慶應大学院でサステナビリティを研究する研究科の探し方

慶應大学院でサステナビリティを研究するなら?

院試専門オンライン予備校「志樹舎」が運営する「慶應義塾大学大学院の院試対策ガイド」をご覧いただき、ありがとうございます。今回のテーマは「慶應大学院でサステナビリティを研究するなら?」です。

環境問題や持続可能な社会の実現、いわゆるサステナビリティへの関心から、大学院で本格的に研究したいと考える方もいるのではないでしょうか。サステナビリティは、環境だけを意味する言葉ではありません。企業経営、エネルギー、都市、地域社会、政策、技術など、さまざまな分野と関係しています。

そのため、慶應義塾大学の大学院でサステナビリティを研究したい場合にも、候補となる研究科はひとつとは限りません。環境問題そのものを科学的に分析したいのか、企業の経営戦略として考えたいのか、政策や社会制度を変えたいのか、複雑な社会システムそのものを設計し直したいのかによって、適した研究環境は変わります。

この記事では、慶應大学院でサステナビリティに関連する研究を考える際に、どのような視点から研究科や教員を探せばよいのかを整理します。

サステナビリティ研究にもいくつかの切り口がある

慶應大学院でサステナビリティ研究のテーマを考えるイメージ

サステナビリティというテーマには、複数の研究アプローチがあります。気候変動や資源、エネルギーなどの問題を科学・技術の観点から研究することもできますし、企業が環境や社会へ配慮しながら事業を継続するための経営戦略を研究することもできます。

また、国や自治体の政策、都市や地域の仕組み、エネルギーシステムなど、社会全体の制度やシステムを対象にすることも可能です。

例えば「脱炭素」を研究したい場合でも、CO2排出量を削減するための技術を研究するのか、企業が脱炭素経営へ移行する過程を研究するのか、政府による政策の効果を研究するのかによって、必要となる専門知識や研究方法は異なります。

まずは「サステナビリティを研究したい」という大きな関心から、自分がどの問題を、どのような立場から研究したいのかを具体化することが重要です。

環境問題を科学・技術の視点から研究したい場合

環境問題やエネルギー問題などを科学・技術の視点から研究したい場合には、理工学系の研究環境から教員や研究室を探す方法があります。

例えば、環境負荷を抑えるための技術、エネルギーの効率的な利用、資源循環、材料、環境計測など、サステナビリティと接点を持つ技術分野は多岐にわたります。

この方向では、「環境に良い技術を研究したい」というだけではなく、どのような環境問題を対象とし、その解決にどのような科学・技術的アプローチを用いるのかを具体化する必要があります。

また、研究テーマによって必要となる基礎知識も異なります。化学、物理学、情報科学、工学など、自分のテーマと関係する専門分野から研究室を探すことが重要です。

エネルギーをテーマにサステナビリティを考える

サステナビリティを考えるうえで、エネルギーは重要な研究対象の一つです。社会や産業活動を維持するためにはエネルギーが必要ですが、その生産や利用方法は環境負荷とも関係しています。

例えば、再生可能エネルギーをどのように社会へ普及させるのか、エネルギー需要をどのように管理するのか、地域単位でエネルギーを効率的に利用するにはどのような仕組みが必要なのか、といった問いが考えられます。

エネルギー技術そのものを研究する場合もあれば、エネルギー政策や事業モデル、社会システムとして研究することもできます。

同じエネルギーというテーマでも、技術、経営、政策、システムなど複数のアプローチがあるため、自分が何を明らかにしたいのかを整理して研究科を検討するとよいでしょう。

企業経営の視点からサステナビリティを考えたい場合

企業経営とサステナビリティを大学院で研究するイメージ

企業が環境や社会への責任と事業成長をどのように両立させるのかという問題に関心がある場合には、経営管理研究科(KBS)や商学研究科など、経営・商学系の研究環境との接点が考えられます。

企業にとってサステナビリティは、単なる環境対策ではありません。事業戦略、投資、商品開発、サプライチェーン、ブランド、人材など、企業経営のさまざまな領域と関係します。

例えば、「環境配慮型の商品は消費者からどのように評価されるのか」「脱炭素への取り組みは企業の競争戦略とどのように関係するのか」「サステナビリティへの取り組みを企業はどのように事業成長へつなげるのか」といった問いを考えることができます。

企業活動を研究したい場合には、「環境に配慮すべきだ」という価値判断だけでなく、企業が実際にどのような意思決定を行い、それによってどのような結果が生じるのかを研究上の問いとして設定することが重要です。

ESGを研究テーマにする場合

企業とサステナビリティの関係を考える際には、環境・社会・ガバナンスを意味するESGを研究テーマとすることも考えられます。

例えば、企業のESGへの取り組みが投資家からどのように評価されるのか、環境に関する情報開示が企業評価にどのような影響を与えるのか、サステナビリティに関する経営方針が従業員や消費者の評価とどのように関係するのか、といった問いがあります。

ただし、「ESG経営について研究したい」という段階ではテーマが広いため、環境、人的資本、情報開示、投資、企業価値など、自分が特に注目する要素を具体化する必要があります。

経営戦略、会計、ファイナンス、マーケティング、組織など、どの分野からESGを研究するのかによっても、適した教員や研究方法は変わります。

サプライチェーンから持続可能性を考える

企業のサステナビリティを考える場合、自社の活動だけではなく、原材料の調達から製造、物流、販売まで含めたサプライチェーン全体を見ることも重要です。

例えば、環境負荷の少ない原材料をどのように調達するのか、取引先の環境・社会面の取り組みを企業がどのように管理するのか、物流による環境負荷をどのように減らすのかといったテーマが考えられます。

サプライチェーンには複数の企業や地域が関係するため、一社だけの意思決定では問題を解決できないこともあります。

そのため、経営戦略として研究するだけでなく、企業間関係や複雑なシステムとして分析する方向も考えられます。

政策の視点から持続可能な社会を考えたい場合

環境問題や社会課題を、国や自治体の政策、制度、地域社会の仕組みから研究したい場合には、政策・メディア研究科を含め、政策と社会課題を横断して研究できる環境を検討する方法があります。

例えば、脱炭素政策、再生可能エネルギーの普及、地域の環境政策、持続可能な都市づくりなど、さまざまなテーマが考えられます。

政策研究では、「環境問題を解決するために規制を強化すべきだ」といった主張だけで終わるのではなく、実際に導入された政策によって企業や市民の行動がどのように変化したのか、どのような効果や課題が生じたのかを分析することが重要です。

国同士、自治体同士などを比較し、制度の違いが結果にどのような影響を与えているのかを研究することも考えられます。

地域のサステナビリティを研究する

サステナビリティは世界規模の課題である一方、地域単位で研究することもできます。人口減少、交通、エネルギー、観光、産業など、地域が抱える課題も持続可能性と深く関係しています。

例えば、人口減少地域で公共交通をどのように維持するのか、観光客を増やしながら地域環境や住民生活をどのように守るのか、地域資源を利用したエネルギーシステムをどのように構築するのかといった問いがあります。

地域を研究対象とする場合には、環境だけでなく、経済や住民生活まで含めて考える必要があります。

「持続可能な地域を作りたい」という大きな目標から、特定の地域、課題、関係者を具体化することで、研究テーマとして整理しやすくなります。

システム思考からサステナビリティを研究したい場合

システム思考からサステナビリティを研究するイメージ

サステナビリティの問題は、一つの技術や一つの企業だけでは解決できないことがあります。エネルギー、交通、都市、産業などの問題では、多くの関係者や制度、技術が複雑に関係しています。

こうした問題をシステム全体として捉えたい場合には、システムデザイン・マネジメント研究科(SDM)のように、システム思考を重視する研究環境との接点が考えられます。

例えば、電気自動車を普及させる場合、自動車の技術だけを改善すればよいとは限りません。充電設備、電力供給、利用者、企業、自治体、法制度など、複数の要素が関係します。

このようなテーマでは、「どの技術が優れているか」だけでなく、「社会全体としてどのような仕組みを設計すれば持続可能な状態へ移行できるのか」を考えることが重要になります。

循環型社会・サーキュラーエコノミーを研究する

資源を大量に使用して廃棄するのではなく、製品や資源をできるだけ長く循環させるという考え方も、サステナビリティと関係する重要なテーマです。

例えば、製品を修理して長く利用する仕組み、使用済み製品を回収して再利用する仕組み、廃棄物を別の製品の資源として利用する仕組みなどが考えられます。

このテーマも、技術だけではなく、企業のビジネスモデルや消費者行動、回収・物流システム、政策などが関係します。

例えば、「製品を販売するビジネスから利用サービスへ転換することで資源利用はどのように変化するのか」「消費者はどのような条件で再生品を選択するのか」といった研究上の問いを考えることができます。

サステナビリティと消費者行動を研究する

環境に配慮した商品やサービスが増えていても、必ずしもすべての消費者がそれらを選択するとは限りません。そのため、サステナビリティとマーケティングや消費者行動を組み合わせた研究も考えられます。

例えば、「環境配慮を示す情報は消費者の購買意向にどのような影響を与えるのか」「価格が高くても環境配慮型の商品を選択する人にはどのような特徴があるのか」といった問いです。

また、企業が環境への取り組みを発信した際、それが消費者からどのように受け取られるのかを研究することもできます。

この方向では、サステナビリティそのものだけでなく、マーケティング、ブランド、消費者心理などの先行研究も確認する必要があります。

「SDGsを研究したい」から一歩具体化する

サステナビリティに関心を持つ人の中には、「SDGsについて研究したい」と考える方もいるでしょう。しかし、SDGsには多くの目標が含まれているため、それだけでは研究テーマとして広すぎます。

まず、自分がどの社会課題に関心を持っているのかを整理しましょう。気候変動なのか、エネルギーなのか、都市なのか、教育なのか、企業活動なのかによって研究の方向は大きく変わります。

さらに、「その問題の何を明らかにしたいのか」まで考えます。例えば、「企業のSDGsへの取り組みを研究したい」から、「企業による環境目標の設定が事業戦略の意思決定にどのように反映されるのか」といった問いへ具体化することができます。

SDGsやサステナビリティという言葉を研究テーマそのものにするのではなく、自分が研究したい具体的な現象を見つけることが重要です。

社会人は実務上の課題から研究テーマを考えられる

企業や自治体などで働いている社会人の場合には、仕事の中で感じてきたサステナビリティ上の課題を研究テーマの出発点にすることもできます。

例えば、「環境目標を掲げているが現場の事業計画へ十分に反映されない」「環境配慮型の商品を開発しても顧客に価値が伝わりにくい」「複数の企業が関係するため、一社だけでは環境負荷を削減できない」といった経験です。

ただし、研究計画書では、自社の問題を解決することだけを目的にするのではなく、その経験から生まれた疑問を、他の企業や社会にも関係する研究上の問いへ変換する必要があります。

例えば、「自社の環境施策を浸透させたい」から、「企業のサステナビリティ戦略は組織内部でどのように実行へ移されるのか」といった問いへ発展させることができます。

研究テーマは「課題+対象+視点」で整理する

サステナビリティは非常に広いテーマであるため、研究計画を考える際には、「課題+対象+視点」という形で整理すると具体化しやすくなります。

例えば、「脱炭素+製造業+経営戦略」「再生可能エネルギー+地方自治体+政策」「食品廃棄+小売業+消費者行動」「地域交通+人口減少地域+システム設計」といった形です。

このように整理すると、自分がどの分野の先行研究を調べる必要があるのか、どの研究科や教員との接点がありそうなのかも見えやすくなります。

研究対象となる企業、地域、制度などをさらに具体化し、どのようなデータを利用できるのかまで考えると、研究計画の実現可能性も検討しやすくなります。

研究科より先に教員を探す方法もある

サステナビリティは複数の研究科にまたがるテーマであるため、「サステナビリティを研究できる研究科はどこか」という探し方だけでは、自分に合った研究環境を見つけにくい場合があります。

まず、「脱炭素」「エネルギー」「環境政策」「ESG」「サーキュラーエコノミー」「地域」「都市」「サプライチェーン」など、自分の関心を具体的なキーワードへ分解してみましょう。

そのうえで各研究科の教員紹介や研究プロジェクトを確認し、自分の問題意識と接点を持つ教員を探します。気になる教員が見つかったら、論文や研究テーマ、担当科目なども確認してみましょう。

研究科の名称だけで決めるのではなく、「自分が研究したいサステナビリティの課題を指導できる教員がいるか」という視点から志望先を検討することが重要です。

研究計画書では「社会を良くしたい」だけで終わらせない

サステナビリティを研究したい人は、「環境問題を解決したい」「持続可能な社会を作りたい」といった強い問題意識を持っていることがあります。こうした問題意識は研究の重要な出発点です。

一方、研究計画書では、理想や主張だけでなく、「何が分かっていないのか」を研究上の問いとして示す必要があります。

例えば、「企業はもっと環境対策を進めるべきだ」という主張から、「企業が脱炭素への投資を決定する際、どのような要因が意思決定に影響しているのか」という問いへ変換します。

さらに、先行研究を調べ、すでに何が明らかになっているのか、その中で自分は何を明らかにしたいのかを整理します。価値観だけではなく、研究対象、問い、方法を明確にすることが重要です。

入試準備では研究科ごとの違いを確認する

サステナビリティに関連する研究ができる可能性がある研究科でも、入試制度や求められる専門知識は異なります。研究科や入試区分によって、出願資格、提出書類、専門科目、英語、面接などの扱いが異なるため、必ず受験年度の募集要項を確認してください。

自然科学・工学系の研究を志望する場合には、数学や理科、工学などの基礎知識が必要になる可能性があります。一方、経営や政策を中心とする研究では、経営学、経済学、統計、社会科学の研究方法などが関係することもあります。

また、サステナビリティは分野横断的なテーマであるため、複数の研究科で迷うこともあります。その場合には、研究科の名称だけではなく、教員の研究内容、過去の研究テーマ、カリキュラム、研究方法などを比較しましょう。

説明会や研究科のイベントなどの機会がある場合には、実際にどのような研究が行われているのかを確認することも、入学後のミスマッチを防ぐうえで役立ちます。

まとめ

慶應義塾大学の大学院でサステナビリティに関連する研究を考える場合、環境や技術を科学的に研究する方向、企業経営やESGの視点から研究する方向、政策や地域社会を研究する方向、複雑な社会システム全体を設計する方向など、複数のアプローチがあります。

また、脱炭素、エネルギー、サプライチェーン、サーキュラーエコノミー、消費者行動、地域社会など、具体的な研究テーマも多岐にわたります。

まずは「サステナビリティを研究したい」という大きな関心から、「どの課題を、誰・何を対象として、どのような視点から研究したいのか」まで具体化してみましょう。そのうえで、自分の問題意識と接点を持つ教員を探し、所属研究科の研究環境やカリキュラム、入試制度を比較していくことが、自分に合った研究科を見つけるための重要なステップになります。


※本記事は記事作成時点の情報をもとに作成しています。入試制度、出願資格、提出書類、試験内容、カリキュラム、教員情報などは変更される場合があります。受験を検討している方は、必ず慶應義塾大学および対象研究科の公式サイト、最新の入学試験要項をご確認ください。

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※この記事は専門家による監修のもと執筆されています。

この記事を監修した人

小杉樹彦(志樹舎 創業者)

小杉 樹彦(こすぎ・たつひこ)
志樹舎 創業者/博士(学術)
慶應義塾大学院修了後、2015年1月に院試専門オンライン予備校「志樹舎」を設立。 代表講師として10〜60代まで延べ5,000人以上の受験生を指導。 早慶・国公立をはじめとする難関大学院で合格率9割超の実績を持つ。 現在は大学院入試対策の専門家として、テレビ・新聞・雑誌など幅広いメディアで活動中。 ロングセラー『減点されない!勝論文』(エール出版社)ほか著書・論文多数。