【KMD面接対策⑤】「やりたい研究ができないかもしれない」と言われたら?研究の可変性を問う質問への答え方

院試専門オンライン予備校「志樹舎」が運営する「慶應義塾大学大学院の院試対策ガイド」をご覧いただき、ありがとうございます。今回のテーマは「【KMD面接対策⑤】『やりたい研究ができないかもしれない』と言われたら?研究の可変性を問う質問への答え方」です。

KMD(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科)の面接では、研究テーマそのものだけでなく、「もし出願時に考えていた研究が、そのままの形ではできなかったらどうしますか」といった、研究の可変性を問う質問を想定しておくことも大切です。

この質問は、研究への熱意があるかどうかだけを確認するものではありません。自分の考えに軸を持ちながらも、入学後の環境や他者との協働を通じて、研究の方向性を柔軟に見直せるかという姿勢も関わってきます。

今回は、こうした質問に対してどのように考え、どのように回答すればよいのかを整理していきます。


出願時の研究計画は完成形ではない

まず理解しておきたいのは、出願時に提出する研究計画が、入学後も一字一句そのまま進むとは限らないということです。

大学院では、入学後に先行研究をさらに調べたり、教員から助言を受けたり、実際の調査やプロジェクトに参加したりする中で、当初の問題設定が変わることがあります。

特にKMDでは、多分野の教員や学生と関わりながらリアルプロジェクトなどに取り組むため、自分にはなかった視点を得る機会もあります。

その結果、「対象者を変えたほうがよい」「技術よりも利用者体験を中心に考えたほうがよい」「そもそも問いの立て方を変えたほうがよい」と気づくこともあるでしょう。

研究テーマが変化することは、必ずしも失敗ではありません。研究を進めた結果として、より重要な問いにたどり着くこともあります。


なぜ可変性を問う質問を想定しておくべきなのか

この種の質問で大切なのは、「自分の計画を絶対に変えません」と主張することでも、「何でも構いません」と答えることでもありません。

研究には、自分自身の問題意識と、実際に研究を進める中で得られる新しい知見の両方が必要です。

最初の計画にこだわりすぎると、新しいデータや指摘があっても受け入れられなくなる可能性があります。一方で、何でもよいという姿勢では、「そもそもなぜKMDに進学したいのか」という主体性が見えなくなります。

面接では、自分が大切にしたい問題意識を持ちながら、方法や対象については必要に応じて見直せるというバランスを示せるようにしておきましょう。


まず「研究テーマ」と「問題意識」を分けて考える

この質問に答えるために最も重要なのが、具体的な研究テーマと、その奥にある問題意識を分けて考えることです。

たとえば、「高齢者向けのコミュニケーションアプリを開発したい」という研究テーマがあったとします。

しかし、本当に関心があるのはアプリそのものなのでしょうか。さらに掘り下げると、「一人暮らしの高齢者が社会との接点を失いやすい状況を変えたい」という問題意識があるかもしれません。

この場合、研究方法がアプリではなく別の仕組みに変わったとしても、高齢者の孤立という問題意識は変わりません。

このように、「今考えている研究方法」と「自分が本当に解決したい問題」を分けておくと、研究テーマの変更についても柔軟に考えやすくなります。


「なぜ?」を繰り返して関心の核を探す

自分の問題意識がまだはっきりしない場合は、研究テーマに対して「なぜ?」を何度か繰り返してみましょう。

たとえば「生成AIを教育に活用したい」と考えている場合、「なぜ生成AIなのか」「なぜ教育なのか」「教育の何を変えたいのか」「なぜその問題が自分にとって重要なのか」と掘り下げていきます。

すると、「生成AIを研究したい」という表面的な関心の奥に、「学習者によって理解速度が違うのに、一律の教材しか提供されていないことに問題を感じている」といった本質的な問題意識が見えてくることがあります。

この核となる問題意識が見つかれば、使用する技術が変わっても、自分の研究の軸は保ちやすくなります。


避けたい回答①「絶対にこのテーマでなければ嫌です」

研究への強い熱意を示そうとして、「このテーマ以外は考えていません」「必ずこの方法で研究します」と答えるのは注意が必要です。

強い意思そのものは悪くありません。しかし、大学院では教員からの指導や先行研究、新たに得られたデータによって、研究計画を修正することがあります。

それにもかかわらず、最初の計画から一切変えるつもりがないという姿勢を示すと、研究上の新しい発見を受け入れにくい印象につながる可能性があります。

「この問題に取り組みたいという軸は強く持っています。ただし、対象や方法については、研究を進める中でより適切なものが見つかれば柔軟に見直したいです」と整理すると、熱意と柔軟性を両立できます。


避けたい回答②「何でも大丈夫です」

反対に、「入学できるならテーマは何でも構いません」といった回答も避けたいところです。

柔軟性を示そうとしたつもりでも、「研究したいことが特にない」「KMDに入ること自体が目的になっている」と受け取られる可能性があります。

KMDを志望するのであれば、少なくとも現時点でどのような問題に関心を持ち、なぜその問題に取り組みたいのかを持っておく必要があります。

方法や対象は変わっても構わないが、自分が考え続けたい問題はある。この状態を目指しましょう。


回答は「希望・軸・柔軟性」の順で組み立てる

研究の可変性について質問された場合は、三つの段階で回答を整理すると分かりやすくなります。

まず、「現在は○○というテーマに取り組みたいと考えています」と、現在の希望を明確にします。

次に、「その理由は、これまでの○○という経験から、○○という課題に強い問題意識を持っているためです」と、自分の軸を説明します。

最後に、「その問題意識は大切にしながらも、入学後に新しい知見や教員・学生からの意見を得た結果、より適切な対象や方法があるのであれば柔軟に調整したいです」と答えます。

この順番であれば、「何でもよい」という印象にも、「絶対に変えない」という印象にもなりにくくなります。


具体的にどこまで変更できるか考えておく

面接対策として、自分の研究計画の中で「変えたくない部分」と「変更可能な部分」を事前に整理しておくこともおすすめです。

たとえば、問題意識は変えたくないが、対象者は変更できる。対象者は維持したいが、使用する技術は変えてもよい。社会課題への関心は維持しながら、研究方法については教員と相談して決めたい、といった形です。

研究計画を一枚の固定された絵として見るのではなく、いくつかの要素に分けて考えると、変更可能な部分が見えてきます。

この準備をしておけば、「もし○○ができなかったらどうしますか」と具体的に聞かれた場合にも対応しやすくなります。


変更を「妥協」ではなく「研究の深化」と捉える

研究テーマが変わる可能性を考えると、「せっかく準備したのに無駄になるのでは」と不安になる方もいるかもしれません。

しかし、研究計画の変更は必ずしも妥協ではありません。

実際に調べてみた結果、最初に考えていた対象には課題がなかった、別の対象のほうが重要だった、想定していた技術ではうまく検証できなかったということもあります。

そのとき、新しく得た情報をもとに問いを変えることは、研究が深まった結果とも言えます。

「最初の計画を守ること」が目的ではなく、「より良い問いに近づくこと」が研究の目的だという視点を持っておきましょう。


KMDだからこそ他者の視点を取り入れる

KMDは、多様な専門性を持つ教員や学生が集まる環境です。

自分が技術の視点から考えていた課題について、デザインの視点から別の問題を指摘されるかもしれません。ビジネスの観点から実現可能性を問われることもあれば、社会的な影響について新しい視点を得ることもあるでしょう。

そうした出会いによって、自分の研究テーマが変化することは十分に考えられます。

むしろ、多分野横断の環境を求めてKMDを志望するのであれば、「自分にはない視点を得たときに、それをどう研究へ取り込むのか」という姿勢も大切です。


英語でも短く回答できるようにする

KMDの面接を想定する場合、この質問への回答も英語で準備しておきましょう。

長い文章を暗記する必要はありません。「My current research interest is...」「The core issue I want to address is...」「I am open to changing the approach if...」といった形で、現在のテーマ、問題意識、柔軟性の三つを簡潔に説明できる状態を目指します。

重要なのは、英語として完璧に話すことではなく、「何は変えたくなくて、何なら変えられるのか」を自分自身が理解していることです。

日本語でも一度答えを整理し、その後でシンプルな英語へ置き換えて練習するとよいでしょう。


まとめ

KMDの面接で「やりたい研究がそのままできない場合はどうしますか」と問われたときに重要なのは、研究計画を守り抜くことでも、何でも受け入れることでもありません。

自分がなぜそのテーマに関心を持っているのか、その根底にある問題意識を理解したうえで、対象や方法については新しい知見に応じて柔軟に見直せる姿勢を示すことが大切です。

そのためには、出願時の研究テーマをそのまま覚えるだけでなく、「なぜ私はこれを研究したいのか」を何度も掘り下げ、自分の関心の核を見つけておきましょう。

軸があるからこそ、方法を変えることができます。反対に、軸がなければ、柔軟性は単なる「何でもよい」という姿勢になってしまいます。

自分の問題意識には一貫性を持ち、研究の具体的な進め方には柔軟性を持つ。このバランスを意識しておくことが、想定外の質問にも落ち着いて対応するための重要な準備になります。


※本記事は執筆時点の情報をもとに作成しています。KMDの研究指導、リアルプロジェクトの内容、面接での質問内容や評価の観点などは年度や入試期によって変更される場合があります。また、本記事で紹介した質問例が実際の面接で必ず出題されることを示すものではありません。受験の際は、必ず慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科の公式サイトおよび最新の募集要項をご確認ください。

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※この記事は専門家による監修のもと執筆されています。

この記事を監修した人

小杉樹彦(志樹舎 創業者)

小杉 樹彦(こすぎ・たつひこ)
志樹舎 創業者/博士(学術)
慶應義塾大学院修了後、2015年1月に院試専門オンライン予備校「志樹舎」を設立。 代表講師として10〜60代まで延べ5,000人以上の受験生を指導。 早慶・国公立をはじめとする難関大学院で合格率9割超の実績を持つ。 現在は大学院入試対策の専門家として、テレビ・新聞・雑誌など幅広いメディアで活動中。 ロングセラー『減点されない!勝論文』(エール出版社)ほか著書・論文多数。