慶應大学院の志望理由はどう書く?研究科との接点を整理する方法

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慶應義塾大学大学院への出願を考える際、研究計画書とともに悩みやすいのが志望理由です。研究計画書が主に「大学院で何を研究したいのか」を整理するものだとすれば、志望理由では「なぜ大学院へ進学するのか」「なぜその研究科で学びたいのか」を、自分の経験や研究関心と結びつけて考える必要があります。研究科の特徴を調べるだけでも、自分の経歴を詳しく紹介するだけでも十分とはいえません。今回は、過去の経験から問題意識を見つけ、研究内容や研究科との接点、将来の方向までを一つの流れとして整理する方法を解説します。

まずは自分の経験から「なぜ大学院なのか」を掘り下げる

志望理由を考えるとき、最初から研究科の魅力を書こうとすると、大学案内に掲載されている特徴を並べたような文章になりがちです。まず整理したいのは、自分が大学院進学を考えるようになった背景です。学部で学んできたこと、仕事や活動の中で経験したこと、現在関心を持っている問題などを振り返り、なぜ改めて大学院で学ぶ必要があると考えたのかを掘り下げます。

例えば、商学研究科を検討しているのであれば、実務でマーケティングに関する課題に直面したことが出発点になるかもしれません。システムデザイン・マネジメント研究科を検討している場合には、仕事の中で複雑なシステムに関する問題を経験し、一つの専門領域だけでは十分に捉えられないと感じたことが進学を考えるきっかけになる場合もあります。

ここで重要なのは、経験そのものの珍しさではありません。「何を経験したか」から「その経験によって何を疑問に思ったか」まで進めることです。同じ仕事を経験していても、そこから生まれる問題意識は人によって異なります。自分がなぜその問題に関心を持ち続けているのかまで考えると、志望理由の中心が見えてきます。

経歴を時系列ですべて書く必要もありません。志望理由に直接関係する経験を選び、「これまでの経験」「そこで生まれた問題意識」「大学院で深めたいこと」という流れを作ります。こうすることで、単なる自己紹介ではなく、大学院進学に至った理由を説明しやすくなります。

「なぜ大学院か」「なぜ慶應か」「なぜその研究科か」を分けて考える

志望理由が曖昧になっているときは、いくつかの問いに分解すると整理しやすくなります。まず「なぜ独学や実務だけではなく大学院で学ぶのか」、次に「なぜ慶應義塾大学大学院なのか」、さらに「なぜその研究科なのか」を別々に考えてみましょう。

例えば、仕事上の課題について体系的に研究したいという理由は「なぜ大学院なのか」にはつながりますが、それだけでは「なぜその研究科なのか」の説明にはなりません。そこで志望研究科のカリキュラム、所属教員の研究テーマ、研究領域などを確認し、自分の研究関心との接点を探していきます。

研究科について調べるときも、公式サイトに書かれている特徴を抜き出すだけで終わらせないことが大切です。「この研究科には○○という特徴がある」という情報を確認したら、次に「その特徴が自分の研究にとってなぜ必要なのか」を考えます。自分の問題意識と結びつかない特徴をいくつ並べても、志望理由は具体的になりません。

特定の教員の研究に関心がある場合も同様です。「○○先生の研究に魅力を感じた」という表現だけではなく、その研究のどの部分に関心を持ち、自分が取り組みたいテーマとどのようにつながるのかを整理します。教員の研究テーマと自分のテーマが完全に一致する必要はありませんが、自分なりに接点を説明できる状態を目指しましょう。

研究科の特徴を「自分に必要な理由」まで具体化する

志望理由では、「グローバルな視点を身につけたい」「幅広い知識を学びたい」「充実した研究環境で学びたい」といった抽象的な表現を使いたくなることがあります。しかし、このような言葉だけでは、別の研究科にも当てはまる内容になりやすく、自分が何を求めているのかが伝わりにくくなります。

抽象的な表現を書いたときには、「具体的には何を指しているのか」と自分に問い直してみましょう。例えば「幅広く学びたい」のであれば、どの分野とどの分野を横断して学びたいのか、それが自分の研究テーマにどう必要なのかまで考えます。「実践的に学びたい」のであれば、自分にとっての実践とは何を意味するのかを具体化します。

研究科の特色と自分の関心を左右に並べて整理する方法もあります。一方に自分が研究したいテーマ、必要だと考えている知識や方法を書き、もう一方に研究科の教員や教育内容を書き出します。その間に具体的な接点があるかを確認すると、単なる大学紹介になっている部分を見つけやすくなります。

また、「慶應だから」「有名だから」といった大学そのものへの憧れと、大学院での研究目的は分けて考える必要があります。大学院選びでは、自分が取り組みたい研究と研究科の内容を照らし合わせることが重要です。研究科について詳しく調べる作業は、志望理由を書くためだけでなく、本当にその研究科が自分の研究関心と合っているかを確認する作業にもなります。

研究計画書と志望理由書を一つの流れで考える

志望理由を作成するときには、研究計画書との関係も確認しておきたいところです。二つの書類は役割が異なりますが、内容が完全に独立しているわけではありません。志望理由で説明した問題意識が研究計画書のテーマにつながり、その研究を進める場所として志望研究科を選んでいるという流れを意識すると整理しやすくなります。

例えば、志望理由では仕事を通じて人材育成に問題意識を持ったと説明しているのに、研究計画書ではその背景が見えない別のテーマを扱っている場合、なぜその研究をしたいのかが分かりにくくなることがあります。反対に、研究計画書では具体的なテーマが示されているのに、志望理由では研究と関係のない大学の特徴ばかり説明している場合も、研究科を選んだ理由とのつながりが弱くなります。

そこで、「過去の経験から何を問題だと感じたのか」「その問題について何を明らかにしたいのか」「そのためにどのような研究を考えているのか」「なぜその研究科で取り組みたいのか」「研究したことを今後どう生かしたいのか」という順番で整理してみましょう。この流れが自然につながれば、志望理由書と研究計画書の役割も分けやすくなります。

複数の研究科を検討している場合には、研究科名だけを書き換えて同じ志望理由を使用するのではなく、それぞれについて接点を考え直す必要があります。同じ研究テーマであっても、所属教員や研究領域が異なれば、その研究科を選ぶ理由も変わるからです。

社会人は職歴の長さより「経験から何を研究したいか」を示す

社会人受験生にとって、実務経験は志望理由を考える大切な材料です。一方で、担当してきた業務や実績を詳しく並べるだけでは、大学院への志望理由にはなりません。職務経歴書を書く感覚ではなく、実務経験からどのような疑問や課題意識を持つようになったのかに焦点を当てることが重要です。

例えば、ある課題に対して実務では経験に基づいて対応してきたものの、「なぜその方法が機能するのか」「別の条件でも同じことがいえるのか」と疑問を持つようになったのであれば、その問題意識を研究へつなげて考えることができます。実務上の問題をそのまま研究テーマにするのではなく、大学院で何を明らかにしたいのかまで掘り下げます。

また、社会人の場合は「なぜ今進学するのか」も自分の中で整理しておきたいポイントです。仕事を続けてきた中で、なぜこの時点で大学院での学びが必要になったのかを考えます。さらに、大学院で得た知識や研究成果を修了後の仕事や活動にどのようにつなげたいのかまで整理すると、過去、現在、大学院、修了後という時間の流れが見えやすくなります。

書き上げたら「その研究科である理由」が残っているか確認する

志望理由を書き終えたら、文章表現だけではなく内容そのものを見直します。まず確認したいのは、大学名や研究科名を別の大学院に置き換えても成立してしまう文章になっていないかという点です。置き換えても意味が通る部分が多い場合には、志望研究科との具体的な接点が不足している可能性があります。

次に、過去の経験の説明が長すぎないか、研究したいことが明確になっているか、研究科の特徴と自分の研究目的がつながっているかを確認します。字数制限がある場合には、すべてを詳しく書こうとするのではなく、進学理由を理解するために必要な経験と、その研究科を選んだ理由を優先して残します。

第三者に読んでもらう場合には、「文章として読みやすいか」だけではなく、「この人はなぜ大学院へ行きたいと読めたか」「なぜこの研究科を選んだと理解したか」を聞いてみる方法があります。自分では説明したつもりでも、重要な部分が読み手に伝わっていないことがあります。

また、面接がある場合には、志望理由について自分の言葉で説明できるようにしておきましょう。文章を暗記するのではなく、なぜその経験が問題意識につながったのか、なぜその研究科なのか、研究を将来どうつなげたいのかを説明できる状態にしておくことが大切です。

まとめ

慶應義塾大学大学院の志望理由を考える際には、研究科の魅力を並べることから始めるのではなく、自分自身の経験や問題意識を整理することが出発点になります。そのうえで、「なぜ大学院なのか」「なぜ慶應なのか」「なぜその研究科なのか」を分けて考え、自分が取り組みたい研究との接点を具体化していきましょう。

志望理由は、過去の経験を説明するだけの文章でも、研究科を紹介する文章でもありません。これまでの経験から生まれた問題意識が大学院での研究につながり、その研究を進める場所として志望研究科を選んでいるという流れを作ることが重要です。研究計画書との内容も照らし合わせながら、過去の経験、現在の問題意識、大学院での研究、修了後の方向が自然につながっているかを確認してみてください。


※本記事は記事作成時点の情報をもとに作成しています。入試制度、出願資格、提出書類、試験内容、カリキュラム、教員情報などは変更される場合があります。受験を検討している方は、必ず慶應義塾大学および対象研究科の公式サイト、最新の入学試験要項をご確認ください。

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※この記事は専門家による監修のもと執筆されています。

この記事を監修した人

小杉樹彦(志樹舎 創業者)

小杉 樹彦(こすぎ・たつひこ)
志樹舎 創業者/博士(学術)
慶應義塾大学院修了後、2015年1月に院試専門オンライン予備校「志樹舎」を設立。 代表講師として10〜60代まで延べ5,000人以上の受験生を指導。 早慶・国公立をはじめとする難関大学院で合格率9割超の実績を持つ。 現在は大学院入試対策の専門家として、テレビ・新聞・雑誌など幅広いメディアで活動中。 ロングセラー『減点されない!勝論文』(エール出版社)ほか著書・論文多数。