慶應大学院でマーケティングを研究する研究科の探し方

慶應大学院でマーケティングを研究するなら?

院試専門オンライン予備校「志樹舎」が運営する「慶應義塾大学大学院の院試対策ガイド」をご覧いただき、ありがとうございます。今回のテーマは「慶應大学院でマーケティングを研究するなら?」です。

消費者行動やブランド戦略に関心があり、マーケティングを大学院で本格的に学びたいと考える方もいるのではないでしょうか。慶應義塾大学の大学院でマーケティングに関連する研究を検討する場合、候補となる研究科はひとつとは限りません。

消費者の行動を理論的に分析したいのか、企業のマーケティング戦略について研究したいのか、顧客データを分析したいのか、あるいはデジタル技術を利用して新しい顧客体験を作りたいのかによって、研究テーマの方向性は大きく変わります。

この記事では、慶應大学院でマーケティングに関連する研究を考える際に、どのような視点で研究科や教員を探せばよいのかを整理します。

マーケティング研究にもいくつかの切り口がある

慶應大学院でマーケティング研究のテーマを考えるイメージ

マーケティングという分野には、さまざまな研究テーマがあります。消費者がなぜ特定の商品を選ぶのかを研究する消費者行動、企業がブランドをどのように構築するのかを考えるブランド戦略、商品やサービスの価格設定、広告やプロモーション、流通、デジタルマーケティングなどもマーケティングと関係します。

さらに近年では、ECサイトの購買履歴、Web上の行動データ、SNS上の情報など、さまざまなデータを利用して消費者や市場を分析することも可能になっています。そのため、統計学やデータサイエンス、AIなどとマーケティングを組み合わせる研究も考えられます。

例えば、「SNSマーケティングを研究したい」という場合でも、SNS広告が購買行動に与える影響を分析するのか、企業のブランド形成との関係を研究するのか、投稿データを分析して消費者の反応を明らかにするのかによって、必要となる知識や研究方法は異なります。

まずは「マーケティングを研究したい」という状態から、「マーケティングの何を研究したいのか」まで問題意識を具体化することが、研究科選びの第一歩になります。

消費者行動やマーケティング理論を研究したい場合

マーケティングを経営学や商学の一分野として研究し、消費者行動、ブランド、広告、流通などについて学術的に深めたい場合には、商学研究科など、商学・経営学に関係する研究科の教員や研究領域を確認する方法があります。

例えば、「消費者はどのような要因によってブランドを選択するのか」「口コミは購買意思決定にどのような影響を与えるのか」「価格の提示方法によって商品への評価は変化するのか」といった問いを研究テーマとして考えることができます。

このような研究では、マーケティングの実務的なノウハウを学ぶだけではなく、先行研究を読み、仮説を立て、調査や実験、データ分析などを通じて問いを検証していくことが重要になります。

「マーケティングを仕事で使えるようになりたい」という目的と、「マーケティングという現象を学術的に研究したい」という目的は必ずしも同じではありません。大学院で研究したい場合には、自分がマーケティングについて何を新しく明らかにしたいのかを考える必要があります。

実務経験を踏まえて経営課題として探究したい場合

慶應KBSでマーケティングと経営課題を学ぶイメージ

すでに社会人としてマーケティングや営業、商品企画、事業開発などに携わっており、その経験を踏まえて経営課題を考えたい場合には、経営管理研究科(KBS)のようなビジネススクールも検討対象になります。

企業におけるマーケティングでは、広告や販促だけを考えればよいわけではありません。どの市場を選ぶのか、どの顧客にどのような価値を提供するのか、競合企業との差別化をどのように図るのか、商品やサービスをどのような価格で提供するのかなど、経営上のさまざまな意思決定と関係しています。

KBSではケースメソッドを通じ、具体的な企業や経営上の状況について、自分ならどのような意思決定を行うのかを考える学びがあります。マーケティングについても、単独の施策としてではなく、経営戦略や組織、財務などとの関係から考えることができます。

例えば、実務の中で「広告を増やしても売上につながらなかった」「新商品を投入したが顧客に受け入れられなかった」「既存ブランドと新規ブランドをどう使い分けるべきか悩んだ」といった経験があれば、その問題意識を大学院での学びにつなげることも考えられます。

データ分析を使ってマーケティングを研究したい場合

消費者データや購買データなどを利用してマーケティングを研究したい場合には、統計学やデータ分析との接点も重要になります。

例えば、顧客の購買履歴を利用して継続購入に関係する要因を分析する、アンケートデータからブランドイメージを分析する、広告施策を実施したグループと実施していないグループを比較するなど、さまざまな研究方法が考えられます。

この場合には、マーケティングについての知識だけではなく、統計分析やデータ処理などの知識が必要になることがあります。一方で、分析技術そのものを高度化することが目的なのか、分析技術を使ってマーケティング上の問いを明らかにすることが目的なのかによって、適した研究環境は変わります。

マーケティングが研究の中心であれば、「どの分析手法を使いたいか」から考えるのではなく、「消費者や市場について何を明らかにしたいか」を先に考え、その問いに必要なデータや分析手法を選ぶことが重要です。

デジタル技術や顧客体験に関心がある場合

デジタル技術とマーケティングや顧客体験を研究するイメージ

デジタル技術を使って新しい商品・サービスや顧客体験を生み出すことに関心がある場合には、メディアデザイン研究科(KMD)のように、技術、デザイン、コンテンツ、ビジネスなどを横断して研究する環境との接点も考えられます。

例えば、AIを利用した接客サービス、VR・ARを利用した購買体験、新しいデジタルコンテンツ、オンラインと実店舗を組み合わせた顧客体験などを研究したい場合です。

このようなテーマでは、従来型のマーケティング理論だけではなく、実際にプロトタイプを制作し、ユーザーに利用してもらい、その反応を検証するという研究方法も考えられます。

「既存の商品をどう売るか」だけではなく、「テクノロジーによって新しい顧客体験そのものをどう作るか」に関心がある場合には、マーケティングという言葉だけで研究科を探さず、デザインやメディア、テクノロジーに関係する研究領域まで広げて教員を探してみるとよいでしょう。

同じテーマでも研究科によってアプローチは変わる

マーケティングに関連するテーマは、研究科によって異なる角度から研究することができます。

例えば、「若年層が新しいブランドをどのように受け入れるのか」というテーマを考えてみます。消費者行動の研究であれば、ブランドに対する態度や購買意思決定について仮説を設定し、アンケートや実験などを通じて検証する方法が考えられます。

ビジネススクールで経営課題として考えるのであれば、企業が若年層向けブランドをどのように市場へ投入し、競合と差別化し、事業として成長させるのかという意思決定に焦点を当てることができます。

データ分析を中心にするのであれば、購買履歴やWeb上の行動などを分析し、どのような要因が購買や継続利用と関係しているのかを検証することもできます。

さらに、デザインやテクノロジーを重視する場合には、新しいブランド体験を実際に設計し、ユーザーの反応を検証するという研究も考えられます。

つまり、「マーケティング」というテーマだけで研究科を決めるのではなく、自分がどのような問いを、どのような方法で研究したいのかを整理することが重要です。

社会人は実務上の疑問から研究テーマを探せる

マーケティング関連の仕事を経験している社会人の場合には、実務の中で感じてきた疑問が研究テーマを考える材料になります。

例えば、「SNSで大きな反響があったのに売上につながらなかった」「値引きをすると一時的には売れるが、ブランド価値への影響が気になる」「新規顧客は獲得できるが継続利用につながらない」など、日々の業務には多くの問いがあります。

ただし、研究計画書では「自社の売上を上げたい」という実務上の目的だけでは十分ではありません。その経験から生まれた疑問を、他の企業や消費者にも関係する研究上の問いへ変換する必要があります。

例えば、「自社のSNS施策を改善したい」から、「SNS上の口コミに対する消費者の信頼は購買意向とどのように関係するのか」といった問いへ発展させることが考えられます。

実務経験がある場合には、その経験自体を強調するだけではなく、「その経験から何を疑問に感じ、それを大学院でどのように研究したいのか」まで整理すると、進学目的が明確になります。

BtoBマーケティングも研究テーマになり得る

マーケティングというと、一般消費者向けの商品や広告をイメージしやすいですが、企業間取引であるBtoBのマーケティングも研究対象になります。

例えば、法人顧客がサービスを導入するまでの意思決定、営業担当者との関係、企業ブランドへの信頼、無料トライアルから契約への移行など、BtoBならではの問いがあります。

社会人の場合には、自分が所属している業界や職種の経験を活かし、一般消費者向けの商品だけではなく、法人営業、SaaS、専門サービスなどを研究対象として考えることもできます。

重要なのは、身近な業務をそのまま研究対象にすることではなく、その中に学術的に検討できる問いがあるかを考えることです。自分の業界について詳しいことは、研究テーマを具体化するうえで一つの材料になります。

研究科・教員を探すときはキーワードを細かくする

マーケティング関連の研究科を探す際には、「マーケティング」という一つの言葉だけで教員を探すのではなく、自分の関心を複数のキーワードに分けることをおすすめします。

例えば、「消費者行動」「ブランド」「広告」「価格」「流通」「サービス」「顧客満足」「デジタルマーケティング」「マーケティング・リサーチ」など、自分の問題意識に近い言葉を書き出します。

さらに、「AI」「SNS」「EC」「データ分析」「観光」「教育」「医療」「BtoB」など、研究対象となる業界や技術を組み合わせることで、より具体的に教員を探せます。

気になる教員が見つかったら、大学公式サイトのプロフィールだけでなく、研究テーマ、論文、担当科目なども確認し、自分が取り組みたいテーマとの接点を探します。そのうえで、その教員が所属する研究科のカリキュラムや入試制度を調べると、研究テーマから逆算して志望先を検討できます。

研究計画書では「誰の、どんな行動を研究するのか」を具体化する

マーケティング関連の研究計画書では、「マーケティング戦略について研究したい」「消費者行動について研究したい」という大きなテーマのままにしないことが重要です。

まず、研究対象となる消費者や企業を具体化します。例えば、大学生、高齢者、サブスクリプションサービスの利用者、ECサイト利用者、法人顧客などです。

次に、その対象について何を明らかにしたいのかを考えます。「なぜ購入するのか」「なぜ継続利用するのか」「どのような情報を信頼するのか」「どのような体験がブランド評価に影響するのか」など、行動や意思決定に関する問いへ絞り込みます。

さらに、アンケート、インタビュー、実験、購買データの分析など、問いに答えるための研究方法を検討します。研究対象、問い、方法がつながることで、研究計画の具体性が高まります。

入試準備では研究科ごとの違いを確認する

マーケティングを研究できる可能性がある研究科でも、入試制度は同じではありません。研究科や入試区分によって、出願資格、提出書類、専門科目、英語、面接など、選考方法が異なります。

また、社会人向けのプログラムでは実務経験などに条件が設けられている場合もあります。自分の経歴で出願できるかどうかは、必ず受験年度の募集要項で確認してください。

研究科によっては、経営学、商学、経済学、統計学などに関する基礎知識が必要になることもあります。研究テーマだけで志望先を決めるのではなく、試験科目や過去問を確認し、自分が合格に向けてどのような準備をする必要があるのかも早めに把握しておきましょう。

説明会やオープンキャンパスなどの機会がある場合には、教員や在学生の話を聞き、実際にどのようなマーケティング研究が行われているのかを確認することも、研究科選びの参考になります。

まとめ

慶應義塾大学の大学院でマーケティングに関連する研究を考える場合、消費者行動やマーケティング理論を学術的に研究する方向、実務経験を踏まえて経営課題として考える方向、データ分析を活用する方向、テクノロジーを利用して新しい顧客体験を生み出す方向など、複数のアプローチがあります。

まずは「マーケティングを研究したい」という大きな関心を、「誰の、どのような行動や意思決定について、何を明らかにしたいのか」という研究上の問いへ具体化してみましょう。そのうえで、自分のテーマと接点を持つ教員を探し、研究科のカリキュラムや入試制度を確認していくことが重要です。

特に社会人の場合には、これまでの実務経験の中に研究テーマのヒントが隠れていることがあります。仕事で感じてきた疑問をそのまま業務改善の話にするのではなく、学術的な問いへ変換することができれば、志望理由や研究計画書にもつながっていきます。


※本記事は記事作成時点の情報をもとに作成しています。入試制度、出願資格、提出書類、試験内容、カリキュラム、教員情報などは変更される場合があります。受験を検討している方は、必ず慶應義塾大学および対象研究科の公式サイト、最新の入学試験要項をご確認ください。

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※この記事は専門家による監修のもと執筆されています。

この記事を監修した人

小杉樹彦(志樹舎 創業者)

小杉 樹彦(こすぎ・たつひこ)
志樹舎 創業者/博士(学術)
慶應義塾大学院修了後、2015年1月に院試専門オンライン予備校「志樹舎」を設立。 代表講師として10〜60代まで延べ5,000人以上の受験生を指導。 早慶・国公立をはじめとする難関大学院で合格率9割超の実績を持つ。 現在は大学院入試対策の専門家として、テレビ・新聞・雑誌など幅広いメディアで活動中。 ロングセラー『減点されない!勝論文』(エール出版社)ほか著書・論文多数。