
慶應SDMとKBSの違いは?社会人が大学院を選ぶポイント
院試専門オンライン予備校「志樹舎」が運営する「慶應義塾大学大学院の院試対策ガイド」をご覧いただき、ありがとうございます。今回のテーマは「慶應SDMとKBSの違いは?社会人が大学院を選ぶポイント」です。
システムデザイン・マネジメント研究科(SDM)と経営管理研究科(KBS)は、実務経験を持つ社会人が進学先として比較することのある研究科です。どちらも社会人として培ってきた経験を大学院での学びにつなげることができますが、学ぶ目的やアプローチは異なります。
特に社会人の大学院選びでは、「仕事に役立ちそうだから」という理由だけでなく、自分が実務の中で感じている問題を大学院でどのように捉え直したいのかを考えることが重要です。この記事では、SDMとKBSの特徴を比較しながら、学びの内容、仕事との両立、研究テーマ、出願準備、修了後のキャリアなど、社会人が確認しておきたいポイントを整理します。
SDMとKBSは社会人も進学を検討できる研究科

システムデザイン・マネジメント研究科と経営管理研究科は、いずれも実務経験を持つ社会人が学ぶことのできる研究科です。一方で、大学院で何を学ぶのかという点では、両研究科の方向性には違いがあります。
SDMでは、技術、組織、社会、制度など複数の要素が関係する問題を「システム」として捉え、問題の構造を理解したうえで新しい解決策を考えていくことが重要になります。特定の業界や職種だけを対象にするのではなく、複雑な課題そのものに向き合うための考え方や方法論を学ぶ点が特徴です。
一方、KBSでは企業や組織の経営が学びの中心となります。経営戦略、マーケティング、組織・人材、会計、ファイナンスなど、経営に必要となる領域を幅広く学びながら、企業が直面する課題について考えていきます。
そのため、社会人という共通点だけで両研究科を比較するのではなく、「自分は複雑な課題を構造から捉え直したいのか」「企業や組織の経営について体系的に学びたいのか」という目的の違いから考えることが大切です。
SDMはシステム思考で複雑な課題に向き合う
システムデザイン・マネジメント研究科では、複雑な社会システムや技術システムについて、一部分だけを見るのではなく、複数の要素の関係性を含めて全体として捉える視点が重要になります。
例えば、企業のDXをテーマにするとします。単に新しいITシステムを導入すれば解決するとは限りません。経営戦略、業務プロセス、従業員の意識、組織文化、顧客ニーズ、既存システムなど、さまざまな要素が関係します。一つの問題を解決すると別の部分に影響が生じることもあります。
SDMでは、このような複雑な問題について、関係する要素やステークホルダーを整理し、問題の構造そのものを理解しながら解決策を考えていくアプローチと接点を持つことができます。
そのため、メーカーやIT企業など技術系の職種だけでなく、コンサルティング、事業開発、行政、教育、医療、地域活性化など、さまざまな領域で実務上の問題意識を持つ社会人が、自分の経験を研究テーマへ発展させることも考えられます。
KBSはケースメソッドを通じて経営を体系的に学ぶ

経営管理研究科(KBS)では、企業や組織の経営について体系的に学びます。その特徴の一つが、具体的な企業や経営上の状況を題材として考えるケースメソッドです。
ケースを用いた学習では、学生自身が経営者や責任者の立場に立ち、「この状況で自分ならどのような意思決定をするか」を考えます。授業では、それぞれ異なる経験や考え方を持つ学生が意見を出し合うことで、一つの経営課題を複数の角度から検討していきます。
社会人の場合、これまで自分が経験してきた仕事上の出来事と、授業で扱う経営課題を結びつけて考えられることもあります。これまで経験則で判断してきたことを経営理論の観点から捉え直したり、自分とは異なる業界や職種の学生の考え方に触れたりすることも、ビジネススクールで学ぶ意味の一つになります。
経営者を目指している人だけではなく、事業責任者、マネージャー、経営企画、新規事業など、企業や組織の意思決定に関わる仕事をしている社会人にとっても、大学院進学の目的を考える際の候補となります。
同じ実務上の課題でもSDMとKBSでは捉え方が変わる
SDMとKBSの違いを理解するためには、自分が仕事で抱えている問題を、両研究科の視点から考えてみる方法があります。
例えば、「新しいサービスを立ち上げても社内に定着しない」という問題があったとします。SDMの視点から考える場合には、サービスそのものだけではなく、利用者、社内組織、業務フロー、既存システム、意思決定プロセスなど、関係する要素を整理し、なぜ定着しないのかをシステム全体から考える研究へ発展させることが考えられます。
一方、KBSで考える場合には、新規事業戦略、組織マネジメント、リーダーシップ、マーケティングなど、経営上の課題として問題を捉えることが考えられます。経営資源をどこに配分するのか、組織をどのように動かすのか、事業としてどのように成長させるのかという問いにつながります。
このように、研究したい対象そのものが似ていても、どの角度から問題を見るのかによって大学院での学び方は変わります。社会人の場合には、自分の仕事内容をそのまま研究テーマにするのではなく、「その仕事の中で、自分は何を問題だと感じているのか」まで掘り下げて考えることが重要です。
仕事との両立は「授業時間」だけで判断しない

社会人が大学院を選ぶ際に重要になるのが、仕事との両立です。ただし、授業が何曜日の何時に開講されているかだけで判断するのではなく、授業外で必要になる時間も考えておく必要があります。
SDMでは、授業だけではなく、プロジェクト型の活動や他の学生との協働などによって、まとまった時間が必要になる可能性があります。研究を進めるうえでも、調査や分析、指導教員との相談など、授業以外の活動が必要です。
KBSについても、授業に出席するだけで学習が完結するわけではありません。ケースを読み込み、自分なりの分析や意思決定を準備したうえで授業に参加することが重要になるため、授業前の準備時間も考慮する必要があります。
社会人の場合、「授業の時間には間に合う」というだけではなく、平日の夜や休日にどの程度の学習時間を確保できるのか、繁忙期でも継続できるのか、会社側の理解を得られるのかまで考えておくとよいでしょう。
実務経験を大学院でどう活かしたいかを考える
社会人が大学院へ進学する場合、これまでの実務経験は重要な材料になります。しかし、単に「10年間働いてきた」「管理職を経験した」といった経歴だけではなく、その経験を通じてどのような問題意識を持ったのかを整理することが重要です。
SDMを検討する場合には、これまで仕事の中で「一部分を改善しても問題が解決しない」「多くの関係者が存在し、調整が難しい」「技術だけでは解決できない」と感じた経験が、研究テーマを考える手がかりになることがあります。
KBSを検討する場合には、「なぜこの事業は成長しなかったのか」「組織をどう動かせばよかったのか」「自分の意思決定には何が不足していたのか」など、経営に関する問題意識を振り返ってみることができます。
大学院は、実務経験を単に紹介する場所ではありません。これまでの経験から生まれた問いを、理論や研究方法を使って捉え直す場所として考えると、進学する目的を明確にしやすくなります。
出願準備でもSDMとKBSの違いを意識する
社会人が大学院入試を準備する場合、職歴が長いほど「仕事の実績を書けば評価される」と考えてしまうことがあります。しかし、大学院入試では職務経歴そのものだけではなく、その経験が大学院での学びとどのようにつながっているのかを説明することが重要です。
SDMでは、自分が取り組みたい問題について、どのような要素や関係者が存在し、それらがどのように関係しているのかを整理してみると、研究テーマを具体化しやすくなります。「会社で困っていること」をそのまま書くのではなく、より一般化された研究上の問いへ発展させることがポイントになります。
KBSを検討する場合には、これまでの実務経験を振り返りながら、自分が経営について何を学び直したいのかを明確にすることが重要です。経営戦略、組織、人材、マーケティング、会計・ファイナンスなど、自分の問題意識がどの領域に関係するのかを整理すると、志望理由を考えやすくなります。
また、KBSでは検討する課程やプログラムによって、出願資格や実務経験に関する条件などが異なる場合があります。SDMについても入試制度や提出書類は年度によって変更される可能性があるため、過去の情報だけで判断せず、出願年度の募集要項を確認してください。
キャリアチェンジだけを目的にしないことも大切
大学院進学を検討する社会人の中には、転職やキャリアアップを目的としている人もいるでしょう。SDMやKBSでの学びが、その後のキャリアを考えるきっかけになることはあります。
SDMで身につけたシステム的な視点を、プロジェクトマネジメント、コンサルティング、新規事業、社会課題の解決などに活かすことも考えられます。KBSで学んだ経営の知識や意思決定の考え方を、経営企画、事業責任者、マネジメント、起業などにつなげることも考えられます。
ただし、大学院を修了すれば特定の職種へ転職できると決まっているわけではありません。これまでの職歴、専門性、大学院での研究内容、人的ネットワークなど、複数の要素がその後のキャリアに関係します。
そのため、「どちらの大学院の方が転職に有利か」という視点だけではなく、「今後のキャリアに必要な能力や視点を、自分はどちらで身につけたいのか」と考える方が、研究科選びの軸を作りやすくなります。
社会人が研究科選びで確認したいポイント
SDMとKBSを比較するときには、まず自分が大学院へ進学したい理由を書き出してみることをおすすめします。現在の仕事で感じている問題、今後取り組みたい仕事、身につけたい知識や能力を整理すると、進学目的が見えやすくなります。
そのうえで、各研究科のカリキュラムだけではなく、教員の専門分野、研究内容、授業方法、修了要件などを確認します。SDMであれば、自分の問題意識と接点を持つ研究領域や教員がいるか、KBSであれば、自分が学びたい経営領域をどのように深められるのかを確認するとよいでしょう。
また、社会人の場合には、学費や通学時間、仕事の繁忙期、会社の制度、家族との時間など、現実的な条件も無視できません。大学院への合格をゴールにするのではなく、入学後に継続して学び、研究を完成させられる環境を作れるかまで検討することが重要です。
説明会や個別相談などの機会がある場合には、「社会人でも通えますか」という質問だけではなく、授業外で必要になる学習時間、グループワークの頻度、研究活動の進め方など、自分の生活に直接関係する点を具体的に確認すると、入学後のイメージを持ちやすくなります。
まとめ
システムデザイン・マネジメント研究科(SDM)と経営管理研究科(KBS)は、社会人も進学を検討できる慶應義塾大学の大学院ですが、学びの中心は異なります。SDMでは、技術、組織、社会、制度などが関係する複雑な問題をシステムとして捉え、全体の関係性から解決策を考えていく視点が重要になります。一方、KBSでは、企業や組織の経営を中心として、経営上の課題や意思決定について体系的に学びます。
社会人が両研究科を比較するときには、大学院の知名度やキャリア上のイメージだけではなく、「自分が実務で感じてきた問題は何か」「大学院で何を学び直したいのか」「どのような方法で学びたいのか」を整理することが大切です。さらに、仕事との両立、授業外の学習時間、研究テーマ、教員との接点、入試制度まで確認したうえで、自分の目的に合った研究科を検討していきましょう。
※本記事は記事作成時点の情報をもとに作成しています。入試制度、出願資格、提出書類、試験内容、カリキュラム、教員情報などは変更される場合があります。受験を検討している方は、必ず慶應義塾大学および対象研究科の公式サイト、最新の入学試験要項をご確認ください。
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※この記事は専門家による監修のもと執筆されています。
この記事を監修した人
小杉 樹彦(こすぎ・たつひこ)
志樹舎 創業者/博士(学術)
慶應義塾大学院修了後、2015年1月に院試専門オンライン予備校「志樹舎」を設立。
代表講師として10〜60代まで延べ5,000人以上の受験生を指導。
早慶・国公立をはじめとする難関大学院で合格率9割超の実績を持つ。
現在は大学院入試対策の専門家として、テレビ・新聞・雑誌など幅広いメディアで活動中。
ロングセラー『減点されない!勝論文』(エール出版社)ほか著書・論文多数。


