながら研究テーマが具体化していくのは自然な過程です。記事案にある十本前後という数も一つの目安として考え、本数を達成することではなく、自分の問いを考えるために必要な文献を理解することを目的にしましょう。

問い・研究方法・得たい結果のつながりを確認する

研究したい問いが見えてきたら、次に考えるのが研究方法です。アンケート調査、インタビュー、フィールドワーク、既存データの分析など、研究対象や目的によって考えられる方法は異なります。ここで重要なのは、「具体的な方法を書けばよい」と考えないことです。

まず確認したいのは、自分が立てた問いに対して、その方法から必要な情報を得られるのかという点です。例えば、人がある行動を取る背景を詳しく知りたい研究と、多数の対象について一定の傾向を調べたい研究では、必要となるデータや調査の方法も変わります。先にアンケートやインタビューをすると決めるのではなく、何を明らかにしたいのかから方法を考える必要があります。

調査対象についても具体的に考えてみましょう。誰を対象にするのか、必要なデータを実際に集められるのか、分析できる量なのかなど、研究を実行する場面まで想像してみます。研究計画書の段階ですべてを確定することは難しくても、少なくとも「何をどのように調べようとしているのか」が読み手に分かる程度まで整理することが大切です。

また、問いと方法が一致しているかを一文で確認する方法もあります。「私は○○を明らかにするために、○○を対象として○○を調べる」と書いてみて、内容が自然につながっているかを確認します。ここで説明が飛んでしまう場合には、問いか方法のどちらかをもう一度見直す余地があります。

修士課程で実行できる研究なのかを考える

研究計画では、テーマの面白さだけでなく、実際に進められる内容なのかという視点も必要です。関心が強いほど多くのことを研究計画に盛り込みたくなりますが、対象や調査項目を広げすぎると、研究そのものを進めることが難しくなります。

例えば全国規模の調査を前提としているのに、必要な対象者へどのようにアクセスするのかが決まっていなければ、実施方法を再検討する必要があります。特定の企業や組織のデータを利用する計画であれば、そのデータを本当に利用できるのかという問題もあります。社会人受験生の場合、自分の勤務先を研究対象として考えることもありますが、仕事で情報を見ることができることと、研究目的で利用できることは分けて考える必要があります。

また、一つの研究計画に複数の大きな問いを入れると、それぞれの調査や分析が必要になり、研究の中心が分かりにくくなることがあります。「これも調べたい」「あれも扱いたい」と内容を増やすより、中心となる問いを明確にし、その問いに必要な範囲を考えることが大切です。

研究計画書を書いたら、必要な文献、調査対象、データ、調査方法、分析などを順番に書き出してみましょう。実際に研究を始めた場合に何をすることになるのかを確認すると、計画の中で具体性が不足している部分や、負担が大きすぎる部分を見つけやすくなります。

研究科・教員との接点は「名前を書くこと」で終わらせない

研究計画書を作成するときには、自分の研究テーマだけではなく、志望する研究科についても調べる必要があります。所属教員の専門分野や研究テーマ、研究科で扱われている領域などを確認し、自分が考えている研究をそこでどのように深めたいのかを整理します。

指導を希望する教員がいる場合も、研究計画書の中に教員名を入れれば接点を示せるわけではありません。その教員がどのような問題を扱っているのか、自分の研究とはどの部分で関係しているのかを理解することが重要です。研究テーマが完全に一致する必要はありませんが、なぜその教員の研究に注目したのかを自分の言葉で説明できるようにしておきましょう。

ここでは研究計画書と志望理由書の整合性も確認したいところです。研究計画書ではAというテーマを扱っているのに、志望理由書ではほとんど関係のない教育内容だけを志望理由として書いていると、出願書類全体のつながりが分かりにくくなります。「何を研究したいのか」「そのために何を学ぶ必要があるのか」「なぜその研究科を選ぶのか」という流れで整理すると、研究計画と志望理由を結びつけやすくなります。

書き終えたら面接で説明できるところまで確認する

研究計画書は、文章を書き終えた時点で完成と考えないことも大切です。まずは研究上の問いが一読して分かるか、先行研究から自分の研究につながる流れがあるか、問いと研究方法が対応しているか、実行できる範囲になっているかを見直しましょう。

一つの案に固執せず、同じ問題意識から異なる問いを立てたり、研究対象の範囲を変えたりして比較することもできます。複数の案を比べることで、どの問いなら調査方法まで具体化できるのか、どのテーマなら志望研究科との接点を説明しやすいのかが見えてくる場合があります。

第三者に読んでもらう場合には、「分かりやすかったか」だけを聞くのではなく、「この研究で何を明らかにしたいと読めたか」「どのような方法で調べる計画だと理解したか」を聞いてみる方法があります。自分が伝えたい内容と読み手が理解した内容にずれがあれば、説明を見直す必要があります。

さらに、面接がある場合には研究計画について質問されることも想定し、なぜそのテーマなのか、なぜその対象なのか、なぜその方法なのかを自分の言葉で説明できるようにしておきましょう。研究計画書の文章を暗記するのではなく、一つひとつの判断に理由を持っておくことが重要です。出願締切から逆算し、文献調査、問いの整理、執筆、推敲、面接準備までを一連の準備として進めていきましょう。

まとめ

慶應義塾大学大学院の研究計画書を準備する際には、興味のある分野を紹介するだけではなく、具体的な研究上の問い、先行研究との関係、研究方法、実現可能性、志望研究科や教員との接点を一つの流れとして整理することが大切です。

まずは自分の問題意識を言葉にし、「何について研究したいか」から「何を明らかにしたいか」へ進めてみましょう。次に先行研究を読み、すでに分かっていることと残されている問題を確認します。そのうえで、問いに答えるためには何を対象として、どのような方法で調べればよいのかを考えます。

研究計画書を作る過程は、自分が大学院で本当に取り組みたい研究を具体化する作業でもあります。最初から完成した文章を書こうとせず、問い、先行研究、方法、研究科との接点を何度も行き来しながら内容を深めていくことが重要です。完成後には、書類として読めるだけでなく、自分自身が研究の目的と進め方を説明できる状態になっているかまで確認してみてください。


※本記事は記事作成時点の情報をもとに作成しています。入試制度、出願資格、提出書類、試験内容、カリキュラム、教員情報などは変更される場合があります。受験を検討している方は、必ず慶應義塾大学および対象研究科の公式サイト、最新の入学試験要項をご確認ください。

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※この記事は専門家による監修のもと執筆されています。

この記事を監修した人

小杉樹彦(志樹舎 創業者)

小杉 樹彦(こすぎ・たつひこ)
志樹舎 創業者/博士(学術)
慶應義塾大学院修了後、2015年1月に院試専門オンライン予備校「志樹舎」を設立。 代表講師として10〜60代まで延べ5,000人以上の受験生を指導。 早慶・国公立をはじめとする難関大学院で合格率9割超の実績を持つ。 現在は大学院入試対策の専門家として、テレビ・新聞・雑誌など幅広いメディアで活動中。 ロングセラー『減点されない!勝論文』(エール出版社)ほか著書・論文多数。