
慶應SFC大学院とSDMはどう違う?
院試専門オンライン予備校「志樹舎」が運営する「慶應義塾大学大学院の院試対策ガイド」をご覧いただき、ありがとうございます。今回のテーマは「慶應SFC大学院とSDMはどう違う?」です。
政策・メディア研究科とシステムデザイン・マネジメント研究科(SDM)は、どちらも既存の学問分野を横断する学際的な研究科として知られており、進学先を比較検討する受験生も少なくありません。特に、テクノロジー、社会課題、組織、政策など、複数の領域にまたがる研究テーマを考えている場合には、両研究科の違いが分かりにくいと感じることもあるでしょう。
しかし、同じ「学際的な大学院」であっても、研究テーマの設定方法や問題へのアプローチ、研究活動の進め方には違いがあります。この記事では、両研究科の位置づけや学び方を整理しながら、自分の研究テーマにはどちらが合っているのかを考えるためのポイントを紹介します。
設置キャンパスと成り立ちの違い

政策・メディア研究科は、湘南藤沢キャンパス(SFC)を拠点とする大学院です。SFCでは、既存の学問分野の境界を越え、複数の専門領域を組み合わせながら現実社会の問題に取り組むことが重視されています。政策・メディア研究科でも、その考え方を背景として、多様な研究テーマが扱われています。
一方、システムデザイン・マネジメント研究科は、日吉キャンパスを拠点とする独立研究科です。複雑な社会システムや技術システムについて、一部分だけを見るのではなく、複数の要素の関係性を含めて全体として捉えるシステム思考を重視しています。
どちらも従来の学問分野だけでは扱いにくい問題を研究対象とできる点では共通しています。しかし、SFCでは多様な研究領域から自分自身の問題意識を深めていく方向性があり、SDMでは複雑な問題をシステムとして構造化し、設計や改善につなげていくアプローチに特徴があります。
また、キャンパスが異なることは、単なる通学場所の違いだけではありません。所属する教員や学生、研究コミュニティ、日常的に触れる研究テーマなども異なるため、大学院選びでは研究内容とともに研究環境も確認しておくことが重要です。
政策・メディア研究科は幅広い政策・社会課題を扱う
政策・メディア研究科では、情報、環境、国際関係、言語、デザイン、社会、政策など、さまざまな領域に関わる研究が行われています。学生は自分の問題意識を起点として研究テーマを設定し、教員から指導を受けながら研究を深めていきます。
例えば、デジタル技術によって社会がどのように変化するのか、地域社会が抱える課題をどのように解決できるのか、国際社会の制度や政策をどのように考えるのか、新しい情報技術を社会の中でどのように活用するのかなど、研究テーマの設定方法は多岐にわたります。
特徴の一つは、最初から「政策学」「情報学」「社会学」といった一つの専門分野だけに研究テーマを限定する必要がないことです。自分が解決したい問題に合わせて複数の領域を横断しながら研究を組み立てることができます。
そのため、「この学問を学びたい」という発想だけではなく、「自分は社会のどのような問題を研究したいのか」という問題意識を持っている人にとって、研究テーマとの接点を探しやすい研究科といえるでしょう。
SDMはシステム思考で技術と組織をつなぐ

システムデザイン・マネジメント研究科では、技術的な要素と組織的・社会的な要素が絡み合う課題を、システム全体として捉え直すアプローチが重視されています。
例えば、新しい交通サービスを考える場合、車両やアプリなどの技術だけを改善しても、サービス全体がうまく機能するとは限りません。利用者、交通事業者、自治体、料金体系、既存交通、地域人口など、さまざまな要素が関係します。SDMでは、このような複雑な問題について、関係する要素を整理し、それぞれがどのように影響し合っているのかを考えていきます。
工学的な背景を持つ学生だけではなく、社会科学系のバックグラウンドを持つ学生や、実務経験を持つ社会人などが学ぶことも想定されています。異なる専門性を持つ人と協働しながら問題を考えることも、学際的な研究を進めるうえで重要な要素となります。
そのため、特定の技術そのものを研究したいというより、「技術を組織や社会の中でどのように機能させるのか」「複数の関係者が存在する複雑な問題をどう設計し直すのか」といった問いを持っている人は、SDMの研究アプローチとの接点を探しやすいでしょう。
同じ社会課題でも研究のアプローチは変わる
SFCとSDMの違いを理解するためには、同じテーマを両研究科の視点から考えてみると分かりやすくなります。
例えば、「地方の人口減少と地域活性化」を研究テーマとして考えてみます。政策・メディア研究科であれば、地域政策、観光、コミュニティ、情報発信、地方創生、移住など、自分が特に関心を持つ視点から問題を掘り下げることが考えられます。フィールドワークなどを通じて、特定の地域が抱える問題を具体的に研究する方向へ発展させることもできます。
一方、SDMで同じ問題を扱う場合には、住民、自治体、地域企業、交通、医療、教育、産業などを一つのシステムとして捉え、それぞれの要素がどのように関係しているのかを整理するアプローチが考えられます。そのうえで、地域全体を持続可能にするための仕組みをどのように設計するかという問いへ発展させることもできます。
もちろん、実際の研究テーマは所属する研究室や指導教員によって異なります。そのため、「地域活性化ならSFC」「システムならSDM」という単純な分類ではなく、自分がその問題をどのような方法で研究したいのかを考えることが重要です。
個人の問題意識を深めるか、システムとして構造化するか

研究科選びでは、「何を研究するか」と同時に、「どのように研究するか」を考えることが重要です。
政策・メディア研究科では、自分自身の問題意識を出発点として、指導教員や研究活動を通じてテーマを深めていくことが重要になります。社会課題について研究する場合でも、その問題をどの視点から見るのか、どのような対象を調査するのか、何を明らかにしたいのかを自分自身で具体化していきます。
SDMでは、問題を構成する要素や関係性を整理し、システムとして捉える視点が重要になります。複雑な問題に対して、個々の要素だけを改善するのではなく、システム全体がどのように機能しているのかを理解しながら解決策を考えていきます。
自分が一つの社会課題について特定の視点から深く研究したいのか、それとも複数の要素が関係する問題を構造化して解決策を考えたいのかを整理すると、研究科の違いが見えやすくなります。
社会人が比較する場合は実務経験の活かし方も考える
社会人として大学院進学を検討している場合には、これまでの実務経験をどのように研究につなげるのかという視点も重要です。
例えば、仕事の中で特定の社会課題や政策上の問題に関心を持ち、そのテーマを専門的に研究したい場合には、政策・メディア研究科の教員や研究領域との接点を探してみることができます。
一方、仕事の中で「部署ごとの改善だけでは問題が解決しない」「技術を導入しても組織が変わらない」「多くの関係者が存在するため意思決定が難しい」といった経験をしている場合には、その問題をシステムとして捉え直すSDMのアプローチとの接点を考えることができます。
実務経験そのものが研究テーマになるわけではありません。自分の経験の中から、より一般化できる問題や研究上の問いを見つけることが重要です。「自分の会社を改善したい」という状態から、「なぜ同様の問題が組織で発生するのか」という研究上の問いへ発展させることで、大学院で取り組むテーマとして整理しやすくなります。
研究科選びでは教員との接点を確認する
SFCとSDMのどちらに進学する場合でも、研究科全体のイメージだけで志望先を決めるのではなく、自分の研究テーマと教員の専門分野との接点を確認することが重要です。
特に学際的な研究科では、同じ研究科の中でも教員によって研究対象や研究方法が大きく異なることがあります。「社会課題を研究できるからSFC」「システムについて学べるからSDM」という段階から、具体的にどの教員のもとで何を研究したいのかまで掘り下げていきましょう。
公式サイトに掲載されている教員紹介、研究内容、研究プロジェクト、過去の研究テーマなどを確認すると、自分の問題意識との接点を探しやすくなります。説明会や研究科が実施するイベントなどの機会があれば、実際の研究活動について確認することも有効です。
出願書類の方向性にも違いがある
大学院入試では、自分が研究したい内容を明確にし、それを志望する研究科でどのように実現するのかを説明することが重要です。そのため、SFCとSDMでは、同じ問題意識を持っていても出願書類の組み立て方が変わる可能性があります。
政策・メディア研究科を検討する場合には、自分が取り組みたい政策・社会課題を具体化し、「何を明らかにしたいのか」「どのような方法で研究するのか」「なぜその研究科・教員のもとで研究する必要があるのか」を整理することが重要です。
SDMを検討する場合には、取り組みたい課題について、どのような要素やステークホルダーが関係しているのかを整理し、問題をシステムとして捉える視点を持つことが研究テーマを具体化する手がかりになります。
ただし、研究計画書や提出書類の形式、選考で確認される内容は年度や入試区分によって異なる可能性があります。過去の受験情報だけで判断せず、必ず自分が受験する年度の募集要項を確認してください。
キャンパスと通学環境も確認しておく
SFCとSDMを比較する場合には、研究内容だけではなくキャンパスの違いも考慮する必要があります。政策・メディア研究科は湘南藤沢キャンパス、SDMは日吉キャンパスを拠点としているため、自宅や勤務先からのアクセスも異なります。
特に社会人の場合、大学院への通学は一度だけではなく、授業や研究活動のため継続的に発生します。授業開始時刻に間に合うかだけではなく、研究活動や学生同士の打ち合わせなどを含めて、無理なく通えるかを考えておくことが大切です。
また、大学院生活ではキャンパスで出会う教員や学生との交流も学びの一部になります。研究テーマだけでなく、どのような環境で数年間研究したいのかという視点から、実際にキャンパスを訪れてみることも研究科選びの参考になるでしょう。
まとめ
政策・メディア研究科とシステムデザイン・マネジメント研究科(SDM)は、どちらも学際的な研究科ですが、研究へのアプローチには違いがあります。政策・メディア研究科では、情報、環境、国際関係、政策、デザインなど幅広い領域を横断しながら、自分自身の問題意識を起点として研究を深めることができます。一方、SDMでは、技術、組織、社会など複数の要素が関係する問題をシステムとして捉え、その構造や関係性を考えながら解決策を検討していきます。
研究科を選ぶ際には、「何を研究したいのか」だけでなく、「その問題をどのような方法で研究したいのか」「どの教員から指導を受けたいのか」「どのような研究環境で学びたいのか」まで具体化することが重要です。両研究科の教員や研究活動、入試制度を比較しながら、自分の問題意識を最も深められる環境を検討していきましょう。
※本記事は記事作成時点の情報をもとに作成しています。入試制度、出願資格、提出書類、試験内容、カリキュラム、教員情報などは変更される場合があります。受験を検討している方は、必ず慶應義塾大学および対象研究科の公式サイト、最新の入学試験要項をご確認ください。
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※この記事は専門家による監修のもと執筆されています。
この記事を監修した人
小杉 樹彦(こすぎ・たつひこ)
志樹舎 創業者/博士(学術)
慶應義塾大学院修了後、2015年1月に院試専門オンライン予備校「志樹舎」を設立。
代表講師として10〜60代まで延べ5,000人以上の受験生を指導。
早慶・国公立をはじめとする難関大学院で合格率9割超の実績を持つ。
現在は大学院入試対策の専門家として、テレビ・新聞・雑誌など幅広いメディアで活動中。
ロングセラー『減点されない!勝論文』(エール出版社)ほか著書・論文多数。


